『えんとつ町のプペル』無料公開について改めて

のぶみ氏(以下、のぶみ):ありがとうございます。

西野亮廣氏(以下、西野):もう大炎上中でですね。

のぶみ:なにが大炎上なんですか?

西野:今、声優とバチっているんですけど、『えんとつ町のプペル』を無料公開したのが、すっごい燃えてますね。

のぶみ:あれ、いろんな人がブログに書いているのを見ましたけど、「買った人に失礼じゃないのか」とか、まあまあいろいろ……。

西野:(コメントにて)「明坂さんいじめないで」っていう、まあこの声優さん、明坂(聡美)さん。

のぶみ:明坂さんね、明坂さんは『らきすた』とか出てるんだよね。だから……いじめ、どうするんですか?

西野:いや、いじめてるわけじゃない。決していじめるわけじゃないんですよ。僕そんなこと絶対しないので。批判してこられたので、「ごめんだけど反論だけはさせていただくよ」っていうことです。それはやっぱり、向こうもプロだしこっちもプロなので、一応、剣先向けたらそりゃ1回スパッとはいかせていただきますよっていうことです。それだけです、はい。

のぶみ:まあ、お互い、口を商売にしてる人たちだから2人共。

西野:先に経緯を言わなきゃいけないですよね。『えんとつ町のプペル』をWeb上で無料公開したんですよ。これはたぶん、前にここでも話させていただいたんですけど。今なお絵本は2,000円で売っているんですけど、Web上では無料公開したんです。

のぶみ:あれは、結局ニュースのところで一緒にやったんですか?

西野:Spotlight(スポットライト)っていう。

のぶみ:Spotlightですよね。

西野:Spotlightっていうニュースサイトでも、『えんとつ町のプペル』を完全に無料公開して、全ページ無料公開。のぶみさんもその経緯はご存知だとは思いますが。

のぶみ:すごいですよね。

西野:全ページ完全無料公開しちゃって、さてどうなるかっていうことをやってみたら、まぁすごかったですよ。批判だとか、賛否両論です。これぞ賛否両論です。

のぶみ:だってそんなに怒られるようなことでもなくない?

西野:これ、結論わかったんですよ。仕事の話をすると、こういうビジネスモデルっていうのは、別に新しいことじゃないですよね。古くはなんだろうな……『ブラックジャックによろしく』だって無料公開してWeb上では無料公開で。

のぶみ:前にやったことあるんだ?

西野:コミックでも売っているし。もっというと音楽ビジネスなんかも全部そうですね。PPAPなんかYouTubeで完全に出しちゃってその後にアルバムを売るみたいな。フリ―ミアムっていうモデルですね。

のぶみ:それ初めて知ったフリーミアム。

西野:フリーミアムってつまり、無料で完全に公開しちゃって、ここから先の高度な機能が付いているものだとか、特典機能が付いているものに関しては、ここから先は課金してくださいねっていう。1回無料で全部出しちゃう。ニコ生がまさにそうです。ニコ生が最初に1時間無料でしゃべって、ここから先は深い話するから有料ですよっていう。入場料を取るんじゃなくて中間でお金取るみたいな。それがフリーミアムっていう。

クリエイターの値段が下がるのは業界にお金が落ちないから

のぶみ:でもフリーミアムでもないっていうことだよね。

西野:でも今回はそうです。今回はまさにフリーミアムです。

のぶみ:フリーだよね?

西野:Web上で完全にフリーでばら撒いてしまって、紙のを欲しい人は本屋さんに行ってくださいねっていう。僕は、Webの情報の絵本と紙の絵本の価値っていうのは全然イコールだとは思っていなくて、絵本っていうのはもう1つ言うと、読み聞かせっていう親子のコミュニケーションツールとして機能するから、だからWebの時にスマホでこうするとは思わなかったんですよ。読み聞かせで。

のぶみ:寝る前にね。

西野:こうやってお父さんとお母さんがスマホでこうやって、「えんとつ町は……」とかやると思わなくて、読み聞かせしたいと思ったら、やっぱり紙の本が要るなと思って。フリーミアムって超いいなと思って。いろいろ理由があるんですけど、それをやってみたところ、なんか、頭が悪いんですよ、基本的に。

のぶみ:誰がですか? それ。

西野:明坂さんの頭が悪い。そこに尽きる(笑)。

のぶみ:本当に、すみません。声優の……。俺はなにも明坂さんのなにかを知っているわけじゃないんだよ。そのことに関しては頭が悪いって言っているんだよね、今ね。

西野:でもこれは、頭悪いとしか言いようがないです。ほかに言葉を僕は持ってないので。

のぶみ:そうなんですか。

西野:明坂さんの言い分も僕は実はわかるんですよ。実はすごくわかって、すごく優しいし、いろんなことを考えられてる。決してそんな嫌がらせで批判しているわけじゃなくて、明坂さんの言い分は僕すごくわかるんですけど、まず心配されていたのは、クリエイターさんの買い叩きが生まれるんじゃないか。つまり絵描きさんが買い叩かれる、安く買い叩かれてしまうんじゃないかみたいなことをおっしゃっていて、それは1つすごくわかった。

