その言葉に「体温」はありますか?
小泉進次郎氏が大学生たちに語った、最も伝わるメッセージの本質

『ビジョンと言葉』~ビジョンを正確に発信する為に必要な言葉をどう磨くか~ #1/2

G1カレッジ2016
に開催

2016年11月23日、「G1カレッジ2016」の中で行われた第1部全体会のスピーカーとして、衆議院議員の小泉進次郎氏が登壇。「ビジョンを伝える言葉の力」をテーマに、集まった大学生たちに向けて話しました。本パートでは小泉氏が20代の時に選挙演説から学んだ“最も伝わるメッセージ”に必要なもの、そして自分の道を選ぶことの大切さについて語っています。

最も伝わるメッセージには体温と体重がある

小泉進次郎氏(以下、小泉):みなさんおはようございます。今日は勤労感謝の日ということで、みなさん本当に朝からお疲れさまです。

(会場笑)

大学生で休みの日に、これだけ多くみなさん集まっている。今日、間違いなく言えることは、「私よりもみなさんは本当に真面目でよく働いているな」だと思います。

今日、次に出てくるのは、私よりスピーチが上手い細野(豪志)……政治家としての先輩ですけど。

(会場笑)

私からはですね、今日はせっかくですからみなさんに、「言葉とビジョン」ということでお話をしたいと思います。ちなみに、僕になにか質問がある、聞きたいことがあると用意してきたって人います?

(会場挙手)

あ、少しいますね! もし時間があれば、その時間も少し作れればなと思いますが、最初に僕がみなさんに今日1日「どこか気に留めておいて、ビジョンを学んでもらいたいな」と思うことを言葉というものを通じて、お話をしたいと思います。

まず、最近の出来事から言いますと、私自身もすごく関心を持って見ていたのは、アメリカの大統領選挙です。トランプ次期大統領が決まりましたけど……。相手はヒラリーさんでしたね。ものすごく印象的だったのは11月9日、最後の日です。

最後の日の、ヒラリーさんの敗北宣言。そしてトランプさんの勝利宣言。この2つに表れたことが、僕にとってものすごく印象的に感じました。

「人間味をあまり感じない」と言われたヒラリーさんが最も人間味あふれる、感動的なスピーチをされたのが敗北宣言でした。どこかすべてを受け入れたような、やわらかさと深みのある表情をされて。あれだけ厳しい現実を受け止めなければいけない。優しい笑顔を浮かべながら、メッセージを最後に残した、素晴らしいスピーチでした。

一方、大統領らしくない発言をずっと続け、勝利宣言をしたトランプさん。彼が最後にしたのは、大統領らしいスピーチだった。

ここに、政治の難しさがあるなぁと思いました。もしも、ヒラリーさんがあの敗北宣言で見せたような、やわらかな表情と人間味のある、そういったスピーチだったら、大統領選挙の結果はどうだったんだろうかとか。

逆に言えばトランプさんは、最後の勝利宣言のように大統領らしい発言が続いていたら勝てなかったんだろうなとか。言葉ってどういう意見が出るか難しいですねぇ。

そんな中で私は今日はみなさんに……堀(義人)さんが、今日このスピーチを大変ハードルを上げてくれたんですけど。

(会場笑)

「私がどんな思いで自分の言葉にこだわりを持っているか」ということをお話をして、そこからみなさんにもなにか受け取ってもらえたらいいなと思います。

私が常に心がけていることは、自分の話している言葉に、体温と体重をのせることです。実際、言葉に体温と体重はありません。温度を測ることはできないし、体重を量ることもできません。

だけど必ず、言葉には温度・体温、それがのります。そして、受け取る側の感じる重量、それが必ずあると僕は信じています。だからこそ、今日も後ろにはマスコミのみなさんがいますけど、30分話したってそのまま報じてくれるところはありません。

(会場笑)

