ジョブアサインメントの機会をどれだけ増やすか

水谷健彦氏(以下、水谷):今、「発掘」から「育成」に話が移って来ていますので、このあとは「育成」でいきたいと思います。橋本さんにお出しいただいたスライドを出していただけますか? こちらですね。

この「70:20:10」の割合のなかで、当然ながら70(「仕事の経験からの学び」)が大きいですので、この70をいかに充実させるかがすごく大事なわけですよね。

橋本晃氏(以下、橋本):そうですね。

水谷:ここにどんな工夫や取組みをしているのか。ぜひ、橋本さんから。

橋本:小さくて見えないかもしれませんが、こちらのスライドに弊社の人材育成制度が記載されています。ここには教育プログラムだけではなくて、ジョブアサインメントに関する施策も入ってます。

例えば、3年目以降のところで海外トレーニー、マーケトレーニー。これは先ほどお話ししましたけれど、応募時点では2年目ですね。入社2年目の人間が、「海外に行かせてください」と自ら手を挙げてチャレンジをしてもらう制度ですね。

あとは、社内公募制度として「ブランドマネージャー公募」というものもあります。公募制度自体は一般的なことかもしれませんが、弊社においてはマーケティング部門は大変重要な部門です。ブランドマネージャーはP/L責任を負いますので、非常に重責なのですが、そこのポジションを用意して社内から応募を募るということもしています。

とにかくジョブアサインメントの機会をどれだけ増やすかというところが、先ほどの人材育成の法則における70の部分を担保するところにつながってくるかなという気はしています。

水谷:手を上げてもらって。当然ながら、しかるべきジャッジはあると思いますが、その場所を提供しようと、そういうことですかね。

橋本:はい、そうですね。

社内コンセンサスはどう得ている?

水谷:ちなみに先ほどのブランドマネージャーっていうのは、各製品におけるブランドマネージャーということですよね?

橋本:そうです。

水谷:そうすると、社内のそのポジションは限りがあるじゃないですか。

橋本:ありますね。

水谷:そこはどうしてるんですか?

橋本:社内のポジションの異動に関しては、所属部門と人事部の双方考えます。ポジションをあえて公募で募り、新しい人に機会を提供するということはリスクは伴いますが、人材育成のチャンスでもあるわけですね。

水谷:そこですよね。サイバーエージェントさんは「CA8」と言い切っているから、2年に1回、そこのポジションが空いてと、わかりやすいじゃないですか? そういう空ける仕組みにはしていないんですもんね。

橋本:そうですね。

水谷:そこで社内のコンセンサスを得るのは難しいんじゃないですか?

橋本:難しいですね。そこは部門との話し合いで調整を進めています。

水谷:みなさんそこを聞きたいと思うので、生々しいやつを。

橋本:そこには特別な取組みはないですね。各所属部門と議論を重ねて「このポジションはどうする?」「ここに公募を作りたい」ということは、逐次やるしかないというところですね。

水谷:なるほど。そうすると、その役員の方々も、そうやってブランドマネジャーのポジションを少し空けて、若手を登用してということの重要性を理解している、その考え方が一致しているからできるんですかね?

橋本:そうですね。

明確に成長できるキャリアパスを用意

水谷:新しい方がブランドマネージャーになるということは、外れる方がいるわけなんですけれど、その方はどんなポジションに就いていくんですか?

橋本:社内で別の重要なポジションに移るなど、他のポジションで活躍する道を検討していくことになります。先ほどキャリアパスの明確化というところでもお話ししましたけれど、異動対象となる人材のキャリアをどう考えていくかということを今後しっかりと考えていかないといけない人事の課題の1つと認識しています。

水谷:どういうポジションに就くことが多いとか、過去こういうポジションだったとか。

橋本:セールス部門において重要な役職に就くこともありますし、やはり今は、海外展開を進めていますので、海外のマーケティングディレクター、現地法人のディレクターというポジションに就くケースも多いですね。

規模の大小はあるにせよ、30代前半から半ばで、海外現地法人のディレクターになって、ナショナルスタッフを率いている従業員もたくさんいます。

水谷:また、そのあとにブランドマネージャーに戻ってくる人もいるんですか?

