『ローグ・ワン』は核の話だった?

山田玲司氏(以下、山田):あなた今日観たらしいじゃないですか?

乙君氏(以下、乙君):今日、観ました。『ローグ・ワン』。俺ら全員、今日観ました。

山田:どうでした? 『ローグ・ワン』。

乙君:え、ここで俺に振る!? なぜ?(笑)。

(一同笑)

山田:なんのために観てきたんや!(笑)。

乙君:いやだから、スピンオフというのじゃないですか。いわゆるスターウォーズの。だから、それが今までなかったのが不思議だったなと思って。

山田:あ、『イウォーク・アドベンチャー』ありますけどね(笑)。

乙君:なんかわかんないけど。その……。

久世孝臣氏(以下、久世):わかんねえんだ(笑)。

乙君:いわゆる正史的なあれでしょ?

山田:そうね。

乙君:でも、そこの衝撃みたいなものはぜんぜんなかったんです。それは俺はガンダム派だから。ガンダム、もうそういうのばっかりなので。

山田:ユニコーン派なのね。

乙君:ユニコーンとか0083。それこそ、くしくもSTARDUST MEMORYなんですけど。

山田:そうなんだ。

乙君:そうなんだって(笑)。

山田:いや、俺、小泉今日子しか知らないんだよ。

久世:(笑)。

乙君:これだから、うちのここのスタジオの社長に怒られるかもしれないですけど、やっぱり敵役が魅力がなさすぎて、なんか物量にただただ負けてるというか、つまんないんですよ。

だから、悪に色気がぜんぜんないから。それと……なんつーんだろうな、すごいもったいないなと思って。あの博士とか。これネタバレになっちゃうな。

山田:いやあ、そうね。

乙君:まあ、とにかく戦う相手に魅力がないから、戦ってる奴らがすごい悲しくなっちゃう。

山田:あれは原爆を発見した人がモデルだよね。明らかにね。あ、違う。発明した人だね。そうそう。

乙君:でも、そうすると、物語……。

山田:それを考えてやると、最後にビキニ環礁がかぶるので深い。なかなか。だから、核というラインで見るというのもなかなかよくて。それがまた『この世界の片隅に』にもかぶってるんだよ。「どうする? 核」って。

乙君:ああ。

山田:だから、ゴジラから核、核、核できてる。だから、隕石のメタファーは核でしょう。あれ実は。だから、今年はそれで核に向かい合ったというのはあるね。

『スター・ウォーズ』と『君の名は。』の共通点

乙君:そうそう。「1、2、3で感じてた」というのもそうなんですけど、『スター・ウォーズ』って全般的に悪というものがもう簡単すぎて。もうちょっと人間のその……人間ではないのか、あれ。よくわからないんですよ。

山田:え、違うって。違う違う。悪に関して言えば、ダークサイドって言い方してるけど……。

乙君:悪というか、敵役に魅力がないというのがやっぱり。スター・ウォーズシリーズ全般的に大味なんですよ。

山田:でも、あれ、プリクエル(エピソード1~3の三部作)にのれるかどうかでしょ?

乙君:それに小さい頃に衝撃を受けたら、その構造のままいけるんですけど、俺、ぜんぜん衝撃を受けてなくて、むしろガンダムのほうが衝撃を受けてたので、あんまりそっちにはのれないのと、あと、やっぱり座頭市ですよね。

山田:座頭市はたまんないね。

乙君:座頭市が出てくるんですよ。

山田:座頭市って言っちゃダメだけどね。座頭市らしきものが出てくる。

乙君:ライク座頭市が出てくるんですけど。

山田:東アジア代表だからね。

久世:(笑)。

乙君:その人は、これ別にあんまり関係ないネタバレだから言うんですけど、めっちゃフォースを信じてるんですよ。だけど……フォースに目覚めないんですよ。

山田:だから言ったじゃん。ミディ=クロリアン問題というのがあってという。そこから勉強しないとダメなやつじゃんという話。

乙君:いや、だから、なんていうの。それだけ信じてるんだったらさ。

山田:ダメダメ(笑)。もうね、お前さ、世界中にどんだけ原理主義者がいると思ってるの? スター・ウォーズ原理主義者。これくらいのミスを見逃さないと思って必死になってる連中が、世界中で「さあ来い」ってきてるんだから。大変なんだって。中途半端なことしたら。

乙君:いやだから、それならそれでいいんだけど、そしたら、それこそエピソード4の「フォースというものを使いこなせる奴と使いこなせない奴の差ってなんなの?」って話になってくるというか。だから、それがニュータイプとオールドタイプなのかもしれないんだけど、なんかあまりにもオールドタイプが弱すぎるなと思って。

山田:まあひと言で言うと、この話。

乙君:ひと言で言うんですか(笑)。

山田:この話、ひと言で言うと、プリクエルにのれるかのれないかって話なんだけど。どこにのっかったらいいかというと、ダース・ベイダーになるアナキン・スカイウォーカーはなぜダークサイドに落ちたかというと、愛するものを失いたくなかったからなんだよね。

乙君:それはわかる。

山田:これ、実は『君の名は。』なんですよ。

乙君:え?

