「その瞬間のアクシデント」が高視聴率を叩き出す--秋元康らが紐解く、ヒット番組の共通点

テレビとネット番組のこれから #2/6

IVS 2016 Fall Kyoto
に開催

『8時だョ!全員集合』『ザ・ベストテン』の最高視聴率に見られる共通点とは? 2016年12月6日に開催された「IVS 2016 Fall Kyoto」のなかで、テレビ業界とネット業界を代表する4名によるセッション「テレビとネット番組のこれから」が行われました。本パートでは過去のヒット番組を振り返り、その共通点や「テレビの時代は終わった」と言われ始めたきっかけについて語りました。

きっかけがない限り、テレビは見られない

藤田晋氏(以下、藤田):村本さんがすごくセンスがいいのは、最近、Twitterで上杉隆さんに自分がやっている『The NIGHT』という番組に「出演してくださいよー」と直接話しかけていて。それでちょっと盛り上がったんですよね?

村本大輔氏(以下、村本):そうですそうです。

藤田:そこに絡んできた一般の人にまで「出演してくださいよー」と言っていて。そこでどんどんキャスティングしていくんですよ。それを見ている人たちからすると、「とりあえずその番組は見てみたい」となる。

村本:そうです。その場で創り上げていくんです。AbemaTVの『The NIGHT』に関しては、けっこう好き勝手やらせていただいていて。その中で1回、僕の知り合いでガンの人がいて。もう1人、沢尻エリカさんが出ていた『1リットルの涙』と同じ病気の人がいて、その2人に出演してもらったんですよ。

人間は、いつどうなるかわからないじゃないですか。でも、ずっと夏休みが続く感じで、だらだら生きているわけです。「余命宣告されている人がなにを考えているのかを聞きたい」と思って、2人に番組に出ていただいたんです。

けっこう自由に、やりたい方向に向かってやっていますね。コンプライアンスなども考えずにやらせていただいてます。

藤田:その番組でも、出演したお2人は「死ぬのは怖くないけど家族を残すのが辛い」みたいなことを言っていて。見ていて泣いてしまいました。

村本:あれね、ネットニュースになっていましたね。

大多亮氏(以下、大多):僕、秋元さんに聞きたいんですけど。例えば、今みたいな企画は、テレビでやるのはもしかしたらきついかもしれない。「そういうことをやらないからテレビはつまらないんだよ」という話は、テレビ局の中では常に横溢しているわけです。そこで今、村本さんが話されたことはどう思いますか?

秋元康氏(以下、秋元):まず、テレビがつまらなくなったという人が多いんですけど、これはもう40年前から言われているんですよ。もうずっと「最近テレビがつまらなくなった」と。でも、やはりテレビはおもしろいんです。ちゃんと見てみるとわかる。では、今なにが起きているのかというと、テレビの優先順位が下がっているんですよね。

きっかけがない限り、テレビは見られない。なにかがあったときとは、例えば誰かの謝罪会見や噂話、ニュースなどですね。それを知ったファンが慌ててテレビを見る。

そのきっかけが、今はないだけです。今の村本君の企画はテレビでもできるし、ネットでもできる。一番の問題は、僕らテレビ制作者が「視聴者はこういうものを求めているだろうなぁ」というマーケティングから入っちゃうこと。だから、おもしろくない。

お腹が空いていて「こういうものが食べたいんでしょ」と言われても、だんだんうざくなってくるじゃないですか。テレビは「そろそろみなさんのお腹が空いてきただろう」「この時間帯は軽く冷たいそばがいいだろうから、置いておけば食べるんじゃないか」と計算しちゃう。

でもネットでは、人がどうであれ延々とナシゴレンを作っていて、それを食べたい人だけが集まればいいという世界観です。食べたい数人がそこへ行く、そういう力があるんですよね、ネットって。

見たいものを探すのは疲れる

村本:失礼なことを言い方でしたら申し訳ないのですが、テレビではよく「あのころのテレビを」「あのころのフジテレビを」「あの頃のバラエティを」とか言うじゃないですか。

これを俯瞰してみたとき、テレビはだいぶ年老いたおっちゃんくらいなイメージになっていると思うんですよね。おっちゃんが、若い子たちに気に入られようと茶髪にして一生懸命にモテようとしている感じがある。

でも、おっちゃんはおっちゃんです。この間、ちゃんばらを作っている監督に舞台挨拶へ行ってきたとき、数人ですが「絶対にチャンバラのファン」という少数のファンの人がいました。この人達は「チャンバラを作ってよ」と言うんです。

テレビは、永遠にみんなからモテ続けないといけないんでしょうか。テレビを愛している少数のファンたちをずっと大事にすることのほうが大事じゃないでしょうか。

大多:テレビはずっと多くの方々からモテたいと思ってるんですよ。だからこそ、先ほど藤田さんが言っていた、いわゆるリニアなんですよ。

なぜならば、朝からNetflix開いて『ハウス・オブ・カード』は見ないと思うんです。そこに『めざましテレビ』や『ZIP!』があったりする。それぞれの編成力というもので戦ってきた。

ほとんどの製作費をゴールデンタイムに投入しながら、そこにはドラマ、バラエティで高くスポンサーの方に買っていただくというのがすべてです。編成とビジネスが縦と横で一緒になっていることをずっとやってきています。そこの力で勝負しているんですね。

逆に「オンデマンドでいいじゃん、ネットビジネスは」と僕らが思っていたところに、「マスメディアになりたい」とAbemaTVとともに飛び込んできた藤田さんには驚きました。もちろん、やるなというわけじゃないんです。いいんですよ。ただ、なぜ踏み込んできたのか、なぜマスメディアになりたいと思ったのかがわからない。

藤田:僕は両方必要だと思ったんです。オンデマンドもネットらしいサービスですけど、自分が見たいものを自分で探して見るのは疲れてくるんですよね。そうではなくて、受け身でレコメンドしてもらえる、惰性で見られる、番組を開けるものが必要であると思って、AbemaTVを始めました。

大多:ということはですね、「リーンバック(椅子やソファなどに寄りかかってテレビを見る姿勢)」「リーンフォワード(パソコンなどに向かって作業する前傾姿勢)」というものがあるじゃないですか。今までネットはリーンフォワードなんですよね。自分から取りに行くから。でも、テレビはリーンバックと言われるんです。藤田さんは、ここにおいてはリーンバックを選んだんだと?

