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Ginni Rometty Keynote(全2記事)

14,000時間分のデータを使ってがん治療を研究 IBMが考える次世代の医療

第13回世界ヘルスケア会議で、IBMの会長兼CEOのジニー・ロメッティ氏が基調講演を行いました。Watsonが次世代のヘルスケアで果たす役割について語り、ビジョンを示しました。

がんセンターでのWatsonの活用

ジニー・ロメッティ氏:次に、3つのうちもっともワクワクさせるものは、受け渡しのしかたを新しく心に描き出す方法です。医師と患者のよりよい関係です。

それは価値観に基づく結果なのです。みなさんもそれに取り組んでいると思います。昔ながらの壁や境界を越えて、ヘルスケアが提供される方法を拡張するのと同様に、それはクラウドやモバイルに関しても明らかです。それが個別治療です。

最たる例が、私たちが指揮をとってきたWatson for Oncologyです。広く報道されているように、私たちはメモリアル・スローン・ケタリングというがんセンターでこの仕事を始めました。そこに存在するすべてのデータをWatsonに与え、彼は今このトピックについてはすでに飲み込んでいます。

統合された最新の研究についてもです。事実、それには何十年もの長期にわたったデータが含まれていました。現在まで、1つか2つのがんの種類において、世界最高レベルのがん専門医による15,000時間の訓練が行われています。

では、それは実際にどのように機能するのでしょうか? もしみなさんとそれを共有できるとしたら、大きな反響を呼び、彼ががんセンターに行ったのは正しかったということがわかっていただけるでしょう。

Watsonが最初に行ったことは、患者のカルテを分析することでした。カルテには体系化されたデータと体系化されていないデータが含まれます。つまり、列や段にきちんと入っているものもあれば、そうでないものもありました。

次に行ったのは、治療計画を確認することです。その過程で臨床経験や外部調査を経験し、彼がすぐに利用できるデータがさらに増えました。そして今後は、充分に理解しているか、していないか、どの程度信頼がおけるか、どのくらいテストする必要があるか、などを調べることになるでしょう。

そして補強する証拠を挙げながら治療法の選択肢を査定し、ランク付けするでしょう。医師は空白を嫌うからです。

Watsonが使っている情報の集積は、最初の休暇までの時点で、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターに関する14,000時間分のキュレーションされたデータ、300の医療出版物、200の教本、1,200万ページのテキストでした。

思い出してください、彼は忘れないのです。医学部の学生は、居眠りをしますよね。これもWatsonには起こらないことです。電力がある限り、彼は居眠りすることはありません。

この考えは本当に実績を上げてきました。世界のいたるところで展開されています。Bumrungrad(バムルンラード)、ご存じないかもしれませんが、タイにある最大の私立医療ケア施設です。そこでは1年に100万人以上の患者を診察します。彼らは今Watsonを使って展開しています。事実、医師たちはそのおかげでずっと仕事が楽になったと言うでしょう。

インド最大の私立病院、Manipal Hospitalもそうです。彼らはがん患者である20万の人々を治療しています。ただの患者ではなく、がん患者のみです。そして彼らはインドにおいて、がんに関する変曲点にいます。つまりがん専門医がいるここよりもずっと速いスピードで割合が上がっているのです。

そしてそこのCEOは、それによってインドのがん治療はまったく新しいレベルに達するだろうと言っています。

2週間前、中国の4つの都市でも、実際、私たちは世界最高施設の1つであるMSK(メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター)内でもそのポイントに達しつつあるのですが、彼らは仲間たちと一緒に展開していき、あと12のがんについてこれを行うと言っています。

そういうわけで、MSK(メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター)だけでなく、Cleveland Clinic、MD Anderson、そのほかまだまだ多くの施設での働きがあるのです。

健康の質を変える

お話ししましたように、私たちは、受け渡しというものが起こる方法を変える手助けを行うという役割を果たすつもりです。そして私は今日、その役割に関する報告をさせてもらう喜びを味わっています。なぜなら、それは医師の目を通したものだからです。

今日、私たちはAmerican Cancer Society(米国がん協会)との協力を発表します。それはWatson Patient Advisor for Cancerを行うことです。さまざまながんの、さまざまなステージの、さまざまな治療計画にある患者の目を通して、ニーズを理解することです。

