火山灰がお金になる?
"素材と会話できる建築家"山下保博が語る、エコの最前線

素材の声を聴く #1/2

環境問題が叫ばれる昨今、従来は使われてこなかった自然の素材を代替物として利用したり、あらゆるものをリサイクルしたりする動きが盛んになってきています。LEAF Awards(イギリス)にて3部門の最優秀賞を受賞した建築家・山下保博氏が、エコな環境を作るための自然の使い途について語りました。(TEDxSakurajima 2013より)

素材たちの声が分かる建築家

この男の子はなぜ靴を履いてないんだろう? この男の子の後ろの塀は何でできてるんだろう? この写真はいつの時代のものだろう? この河童頭は誰がカットしたんだろう? (会場笑)

そして、この男の子は何を感じ、何を思っているのだろう? 私の生まれは奄美大島です。私の祖先も奄美です。奄美はみなさんが知ってるように、自然に囲まれています。すごく豊かな自然です。

さんさんと降り注ぐ太陽、透き通るような海、そして色とりどりの樹木、鳥たち。私は20年前、建築家と呼ばれるようになりました。さまざまな建築を作ってきました。その中で、感じたことがあります。他の建築家とは違うんだなあと。

それは何かというと、素材の声を聴くことができるようになったんです。素材に手を当てます。素材の気持ちになります。そうすると素材たちが小さな声で語ってくれます。私はゴミになんかなりたくない。私をもっとこう使って欲しい。こんな汚い使い方なんか嫌だ。私をもっと美しくして。私をもっと変身させて欲しい。そういうふうに素材たちが語ってくれます。今日はそういう素材たちの声をみなさんにお見せしたいと思います。

「私を燃やして欲しくない」木々が語りかけてくる、その想い

今日のメインテーマは、ここは鹿児島です。鹿児島の特徴的な素材もみなさんにお伝えできればと思います。まずは、これはエチオピアの日本文化会館という建物です。エチオピアは貧しい国で、お金がないのでただの石をそこから拾い集め、積み上げます。そして屋根をかけますが、窓がないので真っ暗です。

私はその石たちを集めてきます。屋根の部分に2段、日本から持ち込んだガラスブロックを積みました。そうするとどうでしょう。室内が、石が、天井が光り輝きました。そうすることで彼らはここにまた集まるようになりました。

これが日本文化会館です。2番目は木です。これは韓国の釜山で海のそばに立つ自然博物館です。ここでは条件が2つありました。自然博物館ですから、環境に優しい素材を使って欲しい。

もう一つは長持ちするものであって欲しい。この2つをどうクリアするか。私は韓国の国産材を選びました。そこに加えたのが日本の瀬戸内海地方で使われている木の表面を焼くという手法です。そうすることでこの木の外壁が長持ちするんです。

そして去年、沖縄の伊平屋島という小さな行政に呼ばれました。なぜかというと、伊平屋島の道の駅を作って欲しいという要望があったので行きました。そこで私が見たものは、台風による防風林、防風林わかりますか? 奄美とか沖縄ではモクマオウという防風林が数多くあります。それが半分以上倒れており、行政はすごく困っていました。

そこで、木に手を当てている瞬間、たまたまスタッフが撮ってくれました。木の声を聴く、そうするとやはり「捨てられて欲しくない」、「私を燃やして欲しくない」と木が語ります。そこでモクマオウを製材して外壁に使う。多分これは世界で初めてのことだと思います。

東日本大震災から復興するために

3番目は土です。世界中どこでも土はあります。私の場合は塩水から酸化マグネシウムを取り出し、水と化学反応を起こします。そうすることで土が固まるんです。これは私しか持っていないノウハウ、工法で、それを3年も4年もかけて開発しました。そしてこの硬い、火を使っていない日干しレンガの建築ができたのです。みなさん覚えてますか? 2011年3月11日、大きな震災が起きました。

その数カ月後、私に依頼が来ました。東北の南三陸町。私はずっと東北のサポートをし続けていますが、南三陸町から依頼が来ました。なぜかというと、今回の地震で大きな津波が来て、その津波によって土が塩水をかぶりました。

その塩水をかぶった土を私・山下が使える、と人から聞いたんですけども、どうにかできませんかと言われました。私の酸化マグネシウムは塩水から取り出すので大丈夫なんです。その酸化マグネシウムを使ったブロックをボランティアの人、地元の人、みんなで積み上げて、できたのがこれです。備蓄倉庫です。

2000年もの間、建物を支え続けた素材とは

さて、本題に入りましょう。ここは鹿児島。丸に十の字の薩摩です。じゃあ鹿児島の素材、鹿児島の特徴的な素材は何だろう。その時に私の意識は遠くに飛びました。

これはどこだと思いますか? イタリアのローマです。ローマにパンテオンという有名な建築があり、2,000年前に建てられた建築です。みなさん見てもらうと、このギザギザの天井が何かわかりますか? つやつやキラキラしています。2,000年前というと石しかないでしょう。普通はそう思います。

