4人目の東急電鉄は、新事業としてシェアオフィスを展開中

伊佐政隆氏(以下、伊佐):次にご登壇いただきますファイナリストの方は、東京急行電鉄の野﨑さんです。

野﨑大裕氏(以下、野﨑):みなさんこんにちは。東急電鉄の野﨑と申します。本日はよろしくお願い致します。

(拍手)

そろそろ、疲れてきていますかね。僕も、緊張と待ち疲れでヘロヘロです。じゃあ、さっそく始めさせていただきます。

本日は私ども東急電鉄が今年5月から新たにスタートしました新事業、企業の働き方改革を支援するシェアオフィス「NewWork」におけるkintoneの活用事例をご紹介させていただきたいと思います。

ただ、私どもはkintoneと出会ってからまだ1年経っておらず、かつ初めてkintoneを使ってサービスを展開している事例になります。そのため、まだまだ活用しきれていない部分が多々ありますが、本日は少しでもみなさまの参考になる点があればと思っています。よろしくお願いいたします。

まずはじめに、簡単に当社のご紹介をさせてください。東京急行電鉄株式会社は、東京都渋谷区に本社を置く鉄道会社でございます。

鉄道に関しましては渋谷を基点として、横浜方面、城南西地区に全8路線97駅、線路長では約100km、1日あたり約300万人の方々にご利用をいただいております。

また鉄道だけではなく、沿線を中心として、オフィスビルや商業施設の開発を行っております。沿線住民の方々により便利に暮らしていただける、沿線価値の向上を目指しております。

さらに、こちらグループ会社になるんですけども。全国に広がるホテルや百貨店のほかにも、電力の小売事業、さらにはケーブルTV、ホームセキュリティーなどの沿線住民の方々の生活をより便利にするようなサービスを展開しております。

本社勤務と変わらない勤怠管理を実現

そのような東急電鉄ですが、今年5月に新しくサービスを開始しました。企業の働き方改革を支援するシェアオフィスサービス「NewWork」です。

NewWorkはなにかと言いますと、当社沿線を中心に自社直営のシェアオフィスを出店するほか、首都圏、さらに都心近郊の住宅地、地方都市におけるシェアオフィスやコワーキングスペースと提携して、全国どこでも使えるシェアオフィスネットワークを展開しております。

昨今、ダイバーシティやグローバル化、少子高齢化といった環境の変化に合わせて働き方を柔軟にし、より効率的に働く。そういったことが求められる世のなかになってきています。

そこで、我々NewWorkは働く場所という観点から、「テレワークを推進し、企業の働き方改革を推進していくこと」を目指しております。

このNewWork、ご利用いただく企業様は、大きく3つのメリットを感じることができます。

1つ目は人材の確保です。少子高齢化というなかで、人材の確保は企業にとって重要な経営課題の1つです。自宅近くのシェアオフィスをご用意いただくことで、これまでは出産や育児を理由に退職を余儀なくされていた女性従業員の流出を抑制、さらには今後の新しい働き方、柔軟な働き方を求める若い世代やグローバル人材の採用力の強化にもつながります。

2つ目は生産性の向上です。NewWorkでは全国各地いろんな場所にシェアオフィスをご用意しています。こちらを有効に活用いただくことによって移動時間を削減できます。結果として業務効率が上がり、残業時間の削減につながります。

本社オフィスにいるとよくあるんですが、上司に呼び止められたり叱られたりして、なかなか集中して個人ワークができないことがあります。そんなとき、このシェアオフィスに逃げ込んでいただいて作業を行う。集中環境の確保ができるのです。

さらには、朝夕のラッシュ時間、かなり苦労されている方も多いと思います。この部分はご迷惑をお掛けしている部分もありまして申しわけないんですけど、この時間をシェアオフィスで執務をしていただいて、ラッシュを避けて通勤する。通勤ストレスの緩和という効果も得らます。

3つ目はBCP対策です。先ほどの山内さんのお話がかなりリアルだったんですけど、やはり地震大国日本では、BCP対策(企業が自然災害に遭った際、被害を最小限に留めるための対策)は絶対に避けられない経営課題です。本社以外にこうした執務環境をご用意いただくことで、BCP対策もできます。