いかに、切り取られるところが……致命傷は負わない言葉を選びながら、最も伝わるメッセージを選ぶには、そこに体温と体重がなきゃダメなんです。

小泉氏が持つ、誰にも相手にされなかった経験

じゃあなぜ僕がそういう思いを持つに至ったか。それは、人に話を聞いてもらえない体験があるからです。相手にされなかった経験があるからです。いくら思いを伝えようと思っても、思いを伝えることができない体験があったからです。

みなさんは今、たぶん…20歳前後? ですよね。覚えているかわかりませんが、私が初当選したのは、28歳のときでした。今35歳なんですけど。今から7年前に民主党が、細野先生が与党になったときです。

今日は言葉がテーマなのに、言葉では言い表せないくらい(笑)。本当に厳しい選挙で、とにかく雰囲気は、今のこの自民党に対する政治状況が当たり前だと思っているみなさんからすれば、まったく想像できないかもしれませんが。とにかく自民党は嫌い、という空気。

なぜ自民党が嫌いなのか。それは、ずっと歴代総理を見ると、世襲の国会議員が総理大臣になって、毎年変わって、それが今の日本の政治を生んでいるんだという思いがやはり強かったんですね。

そして、「もうこれは我慢できない」ということで、民主党政権が生まれたのが2009年。私はそのときに初めての選挙で自民党から出てますから、とにかく「自民党の候補は嫌だ」と言う空気に加えて、さらに「世襲の小泉純一郎の息子だ」「2世3世なんてけしからん」という思いがそこに乗っかってくる。

ちなみに私は2世3世ではなくて、4世です。

(会場笑)

もっと大変だった! そういった中で選挙をやっていると、街中で名刺を渡そうとしても、受け取ってもらえない。目の前で破られる。握手もしてもらえない。そして目の前には大きな空間があるのにも関わらず、街頭演説をしているとわざわざ近寄って来て足を踏んでから行く人。

(会場笑)

そして住宅街で街頭演説をしているときに、一軒家の2階の窓がガーっと開いて、「あ、中で聞いていてくれてたんだ!」「頑張って、とか手を振ってくれるかな」と思ったら、なんと、太鼓を取り出してガンガン鳴らされて妨害されたこと。今でも忘れません、あの光景は。あの家の人は今でも太鼓を持っているんだろうかと思いながら……。

(会場笑)

世襲反対と言われてね、ペットボトルを投げつけられたこともあります。今でもコンビニ・スーパー行くと銘柄は忘れません、恨みはないけど買いません。

(会場笑)

そして選挙の演説カーの助手席に乗って、街中に「小泉進次郎です」と手を振って、歩いている人が近寄って来てくれて「ありがとうございます」って握手してくれるかなと思ったらツバを吐かれたあの時。

そういったことが、自分の中で全部残ってる。しかもそれが初めての選挙だから、これはおそらく一生忘れない。あれが自分の原点です。

そのとき、本当に話を聞いてもらえなかったんです。演説会をやっても人来てくれない。今私は農林部会長ですけど、当時は横須賀富浦の畑のまわりでも演説をしていて、本当にキャベツと大根ほど静かに聞いてくれた人はいなかった!

(会場笑)

本当にそれくらいの環境で、そしてマスコミも、もう空気は自民党大敗、民主党政権誕生! 本格的な二大政党制へ政権交代が当たり前の時代へ、という空気だから。その作られた空気の中で生きていくためには、そして自分の思いを正確に伝えるためにはどうすればいいのかを徹底的に考えざるを得なかった!

