日本の最低賃金問題

山田玲司氏(以下、山田):そこから、もう1個の問題というのは、本当にガチで日本の貧困がヤバい領域に入っているという。

乙君氏(以下、乙君):おうおう。

山田:だから、……ちょっと論客っぽくいきますよ(笑)。

(一同笑)

乙君:どうぞどうぞ。

山田:いや、だから、さっき言ってた最低賃金問題だよ。

乙君:最低賃金問題。

山田:最低賃金がOECD内で最低水準だと言われてまして、ざっくりですけど、だいたい……。大阪と東京が突出して高いところはありますが、全国平均にすると700円台なんですよね、俺たちの国って。おフランスは最低賃金いくらもらってるか知ってる?

乙君:おフランス?

山田:おフランス。

乙君:そりゃおフランスですからね。

山田:おフランスだからね。

乙君:まあ、1,000円はいくでしょ。

山田:1,300円です。

乙君&しみちゃん氏(以下、しみちゃん):おー!

山田:だから……、まあ、おフランスの話は別としても。要するに最低なんだよ。

乙君:日本がでしょ、先進国のなかでは。

山田:せっかく働こうと思って、ニートをやめて家を出ても、最低なんだよ、俺たち。そのくせ、物価はアホみたいに高い。

乙君:そうですね。

公務員天国問題とは?

山田:もう1個、公務員天国問題があるんですよ。

乙君:あー。

山田:これはなかなかすげーよ。いろいろ聞いてたんだよ。日本の公務員は、もう神だと。

しみちゃん:はい。

山田:お上っていうくらいなので、本当の神になってますからね。ゴッドになってますからね。ゴッジィーラですからね(笑)。

(一同笑)

山田:止めてください?

乙君:……。

山田:止めてください!

乙君:続けてください。

しみちゃん:(笑)。

山田:おまえが黙ってる間、だんだん俺、傷ついていくんだから、わかってんのか?

(一同笑)

乙君:だから俺、コメントを見て、どれぐらい伝わってるのかをね……(笑)。

世界の公務員の年収は?

山田:アメリカの話ですけど、平均年収低いですよ。325万円。

乙君:ほー。

山田:だけど、(アメリカの)公務員の年収、357万円。ほとんど変わらないんです。ちょっと高いぐらい。

乙君:はいはい。

山田:ブリテン、グレートブリテンいっちゃいますよ。平均275万円、安いよね。

乙君:安いっすね。

山田:でも、公務員はもっと安くて240万円。

乙君:え、安い。

山田:それで、おフランスは、たぶん移民とかいろいろあるんだろうね。だから、分かれてるんだと思います、もらってる人ともらってない人が。だから、異常に低い平均年収が、198万円。

乙君:低っ!

山田:これ、本当なのかなあ。なんか俺が見たデータなので、すいません。本当のところは、山田が調べたわけではないです。ただ、僕が調べてもらったら、こうなりました。

しみちゃん:(笑)。

乙君:言論とかって、ソースまとめて出すのがあれなんで、次回からは(笑)。

(一同笑)

山田:まあまあ、ざっくりいきますので。

乙君:はいはい。

山田:それで、そのおフランスも公務員180万円。別のことも仕事にしてるんだろうな、と。問題は日本ですよ。

乙君:日本来ました。

山田:はい。412万円平均年収。

乙君:おー、高い。

山田:高いんですよ、ほかの国に比べたら。

乙君:そう言われると高いですね。倍じゃないですか、フランスの。

山田:で、公務員がもらってる額、私のところのデータ調べですけど(笑)。

しみちゃん:(笑)。

山田:当社比、724万円。

乙君&しみちゃん:えっ?

自己責任に疲れている

山田:これ、俺の環境関係の人たちから聞いたやつなんだけど。国連……、なんだっけ。『東洋経済』だったかな。たぶん、そういうやつから引っ張ってきたんだけど、そうらしいの。どうすんの、これ、みたいな。

それで、物価が高くて、しかも、キツいのが「10年前のほうが豊かだった」って感覚がある。それプラス、「楽しみは金を出さないと手に入らない」って国でもあるという。

乙君:あー。

山田:なにをするにでも金がかかるのに、金がないって言ったら、やっぱり、ヘイトフルになるでしょって話なんだ。「金さえありゃさー」っていうぶっちゃけな考え方が蔓延してるのに、金がないんだよ(笑)。金さえあればなんとかなるのに、金がないという。これやっぱり、ヘイトフルになるわけだよなって話。

もう1個、みんな疲れてるんだけど、なにに疲れてるかというと、自己責任疲れなんだよね。

乙君:あー。

山田:『ヘイトフル・エイト』は、南北戦争が終わった後の話なんだよ。だから、戦争が終わってるから、もう殺し合う必要ないし、憎み合う必要もないんだけど、憎しみだけが残ってる。

乙君:そうですね。

山田:これは、この貧困問題で言うと、俺たちは、戦争が終わった後に戦後っていう戦いをしていた。戦後っていう戦争があったわけ。それは経済戦争、受験戦争、いわゆるインフラ、豊かな日本、「焼け野原からの……」みたいな、「日本はいい国になったね」っていう老人が多い。

そういう人たちは物が多けりゃいいと思ってる。物が多いイコール豊かみたいなことを思っていらっしゃる、戦後、焼け野原で苦労された年齢の人たちが多くて、そういう人たちがWindows95のまま空気を支配している部分もあるってことね。

