クラウド提案で言われたキツかったひと言

西脇資哲氏(以下、西脇):そこで、みなさんに聞きたいのは、お二人ともクラウドの提案をしてきているわけですね。今まで、5、6年やってきたわけです。7、8年かな。

ここで、クラウドを提案しようと思って、一生懸命お客様にお話したのに、「うわ。これ、キツい。このことを言われたら」という、非常にキツかったひと言を教えてほしいんですね。

つまり、このひと言さえもらわなければ、この人を突破できるのに、とか。こんなことを言うなんて、この人は変わってないなあとか。そういうひと言。お客さんがおっしゃるのかなぁ。SIの方がおっしゃるのかなぁ。

砂金信一郎氏(以下、砂金):(小島氏の回答を見て)やっぱりそれ言われるんですね(笑)。

小島英揮氏(以下、小島):これ、言われるねぇ。

西脇:さぁ! これは、砂金さんからお願いします。

砂金:今日、身内の人が多いんので該当者がいたら、嫌なんですけど(笑)。お客さんじゃないんですね。敵は身内にあって。

西脇:そうなんだよ(笑)。商売構造が変わるから、危機感がそこに出てくるんだよね。

砂金:普通にスケールサーバと、ウインドウズサーバで提案をしていた大きめの案件があって。その商談が進んでいたはずなのに、「クラウドに興味あるから」っていうので、僕に言われて「こんな感じのアーキテクチャーでやったら、ぜんぜん初期コスト安くいけますよ」みたいな提案をして、お客さんは大喜びで、僕らもこれはいい事例ができるな、みたいに喜んでたんですけど。

でも、喜ばない人たちがいるんですね。そこが売上げ上(じょう)、このクオーターに売上げが立つことが決まっていて、マイクロソフトさんの営業とか、パートナーさんの営業から、一斉に斜め後ろから刺されました。

西脇:だいぶ血、流してましたもんね。

砂金:AWSと戦って、Googleと戦って、正面で潔い戦いは、「負けました。敵いませんでした」で、それはぜんぜんいいんだけど。

敵は身内にあり、イノベーションのジレンマ

西脇:でも、結論はどうなったんですか? 俺の売上げは結局どうなったんですか?

砂金:どうにもならないですよ(笑)。補填できないですもん。

西脇:どうにもならなかったら、よくないじゃん。やっぱり、その人たちにとっては困るわけじゃん。

砂金:困る。困るから、結果、どうなるかと言うと、クラウドの初期の頃、とくにオンプレ大好きなみなさんは、「クラウド提案すると、売上げが下がる」「俺の数字いかねぇよ」みたいな。

西脇:実際にいかなかった人がいるからね。

小島:だけど、ストックビジネスとフロービジネスを履き違えてますよね。例えば、AWSって、年率60パーセントで成長してすごいとかって言うじゃないですか。でも、あれは、前の年の売上げがちゃんとあるからなんですよね。

西脇:そう。そこから描いてるからね。

小島:ある分岐点になると、ものすごく大きい売上げなのに、成長し続けることになるんですよね。

西脇:それを誰かが描いてあげるか、誰かがお手本を見せてあげるか、なんらかのかたちで答えなきゃいけないよね。

砂金:そうですね。

西脇:それって、やっぱり、メーカーの仕事だと思うし、ブームを作っている人の仕事だと思うんだよね。

砂金:たぶん、セールスフォースとAWSは、初期のころ、それをすごくうまくやっていたんだけど、マイクロソフトはその点において、若干、出遅れたね。

西脇:既存のビジネスがあるからね。

小島:イノベーションのジレンマ的なやつですよね。

砂金:それがありましたね。

「本屋のサーバに用はない」

西脇:小島さんはどんな感じですか? 教えてくださいよ。なんて言われるとキツかったんですか?

小島:キツいって、だいぶ慣れましたけど。

西脇:言ってください!

小島:よく言われるのはこれですね。「本屋のサーバに用はない」。

西脇・砂金:あははは(笑)。

西脇:用はねぇと(笑)。

小島:たしかにそうかもしれないけど、たぶんトラフィックもトランザクションも、扱ってるデータもぜんぜん違うと思うんですけど。

西脇:でも、当たってるもんね?

