虫から作られるカーマイン
カリン・ユエン氏:今日は、虫からできる顔料についてお話ししましょう。みなさんこんにちは。Little Art Talksへようこそ、カリンです。
カーマイン(日本語で洋紅)は、明るい赤の色素で、造花や深紅のインク、絵の具、そして化粧品などを作るのに使われます。また一般的には、食品にも添加されます。そう、ヨーグルトやキャンディー、ジュースといった食物にも微量のカーマインが含まれていることもあります。
先ほどカーマインは昆虫から作られるとお話しましたが、とりわけ、コチニールカイガラムシ(別名エンジムシ)と、そこに連なる特定の種のカイガラムシ(ラックカイガラムシ、ケルメスカイガラムシ)と言えるのかわかりませんが、そのような種類のカイガラムシから製造されます。
今日コチニールカイガラムシは、主にペルーやカナリア諸島のプランテーションで、彼らが好むウチワサボテンを宿主として養殖されています。
乾燥させたカイガラムシは、アンモニアで煮沸され、あるいは炭酸ナトリウムで溶解され、溶剤になります。この時点で液体にならない残りの体の部分は取り除かれます。それから、カルミンレーキまたはクリムゾンレーキと呼ばれる赤いアルミニウム塩を沈着させるために、ミョウバンが加えられます。
約7万匹の昆虫が1ポンドの染料を製造するのに用いられるのです。なんて大量の虫でしょうか。
カーマイン酸という物質が実際に赤い色を放出しますが、これはもともとカイガラムシの体内で分泌されるものです。この物質は自然界では捕食者の抑止力として機能しています。ティリアンパープル(貝紫)の動画をご覧いただいた人なら、似たような例であることがわかるでしょう。
この色は鉄分の含有や、その場の温度、照度によって変化します。石灰を加えるとより紫味を帯びた色となり、沈着の前にゼラチンや、卵白や魚肉を加えるという方法もあります。
ミケランジェロの絵画にも使われた
カーマインは古代から織物や絵画に用いられてきましたが、1500年にヨーロッパ人が南アメリカまで進出した時、アステカ人が鮮やかなカーマインで織物を染める方法を学びました。この明るい色彩と長時間持続するという特性に惹きつけられ、乾燥したカイガラムシは主要な貿易取引品になったのです。
カーマインは、アメリカでもヨーロッパでも広く尊重され、ミケランジェロやティントレットの絵画にも用いられました。
そして洋紅の織物はイギリス軍の軍服や、王立カナダ騎馬警察(注:緋色の制服で有名なカナダの歴史ある警察隊)の制服にも用いられました。しかしながら、油絵具ではそこまで安定していないため、良質のほかの赤い顔料が利用可能になると、すぐに人気を失っていまいます。
そう、みなさんは、昆虫の入った食べ物を食べているのか気になるでしょう。答えは、おそらくそう、あり得ます。もしアメリカ合衆国に住んでいるのなら、以下のことはご存知でしょうか。2009年まで、カーマインは自然色素、自然成分として、成分の表示義務はありませんでした。激しいアレルギー発作を示す人もあるとされ、今では別箇に成分表示が義務付けられています。
よって今でも食品には用いられているのです。ご想像のように、食品産業は、虫がもとになった着色料をラベルに載せることに実際は抵抗があるでしょう。ですが、もし食物にカーマインが添加されているか知りたかったら、コチニール色素やカーマイン、天然色素(アメリカではnatural red 4)と示されています。
昆虫を食べるということは、ちょっと気持ちが悪いかもしれません。ですが、世界各国で昆虫食は行われていますし、そう悪くはないでしょう。食べ物を気にしない人なら、知らないうちに食べているかもしれません。ですが、ベジタリアンで動物性食品を食べない人や、動物性食品を制限している人は、注意したほうがいいかもしれませんね。