乙君:あー。

山田:アップデートされないまま、ずっと、このノリで来てるわけ。

乙君:はい。

実感がないまま戦い続けている

山田:だけど、戦争は終わってるんだよ、91年ぐらいで、バブルで。バブルぐらいのところまでで、その……。

乙君:駆け上がってきて。

山田:よく言うでしょ。途上国を豊かにするためには、まず識字率をアップ、学校を作って教養を高め、そして、チャンスを与え、GDPが上がり、インフラが整えられて、豊かな国になるって流れがあるじゃん。

乙君:あるある。

山田:でも、これはある程度、最低のところから一番普通のところまでの流れで。

乙君:うん。

山田:実は、そこでアップデートできてないっていう。なので、ここの苦労の仕方を、いまだに維持するとなにがあるかというと、実感がないまま戦い続けてるっていう。

乙君:あー。

山田:幸せになれるって時期が、過去の人たちはあった。俺よりも俺の時代になるとまだあったんだけど、今の人たちはもうないんだよね。「だって、がんばったってダメじゃん」みたいな。だけど、残っている神話というのは、要するに自由競争なんで、勝てばいいという。

これが、いわゆるリバタリアン的な感じで、ちょっと前のホリエモンが言ってた「要領の悪い奴がバカだからダメなんですよ」みたいな空気があったの。ホリエモンがそう思ってるかどうかは別だけど。

でも、そのなかで、要するに自己責任っていうところで、負けたというのは自分の要領が悪かった、自分がダメだった。どういうことかというと、自分を責めるようなセッティングになっちゃうんだよ。

乙君:なるほどね。

山田:これはヘイトフルですよ、なかなか。自分が悪いわけじゃないの。インフラが整った後に、次のステージに変えなきゃいけなかったんだけど、それまでになんでここまで来たかっていうと、土木だったり工業だったり、いろいろあるじゃん。

それを維持しようとするから、それを埋めるために公共事業にお金を出す。そうすると、ずっと土木やってるから、ずっと穴掘ってんの、この国は(笑)。ずっとアスファルト剥がしては埋め、みたいにやってんだけど、あれは91年でもう終わっていいわけだよ。それで、次のタームに入んなきゃいけないのに、終われなかったんですね。

だから、やっぱり後の世代はキツい。ヘイトフルにもなりますわって話なんですよ!

乙君:はい。

勝負に負けたらホームレス

山田:はい。そこから……、なげーな(笑)。

乙君:えっ!? 自分で用意してきて?(笑)。

(一同笑)

乙君:俺がちょうど就職氷河期世代なのね。それまでのいわゆる大企業に入って、みたいな神話が通用しない。

山田:うん、しないよね。氷河期だもんね。

乙君:そもそも入れないし。みんなリクルートスーツ着て、宗教みたいで気持ち悪いから、絶対そっちの波には行かないって俺は決めてたんだけど。

山田:うん。

乙君:なんかそのあたりで、マインドが変わったんだと思うんですよ。それまで、おそらく90年代の半ば、95年頃までは、幸せになるためにがんばるってほうだったのが、たぶんこのへんから、不幸にどうやってならないようにするかって、リスクヘッジのほうにマインドが変わったんだな、と思うんです。

山田:そこなんだ。でね、その恐怖教育をしてるのよ。

乙君:はいはい。

山田:その恐怖教育は勝負に負けたらホームレスっていう。

乙君:あー、そうそう。

山田:そう。「えー、やだー!」「だったら勉強しなさい!」っていう、非常に単純で恐ろしいシンプルな恐怖心を植えつけるというか。それで、勉強ができて、ある種、なにか勝ったおかげでなにをゲットするかというと、安心をゲットする。

乙君:そうそう。

バトルロワイヤルメンタリティ

山田:それで、安心とはなにかというと、まず学歴、保険、お家、それから安定した仕事、これって公務員ですね(笑)。

乙君:そうそう。

山田:だから、そうすると公務員が、ゴッズィーラになるわけですね(笑)。あれ、だから……(笑)。

(一同笑)

乙君:その、論理の飛躍は(笑)。

山田:あー、ちょっとノリでしゃべりました。ごめんなさい。

(一同笑)

乙君:まあまあ、それで?

山田:これは疲弊するよ。だって、本当に今の時代で勝てるって、なにで勝つの? 製造業もダメじゃん。なにもダメ。そうすると、今度は、イノベーション幻想という時代が、ジョブズやらなにやらであって、そうすると「誰々はベンチャーで……」みたいな、誰が成功したのって話じゃん。コンマ1みたいな世界じゃん。

基本的にどっちの道に行ったって、めっちゃめちゃ苦労するんだけど、本当に成功して安定してる人というのは、なかなかいない。「よくそれを探してみて」と言ったら、やっぱりそれは年長者ばっかりという。

乙君:あー。

山田:だから、おじさんたちが既得権益をほとんど持ってて、それでオリンピックみたいになるわけよ。そういう富の再分配というのは、下の世代には再分配されない。ある種の階級化みたいなものが起こっちゃって、これ、またヘイトフルだよね。

そこでたまったストレスみたいなものって、勝たなきゃダメだと思って育てられていると、隣りにいるクラスメイトが敵になっちゃうんだよね。ここで生まれるのが『バトルロワイヤル』メンタリティなわけ。

乙君:あー。

山田:「こいつら全員殺さないと、俺は幸せになれない」、もしくは「生き残ることができないんだ」みたいなメンテリティというのが、10年、ゼロ年代ぐらいからずーっと続くわけ。

乙君:うん。

山田:ヘイトフルですねーー!

(一同笑)

山田:たまってきました? 奥野さん、たまってきませんでした?