2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者:それでは恩田さん、受賞された今のお気持ちをお願いします。
恩田陸氏(以下、恩田):まったく実感がなくて、本当に大事だったんだなぁ、と今ここでうろたえております。
司会者:それでは、さっそくですが質疑応答に移らせていただきます。
記者1:共同通信のタムラです、おめでとうございます。今回6度目で受賞ということで、これまで5回待っていたということもあると思うんですけれども、その道程をあらためて思ってみると、直木賞の受賞にどんなことを思われますでしょうか?
恩田:そうですね、自分には縁のない賞だと思っていたので。プロになって20年ちょっとになるんですけど、自分がどの程度のものを描いているかということがだんだんわからなくなるので。候補にしていただくと「あ、まだ第一線にいるんだ、最前線にいるんだ」と実感できるという意味で、すごく励みにしてきたことはあったので。
今回もこれまで各社の担当者の方と一緒に新年会を兼ねて待っていたんですけど、さすがにだんだん緊張してきて。これでまた「残念でした」となると大変だな、と思っていたので、山下さんのセリフではないですけど、本当にほっとしました。
記者2:日本テレビのヤマザキと申します、受賞おめでとうございます。先ほど山下さんにもおうかがいしたんですが、今回新年会を兼ねて集まっていてお待ちだった、ということですけれども、その新年会は非常に楽しみにこの一報を待つことができたんでしょうか?
恩田:居酒屋で飲んでいたんですけど、だんだん本当に「これは新年会なんじゃないか?」という気がしてきて。「ここで酔っ払っちゃいけない!」と思って一生懸命控えていたんですけど、やっぱり7時過ぎるとみんなものすごい緊張してきてしまって。だから、7時過ぎてからの時間がすごく辛かったです。
記者2:お酒を控える理由がなくなりましたが、いかがでしょうか?
恩田:この後ゆっくり飲みたいと思います。
記者2:ありがとうございます。
記者3:河北新報社のカタヤマと申します、おめでとうございます。今回の作品は西洋音楽の世界を描きながら、東北の宮沢賢治が出てきたことが深く心に残ったんですけれども、今回直木賞を受賞した作品の中に非常に東北的な表現者を出した作品が受賞したことについて、どう思われますか?
恩田:宮沢賢治の『春と修羅』という曲が出てくるんですけれど、宮沢賢治はすごく音楽的な人だな、と思っていたので、それで使ったんですけれど。これは架空の曲なんですけど、読んだ方に「この曲が聞こえるような気がする」と言っていただいたのはすごくうれしかったので、そういう意味では宮沢賢治の『春と修羅』という世界を読者の頭の中に鳴らせたのかな、と思うとすごくうれしいです。
記者3:ありがとうございます。
記者4:カワムラと申します、受賞おめでとうございます。音楽を言葉で表現するというのが非常に難しいというふうに、今回の選評でもその部分を非常に高く評価されている意見が多かったんですけれども。ご自身で書いてみて、やはり相当辛かった部分、あるいは難しかった部分、あるいは自分なりの手応えを得られた部分。なにかそのあたりでご感想がありましたらうかがえればと思います。
恩田:そうですね、本当に書くのは難しかったんですけれども、でも逆に書いていくうちに、読者がそれぞれ自分の想像する音を鳴らせるという意味では、音楽と小説は意外と相性がいいなというふうに思った部分もありまして。
確かに演奏のシーンとか、いろんなバリエーションを考えるのはすごく辛くて。後に行くほど辛かったんですけれども、書いてみて意外と音楽と小説に近いところがあるというのはすごく実感できたので、そういう意味ではすごく勉強になりました。
記者5:毎日新聞のナイトウです、おめでとうございます。先ほど「新年会を兼ねて待っていてほっとしました」とおっしゃいましたが、ほっとした今の状況で、今後どんな小説を書いていきたいとお考えになってらっしゃいますか?
恩田:私は自分のことをエンタメ作家だと思っていて。昔は一息で読めるもの、あっというまに読めてしまうようなものがおもしろいと思っていたんですけれど、おもしろさにも色んな種類があって。ちんたら読んだりとか、ときどき立ち止まって、続きを間を開けてから読んだりとか、おもしろさにはいろんな種類があるので、これからはいろんな種類のおもしろさを体感できるような小説を書いていきたいと思います。
記者6:ニコニコのタカハシと申します、受賞おめでとうございます。まず最初の質問なんですけれども、ニコニコ動画をご覧になったことはありますでしょうか?
恩田:あります。
記者6:ありがとうございます。では、ユーザーからの質問を代読したいと思います。群馬県30代の女性の方からの質問です。「多くの登場人物のさまざまな演奏シーンが描かれていますが、奏者にモデルはいるのでしょうか?」。
もう1つありまして、「登場人物の中で好きな人物はいますか?」という質問が来ております。
恩田:モデルはいません。好きな登場人物は、書いていて一番楽しかったのは、マサル・カルロスという子が出てくるんですけど、彼の師匠のナサニエル・シルバーバーグですね。あの人が書いていて一番楽しかったです。
記者6:ありがとうございます。続いて運営からもう1問だけ質問させていただければと思います。
記者7:ニコニコのオイカワです。
恩田:どうも、こんにちは。
記者7:水戸の同級生の中でも非常に盛り上がっているんですが、水戸一高(注:恩田氏の母校、水戸第一高校)の同級生にひと言。
(会場笑)
恩田:直木賞作家になりました!(笑)。
(会場笑)
記者7:ありがとうございます。
記者8:富山県の北日本新聞のオウミと言います、受賞おめでとうございます。恩田さんは、富山県を含めて幼い頃からさまざまな場所に転校をしていますが、これまで育ってきた場所が創作とか作品に与えた影響というのは、どのようなものがありますか?
