遅れてきたエヴァ世代として

乙君氏(以下、乙君):ということで……。

志磨遼平氏(以下、乙君):ということで、エヴァンゲリオンの話やね(笑)。

(一同笑)

乙君:今、俺も「ということで」「次、エヴァか」って。なんだろう、この。

志磨:いやいや。ね。

乙君:うん。

志磨:それはもう。

山田玲司氏(以下、山田):遼平好きなんでしょう?

志磨:エヴァ好きですよ。

山田:そうだよね。あとから遅れてきたエヴァ世代だっていう。

志磨:そう。僕は20歳ぐらいの時に観ましたね。だからもうぜんぜん2003、2004年とか、もうぜんぜん終わって軽く10年ぐらい経ってから見ましたね。僕も。

山田:ああやっぱりね。それぐらいがいいよね。ちょうどいいよね(笑)。

志磨:そうそう。

山田:あとから乗るというのはね。

志磨:その時、僕らはリアルチルドレン世代なので、ちょうど……。

乙君:年代としては、もうまさに。うん。

山田:シンジ君と同い年なんでしょう? そうだよね。

志磨:95年に14歳でしょう? 僕ら。

乙君:そうね。

山田:キレる14歳。

志磨:そう。

乙君:うんうん。キレる14歳ですね。

山田:だよね。

「テッカマンを忘れるな」

乙君:でも、俺もあれなんですよ。

山田:なに?

乙君:オタクの友達がめっちゃハマってて。俺、そのエヴァの前にあった『(宇宙の騎士)テッカマンブレード』のほうが好きなの。

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(一同笑)

だから、エヴァが人気出て、テッカマンのことが忘れられちゃうなと。

山田:「テッカマンを忘れるなよ」と。

乙君:「テッカマン忘れるんじゃねえよ」と思って、ちょっと……。

山田:まさかのテッカマン。そのくせお前『ウメ星デンカ』知らなかったな。ドラえもんの前のな。

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乙君:知らない、知らない。

志磨:へー。

乙君:うん。「テッカマンブレードってなんだったんだろう?」って、いまだに覚えてないんですよ。どんな話か。

志磨:自分が忘れてるやん(笑)。

乙君:忘れてるんだけど(笑)。

山田:それが言いたかったんだろう。お前。それ。テッカマンの話をしたかったのね。

乙君:テッカマンブレードあったよね?(笑)。

スタッフ:ありましたよ。

乙君:あったよね。おもしろかったよね。

志磨:へー。見てなかったなあ。

夕方放送のエヴァを見て

乙君:わかりやすい感じだったんですよ。子供向けっちゃ変ですけど。そしたら、すごく難しそうなのが始まって、「なんだろう」って言って。

志磨:えっ。僕らが見たのっていわゆる再放送のやつってこと?

乙君:いや。俺はリアルでやってる時にハマってたオタクから……。

志磨:あれ、でも和歌山でもやってたの?

乙君:やってた、やってた。

志磨:僕、夕方にやってたやつは見たんよ。

乙君:あれ? それ再放送?

志磨:たぶんそれ再放送。

乙君:じゃあ再放送かもしれない(笑)。

志磨:最初は深夜枠でやってた? どうでしたっけ?

乙君:(コメントにて)「和歌山でもやってたん?」って、おい、失礼やな(笑)。

志磨:和歌山でやってたんやけど、いわゆる本当の最初の放送。

山田:(コメントにて)「夕方だよ」って言ってるね。「最初、夕方」ほう。

志磨:夕方か。

乙君:やっぱりリアルタイムなんや。

志磨:その時はそんなにボーンと跳ねてないのね。

乙君:うんうん。たぶん。

「ロボット大戦」経由で見てみようかな

志磨:それで、いわゆる最終回とかから「おいおい」となって、再放送でバゴンっと社会現象に。

山田:(コメントにて)「6時半から」へー、そうなんだ。

志磨:たぶん学校終わってからそれ見てた記憶がある。

山田:(コメントにて)「和歌山って田舎?」って。どうでもいいよ(笑)。

乙君:どうでもいい!?(笑)。

山田:そうなんだ。

乙君:それでオタクがハマったから。俺は観てなくて、ずっと話を聞いてて。「そんなのがあるんだぁ」と思って、ロボット大戦やってたら出てきたんですよ。エヴァが。

志磨:はいはい。

乙君:ロボット大戦で全部設定を知って、「そんな話なんだ」みたいな。

山田:ああ、ゲームからか。

志磨:それで、そこから「じゃあ、ちょっと観てみようかな」って言って、俺は。だから、終わって5年後ぐらいにエヴァを。

山田:みんなじゃあ普通に乗ってないのね。その時に。

志磨:うん。

玲司氏は「まだ3話まで」

乙君:でも、映画版がどうのとか。『Air』とか『まごころを、君に』とか、なんかそういうのが小出しに来たじゃん? 「ああ」みたいな。

山田:観たの?

