“キャットニップ”と猫の関係

オリビア・ゴードン氏:猫が娯楽用のキャットニップに手を突っ込んでいるのを見たことがありますか? キャットニップは猫の行動を少し変にしてしまいます。

猫はキャットニップを擦ったり、その中で転がったり、触ったりします。明らかに楽しんでいるのです。それはキャットニップが猫の自然な生体信号とかなり近い成分でできているからです。

キャットニップは学術名をイヌハッカといい、ミント科の植物です。猫がキャットニップに反応するとき、実は植物から放出されたネペタラクトンとして知られている有機分子に反応しているのです。

ネペタラクトンはほぼ炭素である2つの結合した輪から成り立っています。そしてその植物は蚊やダニ類のような虫を寄せ付けないために使われています。

しかし、ほとんどの猫はそれに興味をそそられます。まず最初に、キャットニップのにおいを嗅ぎ、舐め、そして噛んでみます。時にはそれに頬や顎を擦りつけてみたり、葉に身体ごと擦りつけたりもします。猫によってはニャーニャー鳴いてみたり、よだれを垂らすことさえあるのです。

つまり、猫たちは確実にキャットニップの虜なのです。しかし、ほんの15分ほどしか効果は続きません。その時間が過ぎると、キャットニップは30分から数時間の間はその猫になにの効果も与えられないのです。なにが起こっているのでしょうか?

研究者たちはネペタラクトンは猫の自然なフェロモン、つまりコミュニケーションをとるための分子に似ているのだと考えています。一度その混合物が猫の鼻に入ると、フェロモンの働きと同じ受容体とくっつき、猫の脳はフェロモンがたくさん出ているというシグナルを受けます。

キャットニップは猫の脳の3つの重要な部分を刺激します。匂いを処理する嗅球、感情や決断に含まれるへんとう体、そして他の何かの間の性的反応を司る視床下部です。

視床下部はなぜキャットニップに反応した猫が、発情中のメス猫のように地面に転がるのかを説明する手助けとなります。そして、なぜ子猫が性的に成熟する6ヵ月前後までキャットニップになにも反応しないのかを説明することもできます。

しかし、すべての猫がキャットニップに反応するわけではありません。50~70パーセントの猫のみが反応するのです。それは遺伝に関わっており、科学者たちは関係する遺伝子を特定するための研究を続けています。そして猫がキャットニップに反応する時、脳の中で一体なにが起こっているのかを学ぼうとしています。

ライオンやジャガーなどの大きな猫科の動物もキャットニップに反応しますが、ほかの動物たちは同じフェロモンは使いませんし、同じ受容体は持っていないので、キャットニップは彼らには影響を与えません。キャットニップだけではなく、ほかの植物も同じような理由で猫を魅了することがあるでしょう。それらの植物は猫のフェロモンのような働きをする混合物を生み出します。

例えばマタタビはアクチニジンと呼ばれる分子を生み出しますが、これは猫のフェロモンに似ています。一般的に、猫を魅了する植物は猫にとっては確実に安全です。中毒性はありませんが、そういった植物によく遭遇する猫は、だんだん反応が弱くなっていきます。ですから、もし子猫がキャットニップを好むならたまに甘やかすのは問題ありません。