社会進出した女性たちの苦労

亀山敬司氏(以下、亀山):女性も社会進出をきっかけにいろいろあると思うけど、なにかと浮いちゃうじゃない? やっぱりやりにくいところがある? けっこう苦労したこと、やっていて弱ったなみたいなのことはないの? 楽しいこともあるだろうけどさ。

瀬戸まりこ氏(以下、瀬戸):私自身は、18年ずっと会社員をやってたんですよ。

安藤美冬氏(以下、安藤):堅い会社だよね。

瀬戸:本当に堅い会社でOLをやっていて、やっぱり起業の世界で会社員の常識はぜんぜん通用しないんですよね。一番びっくりしたのが、時間に関して。

例えば、会社員のときは会議があったら、30分前に資料を用意して……とかだったのに、フリーランスになると、セミナーをやっても講師が来るのは3分前とかで(笑)。そういう常識感がすごく変わったなというのはありますね。

亀山:うちはもともとビデオレンタル店とかプールバーをやってたんだけど、結局普通の社員は来ないわけ。ヤンキーがアルバイトに来るとかね。

だからその時のすごい戦力というのは、パートのおばちゃんだったわけよ。結婚して、子供ができてという。昼間はその人たちに任せてれば、安心だったわけよ。夜は俺ががんばって出てたわけ。

例えば、そういう昼のポジションを任せるとか、役職でも財務のCFOをやるとか。そういうところをやるのは、女性でもけっこう役員になりやすいと思うんだよね。

今から女性も役員がけっこう増えてくるなと思うんだけど、小池(百合子)さんとか、女性の起業家というと、土・日も関係なく24時間なんか(仕事が)あるじゃない。

トラブったら最後の責任を取るというのは、けっこう大変な気がする。例えば、子供が泣いてる時もあるじゃない。

もし子供がいたら、そういう時に女性はとくに大変かなと思う。役員はやりやすいんだけど、本当のトップはけっこう大変な気がする。

起業後の働き方の違い

安藤:私は前職が集英社という出版社だったんですね。実は、集英社は『non-no』というファッション誌を創刊したときに、(ジョン・F・)ケネディ大統領の奥さんを創刊イベントに呼ぶくらい、当時としては先進的で前衛的な風土があった場所でした。

そのころから、会社が女性を積極的に登用しようとして、女性編集者さんたちがすごく育っていったので、現場にいる私は女性と男性の差別はぜんぜん感じなかったんですけれども、そういう会社であっても、創立80年でやっと女性役員が1人誕生したんですよ。

ちょっと聞きたいんですけど、会社勤めは自分がスケジュールを決めるわけではないけど、上から仕事が降ってくることもあるので、家庭との両立が大変だと思うんです。起業して、自分のスケジュールをコントロールできるようになったというのはありますか?

小池さんはあくまで東京都の組織のトップなのでご苦労が多いかと思うんですけど、小さくても自分のお城を持つと、スケジュールは組みやすいんじゃないかなと思うんですけど。

白木夏子氏(以下、白木):そうですね。私は学校を卒業してから3年弱、不動産投資ファンドの会社に勤めていたんですけど。

投資ファンドの世界は超男性社会で、役員は全員男性でオールド・ボーイズ・ネットワークで成り立っているような会社で、タバコ部屋で会話が進み、飲み会で仕事が降ってきてみたいな場所でした。飲み会も毎日(深夜)2〜3時まで続くような激務だったんですけど。

働いている女性の先輩たちでも、妊娠したらすぐ辞めていってしまうということが日常茶飯事でしたし、出産しても、本当に「すみません、すみません」と言いながら時短で毎日帰ったり、子供が熱を出して休んだら、次の日お菓子をみんなに配るとか。そんなことをしてまで働いている人たちが本当に多くて。

自分が起業したときに、1つ絶対に決めていたのは、男性にとってもそうですけど、女性にとって働きやすい組織にしようと決めて起業したんですね。

子供が熱を出して休んだとしても、「ごめんなさい」と言いながら(働くのではなく)、もちろんそういう気持ちはあるかもしれないけれども、みんなで助け合えるような組織作りですね。

それをずっとやりたくて、ようやく今、創業して8年目で、社員もほとんど女性なんですけれども、20数名の会社になっていて、去年あたりから機能し始めているというところです。

