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年代別経営哲学論バトル(全5記事)

流行りのビジネスに乗っかりすぎ? ベンチャー経営者らが他の世代に贈る“あえて厳しい指摘”

2016年12月7日に開催された「IVS 2016 Fall Kyoto」のなかで、各年代を代表する経営者たちによる「年代別経営哲学論バトル」が行われました。登壇したのはBASE・鶴岡氏とグリー・田中氏、ヤフー・川邊氏、KLab・真田氏。モデレーターを務めたのは夏野氏。もしも自分の世代以外に「あえて厳しいこと」を言うとしたら……? 本パートでは先述の問いかけに対する、登壇者それぞれのアンサーが語られました。

「お金が…」と言っている起業家は少ない

夏野剛氏(以下、夏野):さて、3つ目の質問です。自分以外の世代に言いたいことはありますか? あえて厳しいことですよ。「この世代、こういうところ気をつけてほしい」「こんなところ気に食わない」「こういうのはやめてほしい」「いい加減にしろ」など、本音でいきましょう、媚びなしで。

真田哲弥氏(以下、真田):じゃあ、1つ言いますか。

夏野:いきますか。

真田:会社でVC、ベンチャーキャピタル的なことも多少やっているので、若い起業家のみなさんとそういう場面で会うことが多いんですが。

売ることを目的とし、高値で売り抜けるために、会社を起業する。そういう人たちを見たとき、正直ムカッときますね。僕ら世代は、会社はそういうものではないと思っていたので。会社に対する感覚が、20代経営者と違うときがありますね。

夏野:「就職より起業したほうがいいんじゃない?」と言われた始めたのが、ここ15年くらいだと思うんです。ホリエモンさんがよく「やっぱり起業するのが一番いいソリューションじゃないか」と言っていますよね。もちろん、ご本人は起業=高値で売り抜けるというつもりで言っているわけじゃないんですけど。

とはいえ、「早くお金持ちになりたい」「早く富を得たい」という人も同時に増えてきた感じはするんです。周りにそういう人、います?

鶴岡裕太氏(以下、鶴岡):僕の周りに「お金が、お金が」と言ってる起業家さんはそんなにいない……。でも、今の真田さんの話じゃないですけど、生き残っていけなくなるという話なのかなと思いました。それこそ、出資してもらえないこともあったりすると思ってるんです。

個人的に、先ほどの会社の在り方でいうと「こういうサービスを作りたい」から「じゃあ、そのためには売上と利益が必要だよね」があります。

会社の作り方みたいなところが、「会社とは……」「企業とは……」よりも、あるべき世界観や理想論から入っている人のほうが、ベテランの世代の方々はわかんないですけど、僕らの世代では多いと思っていますね。

「こういうWebサービスを作って、こう世界を良くしたい」ありきで、結果「じゃあ、会社作るしかないよね」「組織を集めるしかないよね」「売上とか利益出すしかないね」みたいな循環の回り方なのかなと思ったりするんで。

夏野:そういう人は昔からもいたよね? そういう人のほうが多い。

真田:成功している人には、そういう人のほうが多い気がします。ただ、一方でね、逆に僕らの世代は、成功して、それこそ「金と名誉と車となんとかがほしい!」という欲にギトギトした人がたくさんいて、そういう人がしっかり成功していたと思うんです。

最近、たまに大学生とディスカッションや授業とかやったりすると「お金じゃなくて、世の中のために役立つことをしたいんです」ということも聞きます。それはそれですごいいいことなんだけど、「その前に君、学費を親に出してもらうんじゃなくて、まず自分の学費払ってから言ったほうがいいんじゃない?」と思います。

夏野:そういう学生を量産している大学の教員としてはですね……。

真田:(笑)。

やりたいことの理想と現実を両立させる難しさ

夏野:若干、僕が気になっているのは、SFCなどは起業家を目指す人が多く、そして大企業に行く人も多い。一方で、NPO的なことを言う人もけっこう多いんですよ。やはり5年前の3.11以来、NPOがワーッときている。

そのNPOも、純粋な動機でやっている人もたくさんいるんですけど、たまにそういうパターンの人もいますよね。あまり経済的なことを考えたくないところから、NPOに逃げる、みたいな感じです。

ビジネスですごく難しいのは、自分がやりたいことの理想の実現として、まさに鶴岡さんの話していたことと両立しなきゃいけないところですね。それがちゃんと自律的に回せるようになって初めてビジネスが成立します。そこが分断されている人がたまにいるのは確かにそうかもしれません。でも、それはどの世代にもいるけどね。

鶴岡:今の話じゃないですけど、僕はスタートアップでインターンをしていて、交通費くらいの給与で毎月生きていました。……というと、ちょっとあれですけどね(笑)。先ほどの話じゃないですけど、ガンガン親のスネをかじっていた世界だったので。もちろん今はちゃんとは返せていますけど、そこまでいけない人ももちろんいると思うんです。

結果、「そうやってないとこうもなれなかったかな」と思っているところもあるんです。「そこで自分がアルバイトしていたら、このインターネットのコミュニティに入れなかったな」と。そう思うと「難しいところだな」と、個人的には思ったりしますけどね。

夏野:田中さんはどうですか。

田中良和氏(以下、田中):最近こだわっているのは、先輩風を吹かすことなんです。若い人たちは、僕らが築きあげたこのインターネット業界で働いているわけですから、「先輩に感謝するように」という布教活動を行おうと、最近思っていまして(笑)。

やはりこの業界は、先輩・後輩関係が悪い意味でも希薄だと思っているんですよね。

夏野:まあ、ないですよね。

田中:当然僕も、そういうことがなかったから自分が清々しくできている反面、先輩風を吹かしてくる先輩がいなさすぎて「さみしいな」と思うこともあって。

もうちょっとこの業界にも、先輩風を吹かせる人を増やそうという運動ですね。それが、僕の最近のマイブームです。「若い奴は先輩を尊敬しろ」と。

夏野:それをどう返していいか、まったくわからないんですけど。

(会場笑)

真田くんは、田中くんに尊敬されている感じする? しないよね?

