IT部門に今、なにが求められているのか?

青野慶久氏(以下、青野):それでは次のテーマ、ガラリと変わりまして「現場と情シス」というところにいきたいと思います。

IT業界も問題をはらんでます。よく言われるのが、この現場と情シスが共に生きてないねってことです。またいくつか資料をお見せして、ゲストをお招きしたいと思います。

これはもう毎日のようにニュースで流れますけれど、IT部門が無能だとか社内的地位が低いとか正当に評価されてないとか、こんな感じによく書かれます。情シスは頑張っているのに、IT部門は頑張ってるのに、なにか報われないなと思います。

そんななか、露骨にお金も動いておりまして、例えばITのシステムを買うときにIT部門が決定権を持つ割合がどんどん減っています。つまり、IT部門の人以外のところでITが買われ始めていると。

こんなデータも出ています。実は私たちのシステム購買担当にも影響が出ています。例えば私たちはkintone、アプリケーション開発プラットフォームですから、基本的にIT部門が買うだろうと思ってやっているんですけど、実際にIT部門が買っている割合は2割。それ以外の8割は、違う部門が買っている。こういうけっこう衝撃的な事実があります。

そうすると私たちも、もうIT部門に営業に行かないわけですね。「ほかの部門に行ったほうが買ってくれるぞ」みたいな、こんなことが起きています。

そして、IT部門に今、なにが求められているのか経営者の視点からいきますと、新しいビジネスを実現するシステムを企画して構築してくれと、こんな話になってます。Uberみたいな新しいビジネスのシステムを作ってよ、みたいな。これが今、IT部門に求められているそうです。なかなか厳しいですよね。

実際にそれが一番求められているんですけれど、2番目に求められているのは、例えば3つ目の全社的視点でデータ管理、全社のシステムを見てよとか、5番目の情報セキュリティの体制整備とか。今までの全社システムを見ながら、セキュリティも見ながら、新しいビジネスを作ってくれみたいな、こんなけっこう厳しい要求がIT部門につきつけられています。

ITは人材不足真っ盛りであります。今の時点でも20万人ぐらいが不足していて、これが2030年になると80万人ぐらいIT人材が不足すると言われています。困りました。人もいないのに「新しいことをやれ。でも今までのこともやれ」。どうするんだ、ということになります。

6名で150アプリを開発、京王電鉄バスの事例

そんななか、つい先日こんなニュースが出ました。「kintoneで150のアプリを次々開発。京王電鉄バスさんが業務改革をしている」150ですよ。まだkintone導入されて、そんなに経っていないんですけど。

「なんなんだ、このスピードは」ということで、あまりにも気になりますから、今日はこの京王電鉄バスのIT部門で課長をされている虻川勝彦さんをお呼びしております。大きな拍手でお迎えください。どうぞお入りくださいませ。

まずお聞きしたいんですけど、150はけっこう多いと思うんですが、これは一体何人ぐらいで情報システム部門を回されているんですか?

虻川勝彦氏(以下、虻川):システム部門は、私を含めて6名です。

青野:6名で150。すごくハイスピード開発なんですけど、一体どういったプロセスで作られてるんですか?

虻川:この生産性を出せているのは、やはりkintoneのアプリ開発が非常に簡単であることがとても大きいと思います。

青野:ありがとうございます。

虻川:システム開発をするときに、今まではウォーターフォールできちっと要件を決めて、ドキュメント化をして、あとあと問題にならないように役割や責任分担を決めてみたいなことをやっていたと思います。

青野:そうですね。

虻川:kintoneでの当社のアプリ開発はほとんどの場合、ユーザーと打ち合わせをしながら目の前でモノを作っていくというプロセスで、非常に短時間でユーザーとの意識の乖離も齟齬もなく、どんどん作れていっています。

青野:面前開発をされているんですね。

虻川:そうですね。

ユーザーの目の前で作っていくメリット

青野:でも、私たちはツールとしてはもちろん開発時間を短縮できるようにはしますけれど、そのプロセスに変えていくのってシステム部門の方は嫌がりませんでした? そんなことないですか?

