Googleのジョークが「ポケモンGO」へつながった--Niantic・野村達雄氏が誕生の裏側を語る

Keynote Session「大ヒット! ポケモンGO誕生秘話と今後の展開」 #1/2

TechCrunch Tokyo 2016
に開催

2016年7月に配信され、瞬く間に世界中で話題となった「ポケモンGO」。同年11月のTechCrunch Tokyo 2016では、ポケモンGOのゲームディレクター・野村達雄氏によるキーノートセッションが行われました。世界で最も話題となったといっても過言ではないポケモンGOは、どのように誕生したのか。また、ゲームの根底にあるものとは?

きっかけはGoogleの伝統行事

野村達雄氏(以下、野村):NianticでポケモンGOのゲームディレクターをしている、野村と言います。

まずは、ポケモンGOにはどういう歴史があり、作られてきたのか。もう1つ、ポケモンGOのARはどう考えられているのか。そのあたりを話していきたいと思います。

僕のバックグラウンドから少し紹介させていただきます。先ほど紹介にもありました通り、もともと僕はGoogleでエンジニアをやっておりました。2011年に入社しまして、最初はデスクトップのマップのいろんな機能の担当をしていました。

そのうち、Google本社に転勤して、Google マップのAndroid版のレンダリングやラベルと呼んでいるテキスト情報、ストリートの名前、場所の名前とかをレンダリングしたり、どうレイアウトするなどを、エンジニアとしてやっておりました。

そのあとにNianticに入りまして、今に至ります。

Googleには、毎年、エイプリルフールにおもしろいことをやる伝統があります。ここでもいくつかリストアップしたんですけど、「Google日本語入力をドラムで入力する」「Google Translationが動物の言語に対応する」など、そういうジョークをやるイベントがあるんですね。僕は当時、Google マップチームに当時いて、年末になるとみんなで「来年なにやろうか」と話していました。

2011年の年末、みんなで「来年はなにやろうか」「Google マップでどんなおもしろいことをやろうか」と話をしているとき、「Google マップをドラクエみたいにしたらおもしろいな」と思ったんですね。

僕は今30歳なんですけど、子供のころにゲームばかりやっていて怒られていた世代だったりします。ファミコンやスーパーファミコンなど、そういうものでいっぱい遊んでいました。

大学のときに、自分で……ハードウェアを作れる「FPGA」というものがあるんですが、それでファミコンを作るなどしていました。ゲームには昔から興味があって、さらに言うと、最新のゲームよりレトロなゲームが好きだったのです。

Google マップがドラクエになった日

「Google マップでドラクエ風の、それもファミコンのころのものにしたらおもしろいんじゃないか」というアイデアを思いつきました。さっそく席に戻って……Chrome Extention(クローム拡張機能)という、Chromeのブラウザ上でいろんなスクリプトを動かせるものがあるんですが、それでプロトタイプを作りました。

これが当時に作ったものなんです。なにをしているかというと、Google マップの画像を見て、青いところには水の画像を当てはめ、緑のところには木……という、すごく単純なプログラムを作っていました。

確か、2時間か3時間くらいでできたものです。ご覧の通り、これを見ただけでもイメージがわくと思うんですよね。

これがちゃんと作られたらどうなるか。

みなさんのなかで、会社を起こしたり、新しい物を作ったり、そういうことをチャレンジされている方が多いと思います。そうしたときに、文章で「こんなことやる」「こんなことやる」と書くよりも、デモを1つ作るだけで説得力が変わります。

これをパッと見たときと、「マップをドラクエにしよう」の言葉にしたときを比べてみても、ぜんぜんインパクトが違います。人によりますが、実際には2時間あればデモが作れます。文章を書くよりもコードを書いたほうがはやいことが多いです。

僕の場合は効果的だったので、みなさんもなにかアイデアがあるときは、「デモを作って見せる」のほうがいいんじゃないかと思います。

そして、このデモをみんなに見せました。みんなもけっこう好きで、喜んでくれました。

そして、実際にこれをGoogle マップでやりました。デモは先ほど申し上げたようにChrome Extentionで画像処理しているだけなので、これでは、どうにもなりません。本当にちゃんとやるには、Google マップのWebサイトにいったとき、「マップを見たらドラクエみたいになっている」としなければいけない。そのため、デモから実際の製品になるまでには、けっこう距離があります。

