シリコンバレー内にある流動性

澤山:エコシステムという話で、さっきのサイクルの話で考えると、「死んでいったあとどうするのか」というところがすごい重要なポイントなのかなと思います。

河原:肥料になるんですかね(笑)。

澤山:でも、それは確かに。ちょっとおもしろい話としては、500 Startupsの場合は、アクセラレーターに入ると、3~4ヵ月だいたいみんな一緒のオフィスで過ごすんですよ。

その間にやっぱりチーム同士で仲良くなるので、Y Combinatorも同じようなことがあるって聞きましたけど、どこかのバッチが失敗すると、また別のバッチの同期にそのまま吸収される。

河原:雇ってくれるんだ。へー。

澤山:あと、こっちでクビになったエンジニアが、次の日からあっちで働いていたとか。人材がそのなかで流動性をもったり、そういうセーフティネットみたいなものができてきているというのは聞いたことあります。

河原:それはリアルなエコシステムですね。

木村:けっこう流動的なのは本当にそうで。先ほど言ったのは、アクセラレーターを同期のバッチ内だけじゃなくて、投資家同士が「このスタートアップとこのスタートアップで、こっちはあんまりうまくいってないけど、これ合わせたらおもしろいんじゃないか」というのでガッチャンコしてる事例も、サポートしているスタートアップでけっこう見たりして。ああいうのはおもしろいなと思いますね。日本だとほとんど見たことないので。

河原:なるほど。数年前にクラウドソーシングのでっかい会社が3つぐらい一緒になりましたからね。

でも、そういう面だとシリコンバレーの人たちは合理的かもしれないですね。感情じゃないのかもしれないですね。

木村:あとやっぱり株の持ち方がけっこう違うのもあるでしょうね。

河原:どういうふうに?

木村:ファウンダーが3人ぐらいいたら、やっぱり3人で均等に持っていたりするので。日本の場合だと、株の持ち方がけっこう違うじゃないですか。

澤山:でもそこってすごく難しいポイントで。むしろ2012年、2013年頃は、「株を均等に持ってるんじゃないよ。社長に集めろよ」みたいな話が日本ですごく出てた気がするんですよ。

でも、逆にアメリカだと、Y Combinatorとかは最近はさすがにもうやめたのかな。でも、一時期まではたぶん均等に持ってないかぎり……。

木村:均等に持ってなきゃダメなんですね。

澤山:そう、ダメ。今はさすがにそれは外したみたいですけど、そういうのがあったりはしましたね。

だから、どういうふうに資本政策をやるのかとか、それこそ投資契約書の話だったりとか。

木村:違いますよね、常識が。

「AngelList」などプラットフォームの充実

澤山:そういうノウハウというのは、けっこう明確に遅れている部分もまだあるのかなという気はします。

木村:まあ、どっちがいいかという話で、進んでる、遅れてるじゃないかと思うんですけど、やっぱり違うなとは思っています。

日本だとやっぱり、エンジェルの方が入っているようなところはあんまりよくないって言われたりするんですけど、シリコンバレーだと20~30人いますからね。

河原:そうですよね。

澤山:「AngelList」がすごいそこに貢献しているところはありますよね。

木村:そうですね。

澤山:AngelListのシンジケーションがどんどん今伸びていて。500のslideshareに、この前AngelListの人が神戸に来た時に話していたスライドがあがってるので、ぜひそれ見ていただきたいんですけど。

AngelListで、あるエンジェルが「このベンチャーに投資します」って決めるじゃないですか。そしたら、そのエンジェルが今度「ほかにエンジェルを集めるぜ」って、エンジェルをどんどん集めてシンジケーションを組んで。

要はエンジェル1人がたぶん2,000万ぐらい出して、あとはAngelListでほかの人たちを30人ぐらい集めて、6,000万ぐらい追加で出す。で、投資するということをやるんですよ。

これをやると、最初に発起人みたいになったエンジェルとAngelListがそれぞれ、その投資のリターンをちょっともらえる。

木村:へー。

河原:AngelListって知ってた方どれぐらいいます?

(会場挙手)

澤山:日本だとそんなに。

河原:アカウント持ってる人?

(会場挙手)

ジャーナリストの方だと持ってたりしますよね。

確かにプラットフォームの充実みたいなものはありますよね。CrunchBaseも然りですけど。そういう情報がちゃんと流通していて、みんなが支え合うために使えるサービスがちゃんとあって、そこにちゃんと人が紐付いているというのはあるかもしれないですね。

シリコンバレーの投資額の半分は個人が出している

澤山:ノウハウの発信や共有というのもやっぱりあるんですかね。500を起ち上げてから、僕らはけっこう積極的にブログでどいろいろな情報を発信していて、英語のコンテンツをひたすら翻訳して出したりしてるんですけど、あんまりそういうことをしてる人って周りにいないので。

向こうのVCってみんなWebサイトでこういうノウハウ出しまくってますよね。

木村:やってますね。将来予測とかも出すし。コンテンツマーケティングに近いんでしょうね。

澤山:そうですね。

木村:彼らから見ても情報が多いので、専門性みたいなものをアピールするためにやっているところもあるんでしょうね。

澤山:VCも多いんだよね。競合してますよね。

河原:日本のスタートアップエコシステムとアメリカシリコンバレーの比較で、個人投資家の数の違いってよく言われますけど。

さっきのAngelListの話もありますけど、周りの話とか聞いても、エンジェルインベスターのネットワークみたいものってものすごく活発なんですかね?

