エネルギーとは“仕事”をする能力

ハンク・グリーン氏:みなさんもうご存知かもしれませんが、我々はGoogleとYouTubeと協力して、インターネットで一番よく聞かれる科学の質問に答えています。

さて、私はみなさんを褒めたいと思います。インターネットの集合意識は、非常に難解で、魅力的な質問をしてくれました。

「エネルギーってなに?」。

エネルギーとは、すべてです。エネルギーはどこにでも存在します。宇宙が生まれた頃から存在する、宇宙の真の定数の1つです。

エネルギーにはさまざまなかたちがありますが、どんなかたちであっても同じことを意味しています。エネルギーとは仕事をする能力だということです。ここで言う“仕事”とは、力を与えてなにかを変位させる行為です。

例えば、ストンプロケットを踏むと、足がペダルに与える力が大砲を発射させる空気の力に変わり、ロケットを飛ばします。

あるいは、おいしいパテを楽しんだら、食べ物に含まれているエネルギーが体の数千兆の細胞のために使われます。

細胞がそのエネルギーを使って、DNAをコピーしたり、たんぱく質を修理や作成したり、材料を運んだり、筋肉を収縮させたり、つまり生きていくために不可欠なことを行うのです。

ロケットを飛ばすことや、細胞の働き、あなたに今この動画を見せているスマホやパソコンの動きも、すべて仕事です。

このような「仕事をする能力」がすべての物の本質的なことなのです。

なんの変哲もない丸太にもエネルギーが

一見、まったく動かなさそうものでも……例えばこの丸太にもエネルギーはあります。

丸太の材料は、炭素、水素、酸素からなるリグニンですが、リグニンには化学的なエネルギーをたくさん有しています。リグニンの分子のすべては原子間の結合で組み立てられていて、その結合にエネルギーがあるのです。

もしこの丸太に熱などの十分なエネルギーを加えた場合、その結合が外れて、その分のエネルギーが“火”として出てきます。

パテから得られるエネルギーも化学的なエネルギーです。私たちの体は、糖分、脂肪、およびタンパク質の化学的なエネルギーを使って動くのです。

さらに、丸太には核エネルギーも含まれています。この丸太の各原子は陽子と中性子で作られた核を持っていて、その粒子の結合は宇宙で一番強い結合です。

この丸太のなかの炭素や水素の原子の1つを分割して、陽子と中性子に分けることができれば、そのエネルギーが解放されます。

この丸太に入っているエネルギーのすべてを解放できれば、ここにはクレーターしか残らず、モンタナ州ミズーラ市のみなさんが死ぬことになります。

原子から作られているものすべてに核エネルギーが入っているということは、エネルギーと質量は同じ物だということです。

「E = mc2」という、あるドイツ人の特許局員が約100年前に思いついた式を知っているかもしれませんね。

これ以外にもエネルギーの種類はたくさんあって、それについてもっと話したいのですがその時間はなさそうですね。

エネルギーとは“すべて”

しかし、かたちが違っても、すべてのエネルギーは仕事をするために使えます。タービンやエンジンのピストンを動かしたり、タブレットの画面を光らせたりすることにも使えますし、宇宙で一番不思議なエネルギーである「ダークエネルギー」は宇宙を広げるために使われていますね。

でもこれだけは覚えておいてください。仕事をやってもエネルギーはなくなりません。エネルギーはなくなることができないのです。

エネルギーは滅ばせないし、作れない。変換することしかできません。

例えば、パテの材料に含まれるエネルギーは体のエネルギーに変換されました。丸太の化学的なエネルギーも光や熱に変換されましたよね。

宇宙をエネルギーの永久の流れと考えてもらってもいいでしょう。その流れのなかで、私たちはエネルギーがちょっと休める場所にいるに過ぎません。

私たちの体がやっていることのすべて、例えば肺が酸素を吸収すること、心臓が血液を送ること、勉強することでも、宇宙の誕生から存在しているエネルギーをリサイクルしたものを使っているのです。

そしてただ生きていることだけでそのエネルギーを解放しています。解放されたエネルギーは、環境によってさまざまなかたちで使われています。

いいですか、インターネットのみなさん。エネルギーとは、すべてです。