「祈るとは、自分自身を知ることです」 神主が教える"祈りの本質"が奥深い

祈りを知れば表現が豊かになる #1/2

独創的であることを目指した美大生は、表現の本質を追い求めて神道の世界へ飛び込んだ-。「表現」と「祈り」の関連性に気がついた木下英大氏が、その本質について語りました。(TEDxFukuoka 2014より)

表現することは祈ることと同じ

木下英大氏(以下、木下):これから僕が皆さんとシェアしたいのは、壁にぶつかったある美大生が表現と祈りの関係を知って、神主になってその壁を破った話。あなた自身の祈りを知れば、あなたの表現が今よりもっと豊かになる。あなたの話。

僕は美術作家兼、神職。僕の祈りは調和。ポジティブに世界と調和すること。僕自身、調和をテーマにアートを作ってますし、世界とポジティブに調和したい。そう祈ってる自分に気づいてから、前よりも素直に人に好意的な気持ちを伝えられるようになりました。

でも美大生の頃の僕は、人に何を伝えたいかよりも、人にどう思われたいか。どう自分がユニークでエキセントリックで独創的で、変なヤツだなって、そんな風に思われたい。そんなエゴばかりで、当たり前なんですけど、自分が何を伝えたいのか考えずにきたから、自分が何を作りたいのかわからなくなりました。

どうしよう、と。もっと良いものを作って皆さんを喜ばせたい、だけどどうしたらいいかわからない。それで、これまでのアーティストは何を作ってきたのか、歴史の勉強をして、アートってそもそも何を表現してきたのか、そもそも表現って何なのか知ろうとしました。

それでわかったのが「表現は祈りと表裏一体だった」ってことなんですね。

当時は一番古いアートがフランスのラスコーの洞窟壁画と言われてて、ここには矢とか槍のような線が向けられた動物が描かれている。これは、ここに古代の人が狩りの様子を記録したものなのか。いや、そうじゃないんです。これはここに描く事でこの動物を捕まえたいっていう、期待の現れなんですね。ここに描くことで捕まりますようにって、何かに祈ってる。

つまり人は、絵を描き出した時に祈りを始めてる、祈りを形に表そうとして絵を描き出している。表現は祈りとそもそも表裏一体だった。それがわかったので、僕はそのことをしっかり掴んだら、いいアーティストになれるんじゃないか、それで神主になった。そしてこういう格好を毎日しています。

想いを実感した瞬間

じゃ、その実感はいったいどこで得たのか。これは、神主になってからで僕は毎日いろんなお祈りを神社に来た人とするんですけど、ある日、とある赤ちゃんのお祈りをしました。とても良い祈りができた。

この子が幸せになりますように、ってご両親が連れて来てたんですね。日本人ならお宮参りって聞いた事があると思いますけど、お母さんも涙を流してたし、僕も満足した。とても感動的ないい雰囲気だったんですけど、その感動の質が、僕が福岡市美術館で生まれて初めてアートに感動したときの質と同じだったんですね。その時実感したんです。表現は祈りと表裏一体だ。

じゃ、何故同じなのか。それは、見えない願いが伝わった感動だったから。お母さんは、僕の祈ってる姿を見て自分の中から、「この子が幸せになりますように」って心からの思いが湧き上がってくるのを感じた。涙が流れた。その心からの思いが二人から僕へと伝わって、神様へと伝わった。僕はそう実感した。

それにこんな風に、人の為に祈るってことが実は大事で、僕が祈ってますよね、直接二人が神様に祈るんじゃなくて間に僕が入ってる。他人の為に祈ることでより純粋な祈りができる。そういうことが全部、丁度うまくいったんですね。

アートとは相手へのプレゼント

アート。アートって何なのか。相手へのプレゼントですよね。受け手がどう受け取ってくれるか、作り手は相手のことを考えてそれがしっかり届くように、自分の思いを込めて作りますよね。だから基本的にプレゼントなんです。

