芸術における“盗用”の変遷

電話機の上のロブスター、台座の上の小便器、コラージュとして貼り付けられた楽譜。これらはすべてアプロプリエーション、または流用、盗用といいます。美術あるいは美術史におけるアプロプリエーションとは、芸術家がオリジナルに対して少し変化を加え、既存のイメージや物体を用いる芸術上の実践を指しています。既に存在するイメージの模写であり、借用であり、変容という意味もあります。

アプロプリエーションは、非常に長い間にわたり芸術家たちによって使われてきた戦略です。

エドゥアール・マネやパブロ・ピカソは、創作活動の出発点として自分自身の作品に使用しました。

ピカソは、作品にマスメディアを持ち込んだ最初のひとりであり、新聞紙という現実の物体をキュビズムのコラージュにしました。

1915年にマルセル・デュシャンが発表した『泉』は、アプロプリエーションとして悪名を轟かせています。シュルレアリスム、またコラージュやオブジェによって、アプロプリエーションを広範に使用しました。サルバドール・ダリの『ロブスター電話(1936年)』がその例です。

アプロプリエーションは、消費主義の高まりと、雑誌からテレビまでマスメディアが放出した大衆的イメージの増殖に伴い、20世紀中頃のアメリカ合衆国と英国で、新たな意味を持ちました。

流用されたイメージやオブジェは、ジャスパー・ジョーンズ、

ロバート・ラウシェンバーグ、

クレス・オルデンバーグ、

アンディ・ウォーホル、

トム・ワッセルマン、

ロイ・リキテンスタインなどポップアートの作品に広く見られます。

彼らは、大衆文化に由来する平凡で日常的なイメージを複製し、置き換え、反復しました。ウォーホルは以下のように述べています。

「ポップ・アーティストは、道を歩く誰もが一瞬で認識できるようなイメージを生み出した……。これらのおなじみのイメージの再文脈化は、すぐさま別の発想や相互作用、時代の要請や文化的な要素を反映し、喚起するのである」

アプロプリエーションは、芸術の持つ性質や、芸術の定義の問題を力強く揺さぶります。つまり何がオリジナルなもので、原作者であり、真正なものなのかという問題です。今日でも、イメージやメディアが流用され、リミックスされ、サンプリングされることは頻繁に行われています。それは、オリジナリティという伝統的な概念に対して挑戦であり、アーティストの定義を拡大させています。