「野菜にどれだけ救われているか、知ってる?」 朝ドラの料理監修を務めた棚橋氏が語る、精進料理の真髄とは?

The cuisine of the monk #1/2

日本食ブームと言われながらも、注目を集めるのはお寿司やラーメンばかりで、日本最古の料理である精進料理にはあまりスポットがあたりません。NHKの朝ドラ『ほんまもん』で料理監修を務めた棚橋俊夫氏が、実際に寺に入って学んだ精進の心得、そして野菜に見た"奇跡"を説きました。(TEDxTokyo2014より)

お寺で精進料理の修行を積んだ棚橋氏

棚橋俊夫氏:(一つ息を吐き、すり鉢でゴマをする)。

目を閉じてください。そして、背筋を伸ばしましょう。それから、深く呼吸をしましょう。ゆっくり吸って……ゆっくり吐きます。それを何回も繰り返してください。

少しは、香りが届きましたか? 届いてます?

今、私はこうやってゴマをすっています。日本語では「ゴマすり」ってあまりいい言葉ではないのですけど。

(会場笑)

英語では「apple-polisher」、リンゴを磨くと言うのですね。これから私は、ゴマすりの方法を話すのではありません。皆様に、精進料理という、日本で最も古くて、私が勝手に最も新しいと思っている料理について、今からお話しします。

皆さん、精進料理に出会ったり、口にしたりする機会はなかなかないと思います。法事の時、お寺で召し上がるとか……。でも残念ながら、今はお寺でもなかなか作ってくれるところがありません。私は幸いにして、27の時にお寺に入る機会がありました。これもご縁なんですね。すごく厳しい師匠、それも尼さんです、親子ぐらい違う尼さんなんですけど……。尼寺に入っていった男、と言うと変質者のようですね(笑)。

(会場笑)

精進料理を勉強しに入ったんですね。そのお寺は、座禅もあげなければお経もあげない、非常に変わったお寺です。師匠も、朝から晩まで精進料理を作っている。それも全部、手で作っている。また私の師匠は、交通事故で右手右足が不自由な方でした。ですから、このゴマすりも片手一本で、2時間も3時間もかけてやっています。

師匠の料理を2、3年間目の当たりにして、修行させていただいて、私は精進料理というものを徹底的に叩き込まれました。私は、お坊さんになるためにお寺に入ったのではありません。精進料理そのものに惚れ込んで、厳しい師匠のもと、自分の中にいかに落とし込むか、精進とは何ぞやといつも考えていました。

野菜は奇跡のたまもの

野菜しか使えない、肉や魚のない料理。これは日本でもっとも古い料理なんですね。今、日本料理が世界遺産に登録されました。騒がれている料理はほとんど懐石料理ですが。

皆さん、日本料理は世界中に普及し、今でもとても人気があります。でもそのほとんどがお寿司だったり、ラーメンだったりします。でも、それらが本当に日本料理? 皆さんは日常生活で野菜、あるいは和食というものをどれだけ食べていますか? 日本料理が世界遺産に登録されて、なんだか恥ずかしい思いをしているんじゃないか、と思うのです。

これから、野菜がどれだけ素晴らしいか、日本料理がどれだけ素晴らしいか、ということをお話するのですが……。あまりにも時間がないので、バッと行きます。要は、野菜しか使えない精進料理で、私がどのように野菜を捉えるか……(胸元に手を入れて)。私は今ここにトマトを持っています。

(会場笑)

私にとって、何よりも尊い存在です。このトマトひとつ、実は我々人間は作る事ができない。このトマトは空気と太陽と水で、素晴らしい形と色と栄養を備えています。でも我々には、その能力はありません。

さらに、植物たちは私たちに「無償の提供」をしてくれます。与えて、与えて、与えてくれます。それも四季折々、春夏秋冬と絶やすことなく提供してくれる。こんなに素晴らしい物がこの世にあるのか。どんな芸術品よりもきれいな色や形、香り。それに気づいている人間がどれだけいるのだろうか。

私はおかげさまで、野菜にしか向き合うことができなかったので、ここにすべてを見出しました。そしてすごく幸せです。もっと極端に言えば、ここに神仏を見たのです。まさにこれは空気と水と太陽でできるもの、奇跡のたまものです。

奇跡と言ったら、皆さんには神や仏であったりするのでしょうが、お寺に行って仏像をいくら拝んでも、私は救われませんでした。でも、毎日毎日野菜と向き合っているうちに、このトマトが語りかけてくる。私を最高の料理に仕上げてくれ、と訴えてくる。

昔、東京で店を持っていた時に、トマトを使った味噌汁を作りました。当時はトマトと言ったら、スライスして塩をかけたり、マヨネーズをかけたりするのが普通でした。今はだいぶ色んな調理を施すようになりましたが、当時お客さんにトマトの味噌汁をポンと出したときに、まあ最初はびっくりされてました。でもそれを口にした瞬間、こんなにおいしい物があるのかと、非常に喜ばれました。

これはトマトから教えてくれたレシピです。今パリで、三ツ星の料理人たちと新しいメニューを作っています。今世界中が、この精進に注目してくれています。日本人も頑張ってください。

自己管理に役立つ「細胞からの返事」

自分の体は、自分で管理しなくてはいけない。

最後にちょっと変な話をします。私は1日3回、お手洗いに行きます。大きい便りと書いて、3回行くんです。行き過ぎだって言われます。そうでしょうか? 3回食べて、3回出てる。大きい便りが出ているんです。体の60億の細胞から、最高のメッセージが出てくるんです。

皆さんのメッセージはどんなメッセージですか? それは自分から口に入れて提供したものが、細胞たちからの返事として便りが出てくるわけですね。毎日毎朝この便りを読んで、ありがとうって。……なんだか僕、変態に思えます?(笑)

(会場笑)

自分の体は、そうやって管理するものなんです。医者に行って薬をもらって、ではなく。野菜の恵みに我々がどれだけ救われるかを、知らない人が多すぎる。もっともっと野菜と向き合ってください。それが精進料理。不自由の中に、自由を見出すことです。以上です。

<続きは近日公開>

Published at

TED(テッド)

TED(テッド)に関する記事をまとめています。コミュニティをフォローすることで、TED(テッド)に関する新着記事が公開された際に、通知を受け取ることができます。

このログの連載記事

1 「野菜にどれだけ救われているか、知ってる?」 朝ドラの料理監修を務めた棚橋氏が語る、精進料理の真髄とは?
2 近日公開予定

スピーカーをフォロー

関連タグ

人気ログ

人気スピーカー

人気コミュニティ

ピックアップ

編集部のオススメ

ログミーBizをフォローして最新情報をチェックしよう!

人気ログ

人気スピーカー

人気コミュニティ

ピックアップ

編集部のオススメ

そのイベント、ログしないなんて
もったいない!
苦労して企画や集客したイベント「その場限り」になっていませんか?