また、かつてのエッセイの中で「富山での小学校時代にピアノのレッスンをしていた」ということもありますが、それは今回の作品となにか関連があれば教えていただきたいと思います。
恩田:私は小説を書く時に、わりと特定の土地を舞台に書くことが多いので、その土地土地の雰囲気とか歴史とかを感じて、そこを舞台として書くということが多かったので。子供の頃にあちこち転校した場所のことはどこも今でもすごくよく覚えていますし、その土地から影響を受けて書いたものというのはけっこうあると思います。
それで、富山。私も子供の頃にずっとピアノを習っていたんですけども、転校が多くていろんな先生に習ったので、それは今回いろんな音楽の先生がいるってことで子供の頃に習った先生の特徴をちょっと使ったりもしました。そういう意味でも転校していろんな先生に習ったというのは今回の小説に使わせもらっていると思います。
記者8:ありがとうございました。
記者9:どうも、読売新聞のウカイです。おめでとうございます。今度の小説は、いわゆる少年のようなタイプとか、努力家の方、一度苦難があっても再起を図るタイプ、いろいろありますけれども、恩田さんはどのタイプに近いんでしょうか?
恩田:どのタイプ……いや、どれとも違うと思います。天才じゃないしって(笑)。
記者9:あと、今度の小説のなかで少し触れてあると思うんですが、今回はピアノコンクールについて書いていますけれども、文学の直木賞はコンクールと言えるかどうかは別ですけれども、文学賞とピアノのコンクールというのはどこかで似てるところ、違うところってどんなところでしょうか?
恩田:うーん、いや、すごく……小説のなかにも書いたんですけれど、やはりどちらの世界もすごくいつも新人を探していて、新たに書ける人をいつも求めているというのは、やはりどちらも続けていくのがとても難しい商売だからだと思うんです。そういうところは音楽と小説と、似てるんじゃないかなとすごく思います。
記者9:あともう1つ最後に。本屋大賞を以前お取りになっていて。おそらく直木賞を取った作家で、本屋大賞を取られてから直木賞を取る作家ははじめてだと思うんですけれども。
いわゆる本屋大賞と直木賞、比較するのは難しいかもしれないですが、それぞれの……やはり今回(直木賞を)取ってみて、本屋大賞というのも大きな賞だと思うんですけれども、それぞれについての想いを改めて。
恩田:最初にいただいたのが本屋大賞だったので、すごく印象に残っていますし、読者代表からいただいた賞だと思ったので、とてもうれしかったことを覚えています。なので、直木賞は、やっぱりすごい賞だったんだなって、今、本当に実感してるんですけど。
それは書く側のプロに選んでいただけるということで、やはりそれはそれで、私ももう長いことプロをやっていますけれども、とても光栄なことだし、やっぱり選ぶ側もすごく大変なことなんだな、というのを、今となってはすごく思いました。
記者9:ありがとうございます。
記者10:恩田さんはデビューされてもう四半世紀になり、たくさんの小説をこれまで世に送り出してきてますけれども、そのなかで、とくにこの『蜜蜂と遠雷』という作品で直木賞を取ったということについてのお考えのようなものがあったら、聞かせてください。
恩田:この小説で取れたことはすごくうれしかったし。今まで一番長い時間をかけてるということもありますので、これを書きながらすごく自分でも勉強になった部分もあり、「成長したな」という思いもあるので、「この小説で取れて本当によかった」って、今、思っています。
記者11:インターネットで「直木賞のすべて」というサイトをやってる、カワグチと申します。
先ほども文学賞のテーマが出て、選ぶ側と選ばれる側というかたちで。恩田さんご自身も作品を選ぶ側に立つことがあると思うんですけれども、そういった経験が、例えば今回の作品になにか、具体的に書く時に、自身のなかで出てきた影響とか、あるいは、今回の作品だけじゃなくてもいいんですけれども、作品を自分が選んでいるなかで自分も書いていくという経験は、恩田さんのなかでどのようなかたちで処理されているんでしょうか?
恩田:私も選考員をやるようになって、本当に選ぶって恐ろしいことだなっていうのを年々実感しているので。やっぱり選ぶというのは、たぶん選ばれる側もすごく……。まあ、選んでるところで選ばれているというところがすごくあるので、たぶん自分が選考委員とかするようになってから、影響というのは確かにこの「コンクール」というテーマで書いていて影響していると思います。「やっぱり選ぶこと、ものすごく難しいんだな」っていうのが、ここ数年ひしひしと実感しています。
記者11:ありがとうございます。
司会者:ご質問は以上とさせていただきます。恩田さん、なにか最後にございましたら、ひと言どうぞ。
恩田:これまで長い間、書く場所を与えてくださった各出版社のみなさまと、一緒に伴走してつきあってくれた編集者のみなさんに、本当にお礼をお申し上げたいと思います。ありがとうございました。
(会場拍手)
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