このNewWorkですが、従来のシェアオフィスとは大きく異なる特徴が3つございます。

1つ目は、全国に広がるシェアオフィスネットワークです。従来のシェアオフィスだと、特定の店舗しか利用できないことが一般的でした。しかし、我々のサービスは、全国に30ヶ所以上のシェアオフィスやコワーキングスペース、さらにはカラオケ店やホテルといった店舗と提携しています。こちらをすべて、制限なく利用することが可能です。

2つ目は、法人向けかつ完全会員制という点です。従来のシェアオフィスだと、ドロップインや時間貸しといった利用方法だったため、いわゆる不特定多数の方、誰かわからない方が同じ空間で働いていることになります。これは、企業にとってはセキュリティリスクがかなり高いものでした。

我々のサービスでは、契約いただいている企業にお配りしているICカードがなければ入室することができません。そのため、ある程度セキュリティ性が確保された空間で執務できます。

3つ目は、kintoneを利用した勤怠管理です。従来のシェアオフィスでは、人の手によって受付が行われています。誰がどこで何時まで働いていたのかは、自己申告がほとんどでした。

我々はWeb上で企業の担当者に誰がいつどこで働いていたのかという情報を公開することで、シェアオフィスで働きながらも本社にいるような勤怠管理を可能にしています。

スピード、カスタマイズ性、コスト

このようなNewWorkによる働き方改革ですが、いくつかの課題がありました。

1つ目は運営コスト、すなわちお客様にお支払いいただく利用料に跳ね返ってくる部分です。シェアオフィスには有人の受付があるのが一般的ですが、この人件費を排除してしまおう、と。入退室をIT化してしまうことで、運営コストを下げて利用している企業からいただく利用料も下げる。すなわち、企業の導入ハードルを下げることを目指しました。

2つ目は先ほども申し上げました、勤怠管理です。みなさまの会社に、こういった方はいらっしゃらないですか? 例えば、上司の方で、部下が席にいないとかなり不安になってしまう。会社にいることが仕事そのものになっている。そういった観点からも、勤怠管理を自己申告に寄せてしまうのは、認められない。そういったなかで、我々はWeb上での公開を目指しました。

3つ目は、エンドユーザーの利便性の部分です。いざシェアオフィスに行ったはいいものの、満席で使えなかった……これじゃ意味がありません。そこで、事前にWeb上で混雑状況を可視化できないかと考えました。

これらはすべて、入退出におけるIT化で解決できると考えております。結果的には、この入退出のID管理をkintoneで設定しました。これには、大きく3つの理由があります。1つ目はスピード、2つ目にカスタマイズ性、そして3つ目はコストです。

我々は昨年12月にシステムの検討を開始しましたが、その時点では簡単な模式図しかなく、どのようなシステムをどのような構成で組むのかは、まったくノーアイディア状態でした。

しかしながら、今年5月にはサービスローンチが決まっており、さらに今年2月にならなければ社内の意思決定のスケジュール上、開発に着手できない。すなわち、3ヶ月で入退室システムを作りあげなければならない状況でした。

いろいろなシステムの開発を検討しましたが、フルスクラッチで作るにはあまりにも期間が短く、コストも大きくついてしまう。パッケージソフトの導入も検討しました。しかし、我々のNewWorkは入退室の時間を利用企業に開示する。入退室の時間から利用料金を計算するという、ちょっと普通の入退室ではない部分がありました。そのため、なかなかNewWorkにはフィットしなかったのです。

そこで、kintoneでした。kintoneであれば、必要最小限の機能を加えただけでクイックスタートができ、2016年5月のサービスローンチにも間に合う。さらに、開発費用もスクラッチ開発に比べてかなり安く収まる。そういった条件が揃っていて非常に魅力的だったため、kintoneの導入へと踏み切りました。

「宝の持ち腐れ状態」も解消

我々が導入しているkintoneのシステムには、大きく機能が2つあります。1つ目は入退室システムの全自動化です。

利用者の入室時間、退室時間のログから利用時間、月間の利用時間を計算し、そこから利用料金を計算。そして請求書の発行、もしくはクレジットの請求、こちらはお客様の支払い方法によるんですけど、ここまでは一気通貫でkintoneで実現しております。

通常であれば利用料金の計算や請求書の発行は、システムが複数にまたがってしまうため、どうしても人の手が介在することがあると思います。この人の手を一切排除することによってヒューマンエラーの防止、オペレーションコストの削減につながっております。

そして2つ目は、利用企業にもkintoneのアカウントを発行することで、先ほど申し上げたような勤怠管理の実現だけではなく、「どのくらいの従業員の方がテレワークを実施しているのか」「その利用によってどのくらいのコストがかかっているのか」をWeb上で確認することができるようになっております。