乙君:全部観ましたよ。

山田:ほう。そうなんだ。それで、わかった。いろんなことが。

乙君:お、きたきた!

志磨:今、観たてホヤホヤの。

山田:観たてホヤホヤの「エヴァンゲリオンってアニメがあるらしいよ〜」っていう状態の山田玲司です。こんにちは。

志磨:また3話目までしか観てない(笑)。

山田:3話目まで観ました。山田玲司です。こんにちは。

乙君:最初に言っておきますけど、今日は3話目までしか観てないから。

志磨:みんなそれ以上言ったらあかんで。

山田:30年漫画書いてますけれど、3話目までしか観てません。そんな山田玲司です。こんには。

乙君:BS NHKで毎週やっているらしいので、それを玲司さんが毎週観ると。

山田:そうそう。

乙君:ということで、このコーナーは毎週やります。君エヴァ。「君はエヴァンゲリオンというアニメを知っているか?」っていう。

志磨:知っとるわ(笑)。

山田:私のインプレッションを。「こんなアニメがあるらしいよ」って説明しようかなって思ってます。

乙君:(笑)。

エヴァを応援していきましょう!

山田:それから『ユーリ!!! on ICE』、山本沙代監督の『ユーリ!!! on ICE』が今日から始まります。沙代ちゃんのものすごいフィギュアに対する熱い情熱が、LINEで送ってもらいまして、これは応援せねばと。

乙君:沙代さん、出てほしいですね。

山田:沙代ちゃんもこういうメガネすれば出てくれるかもしれない。そういう方なので。

乙君:ああ(笑)。

山田:そうそう。それも応援しつつ、エヴァも応援しようかなと思って。

乙君:なるほど。

山田:あんなアニメが始まるとは思わなかったのでね。

志磨:(笑)。

乙君:ちょっとうらやましいんですよ。今からはじめてエヴァを……。

山田:それね。

志磨:僕らがどんどん応援していきましょう。エヴァンゲリオンをね! これから。

山田:応援していこう! エヴァンゲリオン、応援していかないとね。売れるといいよね。

(一同笑)

志磨:そうね。ちょっとでも力になれれば。

“小室サウンド”の時代の空気感

乙君:さっき「どんな顔して見てればいいんか」っていう(笑)。

志磨:出た。綾波か(笑)。

山田:いやいや。それで、前回ちょっとね、ツッコミどころ満載な冒頭のオープンニングシーンについて。思春期の少年が青空をバックに回りながら、シルエット全裸の女子がこう上下にいくという。おそらく妄想であろうが、それはでも14歳の妄想の力で薄っすらと裸が見えるという。最高な。

志磨:先生、しゃべり方、オタクみたいになってます(笑)。

(一同笑)

志磨:大丈夫です(笑)。

山田:合わせにいきました。ちょっとそっちに寄っていこうと。

志磨:(笑)。

山田:それで、きっとこれはウルトラマンだな、と。「ウルトラマンのオープンニングだな」みたいな、そんな話をしてたんですよ。

志磨:ほいほい。

山田:でも、あの当時「うわー」って思ってた嫌な感じって、いったいなにがそんなに嫌だったのかと思うと、あの曲、非常に小室サウンドなんですよね。

志磨:へー、そうか。

山田:それで、あの「残酷な〜♪」って入ってからダッダッダダーダ♪って始まって、タランタランタ……ちょっとゲバいんだね。タランタタンタンタンタ♪、そのタメとか。あとサビに入る前のところの。

乙君:テェーテェーテェーテテ♪。

山田:そうそう。タッタッタッタタータ♪ そういうノリが全体に小室的なんだよ。でも、小室さんじゃないんだよ。この人。

志磨:そうですね。

山田:違う人が作ってるんだけど。「なんだろうこれ? そうか95年ってこういう年だ!」って思いだして。

それで、95年の山田玲司って、俺バブルの世代だし、バブルに合わせなきゃと思って、中身パンクスなのに無理やりバブルっぽく漫画を描いてたという漫画家なの。

それが、バブル崩壊して95年にもなるともう渋谷系が現れて、グランジが現れてるの。それこそ、グランジ落ちてるやん(笑)。

志磨:マーヤさんでおなじみのグランジ(笑)。

山田:マーヤって40だから、あの世代が団塊ジュニアできてるんだよ。だから、「うわっ」って。それで、あいつら、俺らのちょうど10個上ぐらいのバブル世代、一番ダサいと思ってたわけ。