誰かのために心を込めて祈って、それがうまくいったときの感動と、誰かが心を込めて作ってくれた作品、アートを受け取って、それを見て感動したときの感覚が同じだっていうのは、方向が逆なだけで、きっと当たり前のことなんですね。

自分のためじゃないからこそ、祈る。実はこれが心を込めて祈る大事な要素だと僕は思います。

神社には遠足で子供たちがよく来ます。その時にいつも話すことがあります。「ここの神様はみんな仲よく幸せにって思ってる神様だよ。だからここでは、自分のためじゃなくて、今日一緒にここに来た先生とか、お友達とか、家で待ってるお父さんお母さんとか、そういう人たちのことを祈ってください」。

だいたい座って聞いてるんですけど、「今、自分の隣に座ってるお友達のことを、明日も楽しく遊べるようにって、祈ってあげてください。それを隣の人が隣の人に祈っていって、自分まで来たら明日も楽しくみんなで仲よく遊べるでしょう」。そう話すんです。

そうすると、とても良い雰囲気で皆一緒になって祈りをシェアしてる。お互いの為を思いながら。人の為に祈るっていうのは実は大事な要素で、心を込めて祈る良い祈りっていうのは、誰かの為の祈りなんですね。

「こんにちは」に含まれる期待

ところで、今、何時ですかね……。11時? おはようございますとか、こんにちはとか、神社に来た人に挨拶しますけど、この時間って迷うんですよね。どっちなんだろうって。言いたいのはですね、挨拶って表現の一種だと思いませんか? 挨拶も実は表現なんですね。こんにちは、ってこの意味は実は「今日はごきげんいかがですか?」なんですね。

英語で言うと「Good afternoon」、ここには"May you have a"ってのが隠れていて、「君が良い午後を迎えられたらいいな」。相手の事を気遣って、相手の幸せを期待してるんですね。こういう誰でも使っている挨拶だって、よく意味を知れば誰かの為の祈りであり、期待なんだってのがわかると思います。つまりあなたを表現させるものは、祈りであり、そしてあなたの期待なんですね。

表現はそれぞれの期待に実は突き動かされています。たとえばさっき話したように、古代の人が絵を描いたこともそうだし、赤ちゃんを神社に連れて来たご両親のことも考えれば、そうだってわかります。期待が込められてる。そしてその期待を、あなたの期待を整理して、様式化したもの。それが祈りなんです。

今日ここにこうやって皆さんが集まって、スタッフの皆と一緒にやってきましたけど、皆何か期待を込めてここに集まってますよね。今よりも自分の日常が良くなるといいな、っていう期待が込められてる。あなたの表現も、あなたの期待が込められてる。ここに集まったことだって、自己表現のひとつだと思いませんか。祈りは期待なんです。そしてあなたの祈りを知れば、あなたの表現が豊かになる。最初のテーマに戻ります。

じゃ、これはどういうことなのか。祈りを知るということは、あなたの世界への期待を知るってことなんです。あなたを取り巻く世界の人々や、あなたを取り巻く世界、ここにいる皆もあなたにとっての世界ですよね。そいういあらゆるものが、これからどうあって欲しいかっていう、あなたの期待を知る事なんです。あなたの祈りを知るっていうことは、あなた自身の世界への祈りを知るっていうことなんです。その表現が豊かになれば、あなたの世界もきっと豊かになります。

ここで皆さんに想像してもらいたいと思います。世界に何を期待しますか。世界に何を祈りますか。

湧き起こってきた、その心からの思いを胸にして、今日、今から、これからでも出来るはずです。例えば隣に座っている人と、ちょっと挨拶してみますか。こんにちはって言ってみましょうか。隣の人に声をかけてみませんか?(笑)

祈りを知れば、世界が良くなる。僕の祈りは世界とポジティブに調和すること。ですから、皆さんと僕はポジティブに調和したい。だから今から皆さんにご挨拶申し上げます。祈りを込めて。

「こんにちは。元気ですか?」

ありがとうございました。

<続きは近日公開>

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1 「祈るとは、自分自身を知ることです」 神主が教える"祈りの本質"が奥深い
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