アニメ界がバンド化する

山田玲司氏(以下、山田):最近ちょっとアニメ業界の話もいろいろあってさ。岡田さんの番組でも言ってたけど、ヒットしたらアニメーターにある程度の収益が入るようなことが始まるって。『この世界の片隅に』から始まるっていうさ。あの映画からまた1つ大きく変わってるんですね。

岡田さんは「ゴールドラッシュが始まるな」という話をしてるんだけれども。要するに、各ブロックで作ってたり製作委員会が作っている。製作委員会のバックにはもちろんテレビ局だったり広告会社だったり大資本があって、わりと身動き取れないような状態で。

それで、収益があがったら全部帝国に吸われるみたいな、そういう奴隷制度だったんだけど、それが外資が入ることによって、単独に独立することができるというか。これはなんかちょっとおもしろいなと思って。

もともとあった流れではあるんだけど、俺、アニメ界がバンド化するんじゃないかなってちょっと思ってて。

乙君氏(以下、乙君):アニメ界がバンド化?

山田:バンドって、「あいつとあいつ組んだらおもしろくね?」ってやつじゃん?

本来はそういうことをやってるプロデューサーがいて、そういうふうなアニメーションもいっぱいあるんだよ。だから、「あの監督と、あの作家とやったらおもしろいな」みたいな。

これがプロデューサー主導なんだけど、その上の人たち次第だったところがあるんだけど、これがたぶんクリエイター主導でいけるという。要するに、ミュージシャンが独立して、インディーズでCD出すみたいな感じで。

インディーズアニメ的な感じのブロックに、海外のでかい資本がドーンと入ったことによって、今までのしがらみから切り離されたアニメ産業というのが……、地上波からの離陸というか離脱が起こるんじゃないかっていうぐらい、アニメは実は日本でまだまだすげー価値があって。

なんでかというと、地上波から離れた奴らもアニメは見てるんだよね。だから、アニメの出口が地上波だけじゃなくなってはいるんだよ。その分またアニメは有利になっていて。

なぜなら、地上波の夕方枠・深夜枠に入れなかったらおしまいっていうんじゃなくなって、ほかにも場所ができるようになって、配信ができるようになったので。ちょっと出口が広がっている分、ちょっと希望がある話になったなという気がして。これがまた次のターボになったみたいな感じはあるよね。

乙君:なるほどね。

そしてコンテンツソムリエの時代へ

山田:で、(放送開始から)52分なので。さっきどらが言ってた話のやつですよ。もういわゆるその、なんだっけ、「メンバーベリー」?

だろめおん氏(以下、だろめおん):ええ、そうです。

山田:俺は「思い出おじさんになりたくない」ってずいぶん前から言ってたじゃん。それはずっと昔から過去のコンテンツの話、しかも自分の……、要するに、どらはそうでもないんだけど、乙君とかしみちゃんとかは、話すときにもう基本的に90年代ジャンプの話をするわけじゃん。

しみちゃん氏(以下、しみちゃん):はい……。

乙君:まあ(笑)。

山田:だから、ジャンプベリーなんだよ。君たちは。

しみちゃん:そうですね(笑)。

山田:90年代ジャンプベリーずっと食ってんだよ。

乙君:まあ、そう。

山田:そうなんだよ。だから、「ゲバイ」とか言ってるのも、90年代ジャンプベリーだから、あれ。

乙君:う……うん。

山田:うん、じゃない?(笑)。

乙君:仮にそうとしましょう。

山田:それは実は各世代がそうだったんだけど。ただ、そのあと、この年代を代表するコンテンツに力がなくなってきつつあるわけよ。

だから、00年代を代表する、『ONE PIECE』とかそうなんだと思うんだけど、そのあとに10年代になってきて……、突出したスター・ウォーズのような化け物みたいのが現れて「この世代を代表するコンテンツ、そして世代」みたいなものが、かつてほどじゃなくなっちゃった。

乙君:ああ。『進撃(の巨人)』以降、そこまでのはないかもしれない。

山田:『この世界(の片隅に)』はクオリティとしてはすごいとは思うけど、『君の名は。』世代とか、まあ後年言われるだろうけど。でも、やっぱりなんつーのかな、「ミクスチャーの延長だったな」というのもあったので、その世界、その時代だけみたいなのではなくなった。なんでかというと、やっぱりアーカイブ時代に入っちゃったからだと思うのね。だから、YouTubeで全部見れるというのが。

だから、その1個前にレンタルビデオ屋で借りれば昔映画見れるよというので、アーカイブ時代が始まるので。そこからスタートした監督ってタランティーノとかそうじゃん。

そこからずっときて、今は本当にネットで全部見れる状態というか。だから、選択肢が今の最新作ではないという時代に突入しちゃた。じゃあ、このあとどうなるかというと、やっぱり俺こういう仕事が出てくると思うんだよね。

だから、コンテンツソムリエの時代になってくるんじゃないかなって。それぐらい、だって何千作もあるんだもん。何万作もあるわけじゃん。過去の作品が。

例えば、この間の魔夜峰央先生の『翔んで埼玉』みたいなのがいきなり跳ねたりするじゃん。あれはどこかの誰かのソムリエが「これヤバイぜ」って言って引っ張ってきたわけで。その手腕でやっていく奴らも現れるだろうなと思って。で、実をいうと、うちの番組なんかまさにこれをやってる。

乙君:確かにそうですね。

山田:コンテンツソムリエ番組なの。実は。だったら、「これから先、俺らやっていってもよくねえかな」ってちょっと思ってる。

乙君:ああ、ソムリエ玲司が。

山田:俺、ソムリエになるから(笑)。

(一同笑)

乙君:「この映画ヤバイぞ」みたいな。

山田:俺はソムリエ語るから。そんな感じかなと思って。