これだけ言葉にこだわるのは、趣味じゃないんです。生き抜くために必要だったんです。自分が言いたいことを伝えるためには。だから、海外の留学で英語を学ぶとか、外国語に対する学習とかも私は同じだと思いますけども。一番身に付くのは、話さなければ生きられないという環境に身を置くことだと思います。

逆に言えば、「あまり話せない」って言っているということは、あまり話せなくても生きていけるんだと思います。

最高の教材は自分を振り返ること

私は初めての選挙で、なにを言っても結局最後は「作られたシナリオの方に報じられてしまうんだな」「この空気の中で、自分の思いを伝えるのがいかに大変か」と思ったときに、どうやって短い間に的確に言葉を伝えなきゃいけないかを真に考えた。

だけど、なんでこれだけ話を聞いてもらえないんだろうか。「世襲だと、厳しく言われる自分って、本当に政治の世界を目指して良かったんだろうか」と思うほど悩みましたよ。苦しかった。街中に出るのが、本当に怖かった。

そのときに僕がやったのは、自分の演説を自分で聞いてみたんです。「どうしてこんなに人は止まってくれないんだろう」と思って。演説をする時はICレコーダーをポケットに入れて、自分の話を録ってました。選挙中、夜、電気消してベッドに入り、イヤホンで自分の演説を聞いてみたんです。

そうしたらですね、驚くほどよく眠れるんです。

(会場笑)

つまらないから! 自分で自分の話を聞いてみると、話し方が思っている以上に早口で、1文が長くて、言葉に抑揚がないということがわかるんです。それは僕の例としてだけどね。

みなさんも、もしかしたらこれからの時代は、僕らの時代以上に、人前で自分の思いを発表しなければいけないケースっていっぱいあると思います。これは大学の授業のプレゼンもそうかもしれない。そして、研究発表とかもそうかもしれない。

また、団体や会社をやっているみなさんは、社員の前や投資家のみなさんの前、世の中の人たちに自分の思いを訴えるような時は、私たちの世代よりも多いと思うんです。

世の中には、「スピーチをうまくするにはこういったテクニックがある」といった、いろんな本が並んでいます。スティーヴ・ジョブスのプレゼンだとか、いろんなのがありますよね。

最も自分が危機感を持って本当に変わらなきゃいけないと思うきっかけになるのは、本じゃありません。自分のことを直視することです。

だからぜひ、言葉や自分の思いをどうやって周りに伝えるのかで悩んだり、どうすればより良くなるのかと思っている人がいたら、自分の話を録ってみる。そして自分が話している姿を映像でも撮ってみる。そういったことから自分を振り返ることは、僕にとってはものすごく、最高の教訓・教材でありました。

そんな体験があるからこそ、今があるんですね。そして、世の中は変わるということもわかるんですね。7年前、「世襲が今の政治を劣化させた」「世の中を悪くした」と言われました。しかし数年後、ある雑誌が……まあ某『AERA』という雑誌ですね。

(会場笑)

特集テーマをやりましたね。その雑誌のタイトルを見たときに私は目を疑いましたね。「世襲こそが確信を生む」……おいおいちょっと待てよと(笑)。

(会場笑)

そして中を開くと、経済界、政治、いろんな分野の世襲の人たちが取り上げられているんです。こういうもんです。だから大事なのは、自分が自分としてなにをやりたいのか。それが結果的に今日みなさんが一番のテーマとして掲げている、「自分はどう生きたいのか、そして人生の中でなにをしたいのか」。

これはどんな職業に就きたいのかではなくて、どう生きたいのかを選択することに繋がって、そこに答えが見つかれば、周りの声に惑わされず自分を貫くことがきっとできると思っています。

今の話をまとめますとね、私は言葉に体温と体重をのせたいと思っている。そしてそれだけ思うきっかけになったのは、体験なんです。それは言葉は体験から生まれるということです。骨が記憶をしているくらいの体験をしてください。

自分の骨がそれを覚えているぐらいの体験をすれば、決して忘れることのない言葉が生まれるはずです。

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1 その言葉に「体温」はありますか? 小泉進次郎氏が大学生たちに語った、最も伝わるメッセージの本質
2 小泉進次郎氏「人はビジョンとともに足あとを見ている」言葉の貯金を増やす、体験の重要性とは?

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