山田:だから、時を越えて死者を蘇らせるためにダークサイドの力を使ったせいで、向こう側に落っこちてるんだよ、あれ。実は妻を失いたくなかったからなんだよ。愛のためなの。

だから、愛のために向こう側にいってしまうという。だからそこに、悪ってひと言では言えないものですよというのを3話を使ってやりたかった。(だろめおん氏に)そうだろう?

(一同笑)

久世:なんの権威なんですか?

だろめおん:1~3はそうですね。

山田:そうなんだよ。だから、そこからのスタートというか。どらはどう思った?

『ローグ・ワン』の中でシリーズでナンバー1なシーン

だろめおん:いや、あの……え、どう思ったって、悪の定義に関してですか?

山田:いやいや、今回の『ローグ・ワン』に関して。

だろめおん:……『ローグ・ワン』に関して? どこから話せばいいのかな。とりあえず、スターウォーズ、要は実写の作品が8作品あるわけですよ。エピソード7までと、あと今回で。

山田:そうだね。

だろめおん:今回がナンバー1なシーンとかいくつかあるわけですよ。

山田:あったねぇ。

だろめおん:僕、個人的にはダース・ベイダーが一番怖いのは今回だし。

山田:いや、今回は本当にね。

乙君:それはちょっと思ったかも。

だろめおん:そうそう。AT‐ATも怖いのが今回一番怖いし。

山田:そう。AT‐ATが怖いというのは最高なんだよね。

乙君:なにそれ?

山田:いやもう。やってやって。真似して。

(だろめおん氏がAT-ATの真似をする)

山田:これこれ。そうそう。これ(笑)。ダメだ(笑)。

乙君:ああ、ラクダみたいな乗り物?

だろめおん:ラクダ……あ、そうそう。

乙君:ああ。確かに。でかくて怖かったね。

だろめおん:そうそう。あれはだから、さすが『Godzilla』を撮ったギャレス・エドワーズ。まあ、そこをギャレス・エドワーズがやったかどうかはわからないけれど。

山田:怪獣映画として撮ってる。

だろめおん:そうそう。

乙君:はあ。

山田:だから、怖いものを見上げてる。上から狙われる怖さ。下から撃ってもダメみたいな絶望。

乙君:ああ、あのね。後藤洋央紀みたいな奴がドーンと撃っても、「バーン」「ん?」みたいなやつでしょ?

山田:まあまあ、そういうこと。そのシーン。まさにそのとおり。「効かねー」って。

模型派、CG派の両方を満足させる撮り方

だろめおん:あとは、CG技術って今めちゃくちゃすごいことになってるじゃないですか。だからこそ、だから「模型使え!」一派がいるわけじゃないですか。

山田:そうなんだよ。

だろめおん:実際、模型使ったらしょぼくなるから、「しょぼいな」みたいになっちゃったりする。宇宙空間で宇宙船が1個ぽつんとあるのって、あれすごく両方の願望を叶えてるんですよ。

要するに、CGが綺麗にするってどういうことかというと、光が反射して、うしろのこういうものから当たって、こっちからの反射があってこっちからの照り返しがあってみたいなのをすごく計算すると、リアルな光にできたりとか。空気の濃さで奥のほうが……。宇宙空間はそれが全部ないんです。

乙君:ないね。

だろめおん:光源1個だし、どんなに遠くても空気遠近感でないから、模型っぽいのにリアルという、両方の。

乙君:はいはい。

だろめおん:それをものすごく今回、意図的かどうかわかんないけど、今までで一番よくできてるなと思って。

乙君:え、あれ、模型なの?

山田:うん。もともと。

だろめおん:模型……もともとは。

山田:もともとは、そう。当時の映像も使ってるから、だから、混在してるんだけど、それがすごい。だから、あれプラモデルなんだよね。実はね。プラモデルのパーツとかをくっつけて作った精巧なモデル。

乙君:CGじゃないんだ。

山田:それでカメラを動かすことによって撮る。

だろめおん:いや、4、5、6は違います。

乙君:あ、4、5、6はね。うん。

山田:模型の周りをカメラを動かすことによって撮っていたというやり方なんだけど、そのよさみたいなものね。

だろめおん:うん。だから本当に……だって、今回「あれ、これスタジオで上からランプ照らしておもちゃ撮ってんじゃないの?」って一瞬思っちゃうところとかなかった?