通常であれば、運営者に「どのくらいの利用頻度なの?」と問い合わせる。そして、運営者側はそれをエクセルかなにかで作って、「このようなものです」とレポーティングをする。この手間がお互いに省けたことと、「自社企業内でどのくらい働き方改革が進んでいるのか」の指標を考える上でも必要な機能を実装している点です。

実はこのNewWork、弊社のなかのいわゆる社内ベンチャーを通して実現した事業です。そこで、企業内の新規事業開発ではよくあるネタをご紹介したいと思います。

古き好き会社ではよくあるものだと思っているんですけど、システムにこだわりすぎて企画倒れしてしまう。あとは、必要でもない機能をどんどんつけて、コストオーバーになってしまう。

この点、kintoneであれば、最小限の機能でスタートして、使ってみて「もっと必要だ」と思ったところはカスタマイズできます。

あとは運用開始後にですね。先ほどの話に近いものがありますが、どんどん追加コストがかかってしまい、せっかく安く導入できるkintoneのシステムを選んだのに、最終的にかなり莫大なシステム開発コストになってしまう。こういった状況がよくあると思います。

kintoneであれば、必要に応じて安価に少しずつカスタマイズできたり、フレックスに変えていったりすることが可能です。

そして3つ目は、システムを使いこなせない。まず、システムを作るときは、そういった技術に精通した人たちで作り上げるんですね。そして、いざ運用フェーズに移ったとき、実際に使う人達はあまりシステムにくわしくないので、「あれ? これ、どうしていいの?よくわからない」と、いわゆる宝の持ち腐れの状態が発生してしまう。その点、kintoneであれば、開発の場面から運用シーンを明示できるので、すぐにスムーズに運用フェーズに移行できます。

実際、私どもも含め、システムに関して無知な人間が開発に携わってこのシステムを作り上げましたが、スムーズに運用シーンに移行できております。

最初から作りすぎるのはよくない

これによって、弊社のなかでもシステム開発にちょっと変化が起きております。

従来であれば、「こんなシステム作りたいなー」と導入部署がICT部門に相談をしていました。そして業者選定や金額、仕様書といったものを事前に承認をとって進めていたんですね。

しかし、それだと導入部署と開発業者の間でのダイレクトなコミュニケーションが少なからず阻害されてしまう部分がありました。開発期間が伸びてしまって、開発コストが上がってしまうのが問題でした。

今回はあまり大きなシステムではないことと、新規事業であることから、ICT部門にはあくまでアドバイザーに回っていただき、我々が開発業者と直接のやりとりして、システムを作り上げていきました。これによって業者選定の幅も広がり、コストを下げ、開発スピードもアップするといういい循環が生まれました。

もちろん、全社横断的な大規模なシステムであれば、従来のようにICT部門がイニシアティブを取って作り上げる部分も重要ですが、一部署で使うような単純な中小規模のシステム開発であれば、このようなやり方がかなりフィットするように感じております。

実際、弊社のなかでもkintoneが広がりを見せております。弊社では、2017年の夏に運行開始する予定の伊豆の観光列車があります。いわゆる列車のなかでも、ラグジュアリーサービスを提供するようなものです。こちらの業務システムにkintoneを利用することが決定しております。

現在開発段階ですが、予約の受付から座席の登録、さらにバウチャー券の発行、そして実際に乗客の方が利用した際に乗務員によって顧客情報を入力する。ここまでの機能をkintoneで実装する計画があります。

私からの紹介は以上となります。今回の内容、少しでもみなさまのお役に立てれば幸いでございます。本日はどうもありがとうございました。

(拍手)

伊佐:ありがとうございました。社内に広がってますね。新規事業といえばkintoneみたいな。

みなさまどうですか? お客様と一緒に使うkintone。ちょっと新しいと思った方もいらっしゃると思います。そこが素晴らしいと思いましたし、やはり最初から作り過ぎちゃうのは、よくないですよね。

野﨑:そうですね。

伊佐:今日の内容を聞いたら、「普通、スクラッチで作るよな」と思っていたんですけど、よくkintoneにチャレンジしていただいたと。素晴らしく思います。

野﨑:ありがとうございます。

伊佐:これからも事業がどんどん成長していくことを願っていますので。

野﨑:ありがとうございます。

伊佐:ありがとうございました!