だから、俺はあの渋谷系のラブタンバリンズを聞いてる連中の、ラブサイケデリコを聞いてる連中の目線がわかったわけよ。すぐに。書きながら「うわっ、一番ダサい奴だと思われてるー」みたいな感じがあったの。俺は。

志磨:ほうほう。

なぜ終わらせたはずのユーロビートを?

山田:そこからヤバイぞと思って、「レニー・クラヴィッツを聞かなければ」みたいな。

(一同笑)

「まずは『Rock and Roll is Dead』だ!」みたいな。そういう必死でその団塊ジュニアの文化に融合しようと思って、レッチリとか聞くわけだよ。それでレッチリを語ってたりしてたわけ(笑)。

志磨:なるほどね。

乙君:へー。

山田:そう。それで、俺一生懸命やってたのに、なにこの小室さん。終わったはずのユーロビートを、「え、なに日本製にしてもう1回やるんですか?」というのを。

TM NETWORKの時は埋もれてたから、「そういうのもいるよね」だったんだけど、小室時代が始まることによって、俺たちのなかでは恥ずかしいから終わらせてたはずのユーロビートサウンが、パラパラとかいろんなかたちになって、地方化して、あとはヤンキー化するんだよ。

志磨:うん。

山田:それで、要するにこれを聞きながら俺は思ったんだけど、俺は時代が先に行くのはいいと思ってるの。それで、一生懸命「イエーイ!」ってなろうとしてる。タランティーノも『パルプ・フィクション』を出してきた頃だよ。ちょうど。ジャミロクワイ……。

志磨:『パルプ・フィクション』は何年ですっけ?

山田:94年ぐらい。

志磨:ああ、そっか。ミニシアター的なやつがそろそろ。

山田:そう。そのあたり。それで、ジャミロクワイが上陸ですわ。時代が変わってんじゃん、明らかに。ユーロビートは終わってるんだよ。それであいつだよ、佐藤タイジさん。

乙君:ああ、THEATRE BROOK?

山田:THEATRE BROOKも登場するわけじゃん。それで、大ヒップホップムーブメントがやってきて、DragonがAshしてるわけじゃん(笑)。

あの頃ですよ! 「あの頃なのに、なにテクノサウンド?」っていう、「ユーロビート!」みたいな。

乙君:そんなひっかかり?

志磨:(笑)

「先輩いつまでそれやってるんですか」

山田:要は、95年に小室でやったことが、俺にとってはちょい上のダサい先輩が田舎の高校生たちを騙してるみたいな。

もしくは、団塊ジュニアまでそれに飛びついたので、「おいおい待てよ」と。「お前らかっこよかったんじゃないの? 団塊ジュニア、しっかりしろよ」という。「え、ちょっと待てよ。お前らそんなだったの?」みたいな。「池袋ウエストゲートパークだったんじゃないの? 君たち」「え、違うんだ?」みたいな。

乙君:はあ。

山田:それで君たちの世代やん。さらにその下の世代や田舎の子たちは知らないから、この小室マジックにやられる、同時にエヴァマジックにかかってたという。

志磨:音楽で?

山田:そう、音楽で。

志磨:ほうほう。

山田:だから、それを1曲だけでも「うわー、そっか。こういう感じだな」と思って。

志磨:なるほどね。

山田:そうそう。それで一番、見てて「うわぁぁ、これ!」って思ったのが、この作品って、俺バブル終わらせてたのに、まだバブルのなかにいるちょい上世代の人で作ってるの。

志磨:ほうほう。

山田:俺、バブル臭を必死で洗い流してたから、あの頃。なのに、こんなことを言うんですよ(笑)。

志磨:確かにね(笑)。

山田:こんなことを言うんですよ。お姉さんが。

乙君:具志堅でしょう?

志磨:それ、「ちょちゅね」(笑)。ミサトさんです。

山田:「だからミサトさん、5年も前でしょ」と。もっと前かなというさ。

志磨:そうかあ。

山田:「先輩いつまでそれやってるんですか」という気持ちになってしまって。「そんなの、みんな乗ってる場合じゃないよ!」みたいな。