2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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リンダ・グラットン氏:では、無形資産について具体的に考えていきましょう。
まず第1に、価値のある知識を蓄積しているか、そのために時間を十分に費やしているかです。今はAIやロボット工学の普及によって仕事がどんどんなくなり、機械に取って代わられる時代なので、知識はとくに大切です。
次に、自分を向上させてくれる友達、同僚、仲間がいるかどうかです。野中(郁次郎)教授が言うところの暗黙知です。暗黙知が職場で共有されているかが大切です。
次に考えなければならないのは、いい評判を築いているかです。これまでの日本のように、一生同じ会社に勤めるのであれば、自分の評判はあまり必要でないかもしれません。「私はこの会社に勤めています」と言えば、それで済んでしまいます。しかし、転職などで会社を変わっていくのであれば、自分の評判は大切です。これからはそういう社会になっていくでしょう。
「私はこういうものです」「こういうスキルを持っています」とはっきり言えるようにならなくてはなりません。またスキルも、現在の仕事に役立つものだけでなく、将来の仕事にも活かせる「発展性のあるスキル」を持つ必要があります。
そういうわけで、100歳人生に備えるにあたって自分自身に問うことは、「価値の高い知識を増やしているか」「仲間といい関係を築くために時間を割いているか」「いい評判を作っているか」です。
無形資産としてさらに挙げられるのが、バイタリティーです。100歳まで生きられる人は相当、健康なわけですが、その秘訣は誰でも知っていることです。食べ過ぎない、運動するなど、実際に実行するかしないかは別にして、これはみんなが知っている健康を保つ方法です。しかし、単に健康なだけでなく、バイタリティーを保つためには「バランスの取れた生活」が必要なのです。
この点で、日本の長い労働時間が多少気になっています。今週もインタビューで何度も同じことを聞かれました。「日本の長時間労働のことをどう思いますか?」という質問です。私が危惧しているのは、長時間労働でバイタリティーが失われるのではないかということです。
なぜかと言いますと、長時間労働のために仕事と家庭の両立が難しく、8時間の睡眠も確保できず、大きなストレスが溜まってしまうからです。
興味深い話があります。私は個人的にフォーミュラ1のレーサーを知っているのですが、彼のような一流スポーツ選手に共通して言えることがあります。それがなにかおわかりですか? みんな、8時間睡眠なのです。しかし、仕事が忙しすぎて8時間の睡眠をとれない人が多いのが現実です。
その影響は深刻です。つい昨日、ある著名な日本の教授から聞いた話ですが、現在、睡眠不足とアルツハイマー病の関連性について研究されているそうです。なんとも心配なことです。バランスのとれた生活を送れないことで、大切な健康を危険にさらしているわけです。
無形資産について次に考えたいのは、長寿に関することです。長寿についてなにがわかっているでしょうか。今回の研究は、日本の地域社会に関する研究と関連したものです。日本のある地域の人たちが、どうして長生きするのかをテーマにしたものです。
その1つの答えとして、この地域社会の人たちとの深い友情が考えられています。彼らは毎日顔を合わせて、話をしているわけです。逆に、孤独は人の命を奪うこともわかっています。孤独のために人は死んでしまうのです。では、人生を送るうえでとても大切な、長く続く友情はどうすれば築けるのでしょうか?
