さまざまな成長ステージの企業が集結

岩瀬大輔氏(以下、岩瀬):今日は「成長企業のチーム・組織作り」というテーマで、4名の素晴らしいパネリストの方をお迎えしてお話を伺おうと思います。去年でしたっけ、非常に似たテーマを曽山さんとやらせていただきまして、やはりサイバーエージェントさんがどういう風に組織作り・チーム作りをやっているのかというのは、本当に勉強になりました。また今年もお話を伺えるのを嬉しく思っているのですが。

今日は4名、ちょうど会社のステージが異なるトップの方が来ていますので、そういった視点からも、エスタブリッシュされたサイバーエージェントさんから、かなり勢いがあって大きいんですが、未上場のビズリーチさん、ルクサさんですね。すでに一部上場企業のリブセンスさん、この度上場をアナウンスされたフリークアウトさん。皆さん様々なステージにいらっしゃると思うので、お話を聞いていければと思います。それでは、曽山さんから簡単に自己紹介をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

サイバーエージェントの退職率30%時代

曽山哲人氏(以下、曽山):はい。それでは皆様よろしくお願いいたします。サイバーエージェントで取締役人事本部長をしている曽山と言います。今日は色んなディスカッションを楽しみにやってまいりました。2、3枚ほど紹介させて いただきます。

私自身ですが、現在39歳です。24歳の時にサイバーエージェントに入りまして。まだこの時サイバーエージェントは20名でした。私が入った時は、雑誌でサイバーエージェントを見つけて入社致しました。本当に、いち営業メンバーとして入社をしたのですが、6年間広告の営業をやりまして、企業向けにネット広告のプランだとか、そういったプロモーションをお手伝いする。

営業活動をやりながらも、社員がどんどん増えてきて、一時期は退職率が30%続いたというのも、3年くらい経験したりだとか。あるいは、上場の時私達社員数100人。フリークアウトさんが100人くらい? と伺いましたが、100人くらいで上場したのですが、その上場した年は中途を200人採りまして。なので本当は300人になるはずが、なぜか100人台、みたいな。200人いってない! くらいでですね、すごく辞めている状況で。そんな中、人事を強化しようということで9年前から人事をやっている、という形です。

正社員3000人超え

サイバーエージェント直近のトレンドだけ、少しご紹介をしたいと思います。売り上げ、業績については上のほうに書いてある通りですが、今年は営業売上200億を目指して頑張っています。スマートフォンには力を入れていまして、企業変革を相当やったのですが、2年前に売上60億円だったスマホ事業、2013年には1000億になっていまして、900億円台ですね、厳密に言うと。非常に大きく変化しました。大きな会社になってきているとはいえ、大きな変革をしているということです。

あとは、本業のメディアの広告ということに加え、教育の事業、小学生のプログラミングの授業や、クラウドファンディングの事業なんかも始めています。ちなみにサイバーエージェント、ベンチャー企業としての子会社がたくさんありまして、40社子会社があります。事業もたくさん生んでいるという形です。人事のトレンドで言うと、正社員数は3000人を超えました。

元々サイバーエージェントは営業会社で始まりましたが、今は技術者が4割。一番人数が多い職種は技術者になっています。女性が3割、新卒入社が3割、ということです。新会社は去年だけでも13社つくっています。新卒入社組の若い人材に子会社の経営を任せるということで、「新卒社長」と僕らは呼んでいますが、それが40名ほどいます。これは恐らく世界でもトップレベルだと思います。ほとんど20代なので。平均年齢は非常に若い。

とはいえ、実は30代以上が半分を超えてきまして、少しずつ年齢も上がってきた。昔は、30代が2割か3割くらいしかいなかった会社でしたが、30代以上が半分を超えてきて、今はむしろ終身雇用の会社をつくろうと頑張っています。

新卒3年目が執行役員に

人事制度をいくつかご紹介しますが、ホットなのは真ん中の3つです。サイバーエージェントの「CA18」と書いてありますが、これは執行役員の制度をつくりました。CA8と呼ばれる取締役以外に10人執行役員を選抜し、取締役会に月1回参加できるというものです。経営の情報オープン化。経営情報を開示することによって学ぶと。

このCA18、一番若いメンバーは新卒3年目、このメンバーが、このトップ18人に入っているという形になります。あとは「マカロンパッケージ」。これは妊活休暇。妊活、最近ホットだと思いますが、妊活休暇というのは制度として日本でほぼ初めて入れました。それと「キッズディ休暇」。子供の入学式や入園式、そういったところも休暇を取りたいという声があったので、半休を取れるだとか、安心の制度を用意しています。

あとは、人数が増えてきたので顔と名前が一致しなくなってきた、という事実があります。社内ヘッドハンターの専門部署をつけて、事業部長と社員と普段から面談するというようなことをして、試行錯誤しています。ということで、今日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

リブセンスの"Y型人材"とは?