のぶみ:でも、僕はちなみに、ウェルカムボードとか全部無料で書くんですよ。おめでたいことだから。そしたらウェルカムボードを専門で書いている人もいるから、「そのクリエイターの仕事がなくなるから止めてください」って言われることはあるんですね。でも俺が思うのは、「クリエイターががんばれ」と思うところがあって。

だって俺、絵本やりながら、片手間と言ったらあれだけど、まぁ思いは込めてるけど、描いてるんだから、それ専門でやる人は俺に負けちゃだめじゃんか?

西野:本当そこに尽きるんですよ。プロの人は言わないですよ。プロでのぶみさんみたいに完全に仕事を自分でとっている人は言わないんですけど、クリエイターの卵の方だとか、ちょっと自信がない方は、「市場が壊れるんじゃないか」みたいな。もっと言うとクリエイターや絵描きさん、イラストレイターさんの値段が下がってしまうっていうのは、なんでそういうことが起こるかっていったら、業界にお金が落ちないからです。

のぶみ:そうですね。

そもそもテレビアニメがフリーミアムの土壌の上にある

西野:だからそのシルク・ドゥ・ソレイユにお金が落ちるよりファミレスにお金が落ちたり、どこかのカラオケとかにお金が落ちたり。僕たちがやらなきゃいけないことは、出版業界にまずお金が落ちる仕組みを作らなきゃいけない。クリエイターさんの賃金のことを考えるのであれば、出版業界が潤っているほうが絶対にいいって。変なスポーツとかぜんぜん関係のないエンタメに使われるよりかは、出版業界にお金が落ちたほうがぜったいにいい。

長い目で見た時にクリエイターさんを潤わせるためには、出版業界を盛り上げたほうが絶対にいい。で、僕たちがやることは本を売ったほうがいいと。それが一番クリエイターさんのためになるなと思ったので、明坂さんのそのちょっとアホな言い分はあるんですけど、こういう売り方のほうが……、最初は僕そういうの黙っていたんですよ。そんなん言わなくていいと思ったんですよ。戦略のことなんて。

のぶみ:敵を増やすからね。

西野:戦略のことは言わなくいいと思ったんですけど、「でもアホの明坂さんがそんなことしたら市場が……」って言うもんですから、「じゃあきれいごと抜きで1回ビジネスの話しましょうか」って。「こうでこうでこうでこうのほうがクリエーターさんにお金が行くんだよ」っていう話をして、まあ要は、「フリーミアムっていうものがあって、こういうビジネスのほうがたぶんこっちのほうにお金が回ると思いますよ」「クリエイターさんにお金が行くと思いますよ」っていう説明をして差し上げて。

もう1つ言うと、「ゼロ円で出すな」っていうんですよ、情報を。そうした時にお客さんとかが作品に対してお金を払う感覚がなくなってしまうから、作品はゼロ円なんだと思ってしまうからって言うんですけど、ちょっと待ってくださいと。「えっ明坂さんあなた声優さんですよね? アニメーションってフリーミアムですよ」って。

のぶみ:まあそうですよね、テレビでやるから。

西野:テレビでお金を払ってるのは視聴者ではなくてスポンサーさんであって、視聴者の方が課金しているわけではなくて、テレビアニメっていう仕組みは無料で大勢の人にバーッと「見てください」ってやって、そしてそのテレビアニメを手元に置いておきたいとなった時にDVDを買ったりだとか、グッズを買ったりだとか、そこでお金が発生してるっていう。

のぶみ:つまり、知っているものに対してお金を払っているっていうこと。

西野:そう。つまり明坂さんがやられていることというのは、そもそもフリーミアムの土壌の上にあることなんですよっていうのを声優の方に説明して差し上げたら、もう大炎上です。

のぶみ:そうだろうね。だって向こうにもファンがいるから、「俺らの明坂になに言ってんだ」っていうふうになるわね。

西野:そう。「吊し上げたる」みたいなこと言われたんですけど。

のぶみ:なんか(コメントで)「名指しがひどい」っていうのが来てますけど、それについてはどう思っていますか?

西野:明坂さんから言ってこられたので、「ごめんね。それに関しては批判した以上は1回反論は受けてね」っていうことでね。反論したのに対して、「吊し上げ」とか「名指しで言ってきやがった」っていう奴はもう全員バカ。明坂さんのファン全員バカだと。

のぶみ:西野さん的には、明坂さんの作品とかけっこう見てらっしゃるんですか?

西野:見たこともないんですけど……。

のぶみ:そうだよね。このことに関してっていうことだよ。だから明坂さんより西野さんのほうが、これに関しては考えているし、やっぱりそれはその通りだなとは思うけどね。