木村:すごいですね。日本の年間の投資額は、だいたい1,000億~2,000億って言われてますけど、シリコンバレーの年間の投資額はだいたい4兆~5兆って言われていて、そのなかの半分ぐらいがエンジェルだと言われていますね。

河原:半分は個人が出してるんですね。

木村:個人です。それがけっこうシードラウンドを支えていて。なので、さっきみたいな現象が起こるんですよね。

周りにいるところだと、金融系で働いていて年収がちょっと高いような人が気軽に投資したりしていて。所得制限があって、確か2,000万円以上年収がないと投資できなかったりするんですけど、エンジェルの層がめちゃくちゃ厚いというのはありますね。

河原:まあでも、プチ金持ちみたいな人いっぱいいますからね。

木村:いっぱいいますね。やっぱりSO(ストックオプション)とかでも、上がったときの時価総額がバカでかいので、例えばSOを0.1パーセント持ってるだけで、ミリオネアになっちゃうみたいのがけっこうあるんですよね。

河原:へー。

ストックオプションを配るのは当たり前

澤山:でも、ストックオプションをちゃんとみんなに出すというのも、けっこう違う感じがしますね。

木村:そうですね。徹底してますね。

澤山:だって、今日だったかな、メルカリの山田さんの記事が出てましたけど、全社員ストックオプション配ったってニュースになってましたから。「ニュースになるのかい!」っていう。

木村:確かに。シリコンバレーでいったら、ふつうですね。

河原:確かにそれは現象の違いとしてはありますね。

まあそんな話もありつつ。なんかPAAKの会員さんから「質問がたくさんあったので、ぜひ聞いてください」みたいなのがあったので、ちょっとふってみましょうかね。

「エコシステムの具体例。日本で似たようなことをやっている事例があれば、知りたいです」という質問が来ましたが。

ある意味500は、シリコンバレーのエコシステムの仕組みを日本に持ち込んだ一例かなと思うんですよ。そのへんどうですかね。

澤山:最初にもちょっと言ったとおり、500はやっぱりエコシステムをつくるためにいろんな国でいろんなことをやってるというのが特徴としてあります。だから、僕らはベンチャーキャピタルなんですけど、事業が2つあって、投資と、エコシステム構築なんですよ。

エコシステム構築のなかでやってることっていうのは、大きく分けると、教育プログラムと、コミュニティとかイベントみたいなものですね。イベントは、いろんなものを、「#500STRONG Night」という勉強会を定期的にやっていたりとか。

あと、ちょっと宣伝ですけど、来月10月の8日・9日はハッカソンやるので。

河原:ハッカソンまでやるんですか?

澤山:これはけっこう僕の個人的な趣味なんですけど。

河原:絶対そうですよね。

500 Startupsが最近力を入れているのは教育プログラム

澤山:10月の8日・9日にハッカソンをやって。優勝者は、シリコンバレーへの旅費とAirbnb出しますっていう。29歳以下のエンジニアはぜひって話なんですけど。そんなのをやったりしています。

それはそれとして、そういうイベント系、コミュニティ系はどんどんやっていくんですけど、最近力を入れてるのは教育プログラムで。

やっぱりエコシステムをつくるっていうのは、いろんなプレイヤーが必要なわけですよ。さっきのエンジェルの話とかVCの話もそうですけど、間接的に行政や政府の支援も大事だったり、大企業も必要だったりするわけですけど。そういう人たち向けに、僕たちは今3つぐらい教育プログラムをもっています。

まず投資家教育。我々は「Venture Capital Unlocked」という名前で、スタンフォード大学と2週間の教育プログラムをやってるんですね。日本からも何社か参加していて、2週間かけて本当に投資家としてどういう投資をするべきなのか、どうやって投資をするのか学ぶという教育をやっています。

それ以外にも、オープン・イノベーションの教育プログラム。これはやっぱり最近大人気で。これは1週間はプログラムをやったり。あと2週間前に、今度は1対1のイベントをやって「大企業がベンチャーにどういうふうに連携するべきなのか」、もしくは「連携するときにこういうところに気をつけましょう」という教育プログラムをやりました。

3つ目が起業家教育で。これはけっこうみなさんいろいろやってるんですけど、この前、神戸でPre-Acceleratorっていうのをやって。

20社ぐらい採択されて、6週間かな、正確には2週間やって、そのあと2週間いったん離れて、もう1回2週間やるというプログラムですけど、それでみっちり鍛え上げるみたいな感じでね。

河原:今、日本のスタッフって何人でしたっけ?

澤山:日本は、僕ともう1人と、あとアシスタント1人とインターン2人なので、5人。

河原:それを回して、ハッカソンまでやってってむっちゃ大変じゃないですか? 

澤山:まあまあなんとか(笑)。でも、神戸のプログラムは、日本のチームだけじゃなくて、むしろUSのチームがどんどん来てくれて。なんだかんだで20人以上来たのかな。

河原:そんなに来たんですか。

澤山:さすがに6週間ずっと常駐じゃないんですけど、けっこう代わり代わりというか。日本に来て3~4日ほど、1週間ぐらい働いて、観光して帰る、みたいな。

河原:やっぱり観光が大事?

澤山:でも、それはそれで日本のすごくいい強みなので。

河原:確かにそうですよね。

澤山:それを餌に日本に来させちゃう感じなので。

河原:確かに。この間やった「Moment」ってイベントもそうですけど、けっこうVCの偉い人たちが、なんか料亭かなんかでご飯食べてご満悦みたいな。そういう引っ張りやすい材料みたいなものは、日本にはたくさんあるかもしれないですね。