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C Channel代表 森川氏が語る「組織拡大に伴う光と影」(全3記事)

創業メンバーは役員に不向き? C Channel森川氏が組織拡大とともに変化する役割を語る

急成長企業の経営者が組織を強くする秘訣を語るトークイベント「CEO MEETS UP〜急成長企業の経営者が語る、組織を強くする秘訣〜」が行われました。主催はトークノート。基調講演「組織拡大に伴う光と影」では、C Channelの森川氏が登壇しました。日本テレビやソニー、そしてLINE社長を経て現在に至る森川氏が語る、組織拡大における経営とはなにか。本パートでは、拡大とともに変わる役員の立ち位置や役割について語られています。

赤字状態のハンゲームに入社し、1年で売上を10倍に

小池温男氏(以下、小池):こんにちは。トークノート代表の小池です。本日はお時間長くなりますが、いい会にできればなと思っておりますので、よろしくお願いします。

それでは今から、森川さんの組織に関するお話について、僕から森川さんにご質問をしていく形式で進めていきますので、みなさま楽しみにしていてください。

また、最後に質問を受ける時間を設けますので、メモをとりつつ聞いていただきたいなと思います。もし質問がなかった場合は僕から指名させていただきますのでよろしくお願いします。それでは、始めます。

改めまして、まずは僕から森川さんのご紹介をいたします。

みなさまご存じの方も多いのではないかと思いますが、森川さんは2003年にハンゲームジャパン株式会社に入社しました。当時のハンゲームジャパン株式会社は、年商2億円で社員数が30人、赤字の状態でした。

そんな中、入社後すぐにハンゲーム事業部事業部長に抜擢され、1年で売り上げを10倍にされたという実績をお持ちです。また、その後3年で、売り上げを80億にまで持っていかれています。その実績を買われて2007年にハンゲーム株式会社の代表取締役社長に就任し、2011年の6月にLINEをリリースされています。

ちなみにTalknoteもまったく同じ2011年の6月にリリースしており、LINEと同じ年生まれです。それから2年後の2013年1月にLINEが1億ユーザーを突破、同じ年の7月に2億ユーザーを突破、さらに11月に3億ユーザーを突破し、2016年に日米同時上場されて時価総額1兆円となられました。

その後、森川さんは、2015年の4月にC Channel株式会社を設立されました。現在、C CHANNELの動画再生数は月間6億回まで伸び続け、社員数も共に90人と急成長されています。

そんな森川さんには一昨年、2015年の4月からトークノートの社外取締役に入っていただき、ご協力いただいてます。改めましてよろしくお願いいたします。

C Channelはアジア版Buzzfeed

森川亮氏(以下、森川):よろしくお願いします。

(会場拍手)

今日は『AERA』の取材も来ていますので。

小池:そうなんですね、『AERA』さん。

森川:ありがとうございます。

小池:よろしくお願いします。森川さんの直近の事業について、まだご存じない方もいらっしゃるかと思いますので、森川さんからご説明していただいてもよろしいでしょうか

森川:そうですね。2015年から女性のための動画のアプリとサービスを立ち上げまして。今は分散型メディアとして自社のメディア以外にLINEとFacebook、Instagram、Twitter、YouTubeの展開をしていて、かつ日本以外で韓国、中国、タイ、台湾、インドネシア、フィリピン、ベトナム、マレーシア、シンガポールで事業をしています。

今、ユーザーの7割くらいが海外ですね。とくに去年から中国が急激に伸びているというところです。

小池:ありがとうございます。

森川:アジア(版)のBuzzfeedみたいな感じですね。

小池:そういうことですね。ありがとうございます。森川さんにはこれまで個人的にいろいろなお話を聞いてきました。本日は、組織についてのお話をみなさまに共有できればなと思い、いくつか質問をご用意いたしました。

今日は、「光と影」という内容でご案内いたしましたが、みなさまが聞きたいお話は影の部分ではないかなと僕は思っています。ということで、勝手にテーマを「組織改革の影」に変更し、影にフォーカスしたお話を森川さんにご質問していきたいなと思います。

役員は嫌われる?