橋本:もちろんです。

水谷:ああ、やっぱりあるんですね。そのあたりも、CA8と近いですよね。

曽山哲人氏(以下、曽山):そうですね。

水谷:曽山さん自身も1回執行役員で、また戻ってこられて。

曽山:そうですね。また戻るというのもありますから。

水谷:今回、戻るのは初ですよね?

曽山:そうですね。

CA藤田社長の言葉「もっとリスクを取れ!」

水谷:どうですか? 社内の反応とか、曽山さん自身の心境とか、どんな感じです?

曽山:私自身はもともと役員をやっていて、とりあえず若手にどんどん席を譲ろうというのがあるので、1回役員を抜けましょう、と。その時に私、社長の藤田からフィードバックをもらって。さっきの7:2:1もそうですけど、フィードバックすることってやはり人材育成には、すごく重要だなと思うんです。

マンツーマンで面談を受けた時に、「曽山くん、6年間取締役やってくれて、人事もすごくよくなったんだけど、あえて1個だけ注文しておくわ。もっとリスク取ったほうがいいよ」って言われたんですよ。

人事ですよ、僕。「人事なのにリスク取ったほうがいいんですか?」って言ったら、「いやいや、絶対取ったほうがいい」って(笑)。

水谷:(笑)。

曽山:それで、役員会ももう出られなくなって、役員じゃなくなるから、「俺のところに報告いらないから、どんどんやっちゃって」と言われて、すごいうれしかったんですよね。

なので、実は役員を6年やっていた時より、執行役員の2年のほうが、僕はずっと成長したという感覚があって。

具体的には、人材抜擢の仕組みを1個作ったんですけど、今日紹介しなかったもので、「人材覚醒会議」という、会議のパッケージを作ったんです。

これはなにかというと、半年に1回役員8人が集まります。そこで2時間だけ時間をもらって、今の活躍してる若手から事業責任者まで、力が余っていそうな50人から70人ぐらいを顔写真付きで、まさにカオナビを使ってリストを作って持っていって。

「別に部署間の引き抜きをしたいわけじゃないし、この場では決めなくていいです」「なんですけど、今からお見せする50人について、みなさんの意見を聞かせてくれ」というふうに前置きしたうえで、「彼は今、活躍しているんだけど、ほかに配置したらもっと伸びるんじゃないか」という提案をするんですね。そういったものをやると、2ヶ月後にだいたい5〜6人ぐらい異動が決まるんですよ。

なぜかというと、やっぱりそこで「もったいないね」という共通意識ができるんですね。経営陣で共通して、社員1人について話をすると、役員が全社の資産として1人を考える。組織は縦割りなので、やはり縦割りになっちゃうとぜんぜん人が動かなくなるので、それはすごくよかったですね。

こういったチャレンジが、フィードバックによって生まれた、そんな感じです。

人材を全社資産にすることの価値

水谷:要はリスクですよね。異動させて失敗したらどうしよう、と。でも、可能性あるからというリスクを取ったと。

曽山:そうです。そもそも役員に時間をもらうということも、「この会議、すごいつまんなかった」と言われるリスクがあるじゃないですか。ですけど、そういうこともとりあえず一生懸命考えてやったと、そういう感じです。

水谷:50人ぐらいリストアップしたものを、「彼らどう?」と出すのは、CA8、いわゆる取締役?

曽山:そうですね。8人に対して私が代表して持っていくという感じですね。

水谷:結果的に5〜6人の異動が決まったというのは、その後、誰をどうしようかということを、取締役同士で相談して決めちゃって?

曽山:そうです。それも1つあります。あとは先ほどご紹介した、役員の新規事業バトルの「あした会議」。「彼女をここに異動させたほうがいいんじゃないか」という、役員級の人事異動も、あした会議はOKなんですよ。すごく優秀だけど、もっと力が活かせるんじゃないか」と私が提案して。翌月にあったあした会議で、「別の部門に異動してもらおう」ということが決まりました。たぶん石田は知らないと思いますけど、そういうような会議が発端でした。

水谷:そうか。50人ぐらいの「もっと伸びる可能性がある人材のプール」が取締役間で共有されるから、あるタイミングで「彼女いいじゃん」「彼、いいじゃん」というふうに引っぱれる。

曽山:そうです。引っぱり出すんですよ。

水谷:プールされてるからね。

曽山:そうです。人材を全社資産にするということがすごく大事で、縦割っちゃうと本当にもったいないということですね。