これが、最終的に作られたものです。世界中のGoogle マップがドラクエみたいな雰囲気になっています。ズームインしていくとわかるんですけど、ちゃんと細かいところも作っていて、山があったり、東京がお城になっていたり、もう少し小さい都市だと村のアイコンになっていたりします。

そのほか、富士山があるなど、けっこう細かいところを作りこんでいるんです。チームの人達と作って、2ヶ月くらいかけてローンチしました。もちろんGoogle マップ上には、ドラクエの竜王なども含めて、モンスターもいっぱい置いてみました。

これがけっこう評判で。いろんな方に大好評をいただきました。ただこれ、プロダクトはあるんですけれど、エイプリルフールなので、なにかしらジョークがないといけない。このときのジョークが「Google マップがファミコンに対応する」です。このときの動画も一緒に作ったんですけど、アップしてすぐ数百万再生あったりと、かなり好評でした。

翌年もいろんな人から「来年なにやるの?」と言われました。自分でハードルを上げてしまって困ったんですが、「今年もなにかやるんでしょ」という期待もあるので、いろいろ考えたんです。

そして、その次の年にはGoogle マップを宝の地図みたいにして、いろんな宝物を置いたり、モンスターがいたりして、そこをユーザーがズームインして探していく……。1年目のドラクエのとちょっと似ているんですが、違うかたちのものを作りました。

Googleのジョークが、のちのポケモンGOを作る

さらに、その次の年ですね。またGoogle マップですが、今度はモバイル版です。

僕はこのとき、アメリカでGoogle マップのAndroid版を担当していました。そのときもまた、いろんな人から「来年どうするんだ」と言われて。けっこう大変なので「来年はやらない」と言い張っていたんです。とはいえ、「まあアイデアだけでも」といろんな人と話していたら「ポケモンがGoogle マップにいたらおもしろいんじゃないか」と思いついてしまってですね。

先ほどお話したとおり、最初は「今年はやらないぞ」と言っていました。でも、ポケモンのアイデアを思いつくと、「これならおもしろいことできそうだ」と、自分のなかに確信がありました。これもまた、すぐデモを作ってみたんですね。このデモも、先ほどのものと同じように簡単に、2時間くらいで作りました。

Google マップの上にポケモン、ピカチュウを出して、それをタップするとメニューが出てきて、モンスターボールが出てくる。それをタップして、ピカチュウをゲットする。

本当に単純なデモだったんです。これをいろんな人に見せてみました。やはり、実際に動くものを見ると、ぜんぜん反応が違いますよね。

「ポケモンをやる」というアイデアの段階でいろんな人に話したんですけど、そのときは「ふーん」くらいの反応でした。でも、実際に作って見せてみると、みんな「おーっ」と声を上げていて、だいぶ反応が変わりました。

これが「いけそうだ」と、実際にGoogle マップに実装して、2014年にGoogle マップで「ポケモンチャレンジ」をやりました。このポケモンチャレンジは、先ほどのドラクエと同じように、ものがあるだけじゃ足りないんですね。エイプリルフールなんで、やはり、ジョークがないといけない。

このときのジョークは、「Googleでポケモンマスターを募集している」でした。そういったストーリーを作ったんですね、「Google マップでポケモンをつかまえて、みなさんをポケモンマスターのようにテストする」「採用試験があった」と、そういうジョークでした。

実際にローンチして、いろんなかたに遊んでもらいました。そのときは151匹ポケモンがいて、今とはちょっと種類は違うものでしたが、それをマップ上に出していました。そして、みんなに捕まえてもらいました。

151匹捕まえた方には、ポケモンマスターの名刺を送りました。これは後でお話するポケモンGOにも関連しますが、ゲームが電話やデバイスのなかだけ……といった閉じたかたちではなくて、外に広がっていく。これは、僕のなかでの1つの挑戦だったと思っています。

このポケモンチャレンジがあり、そのあとに僕はNianticに移り、ポケモンGOを作ることになります。

「人を、誰かとともに、足で冒険をさせる」を目指すスタートアップ

まず、「Nianticとはなにか」をお話しします。このロゴに見覚えありませんか?  「いつまでたってもロードしてるぞ」と思われているとは思うのですが……(笑)。がんばって、もっと最適化します!