まず1つ目。以前、森川さんに「役員は嫌われる?」というタイトルでおうかがいした際、「役員というのは嫌われる」と聞いたことがあるのです。実際いかがでしょうか? よろしくお願いします。

森川:そうですね。役員といってもいろんな役員がいるので、全員が嫌われるわけじゃないと思うんですけど。一般的に役員の方というのは、会社のためよりは、自分のために働く人がけっこう多いのかなという印象なんですよね。

それは、なにか悪いことがあると役員を外れなきゃいけない。だから、なるべく外れないようにがんばるというのが、一般的な役員の姿かなと。そうすると、どうしても役員は社長にいいところは見せるけど、悪いところはなくす。時には悪いところは部下に押し付けるみたいな(笑)。そうなりがちだったりとか。

あと、役員同士で競争が激しくなったりして、本当はもっとこのサービスはこうあるべきとか、この事業はこうあるべきというのがありながら、この役員が先に出世すると自分はもしかしたらどうなるかわからないから、その役員に負けないように無理しちゃったりとかする場合があります。それを社員の人は冷静に見て、不満に思う場合が比較的多い気がしますね。

小池:役員は好かれていなくてもいいのですか?

森川:好かれるか・好かれないかは、あまり関係ないと思いますね。一番大事なことは、仕事ができる人なのか・できない人なのかだと思います。中途半端に好かれて仕事ができない役員がいると、むしろ会社として成長は止まっちゃうかなと思いますね。

小池:ちなみに、森川さんはLINEで好かれていましたか?

森川:僕はいつもけっこう嫌われてましたね(笑)。360度評価とかやって、僕も評価されてたんですけど、けっこう悪口ばっかり書かれてました(笑)。

(会場笑)

小池:そうなんですね(笑)。

当時のLINEの役員の方はいかがでしたか?

森川:もちろん、さまざまなんですけどね。ただ好かれることを目的にしてしまうと、どうしても組合みたいになっちゃったりするんですよね。社員がこうだからとか。

例えば、古いメンバーを守っちゃったりすると……。「古いメンバーがこうだから」となると、本当は「もっとこうしたほうが業績伸びる」「もっとこうしたほうがお客さんは満足する」というものがあるのに、どちらかというと古参社員の気持ちをとり入れるがゆえに成長が止まったりとか。いいプロダクトを出せないみたいなことは多々あるのかなと思いますね。

組織拡大において、創業メンバーの役員が不向きな理由

小池:では、続きですが、LINE時代に役員の方が何度も変わられて、試行錯誤してきてようやく、今の有名な役員陣に落ち着いたということをどこかでお聞きしたのですが。実際、森川さんがハンゲームジャパン株式会社の社長になられてから、役員体制は何回くらい、また、どうやって変わっていかれたのですか?

森川:同時に変えるわけじゃないんですけど、4回転くらいはしたんじゃないですかね。だいたい最初に役員になる人というのは、創業メンバーの中である程度の実績を出された方、もしくは創業時に役員になった人がなると思うんですけど。そういう方は現場にくわしくて、現場との信頼関係があるのが非常にいいところではあります。

しかし、そういう人は得てして世界を知らないとか、大きな組織を知らない人が多いので、社員が増えた時にどうしたらいいかわからない方が多いんですよね。とくに階層が増えてくると、単純に部下を育てるというよりはマネージャーを育てなきゃいけない。マネージャーと自分との階層がある時に、どうやってマネージしなきゃいけないとか、コミュニケーションをとらなきゃいけないかみたいなことがわからなかったりするんですよね。

そうすると、単純に組織が大きくなるとその人は……。1人の働く人としてはいいんですけど、組織の長としては足りなくなりますよね。細かいこというと、戦略が立てられない人。

例えば、このビジネスモデルに変わった時に「じゃあ、5年後どうするんですか?」とか。市場がマチュア(注:mature=成熟した状態)になった時に「じゃあ、新しい事業立ち上げるんですか?」とか。

そこまでいける人は、初期の役員では少ない気がしますね。どちらかというと今までのものをコスト下げるとか、スピードを速くするとか。そのくらいで一段止まっちゃうような気がします。

もっと細かい話をすると、管理部門と営業部門と技術部門でまたちょっと違うかなと思うんですよね。実は、一番ついていけなくなるのが管理部門ですね。

だいたい起業した時の管理部門は、その人はたぶん会計もやるし、人事もやるし、総務も全般やるじゃないですか。そうするとやっぱり、専門性がなくなっちゃうんですよね。

法律問題に対応しなきゃいけないとか、IPOに向けて監査法人とやりとりしなきゃいけないとか、いろんなところやりますよね。そうすると対応できないというか。たぶん管理部門は最初に変えなきゃいけなくなってきますね。

その次はだいたい技術ですね。技術の場合も新しい技術を取り入れるとか、多くのエンジニアをマネージするということになると、単純に今まで自分が持っていた技術だけでは絶対に足りなくなるんですよね。

その時にエンジニアの人ほど新しいエンジニアを潰してしまったりとか、自分の得意な技術で勝負しようとしたりするので、それを守ってると次のステージにいかなくなる場合が多いですね。

古い人を大事にしすぎると、なにも改善できない

小池:そうしますと、森川さんの入社時の役員の方は、どのくらいのタイミングで変わられましたか?

