顔料の歴史「ラピスラズリ」

カリン・ユエン氏:さて、今日はもっとも高価な色素についてお話ししましょう。古代から珍重されていたラピスラズリです。ラピスラズリは、ラピスと短縮して呼ばれることもある、紀元前7世紀よりアフガニスタンで採掘された、深い青色の半貴石です。新石器時代には、地中海地域や南アジアまで輸出されました。

ラピスの主な鉱物成分は、深い青あるいは緑がかった青色を持つラズライト(青金石)で、白い石灰と、また中間の青い色調のソーダライト、そして深い青の中に美しい黄金の輝きを放つ黄鉄鉱を含んでいます。この青い石は、広く普及して紀元前7世紀のパキスタンではビーズに加工されました。同様に紀元前4世紀のメソポタミアでは短剣の柄やボウルやお守りに彫り込まれ、象嵌細工として彫刻の目や眉毛にはめ込まれました。

ラピスはメソポタミアの詩にも謳われ、これはもっとも古い文学作品としても知られています。エジプトでは、スカラベ(注:再生の象徴であるコガネムシを象った古代エジプトのお守り)や玉飾りなどの魔除けや装飾品として好まれ、ツタンカーメン王の眉毛にも使われました。粉末にしたラピスは、クレオパトラのアイシャドーにも使われました。

古代末期、そして中世の時代には、ラピスはサファイアと呼ばれましたが、これは誤解であり、旧約聖書に登場するラピスは当時実在していたと多くの学者たちは推測しています。私たちが今日サファイアと認識しているものは、ローマ帝国以前には知られていなかったのです。よって、古代ギリシャ人がサファイアをして言及したのは、実際にラピスラズリだったのです。

中世の終わりには、粉末状に挽かれたウルトラマリンブルーが製造されました。青い画材の中でもっとも高級で高価な顔料であり、ペルジーノやマサッチオ、ティツィアーノ、フェルメールなど、ルネサンス時代やバロック時代の多くの重要な画家たちによって用いられました。

通常、とりわけ聖母マリアのような画面の中心的な人物の衣服に用いられました。顔料の歴史は、私が制作するのが好きな動画のひとつです。というのは、どの色も興味深い歴史を持っているからです。この動画を楽しみ、また「マミーブラウン」や「マヤブルー」などほかの動画もご覧になったのなら、確実に次の動画も制作しますから、どうかこの先もご登録ください。