想像だけで“サイ”を描く--芸術とイマジネーションに関する5つの物語

FANTASY | 5 Artists in 5 Minutes | LittleArtTalks

人間はいろいろな想像をすることができます。時には実際に見聞きしていないことでも、少ない情報から全体像を思い浮かべることができてしまいます。そんな想像力を活かし、作品を生み出してきた芸術家たちがいます。今回の「Little Art Talks」は、想像力を爆発させてさまざまな作品を残した、5人の近代芸術家を紹介します。

幻想と夢想の5人の芸術家

カリン・ユエン氏:今回は、想像力をもつことについてです。

フランシスコ・ゴヤ(1746〜1828年)は、スペインのロマン主義の画家であり、版画家です。『眠りの理性は怪物を生む』(1799年)は、ゴヤが制作したエッチングで、連作版画集『気まぐれ(Los Caprichos)』の中の80点のひとつとして収録されています。

ゴヤは版画の中に、描画のための椅子に倒れ込んでいる自分の像を想像しました。彼の理性は眠りのために鈍くなっていて、悪魔的な生物が暗闇を飛び交っています。作品には、愚行のシンボルであるフクロウと無知のシンボルであるコウモリが描かれています。

芸術家の悪夢は、当時のスペイン社会に向けた目を反映していて、そこでは彼は狂乱と崩壊、あざ笑うべき放逸さを投影しています。題名の銘文全体には、「理性に見捨てられた想像力は、あり得ない怪物を生む、理性と結合すれば、想像力は諸芸術の母となり、その驚異の源泉となる」と記されています。

アルブレヒト・デューラー(1471〜1528年)はドイツ・ルネサンスの重要な画家であり版画家です。デューラーは1515年にサイの木版画を制作しますが、その当時、ドイツにサイはいませんでした。この名高い木版画家は、なぜ見たこともない生物を制作できたのでしょうか。このイメージは、リスボンの無名の職人による短いスケッチと説明書きを基にしています。

サイは、ローマ帝国以後初めてヨーロッパにもたらされ、ポルトガル国王がローマ教皇レオ10世に献上するため、イタリア沿岸を輸送中に船が難破して死亡してしまいます。これ以降、1577年になるまで生きたサイはヨーロッパで発見されることはありませんでした。

彼は、この動物を見たことがなかったため、エッチングは正確ではありません。サイを見たことがある人はわかるでしょう。デューラーは、サイを鎧のような装甲で覆われたものとして描写しました。

背中に小さなねじれた角、うろこで覆われた脚、こういった不正確さにも関わらず、この木版画は非常に広く流布し、何度も模倣され、西洋人は18世紀の終わりまで本当の描写だと思われていました。

想像力は近代の芸術表現の源泉だった

オディロン・ルドン(1840〜1916年)は、フランスの象徴主義の画家であり、版画家であり製図工でした。ルドンの作品は、内面の感情と魂を探求したもので、見えるものを見えないもののために可能な限り役立たせるよう制作されていました。彼の作品は、奇妙な存在物やグロテスクな組織で埋められていて、自分の心に現れたものを絵として表象することを目的にしていました。

彼は日記にこのように書いています。

「私は、しばしば練習のため、生計のために、物体を前に置いて視覚的に現れたどんな小さな事柄まで近寄って描こうとした。ある日私には悲しい満たされない渇きが残されたが、次の日ほかの源泉から、想像力を呼び起こしたので、私は安心し平和で満たされた」

ヒエロニムス・ボス(1450〜1516年)は初期ネーデルランドの画家です。彼の作品は、幻想的な形象や、細密に描かれた風景画、宗教上の概念や物語をあらわした図版などがあります、もっとも知られた三連祭壇画『快楽の園』(1490〜1510年)では、時系列として右から左へと物語が描写されています。

左翼パネルには、神がアダムとイブの前に立ち現れ、風景には異国的な動物たちが跋扈しています。中央のパネルには裸体像の男女の群像で埋め尽くされ、楽しみに夢中になり、無垢なままで水浴びをしているようです。

幻想的な動物たちと、規格よりも大きな果物が配置されています。右側のパネルには、地獄の夜の風景があらわされ、拷問され切断された人物像が、動物の悪魔たちによる奇妙な処刑の只中です。

テオドール・ジェリコー(1791〜1824年)は、画家であり石版画家でもあり、またロマン主義運動の先駆者でもありました。最も知られた作品に『メドゥーサ号の筏』(1818〜19年)があります。フランス海軍のフリゲート艦がモーリタニア沖で座礁し、ボートに全員の搭乗の余地がなかったため、急ごしらえのいかだに147人が積み重なって乗らなければならず、たった数マイル進んだ後、いかだは牽引する船から離れてしまいました。

等身大よりも大きな絵画は、13日間の漂流の後、15人が生き残り、救助船が遠くから近づいてきた瞬間を描写しています。人びとは、絶望で精神を破壊され、飢餓と脱水症状に苦しめられ、生存者は人肉食によって生き残りました。片腕の父親が息子の胴体を抱え、ほかの者は恐怖と不安で髪をかきむしり、中央の男性がちょうど救援の船を見つけ、アフリカ人の乗組員が熱狂的にハンカチを振り、船の注意を引こうとしています。

ジェリコーは熱中して想像力を働かせ、この事件について調査をし、準備のためのスケッチを制作し、生存者の2人に取材しました。そして詳細な寸法まで違わず再現した筏のモデルを建造しました。死にかけている人や死体の肉体の質感や色を見るために、病院や遺体安置所にも訪れたといいます。

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Karin Jyuen(カリン・ユエン)がアートの世界をわかりやすく解説するYouTubeチャンネル。古今東西のアートにまつわる豆知識をお送りします。

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