森川:まず私が途中から入ってきましたから。私がナンバー2になったところでそれに反発する方は辞めたりもしますし。単純に古い人を大事にする気持ちはあるんですけど、そのことによっていろんな問題がそのまんまで、改善されなくなっちゃうんですよね。

なので、そのタイミングでいろんなことを変えようとすると、反発してくる人もいるじゃないですか。そうなった時に変えざるを得ないという状況には陥りましたね。

小池:では、入社時の役員の方はもう、みなさまいらっしゃらないのですね。

森川:そうですね。私は創業して3年目くらいに入ったんですけど、その時に事業責任者になって、社長になったのはその3年後ですけど、その間にだいたい1回、一通り変わりましたね。

小池:社長になるまでにでしょうか?

森川:はい。

小池:そうなんですね。社長になられてからはいかがですか?

森川:社長になってからは4回転くらいありましたね。

小池:では、今の有名なLINE経営陣になられたのは、ずっと同じような方がいらっしゃるように見えていましたが、そこに至るまではけっこう人が変わられたのですね?

森川:そうですね。とくに管理部門が大きく変わるんじゃないですかね。LINEみたいなグローバル企業になると、法律に関しても日本の法律だけじゃ足りなくて、各国の法律を理解しなきゃいけないし。それも日本語じゃなくて英語を使って弁護士とやりとりしなきゃいけないから、だいたい弁護士資格持ってる人になってもらったりとか。

財務だと会計の知識ある人がやって、かつファイナンスの知識がある投資銀行出身の人がやるとか、そういう感じにだんだんなってきますよね。もちろん採用は難しいんですけどね。でも、そういう人じゃないと世界で戦えなくなってくるので、そう必然的になっていきましたね。

小池:ちなみに入社時は30人で、辞められた時は1,000人くらいでしょうか?

森川:3,000人くらいですね。

役員自身が今後成長する・しないの見極めが大事

小池:30人から3,000人というのを2003年から十数年で経験されて、何百人何千人というのは森川さんにとって未知の領域だったと思うのですが、どのように勉強されたり、大勢の人をまとめてこられたのですか?

森川:僕の場合、特殊なのがもともと日本テレビ(放送網)にいて、ソニーにいて、前職で今があって、一通り経験してるんですよね。大企業の社員、そして課長、そしてベンチャーへ行って部長をやって、役員やって。起業もしたし、外資系にも行ってたんですけど。一通りの経験をしたので(笑)。

やっぱり成長するうえでイメージしたのは、もともとソニーとか日本テレビの時にどういうやり方があって、それぞれどういう問題があったのかということが頭にあったので、ある程度は成長する組織における課題とかやり方がもともと見えてたというのは大きいかもしれないですね。

あとは、当時NAVERという韓国(企業)から資本を受けて、そこの成長が僕たちよりも速かったので、そこのやり方もベンチマークにはなりましたね。

小池:そうなんですね。ちなみに、なにか組織系のよかった本とかありますか?

森川:そうですね……。でも、本に書いてないことのほうが多いですね、やっぱりやってみないと。とくに、本はあまり悪いことを書いてないじゃないですか。悪いことは人にも言えないですよね。

一緒にやってる役員で「こいつ裏切りそうだ」「もう限界だな」とか。そういう時に相談しちゃったりすると、絶対に話が漏れるじゃないですか。なので、1人で決めなきゃいけない時がどうしても多くなりますよね。

もちろん、このなかには秘密を守るメンターがいる方もいらっしゃると思うんですけどね。やっぱり最後は自分で決めなきゃいけない場面はありますよね。

小池:では、とくに教科書的な本を参考にしたとかではなくて、その都度で決められていたのですか?

森川:そうですね。結局、役員の話でいうと、その人自身が今後とも成長するのか・成長しないのかという見極めが大事ですよね。成長するのであれば、たぶんその成長を後押しすることで一緒に会社を伸ばせます。でも、どうしても役員になって満足しちゃう人はいるんですよね。

もしくは、そのポジションを守ろうとしちゃう人がいると、むしろ下が育たなくなっちゃうんで。そうなった時にいつその人を変えるかみたいなところというのは、やり方含め非常に重要ですよね。

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