それはガイダンスに関することです。症状、サポート、行ってもよい運動、受けられる教育などに関する指導です。ゆくゆくはこれを、医師が利用しているWatson for Oncologyと統合する予定です。そして両方の面からそれを理解することができるようになるでしょう。

そしてゲイリーがこのすぐ後に加わって、私たちは一緒にこのことについてもう少しお話しします。受け渡しの方法を完全に変えてしまうということです。なお、それはがんだけに限ったことではありません。私たちがたまたまいちばん難しいものから着手したというだけです。

例えば、ひざと関節の健康に関して、Johnson & Johnson(ジョンソン・アンド・ジョンソン)と行った仕事があります。それは端から端までを管理する方法です。

3つ目の領域は、健康を変質させることです。みなさんには学習システムがあります。そしてこれは大きなエコシステムが発展するのを目の当たりにできるところなのです。なぜなら、Watsonはクラウドで生きているため、誰でもアクセスすることができるからです。

そしてそれは既存の会社や新しい企業からやってくる革新に拍車をかけるでしょう。そしてそのことがあちこちで起こるのを目の当たりにするでしょう。

最初の1つはUnderArmourです。この部屋に、手首になんらかのトラッカーをつけている人はいますか? どれどれ。なるほど、前の方の人たちは少し多く歩いて歩数を稼いだものね。

(会場笑)

行動を変えようとしている人たちがいるのはすばらしいわね。はい。それでは。

多くの人にとって、それは能力を高めることに関するものです。UnderArmourは1,600万のユーザーの記録を持っています。実は、私もUnderArmourのアプリを使っています。

このアプリは、アプリストアで何度も1位になっています。みなさんがそのバンドを使っていてもいなくても……なんだか彼らの宣伝をしているような気持ちになってきました。あるいは、それがFitbitでもなんでも、Fitbitも結構いいですよね。みなさんはこのアプリをダウンロードすることができますが、それにはWatsonが入っています。

私たちは始めたばかりです。成長しているところです。Watsonからもらったアドバイスのお気に入りの1つをみなさんに教えてあげたいと思います。それは、もし1日にあと2,000歩多く歩けば、私のウエストが半インチ小さくなるでしょう、というものです。

わかりましたか? 笑わないでください。どうしてみんな笑ってるのかわからないわ。でもきっとあまりよくない理由に違いないわね。

(会場笑)

でも、これはあなたに個人的にあてはまる提言なのです。彼らはデータベースの中で、私のような女性の多くは1晩に7時間眠ると言っています。もう起こらないでしょうけど。でも、それが今後起こり得る考えなのです。

IBM Health Corpsとは

私たちはこんな仕事もしました。睡眠と言えば、American Apnea Associationと仕事を始めたところで、そのアプリもあります。Apple Researchとの仕事が終わったところです。

ご存じのように、睡眠時無呼吸症候群は、心臓疾患や高血圧、肥満、そしてがんなど、より広い領域に影響します。もちろんみなさんが運転しているときには、車の事故といったものにもつながります。これはなにかというと、生体測定データを集め、査定を進め、みなさんの覚醒の度合いをテストするアプリです。

さて、私たちがすでに作り出しているものは、あらゆる研究者に開かれており、なにをすべきかを理解するためのすばらしい分析に適用してもらうためのデータの巨大な山です。私は健康における大きなエコシステムというこのアイディアもその中に入れました。

また、Medtronicと一緒に、糖尿病に関する仕事も行っています。そして私たちはすでに最初の医療的な突破口を得ました。ブドウ糖をリアルタイムでモニターしながら、彼らは低血糖が発症するのを3時間前に予測することができるようになっています。3時間前ですよ。なにか手立てを打つことができます。

以前はそれほど前もってわかることはありませんでした。そこでこの考えが浮かぶでしょう。みなさんが、発見のしかたのすべてを新しく作り直し、受け渡しのしかたを新しく心に描き直し、そして健康という領域を変革させていることが、はっきりとわかります。私たち全員ができることもあると思います。

スピーチを終える前に、すばらしいアイディアとして私たちの会社で今日発表されたあることをみなさんにもお伝えさせてください。これまでご紹介したすべてのテーマを超えて、ヘルスケアにおける最後の領域に到達するのを助けるものだからです。

IBM Health Corpsと呼ばれるものを発表いたします。これは、平和部隊を模して作られたCorporate Service Corpと呼ばれるもので、広く認識されてきたものをモデルにして作られたものです。

