ゴミをアートに変える魔術師たち--彼らは社会になにを問うのか?

TRASH | 5 Artists in 5 Minutes

一般的にはゴミとみなされる食品のパッケージや金属片などが、アーティストの手にかかれば立派なアートになりえます。YouTubeのアート系チャンネル「Little Art Talks」のカリン・ユエン氏が、廃棄物で芸術作品を制作する5人のアーティストについて解説します。

ゴミをアートに変えた芸術家たち

カリン・ユエン氏:ある人にとってのゴミが、別の人にとってはアートになります。

みなさんこんにちは、「Little Art Talks」へようこそ。カリンです。今日の「5 Artists in 5 Minutes」は、廃棄物で芸術作品を制作する5人のアーティストについてお話しましょう。

エル・アナツイ(El Anatsui 1941年~)は、キャリアのほとんどをナイジェリアで過ごした、ガーナ出身の彫刻家です。彼は、アルコール飲料のリサイクル施設からもたらされた、砕かれ折り畳まれた無数の金属片を組み合わせ、銅線で一緒に結合した大規模な彫刻で知られています。

彼の素材の使用は、再利用や物質の変換に対する関心と、場所の制限を超えた広がりに接続しようという内なる欲望を反映しています。

彼のアートは、植民地主義の歴史を問うもので、消費と廃棄、環境への関係性を引き出すものです。その核心には独自の造形語彙を持っていて、それが彼の実践を特徴づけています。

非常に巨大なこれらの作品は、金属光沢があり、重量感があり、繊細に織りなされたものであると同時に可鍛性のあるものです。インスタレーションを設置するときはいつでも、異なる形態になるように、開かれた状態で置かれます。

ロバート・スミス(Robert Smith)は、「作品はチェーンメールを思い起こさせ、モザイクだけでなく、さまざまな文化における祭祀の布や動物の毛皮の衣服の引用が認められる。その襞や折り目には、輝く彫刻的な現前があり、明らかに魅力的な輪郭がある」と記述しています。

スージー・ガンシュ(Susie Ganch 1970年~)は、装身具も制作するなど、現代工芸をもとにしたアメリカのアーティストであり、アートと工芸とデザインの曖昧な境界を模索し続けています。彼女の作品は、大量のプラスティック食器やコーヒーの蓋のような素材の用途を変え、環境と消費、美と装飾との対話を立ち上げます。

ティム・ノーブル(Tim Noble 1966年~)とスー・ウェブスター(Sue Webster1967年~)は、イギリス人アーティストの2人組であり、ポストYBAs(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)世代の仲間です。

彼らの影の彫刻は、家庭ゴミやスクラップ金属、食肉動物などの素材を取り混ぜたものです。1点の照明がある特定の角度から投影されると、この寄せ集めは、アーティストたち自身の輪郭でもある、精度の高い影に変容します。

「汚れた白いゴミ(Dirty White Trash)」(1998年)は、6ヵ月分の廃棄物から彫刻され、それはこの作品を制作している期間生きのびるために必要なすべての残骸です。光源がゴミの堆積を照らすと、影は肖像を生み出し、それを作った素材との落差のある対比を示します。お互い背中合わせでもたれかかった2人のアーティストは、ワインや煙草を楽しんでいます。

アートを社会変革の手段に

ノア・プリフォイ(Noah Purifoy 1917~2004年)はアフリカ系アメリカ人のビジュアルアーティストであり、彫刻家です。1965年8月に起きたワッツ暴動(注:カリフォルニア州ワッツ市で起きた人種差別に反対する暴動放火事件)の数ヵ月後、プリフォイとジャドソン・パウェル(Judson Powell)は「66のネオン記号(66 Signs of Neon)」という展覧会を組織します。

この展覧会は、8月の出来事を受け止める手段として、6人のアーティストが、現場から救出された廃物を用い制作した作品で構成されています。暴動の後20年間、プリフォイはアートを社会変革の手段にしようと、ファウンドオブジェ(注:流用、転用された物による構成)に専心します。

1980年代後半プリフォイはモハーヴェ砂漠に移住し、ここ15年はカリフォルニア州ジョシュア・ツリー近隣の10エーカーの土地に野外彫刻美術館を建設します。美術館には、1989年から2004年までに制作した、大規模なアッサンブラージュ(寄せ集め)作品や、荘厳な小屋、環境彫刻やインスタレーションなどの100点以上の作品があります。

ポール・チャン(Paul Chan 1973年~)はアメリカのアーティストです。彼のシングル・チャンネル・ビデオ・プロジェクションや、アニメーション、マルチメディア・プロジェクトといいった映像作品は、地政学的グローバリゼーションや政治犯罪への抗議、暴力や逸脱、ポルノの記録、言語やニューメディアなどといったテーマを扱っています。

「私の鳥……ゴミ……そして未来(My birds…trash…and the future)」(2004年)は17分のアニメーションで、暗殺された映画監督のピエル・パウロ・パゾリーニとラッパー歌手ビギー・スモールズをもとにした登場人物が荒涼とした風景を漂います。

その風景には1本の木しかなく、聖書のレビ記の中の鳥、黄色いハマー車に乗ったパパラッチと狩人が登場します。このアニメーションは、14フィート(4.27メートル)の長いスクリーンの両側から投影され、音声はおもちゃの銃口から流され、これを聴くには片耳を近づけて持ち上げる必要がありました。アニメーションには、木炭のドローイングと鳥の印刷物が付属しています。

今週の「5 Artists in 5 Minutes」でした。

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Karin Yuen(カリン・ユエン)がアートの世界をわかりやすく解説するYouTubeチャンネル。古今東西のアートにまつわる豆知識をお送りします。

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