南極にある溶岩湖

ハンク・グリーン氏:地球は湖で覆われています。ほとんどが生命に満ちたみずみずしい湖で、休暇でリラックスするには最適です。

ただし、溶岩湖の場合、溶岩がふつふつと沸騰しており、観光としてはあまり適していないですよね。

また、マインクラフトで作った擬似的な溶岩湖を除くと、世界中に数か所しか存在しません。もっとも不思議な溶岩湖のひとつが、南極大陸にあるエレバス山の頂上にあります。

おそらくこの湖のもっとも奇妙な点は、常にガスを放出しており、そのガスの構成物がおよそ10分ごとに変化するということです。エレバスはギリシャの神のことで、カオスの息子であり、氷と火の場所に適していると言われています。

エレバス山はロス島でもっとも高い山で、南極本島近くに位置しており、通常は氷床でつながっています。また、エレバス山は何十年にもわたって活動を続ける活発な火山で、時おり大きな噴火を放ちます。溶岩湖は深さ約20メートルで、エレバス山の主要噴火口の内部にある噴火口の中に位置しています。

また溶岩湖の下には、マグマ溜りにつながるパイプのような火道があり、溶岩湖はパイプの上に座っている底に穴が開いたボウルのようなもので、逆流することはありません。

そして、これらのマグマは摂氏約1,000度ほどの熱を持っています。湖に継続的に暖かいマグマを送り込む対流が常に流れているため、極寒の南極であっても湖の表面は冷めて固まることはありません。

熱いマグマは湖の頂部に到達すると、外側へと流れ、途中で冷却されます。マグマが冷えるにつれて、より高密度になるため、再び地下に沈み、対流のサイクルが続くのです。

溶岩湖は、火口、火道、マグマ溜りのコンボが必要で、多くの火山がそのような構成要素をそろえ持っているわけではありません。そのため、溶けている溶岩湖は非常に珍しく、現在まで活動を続けているものは世界中にわずか5つしかありません。

活発な研究の場に

エレバス山の溶岩湖は珍しい遠隔地ですが、勇敢な科学者たちのおかげで活発な研究の場となっています。科学者たちは凍った斜面や溶岩爆弾に勇敢に立ち向かい、365日24時間無休で湖を監視する遠隔センサーを設置しました。

彼らが研究を進めているひとつが、湖の持続的なガス排出です。長年にわたってエレバスは着実にガスを放出していますが、そこには不思議なサイクルが関わっています。10分ほどのサイクルで、生産されるガスの量と、その構成物の両方に繰り返し変化があらわれます。例えば、二酸化炭素と一酸化炭素との割合が変化し、水蒸気と二酸化硫黄の排出レベルも変化します。

研究者は、なぜこのサイクルが生じるのかを​​把握しようとしており、センサーデータとコンピュータモデリングに基づいて、ガスの2つの主要供給源と関係があると考えています。ひとつは火道から来ており、もうひとつは湖の拡散から来ています。

二酸化炭素が豊富なガスは常に火道から上昇しており、基本的には一定で構成物に変化はありません。しかし、火道は約10分ごとに、マグマ溜りの奥深くから大きなマグマの塊を噴出します。

この塊が湖の表面に近づくと、新鮮なガスが放出され、検出されるガスの総量が増加し、水蒸気と二酸化硫黄が豊富であるために全体の構成物にも変化がみられます。

これらの短いサイクルに加えて、溶岩湖は爆発的なガス抜きを起こします。これは頻繁に起こるものではありませんが、爆発的なガス抜きによって小さな噴火が引き起こされ、溶岩の塊が主要噴火口に放り込まれます。これら2つの現象は独立して発生するようです。

爆発的なガス抜きで生じたガスの構成物は、約10分おきのサイクルから生じるガスとは異なり、火山のマグマ溜りのより深いところから来ているようです。

エレバス山と溶岩湖について、学ぶことはまだまだたくさんあります。例えば、今回ご紹介したガスサイクルとは異なるサイクルでおこるガスサイクルもあります。これらのガス放出活動が全て関連しているのか、またはどのように関連しているのかを研究することは、エレバス山の内部活動のより良いモデル構築に役立つでしょう。

エレバス山には、響岩(フォノライト)と呼ばれる珍しい種類のマグマが含まれています。より一般的な玄武岩よりもはるかに厚く、おそらくマグマ溜りと溶岩湖内部の流体力学に影響しているでしょう。つまり、エレバスに関する最新の研究は、世界中の他の溶岩湖で働く科学者にとっても有益なことでしょう。

これらの湖はまれであるかもしれませんが、世界中のいくつかの例から良いモデルを観測することは、地質学者がそれらの類似点と相違点、およびそれらがどのように機能するかに関する全体的なルールを理解するのに役立っています。