真田:しないっすね!

夏野:ダメじゃん! 下に吹かせるんじゃなくて、上にもちゃんとやってよ!(笑)

田中:すいません(笑)。……と先輩風を吹かせると、ちょっと、愛を感じるんですよ。

夏野:いやいやいや、先輩風を吹かすんだから、こっちにもちゃんとねえ……リスペクトして。

田中:そういうの、ほしいなと思って。たまには(笑)。

若い世代は流行りのビジネスモデルに行きがち

夏野:はい、川邊さん。

川邊健太郎氏(以下、川邊):「他の世代の経営者になんか言いたいこと」ですよね。若い経営世代しか、僕は見てないんですけど。思うのは、流行りのビジネスモデルにみんな行きがちですよね。

IVSの推移を見てもわかるように、数年前だとゲームのベンチャーばかり。この2〜3年は、バーティカルメディアか、もっと言うとキュレーションメディアが多かった。次は、フィンテックが出てきています。

若いから情報が少ないのもあるんですけど、そこにバーッとみんな行きがちなんです。

もっと違う土俵で相撲を取る、あるいはバーティカルよりホリゾンタルに、全部を取ってやるみたいな構想を立てるなど。そういうふうに勝負をしてもいいんじゃないかなという感じは、いつも感じてますけどね。

夏野:それはとくに下の世代に対して?

川邊:下の世代に対して。流行りに敏感というか、流行りの起業方法、流行りのビジネスモデル。「みんな同じことやってます」が多いですよね。だから、BASEとかめずらしいですよね。ふつうは「今、ゲーム」「今、キュレーションメディア」みたいにどうしてもなっちゃう。

鶴岡:昔は違ったという話なんですか?

夏野:いやいや、昔も同じだったよ! もう「モバイル、モバイル!」と言ってさ。

鶴岡:(笑)。

夏野:Yahoo! JAPANはモバイル、超出遅れたけどね。

川邊:そうですね、はい。

夏野:一時期、ヤバかったんだよね?

川邊:そうそう。それで2012年の新経営体制で「スマホファースト」を掲げたのですから。

夏野:だけど、まあ、同じ同じ。

川邊:同じことですよ。同じことだから、僕らもそう思われていただろうし、僕もそう思う。せっかくだから、こういう機会だから、それを言って……。

本当の意味での「デジタル革命」をやっている人は少ない

夏野:いいですね。でも、なんか今の話を聞いていると、50代、40代がすごくえらそうに見えてきた。今まで上から言われないできてるでしょ?

真田:大学生から会社経営しているから、上司に命令されたことがほとんどない。

夏野:うん。

真田:えらそうなんですよね?

夏野:えらそうだね。えらそうになんか言って。

鶴岡:どうなんですか? でも、僕らの世代も上の人から怒られることなんて、まあ、ないですけどね。僕も学生起業してるんで、上司もいたこともないですし。先ほどの田中さんの先輩風じゃないですけど……。

田中:これから怒ってやるから(笑)。

真田:じゃあ、これからこき使う(笑)。

鶴岡:(笑)。まだ先輩風を感じたこともあまりない、という(笑)。

(会場笑)

川邊:前回のIVSで、私がモデレーターでこれっぽいことやったんですよ。そうしたらみんなね、きれいにしようとするんで。悪態もつかないし、悪口も言わない。だから、盛り上がらないんですよ。その経験があるんで、こっちは、まあちょっと、やはりこう……偽悪者で、えばらないといけない。

夏野:いや、いいねえ。

でもね、すごく時代を反映している感じがしているんですよね。確かに、今の50代と言っても、みんな50代の前半ですよね。だから、デジタル革命を本当の意味でやっている人は数少ない。まさに孫さんくらいなんですよ。

そんな様子を見ていったときに、なんか切り開いてきて、ここで1つの歴史ができている。歴史の分断が真田さんの右側(50代とそれ以上の世代の間)にドーンとある。

ただ、先ほどの話で、このへん(20代と30代の間)に微妙に『ガンダム』などの谷が存在しています。田中さんは……あ、こっち側(40代、50代)。30代後半だからね。だから、20代と30代の間にカルチャーの壁が出てきて。おそらくですね、このへん(それ以下の世代)の間にもできるんだと思います。

だって、小学校4年生や6年生で、アプリで経産大臣賞を取っちゃう人がもう出てきているんですから。なんかちょっと、おもしろいですよね。「おもしろい」と言っているのはなぜかというと、実は、日本は世界の先進国でたぶん唯一、年齢が公に明らかにされる国なんですね。

例えば、履歴書に生年月日とか書くでしょう。これ、アメリカでは違法です。1967年に年齢差別禁止法ができて、同じ従業員でも「何歳?」は聞いちゃいけないんですね。 女性はもともと、そういうのを聞いちゃいけないと言うけど、男も含めて聞いちゃいけない。それは、年齢によって「こういうもんだ」を事前に持ってしまうこと自身が差別につながる、という考え方なんですよ。

だから、日本では、テレビや新聞のインタビューで出る人には必ず(36)(48)とかつけられるんですけど、あれがまったくないんですよね。

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