社内で出産したのは私が最初だったんですけど、それまでは私もずっと働きづめの生活で、仕事が大好きなので夜中までずっと仕事をしてしまうんですけど。

やっぱり出産したことで、そういう生活を見直して、朝起きてからの2時間と夜の18〜21時までの3時間は、絶対に子供と私だけの時間にしようと決めてます。

寝かしつけたらSkypeミーティングだったり、作業だったり、自宅での仕事をしてというかたちで、まったく別の生活スタイルにしました。

仕事の効率はぜんぜん落ちていない気がするし、逆に効率よく働けるようになっているのかなと思ったりもしているので、前の会社よりも起業したほうがすごく動きやすいですね。

組織における男性と女性の役割

亀山:瀬戸さんのところは、さっき女性だけでやってるとか言ってたね。

瀬戸:そうですね。うちは今、女性だけで、子供が小さな方もスタッフにすごく多いです。それこそ24時間営業にとても近いんですけれども。ママの生活する時間帯は、子供の小ささによって起きてる時間がバラバラなんですよね。なので、早く寝て3時くらいから起きて活動しているママとかも(います)。

亀山:じゃあ、24時間勝手に動くわけだね。

瀬戸:基本的に24時間自動的に動くような仕組みになっているのと、空いた時間に「この時間のメールのリプ(返信)だけお願いします」みたいな小さな作業をよくしています。

亀山:なるほどね。うちなんかは、男性と女性が6:4くらいで女性もいると思うんだけど、やっぱり混ざっているほうがいいような気がしてね。

どうしても男性は野心が強いから、仕事に関して「とにかく俺はこの仕事でがんばるぞ!」みたいなのがあるんだけどね。

一方で、女性は正義感が強いというか、権力争いとかに入らないみたいな。だから、派閥抗争みたいなのが始まると……。

(会社が)ちょっと大きくなってくると、生意気にも「権力はどっちが上だ」みたいになってくるときに、周りの女性はけっこう冷めた目で見ていて。

不正が起きたとしても、女性は早めに改善しようとしてくれたりするじゃない。野望系や権威に弱い男と、遠くから見られる女性が混ざるとちょうどいいような気がするんだよね。女性ばっかりだと、足りない部分もあるような気がするし。

白木:そういう意味では、やっぱりうちも役員には男性を入れていますね。指揮官が男性のほうが、なんとなくうまく機能する感じがしています。

亀山:まだまだ「女性(役員)か」と思う人もいるじゃない。そういう時は男を出しといて、後ろで操作してしゃべってみたり(笑)。そういうやり方もあるよね。

“女性の社会進出”に感じる違和感

安藤:理想で言うと、(女性)進出というのをあまり意識しない社会が一番いいですね。

亀山:そうだね。

安藤:私たち女性は、すでに組織にいるので。昨日もある会社の人と会話をして違和感を持ったんですけど、最近の企業だと、社内で「女性活用○○委員会」というのを設けていて、そこに女性のリーダーを抜擢して、そうした委員会のなかで社風というか、空気を変えていこうということがわりとあるらしいんですけれども。私はそこにすごく違和感があって。

亀山:無理やり感があるな。

安藤:そんな委員会を作らなくても、すでに女性たちはそこにいるから、なんかできないのかなと。女性活用とか進出を意識的に考える時代が早く終わっちゃえばいいのにと思ったりしてますけどね。変なまとめですけど。

亀山:自分たちはバックパッカーできたえられてるけど、たぶん女性のなかには、あおってくれたり、そういう場所を作ってくれないと生きにくいというのもあるんだよね。(安藤氏に向かって)「私はいらないけど…」と思ってるだろ? 勝手に出ていくだろ?(笑)。

安藤:勝手に出て行きます(笑)。バックパッカーは、出て行った結果だと思いますけど。

亀山:ほとんど(の女性が)そんなんじゃないんだよ(笑)。みんなバックパッカーしたいなと思ってても、「やっぱり心配だな」とか「危険じゃないかな」と思いながら、出られない人もいっぱいいるわけじゃない。(安藤氏は)「自分だったら、男と相部屋でもOK」みたいな感じじゃないの。

安藤:なんでわかるんですか?(笑)。

亀山:「2段ベッドで何人住んでても大丈夫」みたいな。そんな顔してるもん(笑)。

安藤:(笑)。