しかし、これはコンクリートでできているんです。なぜこんなコンクリートが2,000年も前に作られて、なぜ2,000年間も保っているんだろう。その回答とは、みなさんに馴染みの深い火山灰・シラスが入ってるからなんです。これはすごいことです。

日本でも、ここ鹿児島大学土木学科の武若先生が7年も前からこのシラスを使ったコンクリートをずっと研究開発されていました。今回、昨年から武若先生の研究を中心に、私、東京大学の野口先生、佐藤先生、4人でチームを作り、新しいコンクリートの開発をしています。

なぜかというと、土木では使われているのですが、建築ではまだ使えないんです。ルールや法律が違うので。そのことをみんなの手で、建築で使えるようにしよう、そして武若先生の研究をベースにしたものを、より環境型のものとして発展させていこうっていうことが始まりました。

世界を変える? 新型コンクリート

その環境型コンクリートの特性、3つあります。一つはすごーく長持ちする、耐久性の向上。もしかしたらパンテオンのように2,000年保つかもしれない。もう一つ、コンクリートの素材でセメントがあります。セメントは結構な火力を使ってセメントにします。私たちの開発するコンクリートは、セメントの量が半分ですので二酸化炭素も半分になっています。

もう一つ、シラスも当然、捨てられているものを拾って使いますが、他にも石や砂もリサイクルしたものを使います。このコンクリートは砕くとそのままセメントとして使える。大きな循環をできるようなコンクリートとして開発をしています。

(2つのコンクリートを比べて)これ、みなさんわかりますか? 僕でさえ(どっちがどっちか)わからない。どうだろう? でも掴むとわかる。これが普通のコンクリートです。これがシラスのコンクリートです。絶対に(見た目では)わからない。でも目をつぶってでもわかる。

なぜでしょう。先ほど言ったように、シラスを入れるとすごく密度が細かくなり、赤ちゃんのようにつるつるスベスベになります。触ってみましょうか。(お客さんに触らせて)どれがシラスですか? 触ってみましょう。わかりますか? すごくわかりやすい。それぐらい、見た目には一緒だけれども、中身はすごく違う。

新しい環境型のコンクリートがもうすぐできます。もうほとんど開発は終わりました。ですがこれからこれを建築で使えるように認定を取らなければいけない。約1年近くかかりますかね。今年には目処が立つと思います。来年の春から鹿児島を中心にして新しいコンクリート、環境型コンクリートが使えるかもしれない。

火山灰がお金になる

例えば、これは鹿児島の空の玄関、鹿児島空港ですね。それをこういう(丸みを帯びた)ボールト(屋根)で覆います。これは今回のために作りました。鹿児島空港がこう変わるといいな……空港関係者の方がいれば怒らないでくださいね。この内部はこういう形です。

この建物、安藤忠雄の建物でこれも作るのがすごく大変なんです。この環境型コンクリートは他にもいくつかの特性を持ってます。その大きな特性の中で、コンクリートは型枠と呼ばれるものに流します。流すんですが、自らで流れやすい、すごく高い流動性を持つっていうわけなんです。

そうすると、こういう(アーチ状の)屋根にずーっとコンクリートが回っていきます。だから作りやすくなる。それと、先ほど持っていただいたように、すごく緻密で強度が高いんです。そしてもう一つ、シラスは呼吸をするっていうこともあります。

もしかしたら鹿児島の人がこの空港に立った瞬間「あー、鹿児島はいいねぇ」、すごく空気が綺麗だから。「なんか湿度が感じなくて気持ちいいねえ」っていう空港ができるかもしれません。

もう一つ、みなさんご存知の、これは天文館です。桜島は噴火します。大きく噴火するとしょうがないので傘をさすんですよね。それが、コンクリートの中にシラスを入れるということはシラスがお金になる。要は火山灰がお金になるんです。わかりますか? 来年から鹿児島の傘はこういう下向きの傘ではなく、(両手を上げて)こんな傘になってみんなで「あーシラス」って集めだすかもしれない。まさにそれは天の恵みです。

私たちが迷惑だなあと思っていたもの。それは視点を変えるとすごくありがたいものになるかもしれません。そういう自然の恵みを与えてくれている、桜島に私たちは感謝をしなければいけないかもしれません。桜島よありがとう。

そして私たちは身の回りにある小さな声、それが素材の声であったり人の声であったり、それを聞き逃しているかもしれません。みなさん、きちんとした気持ちで素直に手を当てて聞いてみましょう。何か違う声がするかもしれません。私たちはそうした気持ちを持ちつつ、私たちを培ってきた自然、そしてふるさとに感謝をしなくてはならないかもしれません。奄美よありがとう。

<続きは近日公開>

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