岩瀬:はい、ありがとうございます。それでは村上さんお願いします。

村上 太一氏(以下、村上):はい。こんにちは。株式会社リブセンスの村上です。当社に関しては、サイバーエージェントさんと比べてまだまだ規模も小さく、従業員数はアルバイトも含めて約200名の規模となります。今日は組織論ということで、当社の考え方や取り組みをお話できればと思います。

当社は組織を考えるにあたって、一番大切なのが理念とビジョン、特に理念だと思っています。当社の理念は「幸せから生まれる幸せ」です。誰かに幸せになってもらう、喜んでもらう。そういう時に感じる喜びを何よりも大事にしたいよね、という想いです。それを実現する上でのビジョンとして「あたりまえを、発明しよう。」を掲げています。

例えば、当社の創業事業であるアルバイト求人サイト「ジョブセンス」の場合、従来は掲載にお金がかかるのが当たり前でした。そこへ掲載費用無料でお祝い金を渡すという成功報酬型の仕組みを取り入れたように、新たな“あたりまえ”をつくっていこう、という想いです。この理念やビジョンと照らし合わせてブレイクダウンし、コーポレートブランディングや組織づくりを行っています。例えば、ロゴひとつとっても、このロゴ、2つのシンボルが隠れています。

ひとつが「?」、もうひとつが「しずく」で、それぞれ意味があります。“あたりまえ”をつくるためには何が大切だろうかと考えた際、既存の常識を疑う「?」の視点が必要です。ただ「?」の視点だけではダメで、「それを徹底的に広げる、考えたアイディアを徹底的に広げていく」という想いが大切だろうという考えのもと、このロゴをつくりました。

このように、疑問と徹底、「?」としずくというように、相反する2つの要素を1つの脳に併せ持つ。2つの要素を併せ持った目指すべき人物像を「Y字型人材」と名付け、社内にどういう人材になって欲しいかを伝えています。例えば、「発想」と「徹底」です。それを実現するにあたって、発想と徹底の他にも、「実行の部分だと挑戦をしていこう、とはいえ継続もしなくては」、そういった相反する要素をしっかりと徹底できているか、という点を評価軸にも入れています。

小さい組織ならではの手厚い研修

最近の取り組みとして「村上塾」があります。まだまだ人数が少ないということもあり、私と直接コミュニケーションできる規模です。社員が、ビジネスプランをつくり私や外部の企業家からフィードバックをしてもらったり、今週あったニュースをもとにしたディスカッションをしたりする機会をつくっています。また、新卒の教育に関しては、「メイド2014」として、実際に新規サービスを立ち上げてみる研修を行いました。

それが「Pacirii(パシリィ)」というサービスで、ソーシャルメディア上でも非常に好評でした。海外だとインスタカート、速達サービスが流行ってきています。そのトレンドのもと、サービスをゼロから立ち上げてみよう、と新卒4名で企画からサイト立ち上げ、オペレーション、アルバイトを雇って配送するまで行ったのですが、アルバイトの雇用契約書をどう作ればいいのかだとか、利用規約をどう作るかだとか、そういった事業上必要なことをすべて自分たちでやってみる研修を、1か月行いました。

「実際にサービスをゼロから立ち上げるにあたって、考えてばかりじゃだめだということに気が付きました」「想像していたより実際にユーザーを集めるのは大変ですね」「ビラを配って全然人が来なかったのですが、インターネット上でソーシャルメディアをつかって拡散したら一気に広がりました。インターネットのすごさに改めて触れました」等、実際にサービスをゼロから考え、立ち上げてみる中で色々な学びがあったようです。

会社規模が小さい分、新卒にも手厚い研修が出来るということで、私含め役員陣もフィードバックをしながら、会社の考え方、新たな“あたりまえ”をつくることを浸透させています。

その他に、組織が大きくなってきたこともあり、人事部門を更に強化しています。創業メンバーの1人である取締役の桂が触媒部、人事部ではなく「触媒部」という名称のもと、更なる組織の強化、人事・育成制度の強化に取り組んでいます。人が成長するにはどうしたらいいかというと、現状の自分をしっかり理解し、その状態を把握させる必要があるだろう、ということでフィードバックの機会を増やす取り組みをしています。

トップダウンで何かをやるということではなく、1人ひとりのスキルやモチベーションをアップさせ、組織そのものを活性化していくことが大切だと考えています。とは言え、創業当時は19歳、学生ということもあり、組織を考えるにあたっては名著と言われている「ビジョナリーカンパニー」を読んでも、「なんだこれ?」「組織ってなんだ?」という状況でした。当時に比べれば様々な実体験の中で少しずつ進化できていると思っていますが、まだまだ改善しなければいけないところが多い、というステージですので、今日は色々と教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

