第3使徒は肩パットをしている!?

山田玲司氏(以下、山田):ここから冗談が始まるんですけど(笑)。

乙君氏(以下、乙君):え、え?(笑)。

山田:それはともかく(笑)。

志磨遼平氏(以下、志摩):「冗談が始まるんですけど」って言って冗談の始め方(笑)。新しい。

山田:もうバブルの残像だなと思って、第1話観てましたよ。そしたら、ミサトさんの話はあとでしますけど、こんなやつが出てくるじゃないですか?

乙君:おお、きました。第3使徒。

山田:肩パッドしてるじゃないですか。

志磨:ほんまや! 肩パッドや。

山田:だから最初からバブルじゃないですか。これ。

志磨:ほんまや。

山田:ここがもうバブルじゃないですか。それで、よく見たら顔が『もののけ姫』のあいつじゃないですか? 森にいっぱいいるやつじゃないですか。

志磨:ほうほう。

山田:だから「精霊、霊、妖怪、怨霊? バブルの?」みたいな。

乙君:(笑)。

山田:「これを倒す? じゃあ、これに乗れなかったパイセンたちが思春期に戻って、こいつをやっつける話?」なんて思うと、ちょっとおもしろいのと。

志磨:うわー。

乙君:おー。

山田:あと、オタクの人たちって、バブルの「ウェーイ!」に乗れなかったから、だから……。

乙君:その恨みが。

山田:だからそれが彼らにとって倒さなきゃいけない最初の使徒なわけですね。

志磨:すげー。

打倒宮崎としての象徴

山田:それとあと、元・(宮﨑)駿の弟子だった庵野さんにとっての、やっぱりちょっと微妙に駿がついてくんだよ。これ。

乙君:ああ。これ駿の象徴なのね。

山田:これ駿ですから。ほら、駿はこうやって入ってくるから。

志磨:まあ、巨神兵からの。

山田:巨神兵から。そうそう。

乙君:なるほど。

山田:だから、「お前、巨神兵やってたの忘れるなよ」というのが最初に入っちゃったの。これを倒さなきゃいけないんですよ。

乙君:はいはい。打倒宮崎だったわけだ。1話から。

志磨:父殺し。

山田:父殺し。そうなんですよ。だから、これ父です。

志磨:なるほどね。

山田:だから、最初の使徒は肩パッドをした父です。

乙君:はぁー。

志磨:玉置浩二と……。

山田:玉置浩二入ってます。

志磨:駿さん。

山田:駿さん。『田園』ですので(笑)。

志磨:なるほど。

山田:安全地帯です。

“玲司メソッド”の真骨頂

志磨:出た。玲司メソッド出た。

山田:やばい俺。玲司メソッドのノイローゼが始まりましたけど。

志磨:すごいな。

乙君:これ、ついてこれるのかな?(笑)。

志磨:なんか話を聞いてて、いろいろ。

山田:盛り上がってるな。コメント(笑)。

志磨:自分たちなかでも、けっこう階層というか、レイヤーがもう記憶のなかでできていて。「あれ小室? あれ『もののけ姫』? あれエヴァ? 最初……え?」みたいな、けっこう……。

山田:これ、すみません。時系列は正確ではないです。

志磨:そうそう。

乙君:(笑)。

志磨:けっこうね、今。

山田:『もののけ』は言い過ぎました。

志磨:いやいや。うん。

山田:でも、これ持っていかないと、おもしろくなんないんだよね(笑)。

志磨:そうそう。さすが。

「中身おっさん女子」が最近のトレンド

山田:俺、手塚イズムなので、もうちょっとおもしろくならないかなと思って、いろいろ乗せててきました。

志磨:いやいや。さすがですわ。なるほど。

山田:そうなんですよ。

乙君:「信じていいの?」ってコメントがあったけど、それはもうあなた次第です。

志磨:(笑)。

山田:信じてなくていいですけど、おもしろがってくれれば、それでいいです(笑)。

志磨:厳密な時代考証とかは、さておき。

山田:でもそうだなと思って。ミサトさんが中身がおっさんというのも、この頃流行ったんだよね。

最近よくいう理想の女は「外見はかわいい女の子だけど、中身がおっさんだったら最高だ」ってよく言うじゃない。

乙君:最近言う?

