なぜ「入社面接」がクリスマスイブなのか?
瀧本哲史氏(以下、瀧本):どうもご無沙汰しています。
山梨広一氏(以下、山梨):テレビではよくお見かけしていますが、かなり久しぶりですよね?
瀧本:おそらく山梨さんは憶えていないと思いますが、僕がマッキンゼーに入社するときの面接官が、山梨さんだったんです。
山梨:そうでしたっけ? 何年入社ですか?
瀧本:僕は97年入社で、96年の12月24日に面接を受けました。山梨さんともう1人の方に、3時間近いインタビューを受けたんですよ。
山梨:よく日付まで憶えてますねえ。
瀧本:さすがにクリスマスイブでしたからね(笑)。「この人たちは、こんな日にまで仕事してるんだ!」と驚きました。あとになって思えば、クライアントが休んでいる日に面接を設定せざるをえなかったんでしょうけど。
山梨:ええ、そういう事情だったんだと思います。
瀧本:それで採用決定の電話をいただいたとき、担当の方から「瀧本さんは、非常に突出した部分と、まったく欠けている部分があります。欠けている部分については、入っていただければ身についていくでしょう」と言われたんです(笑)。
山梨:それが96年とか97年か。僕がマッキンゼーに入ったのは90年なんです。そして96年というと、たしかパートナーになってから2年目あたりですね。当時はリクルーティング担当のパートナーでした。普通、面接といえばもっと若いスタッフが担当するんですが、たぶん瀧本さんが優秀だったから、僕が出ていって1回で決める、みたいな流れだったんじゃないかと思います。
「マッキンゼーを辞めた人」は何をしているのか?
瀧本:入社後も、プロジェクトをご一緒させていただいたことはほとんどありませんでしたね。
山梨:でも、瀧本さんの噂はよく聞いていましたよ。当時は半年に一度くらいパートナーが集まって、若い人たちを評価するミーティングを開いていたんですけど、「瀧本さんはものすごく変わってるけど、ものすごく頭が切れる」と。たしかに、マッキンゼーを離れたあとのご活躍を見ても、その評価が正しかったことは証明されていますよね。
瀧本:そう映っているのだとしたら、ありがたいです。
山梨:マッキンゼーはおもしろい組織で、早い段階で辞めていった人間のほうが成功しているんですよ。25年も勤めた僕が言うのもおかしな話ですが(笑)。
瀧本:いや、あそこの第一線で25年間も走り続けるのはすごいことですよ。
山梨:でもね、マッキンゼーから離れていった人たちがその後どうしているのか、調べたことがあるんです。コンサルタントとして独立する人、金融系に転身する人、起業する人、大企業に入る人、いろいろいますよね。それがベテランになっていくほど、卒業後の進路が画一化してしまう。
具体的には、金融系かコンサル系に集約されてしまう。きっと、長年のマッキンゼー生活で「そういう身体」になっているんでしょうね。NPOをはじめとした、社会的なフィールドに身を置く人も増えてきている。
瀧本:それは世代論や時代の変化だけでなく、山梨さんたちが築き上げてきた、日本オフィス特有の文化だと思います。ひと言でいえば「そういう人たち」に狙いを定めて採用されていた。
山梨:それはあるかもしれませんね。
瀧本:たとえば面接で「他にどんな会社を受けているんですか?」と訊かれて、他のコンサルティングファームをずらずら列挙するような人は、あまり歓迎されない。むしろさまざまな分野の、さまざまな仕事や研究に興味を持っていて、たまたまマッキンゼーの門を叩いた、という人のほうが重宝される。
山梨:まったくそのとおりですね。