過去のコンテンツに対する無礼が前提にある

乙君氏(以下、乙君):『タラレバ娘』に話を戻しますけど、これって現代の話だから、原作自体がトレンディドラマみたいじゃないですか。だからそこはすごく相性はいいのかなと思うんです。つまり、映画にしろなんにしろ、メディアに適した素材ってあるなって思っていて、そこでCGとかめっちゃ使えてその技術がすごいのであれば、『進撃』も『テラフォーマーズ』とかもいけたんだけど、その技術がけっこう拙くて不評だったりしたわけですよ。

だから『タラレバ』はドラマはすごく合ってるなと、まだ観ていないけど思うんですけど、やっぱり『ジョジョ』は……ねえ。どうですか、しみちゃん。

しみちゃん氏(以下、しみちゃん):いやいや(笑)。ねえ。

山田玲司氏(以下、山田):っていうかね、『ジョジョ』のファンってものすごい数いるわけじゃん。だから、「とりあえず観に行くか」って人はいるわけ。

乙君:そうそう。

山田:そこで最低ラインが見えているからっていうビジネスをやっているうちはダメだなと思う。

乙君:やるんだったら『ドラゴンボール』のハリウッド版ぐらい無茶苦茶だな、みたいな。

山田:あれこそ原作の人をバカにしてるんだよ。

乙君:そうなんだけど、あれくらい飛んでくれれば。

山田:観るか、あれ?

乙君:観ないよ。観ないけど、「逆に許す」みたいな。

山田:ていうかあれ「クリリンの分」で泣いた人どうすんの、いいの? だからあれはちょっと違った作品にしないと。

乙君:だから『ドラゴンボール』を読んでいた側からしても、もう切り離しちゃうっていうか。

山田:それは怒ってよくね? もうちょっと。

乙君:だから中途半端なのは一番ダメかなと思って。カルトムービーになる可能性があるじゃないですか、『北斗の拳』とかも。

山田:だからそこで、“俺病”が出る可能性があるわけだよ。

乙君:50年後くらいに「なんじゃこの映画!」ってなる可能性はあるんですよ。

山田:でもダメだと思う。最初に原(哲夫)さんたちが作った『北斗の拳』って愛の物語でしょ。

乙君:愛と悲しみの物語。

山田:でしょ。そこの本質をつかんでいるやつが指示をしていなきゃダメだよね。これを使って1つ祭りをやってやろうって思ったら、やっぱり最初の作り手に対してものすごく失礼だと思うよ。どこか過去のコンテンツに対する無礼みたいなものが前提にある感じがすごいするよ。だからモンキーパンチ先生、すごく怒ってるらしいもんね、陰ではね。

乙君:陰では?

山田:大人だから、公的には言わないけど気に入らないものはいっぱいあるでしょ。だって『ルパン』といえば……ってくらいいっぱい出てるけど、もともとモンキーパンチが大人向けにつくった『ルパン』みたいなもんがあるわけで、俺の『ルパン』じゃなくなったみたいな気持ちになるでしょ。それも、だからビジネス先行で進んでいくって時に、肝心なところを置き去りにしてしまうのはよくないなと思って。

乙君:そうですね。

山田:正直なところ、ムカつく事案多いのはしょうがないよなって思うよ。だってバカにしてんだもん、漫画家のことを。

「俺『ジョジョ』知ってるから」は失敗

乙君:いやでも『ジョジョ』『ハガレン』『銀魂』とか、もし俺が監督だったとして、「やってくれ」ってオファーがきたら絶対無理だろうって思うけどな。

山田:本当だよね。

乙君:「全員外人でいいならやるよ」って。『ハガレン』とか。

山田:荒木さんに撮らせろよって話じゃん。

乙君:そうそう。

山田:荒木さんのもんじゃん。

乙君:荒木ワールドでいいじゃんね。

山田:そう、それでその当時のジャンプの担当と一緒にやればいいじゃん。

(会場笑)

山田:それだったら観たいでしょ、みんな。ダメでも納得するじゃん。なのに、「俺がわかってるよ荒木を」みたいな顔で出てきた人がなに作るのって話じゃん。

乙君:たぶん『ジョジョ』は、ちょっと戻しますけど、『ジョジョ』はこれ(俺病)だと思います。

山田:『ジョジョ』の“俺”が荒木さんならいいんだよ、でも荒木さんじゃない人が「俺『ジョジョ』知ってるから」って……。

乙君:「俺が一番『ジョジョ』のことをわかっている」。

山田:これは絶対に失敗でしょ。

乙君:これとこれは紙一重なんですよね、たぶん。

山田:まあそうね。これは円谷がいたらなんて言ったかわからないもんね。「『シン・ゴジラ』はねえよ」って。

乙君:「俺はいいけど円谷はどうかな」。

山田:みたいな。ただ、「円谷の魂を俺は継ぎます」みたいな感じで、「シン」付けてるわけだから、いいんじゃないかなと思うんだけどね。だから『シン・ジョジョ』でいいんだったら別にいいんじゃない、誰かやるんだったら。

乙君:そうですね。

山田:うん。そんな感じです、はい。

乙君:そんな感じでアニメが無難じゃないかってことで。

(会場笑)

乙君:漫画は絵なんでってところで。

山田:漫画のよさって絵だからでしょって話なの。それを動画にするんだったら、まずはアニメじゃねえのって俺は思うけどね。

乙君:まあ一応アニメも全部やったわけですよこれは。やって、次映画にしましょうかってなった時に、キャスティングとかやって「あれはないわな」みたいなのが。

山田:それはなんのやつ?

乙君:『ハガレン』とか『ジョジョ』とか。

山田:まあこれは今から作っている感じなんでしょ? 

乙君:そうそう。もう決定はしてるんですよ。そんな感じで、これもまた公開されたらちょっとまた玲司さん観てね。

山田:観ないよ。

(会場笑)

山田:やだよそんな、観ませんよ僕は。

乙君:ちょっと! 荒木先生に怒られますよ。

山田:荒木先生自身は大好き。あと小室哲哉も大好き。本人は大好き。作品はわかんないけど、作品は詳しくない。