少子化ジャーナリスト・白河桃子氏をゲストに

青野慶久氏(以下、青野):それでは、ゲストをお招きしたいと思います。最初のゲストは白河桃子さんです。

白河さんは少子化ジャーナリストとしてご活躍されながら、首相官邸が指導する「1億総活躍国民会議」、それから先ほどご紹介しました「働き方改革実現会議」にも民間議員としてご出席されています。

それでは大きな拍手でお迎え下さい。白河さん、お願いします。よろしくお願いします。

白河桃子氏(以下、白河):よろしくお願いします。

青野:では、お座りください。

白河:はい。

青野:(膝に)かけるものもありますので。

白河:なんて気の利いたすばらしいサイボウズさん。ありがとうございます。

青野:オーケストラがすごくてびっくりな登場なんですけど。

国が豊かになっても貧困が減らないのはなぜか?

ぜひ白河さんにおうかがいしたいのは、私の感覚としては、普通、国が発展していくと貧困な人は減っていくと直感的に思うんですけど、そうなっていないのは一体なぜなんでしょうか?

白河:国が発展して、みんなで豊かになっていけたらいいんですけど、いわゆる高度成長期ってそういうイメージでしたよね。

青野:そうですね。

白河:みんなが希望を持っていたし。私はバブル世代なんですけど、バブルの頃って、何かで読んだのですが、若者の将来に対しての不安が一番少ないときだった。みんな脳天気だったんですよね(笑)。

青野:はい。

白河:ただ、今はそういうふうにはなっていません。例えば、スウェーデンとかそういうところがうまくいっているのは、やはり分配がちゃんとしてるからです。一度税金が集まって、それをしっかり国が再分配する。

すごく頑張った人がお金持ちになるのはいいのですが、ただやはりその格差をそのままにしておくといけないということで、一度集まった税金をしっかり再分配しています。再分配率がいい国というのは、みんなの幸せ感が強いという感じになるんですね。

青野:なるほど。そんなに格差が広がらなくて済むわけですね。

白河:そうですね。例えば、昨日の衝撃(注:アメリカ大統領にトランプ氏が当選)。この話をせずにはいられないという感じなんですけど、やはりああいうことが起こるのも、格差をそのままにしておいたからだと思うんですね。

青野:そうですね。

白河:例えば、国連とか、OECDとかが、ジニ係数とか貧困の係数とか、格差の係数をわかりやすい数字で発表してるんです。なんのためにそんなことをわざわざやっているのか。他人の国だから関係ないじゃないかということもあると思うんですけど。

やはりこの格差を放っておくとすごく社会が不安定になる。社会が不安定なるとなにが起きるのか。

私、10年くらい前に、インドネシアのジャカルタに、夫の駐在で住んでいました。すごく格差のある国で。今、逆に中間層が厚くなっているんですけど、やはり格差のある国に住むと実感するのは、格差がある国に住むと安全のためのコストがかかるんです。

だって、お金のある人の家って全部有刺鉄線に囲まれていて、下手したらガードマンもいるわけです。だから格差って、お金持ちの人にとっても決してすごく住みやすい国にはならないんじゃないかなと思って。

青野:防御するためにいろいろ投資しないといけない、と。

白河:そう。さらにお金がかかるだけなんです。だからもっとお金を儲けなきゃいけないと、悪循環が起きるんですよね。だから、社会が不安定になるということは、みんながよりコストを払わなきゃいけないってことだと思います。

シングルマザーの6割が非正規社員

青野:そういう意味では、日本は比較的安全な国と言われてますけれど、今、日本で貧困が広がっているのは一体なにが起きているんですか?