ここで、無形資産が保つ大切な側面をはっきりと理解しておく必要があります。有形資産は売買することができます。私は明日の晩、ロンドンに戻って、家を売ることもできるのです。1週間くらいで売れてしまうでしょう。しかし、無形資産は売買できないのです。
私はMBAの学生たちに、次の話をよくします。「私は今61歳ですが、あなた方が私の歳で億万長者だったとしても、私が持っている“あるもの”は絶対に買えませんよ。それは私が大切にする、50年に及ぶ友情です」。
私は10歳のときに学校で出会った友達と、いまだに親しくしているのです。なにものにも代えがたい大切な友情です。とてもお金で買うことはできません。
みなさんにぜひ理解してほしいのですが、長く幸せな人生を送るうえで大切なのは、お金だけではないのです。それよりも、与えられた時間をどのように使って無形資産を築くかが大切なのです。
無形資産について、最後に考えてみたいことがあります。
みなさんは、ジャックの3ステージの人生をどう思いますか? 彼の場合、自分を変革していく必要はありませんでした。同期の者にただついていけばよかったのです。同時に大学を卒業し、同時期に結婚し、子供を作り、働いて退職すればよかったのです。
これは、日本の終身雇用制度とよく似ています。私は今週、何度も「日本の終身雇用制度は続くと思いますか?」とたずねられました。答えは「ノー」です。絶対に続きません。ここ10〜20年の間にきっと崩壊し始めるでしょう。欧米でもそうでした。私はこの目でそれを見てきました。研究者として35年になりますが、その間、イギリスで終身雇用が崩壊するのを実際に見てきたのです。
終身雇用だと思って就職したのに、途中でその制度がなくなると、とてもやっかいなことになってしまいます。ですから、みなさんに自己を変革する必要性に気付いてほしいのです。20〜80歳まで同じ会社が雇ってくれると思ってはいけません。そんなことはありえないことです。自己を変革できるという無形資産を持っていればとても強みになり、絶えずはつらつとすることができるのです。
では、どうすれば変革できるのでしょうか? 自分を変えるためにはまず、自分自身のことをよく知らなければなりません。自分を1人の人間として、全体的に理解する必要があります。
次に、やはりネットワークと社交性です。とくに、多様なネットワークを持つことが大切です。自分とは異なる人たちと交わるのです。
これに関して、デトロイトで行われたおもしろい調査結果があります。デトロイトはアメリカのなかで失業率がとくに高い地域ですが、調査でわかったことは、私より少し若いくらいの中年の男の人たちは、まったく均一なネットワークしか持っていなかったのです。同じ年代、同じ性別、同じ職場の人としか交流がなかったのです。
ですから、その人たちが職を失ったとき、頼れる人もなく、その先どのように暮らしていけばいいかを考える術さえなかったのです。そういうわけで、自分とは異なる人と交わることの大切さがおわかりいただけると思います。
本題に戻ります。長寿社会における6つの考え方の、4番目の問題です。社会の力関係がどのように変化していくかです。日本でも起こる変化で、みなさんも気付いておられると思います。日本の首相も盛んに言及されていますが、日本は先進国のなかで女性の社会参加率がもっとも低い国です。
話をわかりやすくするために、1つの仮定をしてみましょう。
あなたは今この会場にいる1人の若い男性で、奥さんは家でお子さんの面倒を見ています。あなたも、あなたの奥さんも、ともに100歳まで生きるとしましょう。そうすると、100歳まであなた1人の力で、家族全員を養うだけのお金を稼がないといけないことになります。
これはとても大変なことです。そんな大変なことをする必要があるのでしょうか? 奥さんに「一緒に働いてくれ」とどうして言わないのですか? 重荷を一緒に背負っていこうと言えばいいじゃないですか。「お互いに協力し合おう」と言えばいいのです。あなたもたまには休んで、子供の世話をしたいこともあるでしょう。休んでスキルを身につけたり、英気を養いたいときもあるでしょう。アマゾンのジャングルに行きたいこともあるかもしれません。
今日、テレビスタジオで若い人たちと話す機会があったのですが、若い人たちの間では共働きを望む人がどんどん増えていると思いました。私が在籍しているロンドン・ビジネススクールでも、1年間『100-Year Life』を講義していますが、どのようなパートナーシップのあり方を望むか、学生全員に聞いたことがあります。
ロンドン・ビジネススクールには47ヶ国から学生が集まっていて、どの国の学生がとくに多いというようなことはありません。日本人の学生もイギリス人の学生も同じくらい在籍しています。そういう学校ですが、学生のほとんどが、共働きを望むと答えています。お互いの関係性において平等でありたいし、仕事の面でも同じことを望んでいるのです。
みなさんのなかには「これはエリートの人たちだけに当てはまる話だ」と思っている人もいるかもしれません。そうではなく、すべての人に当てはまる話なのです。
みんなが100歳まで生きる社会になったときの大きな課題として、性別を問わず、すべての人が生産的にならざるをえないからです。それが実現するよう、真剣に考えていく必要があります。
6つの考え方の、5番目の問題に移ります。これは、企業にとっていいニュースではありません。企業が望んでいるのは、全員がジャックであることです。できれば男性で、65歳で退職してくれる人です。企業にとっては、それが1番やりやすいからです。しかし、これからは多様性の時代になっていくのです。そして、多様性はいろいろなかたちで現れてきます。
