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シェアサービスを急成長させるマーケティング戦略 成約率を高めて成功へと導くために(全4記事)

「すげー!」と人に話したくなる体験を配る--UberEATSが“クーポン祭り”で活かしたもの

SNSなどの進化とともに、注目される「シェアリングエコノミー」。2016年11月25日、国内初のカンファレンス「Share!Summit -シェア経済サミット-」のなかで行われた「シェアサービスを急成長させるマーケティング戦略」ではシェアサービスを行う4社が登壇しました。「にわとりたまご問題」に陥りがちなシェアサービスだからこそ、1回目の利用がとても大事です。ユーザー獲得のために行っている、各社の戦略とは?

「1回使ってもらう」のハードルの高さ

上田祐司氏(以下、上田):ということで、けっこう色の違う4つのシェアリングサービスを集めさせていただきました。とはいえ、シェアリングサービス4社ですから、けっこう共通点はあると思います。そのあたりのコツを、今日は探っていきたいなと思います。

まずは、経沢さんのところからですね。

経沢香保子氏(以下、経沢):マーケティング。実は、なにもやっていなかったんです。

上田:そうなんですか。

経沢:はい。そのへん、みなさんがどうスタートしたのか、聞きたいです。キッズラインは命をお預かりするサービスなので、広告先行型はやめようと思ったんですよ。すごくコツコツと、実体験を積み上げてきました。

例えば、「遅刻しそうになったら、どういうオペレーションにすればいいのか」など。そういったことを1年間やってきて、この間、初めてマーケティングというものをやりました。

上田:Uberの場合は?

髙橋正巳氏(以下、髙橋):そうですね。我々はもう従来のマーケティングでは、あまりやっていないんです。ただ、1回は使っていただくことが、非常に重要ですね。

経沢:そうですよね。ハードルは高いですよね。

髙橋:そうなんですよね。使ってみるとその価値観や自分が固定概念として持っていたものが変わるのが見えてきてるので、そこに非常に注力しています。

経沢:私もUberを前から知っていたけど、使うまで1年くらいかかりました。すみません、時間かかって(笑)。

髙橋:そこのコンバージョンをいかにするかっていうことですよね。

経沢:使ったらもう離れられない。

常に対峙する「にわとりたまご問題」

上田:ちなみにスペースマーケットさん、マーケティングしてますよね?

重松大輔氏(以下、重松:そうですね。ただ、サービスを立ち上げたころは、そういったマーケティング費用はほとんど使っていませんでした。

経沢:ちなみに、今はなにをマーケティング……?

重松:今は広告をまわしたり、あとは地道にSEO対策などです。本当に最初は、とにかくメディアに出まくる……みたいなところでしたね。

経沢:すごく出ていますよね。

重松:ひたすらやっていましたね。それで興味を持ってもらって。やはり、このプラットフォームビジネスには、にわとりたまご問題があります。

経沢:2つマーケティングありますからね。お客様と。

重松:そうなんですよ。ゲストとホストのどちらが大事かというと、まずはホストを増やすことが大事なんですよね。提供する人。TABICAでいうと、農家さんを増やすのが大事です。スペースマーケットだと古民家などですね。そこを増やすことが大事ですね。

経沢:私、上田さんの話を聞いて、卒倒しそうになったことがあるんです。農家を増やすために、すごくお金を……。

重松:どうやって増やしたんですか? 握らせてるんですか?(笑)。

経沢:そう、握らせてる(笑)。

(会場笑)

上田:社員は5〜6人なんですけど、アルバイトやインターはマックス100人くらい動いているんですね。折りたたみ自転車を、電車に持ち込んで走り回るという。

重松:そんなことをしているんですか?

経沢:人海戦術で開拓しているんですか?

上田:そうそう。

経沢:そういうの好きですよね。

上田:(笑)。

Webサービスは階段式で上がっていく

ちょっと話を戻してもいいですか? スペースマーケットでは、具体的にいつまでマスコミで、いつから件数を追ったんですか?

重松:そうですね。1年くらいはひたすらメディアに出ることをやっていました。

上田:本数はどれくらいやっていたんですか?