白河:そうですね。やはり今、働き方改革実現会議でも非正規の話がすごく出ます。正規と非正規の格差をもっと縮めようということで、同一労働同一賃金などの話があるんですが、これを見ていただくと、今これだけの人が非正規で働いてるんですね。

特に、先ほど青野さんがおっしゃってくれた女性の貧困、子供の貧困です。非正規雇用の7割が女性なのですが、シングルマザーの女性は5割が非正規で働いてるんです。

青野:5割の方が非正規なんですか。

白河:そう。非正規で働いてるんです。

青野:けっこう偏ってますね。

白河:そうなんです。すごく偏ってるんですよ。

青野:男性は、そんなに非正規じゃないですよね。

白河:男性・女性含めたものがこのぐらいで。でも男性も3割ぐらい。

青野:3割ぐらい。ああ、そうですか。

白河:とにかく非正規と正規の差があり過ぎるということが問題で、先ほど非正規の賃金の話をしてもらったんですけれど、やはり非正規の人たちの賃金は、ほかの国に比べると正規と非正規の差がものすごくあるんです。

ほかの先進国との賃金格差の比較

青野:なるほど。逆に、ほかの国は非正規でもそれなりにもらえているってことなんですね。

白河:そうなんですよ。非正規、正規ですごく賃金格差があるのは、先進国、このなかでは日本だけです。

例えば、お医者さんだった、正規でバリバリ頑張るイメージがあるんですけれど、実は、フランスとかスウェーデンとかイギリスとかの子供持っている女医さんは2人で1人分の働きをするような、パートタイムの働き方をしています。

それから、イギリスの大学にいる先生に聞いたら、けっこう地位は高いんですけれど、パートタイムの働き方をしているボスがいるとか。

だからパートタイムというのは単に時間が短いだけで、それはなんにも賃金と関係ない。もちろん働く時間が少ない分は少なくなりますが、時給は能力や成果で決まるので、あまり関係ないんですね。

青野:おもしろいですね。日本だと正規がえらい、非正規は厳しい、みたいな感じがありますけど、ぜんぜん関係ないんですね。

白河:そうですね。フランスの非正規の人は、正規の人の9割はお給料もらってることになりますね。

青野:そうですよね。ほとんど差がないってことですよね。

白河:日本だと本当に6割いかないんですよね。今、私も学生を教えてますけれど、だから、大学生は本当に就活に真剣ですよね。

青野:もしあぶれてしまったら、こうなるわけですもんね。

白河:多分みんな、それはすごく怖いと思ってるんだと思うんですよ。

青野:なるほど。

働く女性は増えているけれど、実態は…

白河:この非正規の人たちの賃金格差がそのまま非正規が多い女性のお給料が少ないということにつながり、さらにそれは離婚とかをした途端にシングルマザーの貧困につながってしまうんですよね。

青野:そうですよね。たいていの場合、女性が引き取るケースが多いですものね。

白河:そうですね。まだまだ女性が引き取るケースも多いですし。6人に1人の子供が貧困という、日本には先進国の中で実はすごく恥ずかしい数字があるんですね。

青野:信じられないですよね。

白河:その数字が先ほど青野さんがおっしゃっていたような、2人に1人のシングルマザーが相対的貧困と。まさにあの数字が、そのまま非正規の女性の貧困につながってくる。

青野:なるほど。そうするとこの貧困の問題というのは、ある意味働き方の問題でもあるわけですね。

白河:そうですね。自分で選んで非正規になってるんでしょうって話もあるんですけれど、非正規の女性がなぜもっと働けないのかとか、そういったことを研究したみずほ総研のレポートがあるんですよ。それを見て私は「3つの壁」があって働けないんだということがよくわかりました。

女性雇用者の変化も見ましょう。女性雇用者は最近、増えてるんですね。

青野:そうですね。失業率が低くなって、女性が働くようになったって。

白河:そう。増えてはいるんですけれど、やはり増えているのは非正規の方なんです。

青野:正社員はまったく増えてないですね。

白河:増えてないんです。こうやって見ると驚くんですけど。

青野:「女性が社会進出しました」とか言ってますけど、非正規で働いているだけでいまいち進出できてない感じですね。

白河:そう。だから、こういう会場にいらっしゃるのはIT系のみなさんが多いと思うんですが、「いや、うちの会社は女性も働いてるし。すごくお給料ももらってるし」とそういう格差とかをあまり感じていない方が多いと思います。でも、実際はまだまだこういう実態なんですよね。

青野:なるほど。