(会場笑)

このロゴ、前までは多くの方に知られていませんでした。ポケモンGOのローディングスクリーンで出るようになってから、いろんな人に認識していただけるようになりました。

これはNianticという、僕がいる会社です。もともとGoogleのなかの社内スタートアップとして始まった会社で、ジョン・ハンケというCEOが作ったスタートアップです。

彼はもともとGoogle Earthの前身となるKeyholeという会社を創業しています。GoogleがKeyholeを買収して、それがGoogle Earthになっています。Googleに買収されたあと、彼はGoogle マップチームのVP(vice president)として何年かやっていたんですけど、その後に「なにか新しいこと、新しいチャレンジをしたい」と、外ではなくてGoogleの社内でスタートアップを始めたんです。当時はNiantic Labsと呼ばれていたものでした。

Nianticを創業するにあたって彼が考えたのは「人を外に連れ出したい」です。これは我々のミッションステートメントでAdventure on foot with others.という、「人を、誰かとともに、足で冒険をさせること」です。つまり、人を外に連れ出して、いろんな発見をさせたり、エクササイズをさせたり、ソーシャライズでコミュニケーションをとったりさせるためのスタートアップとして、Nianticを作りました。

最初に誕生した「Ingress」

人を外に連れ出すのに方法はいろいろあるんですけれど、Nianticが最初に考えたのがゲームでした。ゲームのほとんどが、家にいてソファーに座って遊ぶ、「外に出かける」とはぜんぜん違うものでした。彼が、子供が家から離れずにゲームばかりやっているのを見て、「じゃあ、外でできるゲームを作ればいいんじゃないか」と考えて、「Ingress」を作りました。

Ingressエージェント(プレーヤー)はいますか? ……ぱらぱらいますね。

Ingressとは、どういうゲームなのか。実際の世界を1つのゲームボードとして使うようなゲームになっています。ここに出ている銅像みたいなものがあるんですけど、Ingressのなかでは「ポータル」と呼ばれています。これについては「ポケストップと似たようなもの」といえば、みなさんわかりますね。実際の世界にある銅像や、歴史的な建造物、おもしろい看板、そういったものが地図上のある場所に「ポータル」を設置して、プレーヤーが自分の足でそこまで行き、ゲームをする。そういう仕組みです。

我々の会社のオフィスのすぐ近くにある大きな弓矢のようなものなんですけど、そこもポータルが設置されています。そのため、Ingressエージェントやポケモンのトレーナーは、ゲームをするだけじゃなくて、実際にそこの場所にいって、「こんなものがこんなところにあるんだ」と発見をしたり、その場所についてちょっと学んだり、他の人と一緒に行けば「これはなんなのか」と話したり、コミュニケーションをとることができる。そういう仕掛けを考えて、作っていました。

Ingressでは2つのファクション、チームに分かれます。ポータルを取り合うゲームでもあるので、いわゆる対戦ですね。ポケモンではチームが3つありますが、Ingressはこの2つのファクションが存在します。このチームに所属しているエージェントがポータルに行き、そこでリンクを張ります。ここにあるポータルからもう1つのポータルに移動してゲームアクションをとると、この2つがリンクされます。それが、基本的なゲームプレイになっています。「人がすごく動き回る」というゲームなんですね。

今までのゲームとなにが違うかというと、1つひとつの点が、実際の世界のどこかにある場所とつながっているところです。そこまで、実際に誰かが行っているんですよね。

ゲームをするためにわざわざ行って、操作し、また次の場所へ行く。最低でも2カ所へ行かないとリンクを作れませんので、たくさんの人達が世界中を動き回り、このゲームをすることになる。これは、すごく新鮮なものでした。

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TechCrunch Tokyo

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1 Googleのジョークが「ポケモンGO」へつながった--Niantic・野村達雄氏が誕生の裏側を語る
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