コミュ力だけだと採用しにくい

ナレーター:この番組は、就職活動を控えた学生たちが、本番を前に面接シュミレーションを行う。言わば、就活“虎の穴”。そして今回この男が新たに参戦!

株式会社先駆舎 代表取締役社長 眞邊明人。吉本興業出身のプロデューサーで、ドラマ演出のほか多くの企業で新人研修を行う。その鋭い観察眼で学生の問題点を丸裸にする!

水谷健彦 氏(以下、水谷):今日『就活ファール!』に挑むのは、こちらの学生です。

玉井くん(以下、玉井):明治大学3年法学部法律学科の玉井です。よろしくお願いします。2012年の1年間、大学2年次を終えた後……。

ナレーター:大学を1年休学し、海外留学。その経験から商社を目指しているという学生。さわやかでイケメン、ハキハキとした話し方。最初の自己紹介で面接のプロたちを唸らす。まず最初の質問を並木が切り出す。

並木裕太 氏(以下、並木):玉井さんを雇うと、どんな得することありますか?

玉井:自分を雇うと得することですね……。人当たりは良いと自負しています。何事も人とコミュニケーションを取り、対人というのが社会の基本といいますか、対会社もありますけど、対人っていうのが。自分は海外ですごい思ったのが、英語力がすべてを成功に導くかというとそうではないということに気づいた……。

ナレーター:コミュニケーション能力の高さを海外留学の経験を通して熱く語る学生。

並木:なんか、帰国子女の学生も受けに来てるし、向こうの大学を出た学生もいるし、英語力で言うとむこうのほうが良いだろうし。「対人的に優れています」と言われるだけだと、たぶん採用しづらいと思うんですけど。どこなんですかね? 売りのポイントは。

玉井:売りのポイント……。

並木:会社ってボランティアしているわけじゃないから、人を1人採用して一生雇用するとなると何億もかかるんですけど。その投資をしてでも採りたくなるような人を探さなきゃいけないんですよね。

だからそれに値するような「自分を雇ったらこれが他と違う。あなたの会社はこんなに良くなる」みたいなのがあると良いんですけど。例えば商社だったらでいいけど、なんかそういう自分の売りみたいなのはどこにあるんでしょうか?

玉井:自分はとにかく何事にもモチベーションは高いというのが自分の売りで。バイトを実質3年間同じ新宿にあるGAP、アパレルショップなんですけど。GAPで3年間生産管理と物流のほうに…。

伊藤忠にいそうな人

ナレーター:並木の質問にモチベーションの高さをアピールする学生。アルバイトをしているアパレルでの仕事ぶりを語り出す。ここで、眞邊が質問を始める。

眞邊明人氏(以下、眞邊):玉井くん、ずっと話聞いてて。たぶんね、すごく優秀だと思うし、僕は伊藤忠っていう会社の新入社員研修をやっているんだけど、いそうな人です。

玉井:ありがとうございます。

眞邊:向いてるよなぁと思うし。ただ聞いていて……、今の並木さんの質問もそうなんだけど、本当にしたいことがわからないんだよね。最初言ってたと思うんだけど。君の中で例えばよ、就職っていうことが本当に必要か?

玉井:……必要です。

眞邊:必要か、なんで必要? 例えばな、起業ってのもあるわけ。独立心ありそうだし、人の下で働くよりは自分がトップでやりたいっていうモチベーションもありそうだし。例えば、就職外、起業してやるんだとか、そういうものある?

玉井:……今の現状ですと、就職活動をせずに独立を最初から考えるという思考には至っていません。

眞邊:今はないってことね。じゃあその中で商社であるっていう。だから今、何が得しますかって言う質問って、君のやりたいことがいまいち見えないんだよね。バックパック行った海外行った、うんわかる。話も上手、熱意もある。立て板に水のようにはしゃべっていないから、一つひとつ多少気持ちもちゃんと伝わる。でも、やりたいことがわかんないっていうふうにこっちもなるわけですよ。

玉井:そうです、はい。

眞邊:だから君、しゃべりが上手い分だけそこを突かれる可能性はある。

ナレーター:「本当にやりたいことがわからない」。眞邊は学生の優秀さの裏側にある危うさを口にした。

眞邊:何にも考えてないわけじゃないから、入ってから主張されると面倒くさい。

玉井:うん……はい。

眞邊:「こうじゃねえ」とか「ああじゃねえ」とか、って言う気がするのね。だからたぶん自分もそこが欠点っていうか、そこなんだと思う。そこがこっちにも見えないから。欠点以前の話で、何したいんだろうな?