小島:当たってる。この言葉自体は否定できないんですよ(笑)。だけど、ものすごくテクノロジー的に低く見られるんですよね。これは、さっき、相手にわかってもらう努力がすごく大事だって話をしましたけど、1回耳が閉じた人を開けるのは、けっこう難しい。

西脇:大変なんですよね。

小島:どんなに説明しても、「でも本屋のサーバだよね」みたいな。

西脇:本も売ってねぇよとかって突っ込むしかないですよね。家電だって売ってるよみたいな。

小島:だから、後半の頃、僕がエンタープライズ向けのいろんなコンテンツを作る頃は、「なぜAmazonがこういうことをやっているのか」「どれくらいのトラフィックがあるのか」という、なぜから話をすることが多かったですね。そうしないと、結局、ここ(「本屋のサーバに用はない」)にいっちゃう。この本屋がすごいよってことになれば、本屋のサーバでもいいんですよ。

最高の営業マンはお客さんの事例

西脇:これを打破するための最高のひと言をくださいよ。

小島:最高のひと言? 難しいですね。でも、結局、なにが打破したかと言うと、日本のお客さんの事例なんですよね。

西脇:あ〜、やっぱりそうなんだ。

小島:「事例くれくれ」みたいな話は最近ありますけれど、あれは、半分正しくて、半分おかしいんですけど。

西脇:たしかに、Amazonさんは、初期に、いいお客様を捕まえて、捕まえてって言ったら怒られるけど、事例にしてましたよね。

小島:それを見えるようにしたのが、たぶん、すごく大事で。

西脇:あれすごいなと思いましたよ。

砂金:あれ、ただの事例じゃないんですよ。社外のエバンジェリストなんですよね。ドコモの栄藤(稔)さんなんて、ほぼAWS売って歩いてたじゃないですか。

小島:そうですね。

西脇:これは、今日いらっしゃっている人もそうなんですよ。マイクロソフトとも非常に関係が深いお客様がいらっしゃっているので、その方が、みなさんご自身が広めていく役割だと思うんですよ。そのために、やっぱり、今日ご参加されているわけですからね。そういう方が、事例になったら最後、味方になるって話なんですよね。

小島:そうだし、結局、耳をふさいでいる人って、僕がベンダーだからふさいでるんですよね。だけど、隣のいつも話をしている同業の人とか、リスペクトしてる人が「Amazonいいよ」「MSいいよ」って言えば、普通に聞くんですよ。

だから、「カスタマートーク to カスタマー」だったり、「デベロッパートーク to デベロッパー」みたいなものは、すごく聞くんですよね。そういう意味で、事例はピアーの人が話すという意味ですごく大事なんです。

正直オンプレミスがよかった案件もある?

西脇:なるほど。そういう言葉をもらいながら、非常に苦労しながら、7、8年やってきましたと。7、8年間やってきたなかで、どうしても聞きたいことがあるんです。

クラウドのビジネスばかり、2人は率いてたわけですね。そんななかで聞きたいなと思ったのは、「ぶっちゃけ、とは言っても、オンプレミスがよかったんじゃないかな。この案件」みたいなやつが、あったかどうか、これは○×で。

砂金:これ、たぶん、マイクロソフト的には答えやすい問題なんですよね。たぶん、僕も所属しちゃいますけど。

西脇:ぶっちゃけ、どうなんですか? 「せーの」で出してください。

やっぱりそうなんですね。これ、どういう案件がぶっちゃけオンプレミスがよかったんですか? でも、クラウド提案しちゃったんでしょ?(笑)。

小島:いやいや。クラウド、基本的にはいいんですよ。だけど、ちょこちょこ使うのは、あまり意味がなくて、本丸を本当は移動したほうがいいんですよね。

だけど、なんでもないサブシステムをクラウド移行して、移行したけどファイルサーバだけです、と。これ、サーバ遠くなっただけですよね。

西脇:そうなんですよね。ファイルサーバなんかとくに言われます。

小島:あと、処理系はクラウドに持っていったけど、データベースは社内になきゃいけないみたいな規定で。データベース、すごくレイテンシーが大きくなってますけど、と。

これは、オンプレがよかったというよりは、両方クラウドに持っていってもらうか。

西脇:昔よくレイテンシー言われましたよね。今は、ほとんど言われなくなったけどね。

砂金:僕がこれで後悔しているというか……、当時のお客さんには、いい実証実験ができたな、勉強代だなと思っていただければいいんですけど、やっぱり、レイテンシーとか、データベースの性能が求められるものに、クラウドを初期の頃、提案して。Aurora前だったので、やっぱりそこをどう工夫しても性能がでなかったんですね。

西脇:だから、オンプレに戻したほうがよかったんじゃねって話?

砂金:オンプレでFusion-ioをメッタ刺しにしたほうがぜんぜん性能出るし。ちゃんとお客さんのサーバが稼働して盛り上がっていれば、売上げが上がるから、別に、安いからクラウドとか、そういう話じゃなかったんですね。

西脇:そうすると、その会話だと、性能を出そうと思うと、オンプレも1つの提案の選択?

砂金:ぜんぜんありだと思います。