重松:今、1万スペースくらいあるんですよ。

経沢:すごーい。

重松:最初は本当に、自分の人脈をすべて駆使して「先輩が古民家で持っている」と言ったら、「じゃあ、ちょっと登録してください」など、僕の弟が住んでいたところが、お化け屋敷だったんで……。

これはなにかというと、僕の弟が住んでたところを、その後に借りた人が、お化け屋敷にしたんですよ。僕は不動産のオーナーを知っていたんで、「お化け屋敷どうですか?」と、ちょっとお願いしたんです。

あとは、僕の前職で結婚式場と繋がっていたので、その会社の社長にお願いして、「ちょっとよくわかんないけど、まぁいいや」「登録していいよ」とご理解くださって。あとは、どうしてもインパクトある野球場がほしかった。野球場のような場所を説得するには時間がかかるんですよ。

たまたま僕の知り合いが、アメリカの球団で働いていたんです。その球団の社長が日本に来る機会があったんですよ。連れていってもらって「僕、こういうビジネスをやろうと思うんだけど、どう?」と、酒を飲ませながら話して。そうすると、「よくわからないけどいいよ」と言ってくれて、いきなり「アメリカの球場を借りられる」とサービスで打ち出せたんですよ。

経沢:そのあと、自動的に波に乗ってきたのは、どういうティッピングポイントだったんですか。

重松:半年以上はかかっていましたね。忘年会や新年会シーズンになって、だんだん使われるようになってきた。あと、ホスト側にボリュームが出てくると、SEOもやはり強くなってくる。SEOが加わったタイミングで、Webサービスは階段式で上がっていくんですね。

経沢:確かに。SEOはすごく大事です。まずはSEOの神を口説くところからスタートしました。

うちもSEOの神という人がいるんですけど、その人に頭下げて、手伝っていただきました。

髙橋:それ、ホスト側ですか? ゲスト側ですか?

経沢:両方やってますね。

Uberが提供する、人に話したくなる体験

上田:みなさんはSEOとマスコミ効果、広告出稿でいくと、どんな割合ですか? もちろん、ほかにもあるかもしれないですけど。

髙橋:うちは、あまりやっていないですね。SEOは若干やっているんですけど。

経沢:クーポン祭りですよね。

重松:UberEATSのクーポン祭りすごいですよね。

髙橋:プロモコードというものが、ユーザー1人に対して1つあるんですよ。それを友達に紹介すると、1,500円の割引になり、自分にも適応されます。

上田:3,000円ですね。

髙橋:合計3,000円ですね。それを今やっているんです。もともとUberは、黒塗りのかっこいいベンツが来るような体験をサンフランシスコで2010年に始めたんです。やはり、「クール」だったんですよね。

レストランでお会計するくらいのタイミングでボタンを押しておくと、気づいたら黒塗りの車が来ている。「すげ―!」みたいな。人に話したくなるような体験だったので、それをうまく活かしています。プロモコードも、人に伝えたくなるわけですね。

経沢:要は3,000円じゃないですか。その1,500円、私もいっぱいもらってブログに書くと(笑)。そこで、だいぶタダ飯を食べさせていただきました。社員にも配ってあげたり。相手にも1,500円で、自分にも1,500円なので、単純に3,000円の獲得コストで計算されています。これは何回使われるなど、どう考えているんですか?

髙橋:それは、やはり考えなきゃいけない。

経沢:何名くらいですか。1年や半年などですか?

髙橋:それは、サービスによっても違いますね。

重松:でも、毎日3食だから、3分の1を取ってもでかいですもんね。

髙橋:おっしゃるとおりです。車での移動もそうですけど、出かけたら1日です。1つだけで、2回は移動しますよね。ご飯は1日、だいたい3回は食べますよね。そこが1つのポイントかもしれないですね。

上田:ちなみに平均値は……? 発言しにくいかもしれないですけど、よく使う層は、だいたい月どれくらいですかね?

髙橋:それこそ本当に、1日に何度も使う方もいらっしゃいますね。移動もすべてUberにしてくださっている方もいらっしゃいます。

上田:なるほど。EATSのほうは?

髙橋:UberEATSは、まだ始まったばかりです。でも、これやると「本当に家から出なくなる」みたいな。

経沢:そうなんですよー。たまに夕飯も呼んじゃう。

髙橋:全品じゃなくて、一品だけ頼んじゃうとか。私もこの間、家でカレー作ったときに、どうしてもナン食べたくなったことがあって。焼きたてのナンとラッシーだけ頼んだんですよね。そういう使い方があるので、食というものの楽しみ方が変わります。そのあたりがおもしろいと思っています。

重松:中国とかだと、そういうデリバリーがめちゃくちゃ普及しているらしくて。すごい勢いで持ってくるらしいんですよ。スピードも。頼めるセレクションの多さも。

使った人がクチコミで広めてくれる

経沢:ちなみにこのなかで、シェアリングエコノミー系のサービスを使ったことある人は、どれくらいいますか?

(会場挙手)

髙橋:感度が高いですね。

経沢:じゃあ、「Uber」の人?

(会場挙手)

経沢:多いですね。

髙橋:「UberEATS」の方は?

(会場挙手)

経沢:ちなみにスペースマーケットさん。

(会場挙手)

重松:けっこういた!