みなさんやはり、今までのプロセスのやり方に慣れておられるので、ユーザーと一緒に作るとか、なかなかそういう発想にシフトしていけないんじゃないかなと思うんですけど。

虻川:はい。やはり社内でもドキュメント化をしっかりやろうって声があったのも事実なんです。

大事なところは、データがどこにどう管理されているのかを、しっかりと可視化することだと思います。それさえしっかりできていれば、あとはドキュメント作成は生産性とトレードオフの部分も多いので、kintoneで設定した画面があれば、ドキュメントの役割を担う部分が多分にあると考えています。

青野:今までだったら、設計して設計書を持って作るのが当たり前だったのが、逆に作っちゃって。それで、この結果をもって設計書を残す。そんなふうにプロセスが変わった、そんなイメージでよろしいですか?

虻川:そうですね。実際にその設計書を起こすのもユーザーからヒアリングをして、SIerやシステム部門がヒアリングすると思うんですけど。

ユーザーさんもシステムを作ることに慣れていないことが多いので、考えていることをなかなかそのまま口にできないと思うんですね。

青野:そうですね。できないですよね。

虻川:ユーザーさんの頭の中にあるものをうまく引き出して、kintoneの画面上で見せながら進めることが生産性を上げる点では一番大きいと思っています。

青野:なるほど。ユーザーに設計して、と言っても無理だから、ある意味システム部門はよく業務を理解して、聞いてあげないといけないわけですね。これはなかなか大変ですね。

虻川:「こんな感じでしょうか?」「ここ、こんな感じでしょうか?」みたいな。

青野:それをシステム部門の方がされるんですか?

虻川:そうですね。

小さな成功体験がモチベーションを上げる

青野:それはかなり意識改革が進んだんじゃないかなと思うんですけど、どんな手を使ってみなさんの意識改革をされたんですか?

虻川:いろいろな雑誌の調査とかでも業務改革、業務改善をシステム部門が求められているということが、出てると思うんですよね。ですけれど、それを大上段に掲げたところで、なかなか人がついてこないというか、どう動いていけばいいかわからないってところがあるかと思います。

kintoneみたいなツールを使っていけば、小さな成功体験というものが、簡単にどんどん積み上げられていくんですね。

作ったアプリをユーザーに使っていただいて、実際に自分の目でここが改善されたということが見えていければ、モチベーションはどんどん上がっていくと思います。

青野:なるほど。小さな成功をして現場の人に喜ばれて、「このやり方でいいんだ」と。そんなふうにして意識改革が進んでいくんですかね。

虻川:そうですね。納得性が大事だと思います。 

青野:でも役員の方とか、なにか言いませんでした? 役員の人ってシステムをわかっていないから「設計書出せ」みたいな、ややこしいことを言われませんでした?

虻川:設計書を実際に役員が見ることはそうそうないので、そこの部分はあまり言われなかったです。ただシステムを作るときに「kintoneでやりたいです」と言ったときは、「なんだ、それ?」ってやっぱり言われました。

kintoneのよさ、コスト面を具体的に説明していくとスモールスタートで始められて、「こんな金額でできちゃうんですよ」と言うとやはり驚くわけです。

「大丈夫なのか?」というのは言われますよ。それは、「責任持ってやります!」と言うしかないです(笑)。

「1個あたり15円」の費用対効果

青野:なるほど。システムわからないから、気持ちを見せるしかないですね。では、その少ない金額でまずはスモールスタート。そこも小さく役員の気持ちをつかんでいくと。

虻川:そうですね。実際に今、kintoneは1ユーザーで、月1,500円ですよね。私、営業みたいですね(笑)。今後、使う範囲が広がっていくとユーザー数が多くなっていくので、最終的にはコスト高になるんじゃないかってことはやはり指摘されるところだと思います。

ですけれども、kintoneはaPaaS、アプリケーションパースと言われるアプリ構築インフラですので、実際にアプリをいくつ作ってもいいというところがあります。そうすると100個作れば15円。

青野:「1個あたり15円だよね」という言い方ができるわけですね。

虻川:そうすると、活用すれば活用するだけ費用対効果は上がっていきます。

青野:なるほど。

虻川:なので、そこも経営層に理解してもらうには非常に有効だったのかなと思っています。

青野:では、ある意味、150個どんどん開発するっていうことは、役員にとっては「もうぜひ、どんどんやってくれ」。どんどん単価が下がるわけだから、やってくれ。こんなふうにコスト面では、ポジティブに背中を押してもらえるようになるわけですね。

虻川:でも実際にはアカウントによって見えるアプリの権限をつけているので、150個あるってことは多分気付いていないと思いますね(笑)。

青野:なにかいっぱいあるな、みたいな(笑)。そうですか。