宇宙ステーションアプリからDNA増幅器まで
自宅でつくってしまった男が語る、21世紀のモノづくり革命とは?

久川 真吾 at TEDxTokyo 2014 #1/2

かつて鳥人間コンテストに魅せられ、準優勝した経歴を持つ株式会社鳥人間・代表取締役の久川真吾氏が、自身が身を投じたモノ作りの世界において進行中の、3Dプリンタの登場などに端を発する「21世紀の産業革命」メイカームーブメントについて語りました。(TEDxTokyo 2014 より)

鳥人間コンテストが人生の方向性を決めた

久川真吾氏:私が「何かを作るということは、それ自身が素晴らしいことだ」ということに気付けたのは、物理を専攻する大学生の頃でした。授業中は数式ばかりなので、放課後は、何か手を動かしてものを作りたい。そう思った私は、ある工作サークルに入ることにしました。

工作なので、普段使うのはカッターナイフ、木、スチレンボード。どれもホームセンターに行けば買える、ありふれたものです。これらを切ったり貼ったりして、少しずつ大きなものを作っていきました。自分が何を作っているのか、もちろん名前は聞いていましたが、信じていたとは言えません。ある日の朝までは。その日、私たちは自分がそれまで作ってきたもの全てを、小さな滑走路の上で組み立てました。

パイロットがペダルを踏むとプロペラが回り出し、垂れ下がった両翼端は徐々に持ち上がり、設計通りに風を掴む。そして離陸。この瞬間、私は自分が作ってきたものが飛行機であると、それも人力飛行機であると信じることができました。

同時に、何かを作る素晴らしさ。それは、私のその後の人生を変える大きな経験でした。卒業後は6年間ソフトウェアエンジニアとして働きましたが、辞めて、自分の会社を持つことにしました。満員電車で通勤したくない、というのも大きかったのですが、ソフトウェアに限界も感じていたからです。

インターネットとの親和性は抜群でも、ソフトウェアはスクリーンからは出られない。飛行機を作った者として、それが自分の天職だとはとても思えなかったのです。せめてリアルと連携するソフトを作りたい。

そう思った私の最初の製品の、最初のユーザーは7歳の女の子でした。できるだけ簡単に使えるように、私はAR、拡張現実という技術を使い、スマートフォンを空にかざすだけで、バーチャルな線が表示されるアプリを作りました。

この線が示すのは、いつどこにスペース・ステーション、国際宇宙ステーションが見えるのかという情報です。

私の最初のユーザーは、日本人女性宇宙飛行士の地球に残された家族。彼女が宇宙ステーションに向けて旅立つ前日、私は最初のユーザーを得ました。この有料アプリは広告を一切打っていないにも関わらず、今ではおよそ世界で5万人の人が使ってくれています。最初のビジネスとしても成功でした。

いつでも、どこでも、誰でも物を作れる時代

そのすぐ後、メイカームーブメント(モノ作りにおいて「21世紀のの産業革命」と呼ばれる)がやってきます。具体的には3DCAD(3次元設計図)のようなすごいソフトウェアで、自分の作りたいものを自分で設計し、レーザーカッターのような優れたツールがそれをその場で形にしてくれる。子どもでさえ、自分の作りたいロボットを気軽に自分で作れる世の中が来たのです。

これが私の最初のロボット。水道管の中にはレーザーモジュールが入っていて、モーターが2つ付いているので自由に回ります。これは、私のアプリと無線通信を行って、いつどこに宇宙ステーションが見えるのかをレーザービームで教えてくれる「飛行石」というロボットです。こんなものはどこにも売っていない。でも私が欲しいから、私が作った。あなたの欲しいものも、もちろんあなたの手で作れます。

何から始めていいかわからないという人は、ハッカースペースやテックショップという場所を訪れてみてください。そこでは、私たちメイカーと呼ばれる人々が互いに教えあうことで知識を交換し、問題を共有し、一緒に解決しています。

東京だけではなくて、世界中のハッカースペースはインターネットで結ばれていて、私たちは時々ビジネスをして、インターネットを通じて世界を変えたりしています。例えばある日、私の友達のメイカー、彼は理科教育の専門家なのですが、ある日、私にこう言いました。「全ての中学、高校、個人がもっと気軽にDNAの実験をできるようにしたい。でもそのためにはDNA増幅器が必要なんだ」。

「DNA増幅器? 何だいそれは?」(と聞くと、)

「DNA増幅器は、DNAの実験には欠かせないものなんだけど、40万円から100万円はする。理科の先生が気軽に買えるものじゃないんだ」。

「でも、アメリカのメイカーがクラウドファンディングでお金を集め、世界で最初のオープンソースなDNA増幅器を作った。でも彼らも完璧じゃない。彼らのソフトウェアは改善の余地があるし、彼らの生産ラインやカスタマーサポートは、これを全ての学校に届けるには十分とは言えない。君はソフトウェアエンジニアだし、町工場や世界中のメイカーと繋がっている。この問題を解決するのに協力してくれないか?」。

私は言いました。「もちろん」。わずか半年後、私は自分のDNA増幅器を作ることができました。

これは世界中の学校で使われ、私たちの、DNAに対する低いリテラシーに劇的な改善をもたらすことでしょう。同様のことは、もはやすでに世界中で行われています。そしてもちろん、あなたもそれに今すぐ参加できる。

というのも、宇宙ステーションアプリからDNA増幅器まで、これら全てを作ったのは私とその奥さん、あとは猫が1匹、自宅でです。たった2人でも世界は変えられる。あなたにできない理由はどこにもない。お金がない、教育がない、組織がない、若すぎるから、年老いたから、完璧じゃないから、恥をかくから、日本だから……。そういったことは、あなたがものを作らない理由には決してならないのです。

インターネットはすでに、文明そのもののDNAとして機能し始めています。そこから何かを学び、何かを作り、何かを教え、何かを残すということに、そもそも理由はいらないのです。なぜならそれは「生きる」ということそのものなのです。人類さえ生み出した、この命の多様性というものを私は信じています。Happy hacking, Thank you.

<続きは近日公開>

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