まず、女性のさらなる進出です。日本でも必然的に起きるでしょう。今週、女性の方と話す機会が何度かありましたが、その都度、私はロンドン・ビジネススクールで最初の女性教授の1人だと伝えています。しかも、教授でありながら子供を産んだのは私が最初です。今まで、何世代にもわたって女性進出のために戦ってきて、ようやく実現されるようになったのです。
女性はこれからもさらに進出していきます。日本の重役の人たちの会合に出向くと女性に出くわす、そういうときがきっときます。働く女性が増えるとともに、年配の女性で働く人も増えるでしょう。また、夫婦で交互に働くような人も増えてくると思います。
次に、フリーランサーの数も増えていくでしょう。現在、世界中で全労働者の6分の1は、実際にフリーランサーとして働いているのです。自分のスキルと時間を使い、アイデアを生み出して、それを世界に売っています。
ジョイントベンチャーも増えるでしょう。なぜかと言いますと、ロンドン・ビジネススクールの一番優秀なMBAの学生は会社に就職しようとしません。
なぜでしょう? 彼らに言わせると、「どうして自分を時間単位で売る必要があるのか。自分で知的財産を作って、それを企業に売ればいいじゃないか」となるのです。企業との関わり方は、フルタイムで働く以外にもいろいろとあるのです。
小規模企業も今後、増えていくでしょう。OECD加盟国では、従業員10人以下の企業がすでに90パーセントを占めているのです。また、人材採用戦略にも変化が起こります。大卒採用は廃止しなければなりません。いろんな年齢の人が就職を希望するようになるからです。30代、40代、50代の人の採用も取り入れなければなりません。
年齢と賃金も切り離さなければなりません。これは興味深い問題で、本のなかでもくわしく述べています。65歳以上の人を雇いたくないのは、年齢に応じて賃金を払わなければならないからです。これをやめなくてはなりません。年配の人の賃金が高過ぎて、雇えなくなってしまいます。年齢に応じて雇用条件を変えていく必要があります。
そのほか、定年延長や技術研修の問題など、さまざまな課題があります。
企業や人事部にとって、そのいずれもが頭の痛いやっかいな問題ですが、1つひとつ対処していかざるをえないのです。困難とはいえ、世界のどの企業も今、その道のりをたどろうとしています。進み方がはやい企業もあれば、遅い企業もあります。どの企業もこの道を進んでいかなければならないことだけは確かです。
最後に取り上げたいことは、長寿が政府へどのような影響を及ぼすかです。本を読んでいただければわかりますが、政府の政策についてもくわしく言及しています。政府にとっては、大きく2つの課題が考えられます。
まず、100歳人生の問題は、政府からは話しづらい側面があります。「80歳まで働かないとダメですよ」とは、人に言いにくいのです。民主主義の政府がそのように言うことは、まず考えられません。そんなことを言えば、次の選挙で落選してしまうからです。
イギリス政府が私の本に好意的なのは、私が代弁しているからです。私は選挙で選ばれているわけではありません。身分を終身保障された教授ですので、人々が聞きたくない嫌なことでも、平気で言える立場にあります。そういうわけで、政府からは率先して話しづらいということが1つの問題点です。
政府にとって2つ目の課題は、政策の多くが人生の3ステージに基づいているということです。これは変えなくてはなりません。
多くの人が100歳まで生きるようになったとき、政策はどうあるべきかについて、日本政府を含め、多くの政府が真剣に向かい合い始めています。現在は人生最後の10年を焦点に、莫大なお金と知恵が注がれていますが、それを人生全体に焦点を当てるよう変えていかなくてはなりません。
具体的にはどのような政策が考えられるでしょうか。いくつか挙げてみましょう。
「節税ファンド」、これは人生の初期の段階から貯蓄を奨励するのに役立ちます。「高齢者向けの手当」、多世代家族が増加傾向にありますが、それに対応するためです。「生涯訓練手当」、学生のときには手当が与えられても、それ以後は与えられません。生涯いつでも、訓練のために与えられるべきです。
政府に関係したことのない人間の提案ですので、いずれも単純でバカげた考えに見えるかもしれません。しかし、私が言いたいのは、100歳人生の問題は個人だけでなく、あらゆる組織にも極めて重要な問題だということです。
私の予言を言わせてください。世界のどの社会運動についても当てはまることですが、この問題の担い手として動き出すのは、みなさんや私のような一般の人間であろうということです。個人であり、家族です。というのは、自分自身が関わる問題だからです。我々1人ひとりが、長い人生をどのように過ごすかを考えなくてはなりません。
今、アメリカで55歳を過ぎてから会社を始める人が激増しているのも、その表れの1つです。政府が奨励しているわけではありません。みんな、自分たち自身の考えでやっているのです。
現在はある意味、試行錯誤の時期と言えるでしょう。企業はなかなか重い腰を上げないかもしれません。しかし、なかには早く対応する企業もあるでしょう。そして、早く対応すれば、それだけ競争で優位な立場に立てるのです。
そして、政府は国民全体のニーズに対し、どのようにバランスを保つべきか慎重に考える必要があります。老齢者のニーズに応えると同時に、若者が直面する深刻な問題にも十分配慮する必要があるのです。ご静聴ありがとうございました。
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