乾燥する地域で水分を温存するための奇策

ハンク・グリーン氏:人間の身に起こらなくてよかったと思うことのリストはどんどん増えていっているのですが、その1つにこのことがあります。

想像してみてください。あなたがちょっと脱水症状になるたびに、身体中が覆われるほど毛穴から粘液が出てくるのです。そして身体がシャットダウンします。そして雨が降ったり、そのほかの方法で水に触れて、眼が覚めると、すぐに自分の鼻くそでできた、ラブリーな繭から、一生懸命に出てくるのです。

もしこんなことが人間に起こるとしたら、私だったら、どんなことをしてでも、一滴だって汗をかかないようにします。

しかし、ある動物にとっては、これは乾燥した環境で生きるための唯一のオプションなのです。この生物は世界でもっとも暑く乾燥した環境で生き残るために順応し、「夏眠」と呼ばれる休眠状態に入ります。これは「冬眠」のような状態で、似たプロセスと言えるでしょう。動物が機能をしばしシャットダウンすることにより、消費する資源をより少なくするのです。

動物が冬眠する原因は通常、食物が足りないことによるもので、野外が寒い時に生じます。「夏眠」はそれとは異なります。なぜならその動物の主な目的は水分の温存で、暑い時に起こるからです。

「夏眠」はちょうど「冬眠」のようで、動物それぞれの必要により、異なる方法で働きます。しかし基本は同じです。心拍数が下がり、通常よりずっと少ない酸素を取り入れ、どんな食物も水分も取り入れません。

しかし水分は通常そんなに長い間とどまることはできません。とくに暑い場合はそうです。それに休眠状態だからとはいえ、身体が乾ききってしまえば、動物は生きていくことができません。ですから、「夏眠」する動物は通常硬くなった体液で覆うことで水分の欠如を防ぐのです。

例えば「アフリカ肺魚」がいます。

名前の通り、この魚は肺もエラもあります。肺があるのですよ!

通常彼らは沼地や湿地帯に住んでいて、ほとんどの場合はエラで酸素を取り入れ、1時間のうちに何度か肺で呼吸するために水面に出てきます。魚なのに!

しかし乾季になると沼は泥になり、彼らは泥のなかに隠れて、体液の繭を作り出します。その繭には空気穴が空いていますので、引き続き呼吸が可能です。その中にいる間、彼らの体は必要とされる微量なエネルギー分の、自分の筋肉組織を消化します。

それに排尿しませんから、ほかの動物にとっては致命的な、2倍もの量の尿素が溜まります。そしてその「夏眠」から目覚めるとアフリカ肺魚は一生分の尿をするのです。

体液で体を覆うカエルたち

ほかの「夏眠」をする動物はそれとはまたちょっと違う方法を使います。

乾季はカエルにとってハードな季節です。例えば、彼らは水を飲まず、皮膚から吸収します。それゆえに彼らにとって乾燥はとくに危険です。

例えば若い西アフリカクサガエルは、乾季を生き延びるために、見つけた高い植物に登り、四肢を皮膚の中にしまいこみ、体液で身体を覆い、太陽に当たります。

脱水症状を避ける方法としてはおかしな感じがするかもしれませんが、彼らの皮膚細胞には虹色素胞が含まれ、それは光を反射するため、太陽光から熱を吸収するのを防いでくれるのです。

その間に体液の覆いが体内のほとんどの水分が蒸発するのを防いでくれます。

最後に、オーストラリアの「water-holding frog」という種カエルは、「夏眠」のメソッドをすばらしく進化させたため、人間が真似をしたくてもその方法がわからないほどです。

オーストラリアの僻地では1年間に30センチ程しか雨が降りません。

それで、乾季が来る直前に、このカエルは皮膚から吸えるだけの水分を取り込みます。そして、後ろ足で泥の中に1メートルほどの穴を掘り、そこで皮膚のような体液の繭を作ります。

彼らはそこに何年もとどまることができるのです!

そして再び大雨が降り始めると、ホルモンにより目覚めるのです。乾燥した皮膚の袋から出てくると、それを朝食として食べてしまいます。

もしあなたがオーストラリアの僻地で水もなく迷子になってしまったら、「夏眠」の新しい知識を利用しましょう。アボリジニの人たちは何世紀にもわたってそうしています。

鳴き声が聞こえるまで、できるだけ激しく地面を踏みつけるのです。そこを掘れば「water-holding frog」を捕まえることができます。そしてただカエルのお尻に口をつけて絞ればいいのです。

するとどうでしょう! 飲み水、のようなものが出てきます。私に選択の余地があるなら、自分の体液で覆うほうがいいかもしれませんね。