ミュージシャンからアフィリエイト関連職へ

岩瀬:はい、ありがとうございました。それでは本田さん、よろしくお願いいたします。

本田 謙氏(以下、本田):はい、フリークアウトの本田でございます。

今日は資料を用意しなかったので口頭で説明させていただきます。せっかくなので、こういう人間がこういう会社をつくって、今こうなっている、という話からしようと思います。まず私自身の紹介、フリークアウトをつくるまでの話を簡単にさせてください。

私今39歳で、フリークアウトをつくったのが35、6歳。3年半ほど前だったのですが。となると大学を出てから12、3年何をやっていたかと言いますと、私は大学では物理を専攻していて、日本の大学です。研究はAIとかプログラミングをやっていました。一方で音楽が大好きで、CM音楽のデモテープを作る、そういう作家のような仕事をコンペ形式で、当時インターネットがまだ発達していなかったので、依頼をFAXでコンテもらっては、その15秒30秒の曲をつくるような仕事を3、4年やってきました。

そんなミュージシャンの仕事をやったり、コンピューターが好きだったり、それが20代前半の頃でした。音楽でもかろうじて仕事は成り立っていたのですが、期待していた華やかなショービズの世界よりは、パソコンの前で1人で曲を作っているだけの仕事はどうなのか? と考えた時に、父がちょうど千葉の田舎で20人ほどの小さい会社をやっておりまして。

それは主に医療機器や研究機器をつくっては納めているような小さなメーカーだったのですが、そこの手伝いをするようになり、徐々にエンジニアになり、まぁもともとソフトウェアプログラミングが得意だったので。せっかくなのでロボットの勉強もしようと思い、ロボットをつくったり、つくったロボットを研究所に納めたり、ということを25歳頃からやっていました。

いずれ父の会社を継がされるのかなと思い、実際にお客様が使っている現場を勉強したいなと思って、バイオ等の研究所、そちらの世界のこともきちんと勉強しようと思い、父に話をして。アメリカの大学に研究員として行かせてもらう機会をもらいました。音楽が好きだったので、アメリカのデトロイトが黒人音楽の都ということで、そこに行きたいと思い、ミシガンの大学に研究員として3年半ほど行って来まして。昼間は研究所で研究をし、夜はミュージシャンのいるところに行って楽器を弾いている。そんな楽しい人生を送っていたのが20代後半でした。

一方で、インターネットビジネスというか当時アフィリエイトとかSEOといったものに興味を持ち出しました。完全に個人の趣味の世界です。そこから、だんだんそちらにはまっていきました。当時はSEOと言っても、そんなに日本できちんとやってる方もいらっしゃらず、エンジニアの立場で研究テーマとして本格的にやっている方もいなかった中で、自分でソフトウェアを組んで、こういうキーワードを食わせたらグーグルがどういう結果を返すか、ということをやっていました。

当時、グーグルの検索エンジン、日本語のアルゴリズムはザルみたいなものだったので、やりたい放題やっていたのが2000、2001年頃。当時個人サイトで「アフィリエイト」で検索してヤフーとグーグルでトップになるサイトを持っていました。そうなってくると、もうアフィリエイトでやりたい放題で(笑)。そんなことをずっとやっていて、だんだんアメリカに住んでいる意味がよくわからなくなってきて、日本に帰ってきました。

イーストベンチャーズ・松山氏との出会い

インターネットも大好きでしたが、趣味でやってて、銀行口座に毎月振り込まれているという状態で、ネットの世界に全くコネクションもなく、今度は千葉に帰ってきたので、仕事を相変わらず手伝いながら、今度は筑波の国立の研究所でまた研究者をやりながら、父の会社でロボットをつくっている……とそういうことをやっているうちに30歳を過ぎて。松山太河というベンチャーの投資家がいるのですが、高校の時にたまたま僕の後ろに座っていたのが彼でして。

(会場笑)

(名字の名前順で)はひふへほ、で本田。で、僕の後ろに松山が。あいうえお順の出席番号だったので松山がいたのですが。高校1年で入学した時に彼が後ろに座っていて、最初に話しかけたのが彼でした。その彼とSNSか何かで久しぶり、って僕が投げました。そしたら、僕がつくったソフトウェア、SEO解析のソフトウェアを彼も使っていて、アドバイザーをやっている先で使わせていたり。

そんな中で、「おぉ」と思って久しぶりの再会をしているうちに、彼がファンドを始めたという話を聞き、彼のほうからグーグルのアドセンス、今でも動いていますが。あれは2003年にグーグルがローンチして、2005年になってもまだあれの真似事やっている日本のベンチャーがない、ということでそれをやってみないか……という話をされたのが、30代になってITに移って起業家になる経緯でした。それが2005年。