そして何千ものIBMの社員がここ10年で世界中の何千ものコミュニティへ行きました。彼らはそのコミュニティにおける経済的または環境的な問題について彼らを手助けするための仕事にフォーカスしました。

私たちはそのプログラムを変更します。私たちは今、彼らが世界中にあるケア、そしてみなさんが明らかに抱えている潜在的な関連事項、それを支える社会的、環境的要因により多くアクセスできるよう手助けすることに完全にフォーカスするつもりです。

それは水、輸送機関、食べ物の安全性、といったものかもしれません。しかしすべてのチームには新しいチームメイトがいます。それは誰だと思いますか? チームにはWatsonがいるのです。私たちは2つのパイロット版を作りました。すでに実に興味深いものになっています。

私たちはイギリスの支部の1つにパイロット版を置きました。Watsonはすべての実地調査記録、介護士、介護士のメモなどをすべて統合し、そして事実多くの人々に対する健康への解答を得ているのです。

別の例が南アフリカ共和国にあります。私たちは非営利のAfrican Health Placements Groupで仕事をしました。私がお話ししたように、彼らはヨハネスブルグの非営利団体で、その最終的な領域におけるケアを提供する人たちの雇用に深く関わっています。

このケースでは、私たちは彼らと、いい仕事をより迅速に行う人々を雇うためのよりよいアプリについて共に仕事をしました。そのアプリによってより早くそういった人々を見つけることができるのです。

そしてここD.C.では、D.C.出身の人たちのために、私たちはすぐに、実は来月、Unity Healthcareとプロジェクトを始めることになっています。それはこの国にある最大のヘルスセンターです。患者の半数は、鬱状態や不安、問題行動を抱えた状態にあります。

これは一次診療で問題行動を統合する詳細な計画です。それから、実際にそれは効果的な治療、治療介入、そしてコスト削減を実現する方法に関する下地を作る仕事です。

Watsonがやっていること、そしてこのアイディア全体、私たちの到達点と私たちが手に入れようとしているものについて、みなさんに少しの間考えてみていただきたいのです。思い出してください。あなたはそれをプログラムすることはないのです。学習するからです。

彼が腫瘍学について学習したように、ヘルスケアの最前線や個々のコミュニティから彼が吸収しようとしているレッスンについて考えてみてください。それは世界がまだ見たことのない、コミュニティの健康に関する知識を保管する場所になるでしょう。それはそのコミュニティが形成されるすべての場所においてグローバルになるでしょう。

ヘルスケアは劇的な変化を迎えている

さて、今朝のこのお話を、みなさんと一緒にもういくつかの点と共にまとめさせてください。1つは、メリル、あなたが前置きで言ったことです。ヘルスケアは劇的に変化する機会を得ています。私たちは劇的な変化に関するなにかを知っています。

私たち自身の産業が劇的に変化しています。しかし私たちはこの正確な瞬間に関するなにかを理解しているのです。この産業には非常に才能ある人々、患者の人生に貢献する人々がいます。そしてそれは私たちが共有する貢献です。

それこそが私たちがWatson Healthを発明した理由であり、それを私たちが“月探査ロケットの打ち上げ”として宣言した理由です。そして、この学習するシステムである認知的領域に関するアイディアが、この産業を価値ある、成果に基づいたものにしてくれると私たちが信じていることを、みなさんにお伝えいたします。

それは個別治療を可能にし、私たちの世界がヘルスケアの領域で見てきたより大きないくつかの挑戦をつかむ能力をトータルで持つことを可能にするでしょう。同時に、こういった性質によって、それはヘルスケアの分野における次世代の事業家たちを奮起させることになるでしょう。

そしてみなさんに言っておきます。誰も1人ではそれを行うことができません。最初に申し上げましたが、これは共に取り組むエコシステムに関することだと私たちは信じています。私たちは別々のアプローチをしてきました。それは開かれたエコシステムに関することです。

そして私が“開かれた”と言うとき、それは標準ベースを意味します。つまりそれは規制に準拠しているということで、クラウドベースであり、すべての人に開かれているのです。そういうわけで私たちは今日ここでみなさんとご一緒するのを楽しみにしていたのです。

みなさんの時間を割いてくださったことに感謝すると共に、ここで質疑応答を少し行って、私たちが一緒に成し遂げることを楽しみにしています。ありがとうございました。

(会場拍手)

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