山田:最近よく聞きますよ。

志磨:ほうほう。

乙君:へー。

山田:だから、「おいしいお店連れていって」「最近のスイーツ」みたいなのじゃなくて、「ぷっはー」ですよ。

志磨:いいですね。うんうん。

乙君:ああ。

山田:エビスで「ぷっはー」ですよ。「ゴミ屋敷でも関係ねえ」ですよ。それで、お風呂でペンギンを飼うんでしょ? それはオヤジかどうかはわからないですけど(笑)。

志磨:(笑)。

ミサトさんのなかには「おっさん」がいる

山田:ミサトさんは最初、シンジ君と荒野みたいなのを車で走ってるシーンから始まるじゃない。

志磨:はいはい。

山田:それで、サスペンションですよね。だから大塚さんですね。もうこういうのがやりたかった。

乙君:ああ。

山田:ルパンですよ。砂煙巻き上げて、それでぶっ壊れる。くるくる回る。“ザッツ庵野”から始まるのね。

乙君:おお。

志磨:なるほどね。

山田:そのあとミサトさんが、テープとかで自分でバンパーを直しながらボロボロの車を。これがまた実に当時っぽいんだよ。

乙君:ほー。

山田:この世代のオタク連中はジープとバイク大好きなの。今の40代。

志磨:ふんふん。

山田:今の40代ってジープに憧れてバイクに乗ってるんだよ。それで、レストアとかいう言葉が大好きだから(笑)。

乙君:ああ。

山田:そうそう。それで、あの時の最初のモノローグが「やっちゃたよー。給料前なのにまたぶっ壊れて、これ修理代いくらなんだろう?」って、モノローグでみさとさんが言いますけど、これは基本的に今40代のおっさんですから。

志磨:へー。

山田:だから当時のオタクの人たちがそのまんまミサトさんのなかに入ってる。だから、ゴミ屋敷に住んでて「ぶっはー」なわけ。

乙君:はー。

山田:そうそう。でも、これすごいおもしろいのが、ミサトさんって、豪快姉さんでいながら、母であり姉であり、それから隣のお姉さんなのね。

乙君:ああ、なるほど。

山田:だから保護者でありみたいな。だから、最初の男にとっての手の触れない同級生ではなく、一番エロさを感じる隣のお姉さんというか。いわゆるエロ本的な要素が詰まっているというのがちょっとおもしろいなと。

志磨:なるほどね。

山田:それに一緒に住むことになるという展開。

志磨:確かにけっこうご都合主義な設定ですね。今、思うと。

各所に散らばるウルトラマンの香り

山田:そうなんですよ。それでゲンドウゾフィーがやってくるわけですよ。

乙君:ゾフィー?

山田:ゾフィーってウルトラマンが誕生する時に、ハヤタ隊員が死んでるわけだよ。それでウルトラマンと一緒にする。それを指示するのがゾフィーなんだけど。

志磨:なるほど。

山田:目が見えないんですよ。こういうやつで。

で、こういう感じなんですよ。

だから、ゲンドウゾフィーですよ。

乙君:あれゾフィーなんだ。

山田:庵野さんはウルトラマンになりたい人だから。だからあのスーツはウルトラマンっぽいでしょう? 綾波が着てるのもウルトラマンだよね。それで、シンジ君もウルトラマン。だからここになにかある。

しかも、3話目でタイマーシステムがあるのね。びっくりした。だからカラータイマーやるのね。

志磨:確かに。

山田:だから武器を使う時に「これが今の我々人類の科学文明の限界よ」みたいなこと言って設定してあるのが、ウルトラマンと同じで。だいたい5分ぐらいでしょう。ウルトラマンは3分だけど、微妙に長くしてるのかなって思ったの。

志磨:アンビリカルケーブルが抜けてから5分ぐらい。

山田:そうそう。そんな設定が入れてあって。「うわー、ここもここも、いろいろウルトラマンなんだな」と思って。

志磨:なるほど。