経沢:怖くて自分のサービスを聞けないですね。

重松:キッズラインの方? 

(会場挙手)

重松:使ってます。使ってます。

経沢:ありがとうございます。最初に使ってもらうまでが大変だってことを、サービスやってみてわかったんですよ。

重松:そうですね。

経沢:私も、例えばAirbnbを1回だけ使ったことがあって。Uberも知っていたけど、使うまで1年くらいかかっていたんです。使い始めたらすごく利用するので、Uberさんの真似して、無料体験プレゼントをやりました。

上田:今やっているんですか?

経沢:今やっています。年末いっぱい無料なんです。「1回使ってください」をやってみると、みなさん使い始めてくださるんですよね。

上田:ちなみに、どれくらい無料で配っているんですか?

経沢:1,000組です。使ってもらうと、その人がクチコミで広めてくれるんです。

上田:それこそ先ほどのコストライフタイムの話になりますね。ちなみに、どういう計算されてるんですか?

経沢:とにかくそんな銭の計算よりも、ベビーシッター文化を広めたいんです。そのため、使ってもらうことだけを考えています。

上田:とはいえ、計算すると?

経沢:3回くらいは、みなさんに使ってもらえると元取れるかなという感じですね。

上田:なるほど。使い始めて、ちなみに何回くらい使われましたか?

経沢:月4回弱くらいですかね。

髙橋:すごいですよね。週1ということですよね。

経沢:そうですね。週1。あと、朝の送迎だけなどで、毎日使う人もいますね。やはり、朝は大変じゃないですか。朝8時に来てもらって、9時まで送迎1時間だけを毎日やってもらっている人もけっこういます。

あと、英語の塾に通わせるママも大変なので、ベビーシッターさんが保育園へ迎えに行って、そのまま別のバイリンガルシッターさんを頼んで、夕飯まで見てもらうなどもあります。使い方はみなさん工夫していますね。あと、家事代行も一緒にやってくれているんですよ。

上田:改めて先ほどの質問なんですけど、SEO、広告、紹介?

経沢:そうですね。そこまでやって今回初めてキャンペーンをやります。

上田:そのあたりの比率は、どんな感じなんですか?

経沢:ほとんどSEOとメディア。マスコミ。広告は、Facebook広告を月1万円など、ちょっとずつやっていて(笑)。

上田:え、1万円?

経沢:1万円くらいやっています。すいません、ケチなんですよ。

(会場笑)

髙橋:先ほどと言っていること逆ですよ。

経沢:違うんですよ。広告をすることに対して、私はよくわからなかったからコンバージョンをみたり、いつもはけっこうお金かけてやってました。SEOのコンサルタントの人に払ったり。

髙橋:神ですね。

経沢:神に払って。それで、今回は体験していただくよう、プレゼントをやらせていただいてます。

ホスト側のクチコミが新たなホストを集める

ちなみにスペースマーケットさんは、登録するユーザーの方は、個人と法人ではどんな割合なんですか?

重松:今は個人の方が多いですね。ただ割合的には、個人7割くらいかな。個人事業主やビジネスリーダーみたいな人が多いんです。「イベントを行いたい」という方が多いので。純粋な個人は、あまりいないですね。

経沢:じゃあ、広がりやすいんですかね。その場所でのイベントで、5人くらいが集まったら「へえ、こんなのがあるんだー」みたいな感じで。

重松:その広がり方が、まさにこういう物販EATS的ですね。やりたいなーと思っています。とはいえ、みんなさんもやりたいなと思っているんでしょうけれど。

経沢:私が今、エンジニアに開発させているのはクーポンコードです。といって、真似しています。

上田:TABICAでも使うかもしれません。

経沢:そうそう。自分が紹介したら、例えば1,000円が入ってきて、相手は2,000円など、そういうものです。

重松:そこでまた自分のサービスを紹介して、自分に入ってきて、また使いますからね。そうするとぐるぐる執着してくれるか、どんどん上がっていくので。

重松:相性いいですよね。

髙橋:紹介は、ホスト側もやっていますか?

重松:ホスト側は、ちょっと検討してますね。

髙橋:うちもやっていますね。今だったら配達員が自分の友達に紹介して、その人も働いてくれたらお金が入るという。

経沢:うちもやっています。

上田:そうなんですね。

経沢:やはり、働いている人同士のクチコミはすごくいいんですよね。とくにベビーシッターさんは保育園が大変で辞めることがある。でも、保育士の資格持っているから、「ベビーシッターをやりたい」という人が多いんですね。フリーランスシッター。うちで働くシッターさんのなかには、月40万くらい稼ぐ人もいます。保育士だから人気があるんです。

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