乙君:まあ、なんか作り物ぽかったけど、CGだろうなと思ってたけど。

だろめおん:CGなんだろうけど、要は両方の要求を満たしてるという。

乙君:へー、なるほどね。そうだろうなと。

だろめおん:はい。

山田:まあでも、これ、よくおじさんたちが……あ、これ聞いてみる?

乙君:いや別に。

山田:当時の4、5、6という、スター・ウォーズを70年代から観た人たちは絶対観るから(笑)。そのためのコンテンツだし、そのためのサービスだし、おっさんに対する……まあ、そういうものだと言われていて。

俺はそれはそれでいいのかなと思ってはいるんだけど、「でも、そうはいっても……」みたいなのもあるじゃん。でも、やっぱり今回ばかりは本当に申し訳ないけど、これ、エピソード4を上野で観た12歳の時にやっぱり戻るよね。

乙君:ああ。

スター・ウォーズ以前と以降の映画の違い

山田:本当にスター・ウォーズって、それ以前とそれ以降、まったく映画が変わるんだよ。それ以前の嘘みたいなアホみたいなSFというのを見てたから。だから、リアリティがまるでない。機材が汚れてるとか。汚れてる宇宙船というのはなかったんだよ。ピッカピカなの。基本的に。

乙君:はあ。

山田:だから、未来、宇宙みたいな、そういうクラシックなイメージだったんだけど、まさかロボットがボロボロに汚れてて、砂漠を移動してるなんて映像は見たことなかったんだよね。それで、ドキドキしながら1年間待ったんだから。全米公開早かったから。1年間待って、やっと日本で公開されるというのをワクワクしながら。

乙君:へ~。そうだったんだ。

山田:そうだよ。その間に大キャンペーン打ってくるから、断片的な情報だけ詳しくなるんだよ。やたら名前も詳しくなっていく。だけど、映画だけ見たことないという。本当にどうにもならない飢餓状態ではじめて観るわけ。

乙君:すごいね、それ(笑)。

山田:そうすると、あの長ったらしいやつがガーって。「どこだろう? ここ」思ったら、地球みたいのが画面にいきなり2つ現れるの。「えー!」と思って。パンすると下に木星みたいのが現れる。見たことないんですよね。

最初に逃げる宇宙船が出てくる。それは反乱軍。追っかける宇宙船、「出てくるな」と思ったら、止まらないんだよね。巨大すぎて(笑)。「あれ、まだ続く、まだ続く」。もうたまらなかったの。当時。

だろめおん:今回のそのオマージュよかったですね。

山田:ねえ。

だろめおん:まさかこうくるとは思わなかった。

山田:いや本当に。大サービス。

だろめおん:そうそう。要は、エピソード4だと、スター・デストロイヤーのあの三角のやつがドーンと。

山田:三角のがドーンと。

だろめおん:三角だけど……。

山田:そうそう(笑)。

だろめおん:続きは劇場で。

山田:劇場で。そんなんばっか込められてる。それで、はじめてパンッて宇宙船のなかにカメラが入った瞬間に、ものすごいちゃちい白い廊下で打ち合ってる人たちが、なぜかベストを着て変なヘルメットかぶって打ち合ってる。で、トルーパーが入ってくる。今だったら当たり前のところなんだけど、まあ、ちゃちいわけだよ。それは金ないからしょうがないんだよ。大学生が撮った自主映画みたいなものなんだから。スター・ウォーズって。

そこに最初ダース・ベイダー入ってくるじゃん。その直前のところまでで映画が終わってるわけだよ。今回の『ローグ・ワン』って。それは本当にとんでもないことなの。

乙君:とんでもないんだ?

山田:だって、俺が待ってた1年前のあの時期の話だから。11歳の時の話だから。「えー、マジか!」みたいな。その時点で映画館が終わった瞬間に、もうエピソード4を観ないわけいかないでしょ。もう、すぐに探して、すぐに観ましたよ(笑)。みんなやってるこれ。世界中でやってると思う。

だろめおん:例えば、ガンダムのそういうスピンオフ系で、ジーンとデニムが今からザクに乗ってサイド7行きますみたいなところで終わったものってあるの?

乙君:ジーンとデニム……いや、それはね。でも、ORIGIN……いやまあ、でも、ないか。そこだけというのはないよ。そういうことでしょ?

だろめおん:そういうこと。

乙君:だから、ガンダムでいうと、ルウム戦役だけちゃんと描いて、ガンダムが出てくるまで描くみたいな話でしょ。

だろめおん:本当に直前までという。

乙君:それがだからORIGINで。それはまあ見ますよね。

だろめおん:ああ。まあそうか。

乙君:だから、文脈の違い。文脈というかその……だから、スター・ウォーズ好きな人はやっぱりお祭りですよ。

山田:というかね、世代だよ。

乙君:スターウォーズ好きでもないし嫌いでもないけど、おもしろかったですよ。単純に。なんか「がんばれ」って思うし。

(一同笑)

久世:ええ奴やな。お前。