面白いと思って、試しにプロトタイプつくってみて、あれよあれよと言う間にサービスが伸びて、1年経った頃にはM&Aのオファーラッシュになり、最後にはYahoo! JAPANさんから声がかかって、Yahoo! にジョイン(参加)させてもらって。今の「YDN」の前身にあたる「インタレストマッチ」という、あれをつくるタイミングで入り、私自身がターゲティング広告の開発部長の立場で、Yahoo! の中で少し開発も関わらせてもらいました。それが2008年。

契約が切れてから再び広告の世界に

「インタレストマッチ」のファーストバージョンのローンチの後、Yahoo! は退職させてもらいました。競業避止契約の関係で、3年ほどITの仕事ができない期間があったので、その間はずっと投資家としてこそこそ動き回っていたり、アメリカの最先端のテクノロジー広告の事情とかを見ていたのですが、そこで経済がガタンと落ちた後に、広告の世界でものすごいイノベーションが起きて、「リアルタイムビッディング」という新しい広告の取引が始まりました。

なんだか面白そうでやりたいんだけど、広告の仕事できないしな……と思い、2年ほどずっと眺めていました。2年経って2010年になっても、まだそれをやるプレイヤーが日本で現れなくて。ようやくYahooとの契約もエクスパイヤして、仕事ができるようになって立ち上げたのがこのフリークアウト、ということになります。そんな人間なので、人の気持ちをうまく分かってあげられないというところがありまして。

(会場笑)

といいながら、社員が今現在100人になってしまいまして。本当に悩んでいるので、どちらかと言うと私も皆さんの話を聞きたいという立場だったのに、呼ばれてしまって正直びっくりしています。そういう意味で、どちらかというと反面教師的なお話が色々できればな、と思っています。

数字目標を持たない営業

1つ、例で言うと、「フリークアウト」という名前を付けちゃったのが……。というのも変ですが。私、先ほども申しあげた通り音楽好きで、会社2回目ということもあり、だいぶリラックスした感じでこのフリークアウトを起業しました。ひとつ前は「ブレイナー」と言って、頭が良さそうな、賢そうな広告のエンジン持ってそうな、というイメージでやっていました。

それに比べて「フリークアウト」ってパーって感じ……。一応意味は、僕の好きなミュージシャンのファーストアルバムがフリークアウトだったので、もう2回目なので僕の好きなようにやってみよう、というのがフリークアウトです。で、フリークアウトと付けたのですが、名は体を表すというか、そういう人間が集まってくるんですよ。

(会場笑)

先日も、どこかの経営者さんの組織論、「素直な良い子を集めるのがいいですよ」というお話を聞いたのですが、もううちの社員はまるで逆で、斜めに構えているというか。3か月に1回納会をやる時に、私が30?40分の話を割としっかり作ってさせてもらっています。例えば、広告の最先端はこれからどうなるか、みたいな話を社員にしています。あるタイミングで、だいぶ人も増えたし、あまり難しい話をしてもわからないかなと思い、フリークアウト101的な簡単な話をしたんです。そしたら古株の社員たちが「本田から学ぶことはもう何もなくなった」みたいなことを、ぼそぼそ言っているみたいで(笑)。

(会場笑)

もうこっちも「ふざけんな」と思いながら、3か月後にはまた難しい話をぶつけてみる、みたいな(笑)。そんな感じで大きくなっている、めちゃくちゃな会社です。制度的な話で言うと、テクノロジー会社なのでエンジニアと営業が半々くらいでいます。営業の少し変わっているところは、個人目標、数字的なものは一切持たせていません。これはちゃんと考えがあります。

テクノロジーがお客様に対して、今後コンサル的に入っていくと考えており、お客様のニーズを拾いながら、とにかく面白いことを提案しろという指示を出しています。数字よりももっと大切な定性的な部分を評価していきたいと思い、あえて数字は持たせていないのです。ですので、数字を持たせる会社から来ると、うちの中で何をやっていいのかわからなくなってしまう、こういうことがすごく起きているなと感じています。

エンジニア側の役員は、私とCTOで入った元ヤフーCTOの明石と2人がいて、採用にあたって、これはという人材がいれば、私も口説きに参加します。広告なので、よく言う口説き文句としては「インターネットの世界、大体広告でお金が動いているんだから、エンジニアとして2、3年は経験しろよ」「トラフィックに関しては圧倒的なので、一旦この世界のインフラやらなきゃだめだよ」と多少いじめながら。そんな文化でやっております。まとまりませんが、以上でございます。

制作協力:VoXT