藤田:例えば、麻雀中継は生放送であろうがオンデマンドの過去のものであろうが、たまたま流れてたらずーっと見ていられるんです。でも、0秒から再生するのはけっこう面倒なんですよ。

村本:なるほど。家でゴロゴロしながら見るようなものは、この人たちからすると別に他に行ってもいい。

「その瞬間のアクシデント」が高視聴率を叩き出す

大多:先ほど話していたキラーコンテンツは、たぶん、リーンバックで見始めて「おもしろいなー」と思って、最終回でリーンフォワードになればいいと思うんだよね。

『半沢直樹』の40パーセントは、最初からとっていたわけじゃない。なにか、ある種の決勝戦みたいなのが最終回なのかなと、あの熱狂を見ていて思ったんです。僕はいまだに「リーンバックしている人をリーンフォワードにさせたい」と、常に思ってますよ。

秋元:テレビのモニターとかね、そういうものを中心に考えるとそうなんだよ。でも、人間は別にモニターの前にずーっといるわけじゃないし、他にもいろいろあるじゃないですか。

それでいうと、見るということはワンノブゼム(唯一のものではない)になっているんですよ。昔は、家に帰ったらとにかくテレビつけた。あるいは、ごはんのときでもテレビがついていた。それが、まず中心だった。

でも今なにが起きているかというと、テレビをつける、あるいはPC開く、スマホを見る。それが全部一緒くたになってるわけですよね。

昔から40パーセントはなかなか超えないんだけど、例えば『8時だョ!全員集合』という、歴史的なバラエティがの最高視聴率はなんだったか。これは『8時だョ!全員集合』が公開(収録)だったからです。当時、いろんな場所にある公会堂へ行って、客入れで生放送でやっていたんですよ。

あるときに、公開収録をしていた公会堂が停電になっちゃったことがありました。そこで、懐中電灯で放送したんですよ。これが最高視聴率だったんです。つまりなにが言いたいかというと、結局はそのときにしか見られないアクシデントなどが、40パーセントという数字を叩き出すんですよ。

例えば『ザ・ベストテン』。なにが最高視聴率だったかというと、事情があって久米宏さんがしばらくお休みになった。それの復帰第一作が『ザ・ベストテン』上の最高視聴率だったんです。

常にコンテンツのおもしろさはあるんだけど、そうじゃなくて、世の中の人はきっとそのときの話題、「今なにが起きてるかなー」に興味がある。それが『君の名は。』であれば、それは劇場に行くし。それが芸能ニュースであれば、テレビをつけるし、AbemaTVを見るし。そういう行動だと思うんだよね。

「あの頃は良かったな」では当たらない

村本:この前、『THE MANZAI』の収録をさせていただいて。この番組は当時の(島田)紳助・(松本)竜介などが出てたころの『THE MANZAI』を復活させることがコンセプトだったんです。

今回、出していただいて。またオンエアあるんですけど、そこでちょっと過激なネタをバーッとやったんですね。終わった後、プロデューサーの方から「ちょっときついところが何個かあるなー」「だいぶ短くなるわ―」と言われたんですよ。

当時の『THE MANZAI』を見ていたら、過激な時事ネタで笑いをとっていたりしたんですね。それでいうと、以前ラジオでスキャンダルをネタに話したら、番組宛てに200枚くらいのFAXが届いたんです。でも、送ってきていたのはほとんど1人だったんですね。同じ送信元メールアドレスだったんです。

(会場笑)

その話が次にスポンサーへいって、ラジオ番組の放送局へ連絡が入って、僕のところへ降りてきて、むちゃくちゃ怒られて。それからすべて録音で、メモを取らせていただきます、みたいなことを言われたんです。

けっこう「え、それもダメ!?」みたいなものがあって。本当に「うんこって言うな」と言われたんですよ。夜のラジオで「うんこって言うな」と言われて、「なぜうんこって言ったらだめなんですか?」と聞いたら、「スポンサーがチョコレートの会社だから」って言うんですよ。

(会場笑)

いやいや、そんなバカなことを。「どんどんおもしろくなりますよ」「あと1ヶ月だけ我慢してほしい」と言ったんですが「放送局の上の人も聞いているから」と、なしになったんですよ。

秋元さんが言っていた、停電で……というような自由なことを今の時代でもやっていけるんでしょうか。例えば、フジテレビさんやAbemaTVさんで。

大多:「スポンサー関連でNG」「過激すぎるネタだからNG」といった事情は、テレビでもラジオでもたくさんあるんだよね。

テレビでも、昔は『時間ですよ』なんて女性の裸が出てきたりして平気で放送してた。でも、今はあれもダメ、これもダメ。今みたいな言葉もダメ。あれもダメ。でも、「きついよなー。あの頃は良かったなー」とノスタルジックに言う人は、僕は当たんないと思っているんですよね。

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