ゲームアプリCMの戦国時代が到来

石田晃敬氏(以下、石田):みなさん、こんにちは。ただ今ご紹介いただきました、石田と申します。ここから先はテレビ広告の話、とくにゲームアプリのテレビ広告の話を深くさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

私ども電通では、2013年から社内横断で「Game Project」というものを立ち上げております。その中で、2013年1月から今まで何タイトルくらいのCMが打たれていたのかを数えてみたところ、この3年半の間に357ものタイトルのCMがありました。そういう意味では、非常にいろんな種類のCMが流れています。

先ほど滝澤さんからお話がありましたけれど、実際のダウンロード数は、ここのところ横ばいになっています。ただし、収益は増えています。

そこで、CMの出稿量はどうなっているのかを2013年の頭から見てみました。2013年から2014年、2015年にしたがって、月ごとの需要のある月とそうでない月はありますが、だいたい増加傾向にあります。

とくに2014年くらいから、夏休みの8月、および年末年始がある12月は非常に出稿が多くなる特徴があります。昨年12月などは、過去最高のテレビCMの出稿量があった月でした。ただし、この「非常に多い月」では多くのタイトルが出稿されますが、ほかにもいろんな種類のCMが流れるため、一般消費者の方々の誤認も非常に増えます。

2013~2014年は、「CMを打つとダウンロードが稼げる」ような時代でしたけれど、2015~2016年になると、CMを打ったことによって収益が上がることは減り、ほかのゲームタイトルとの競争が激化している状況になっています。

先ほど滝澤さんからお話がありましたけれど、(テレビCMを打っても)ダウンロードが見込めなくなってきている。そんな中、ダウンロードしてくださったお客さまをいかにアクティブにさせるのか。先ほどのお話だと、リエンゲージメントやマネタイゼーションが非常に重要になってくるのではないかなと考えております。

今の状況は、いうならば戦国時代のような状況です。その中で、テレビCMのトレンドはどうなっているのか。いくつか事例をもとにしながら、最近のCMのトレンドについてお話をさせていただければと思っています。

CMを「エンタメ」として、いかに間口を広げるか

まず、1つ目は「モンスターストライク」です。ご覧になったことがあるCMばかりかもしれません。今、約4つのタイトルがあります。継続的に出稿されていることもあり、いろいろな取り組み、CMの打ち方をしています。

「モンスターストライク」では、CMの中に「ダウンロードしてください」のひと言がなく、「ゲームをしてください」「ゲームの世界観、こうです」という話もしていません。これは、ゲームのブランディングをしています。どちらというとゲームの中身の話ではなく、「そのゲームを通じて友達と仲良くなる」など、「ゲームをやることの先にあるものを提供するゲームです」と訴求されている、1つの事例です。

2つ目です。こちらもかなり出稿量が多かったので、ご覧になられたことがあるかもしれません。「グランブルーファンタジー」です。これに関しては、とくにメインのユーザーである「若者」をターゲットにするだけでなく、やや少し上の世代もターゲットにしています。

このCMに関しては、メインのユーザーである若者だけでなく、やや少し上の世代の方々、ゲームやアニメのコアファンなどもターゲットにして、それぞれ別にCMを作って訴求しています。とくに若者向けだと「グラブる」という言葉を使い、中年向けではそれを謎の言葉として、メタファーのようなものを裏に隠しながら使う……バズる仕組みもできているのが特徴的です。単一ではなく、ターゲットそれぞれにフォーカスしたCMという事例でもあります。

3つ目は、1つ目と同じく「モンスターストライク」ですが、こちらのゲーム内イベントの告知事例です。月末、月初に「「超獣神祭」、月半ばには「獣神際」がありました。ゲーム内のイベントを告知することで、ユーザーさんに「もう1回やるから、よろしくね」と訴えかけている。

今、挙げた3つ以外に加えて、先ほどのパロディのようなものを使っているCMが増えてきています。とくにおもしろいのは「日本の夏、金鳥の夏」じゃないですけれど、パロディがいろいろなところに入っています。最後のカット部分に、KINCHOさんのCMに似たようなものを使い、話題性を引き出しています。

そのほか、例えば、「LINEツムツム」では、映画「ファイティングドリー」が放映されていた頃にCMが流されていました。コラボ告知ということで、映画と一緒に当てていくこともあります。また、トリプルのターゲットを狙っていくこともあります。今のトレンドとして、中学生やティーンなど、特定のターゲットを集中的に狙ってCMを使っていくこともあります。

この6つの例をまとめてみますと、1つはダウンロードの獲得、もう1つはリテンションやリエンゲージメント、マネタイゼーションの獲得……の2つに分けられます。

とくに新規のダウンロード獲得は、先ほどお話をさせていただいたとおり、非常に厳しい状況になっています。その中で、いかに間口を広げるかが重要です。

一方で、リテンションやリエンゲージメントは、単純にCMを打つだけではなくて、それ自体をエンターテイメントにして、エンゲージメントを高める方向に流れています。

大きくは、「いかに間口を広げるか」「エンゲージメントを高めるか」の2つの方向性があり、それぞれの要素とトレンドがあると、我々としては考えております。

ゲームアプリCMに見る、3つの要素

今お話しさせていただいたのは、どちらかというと出稿量が多めのところですが、1ヶ月や2ヶ月単位でかなり集中して出稿されるタイトルもあります。そのトレンドはどうなのか。集中出稿のタイトルは今年に入ってから12タイトルありましたので、特徴を見ました。

すべてのCMを確認してみたところ、大きく3つの要素が挙げられます。

1つ目は、ゲームの内容や画面を見せること。2つ目は、ゲームの世界感を伝えること。3つ目は、目立つキャストで注目を集めることです。

日本のテレビCMは15~30秒が基本の単位です。非常に限られた時間の中で、この3つを伝えるのは非常に難しい状況です。

このあと事例もお話しますが、必要に応じてこの3つの要素に強弱をつけたり、取捨選択をしたりすることが必要です。先ほどもお話ししたとおり、ゲームカテゴリーでのCMの量が非常に大きくなっています。そのため、とがった内容のCMにしなければならないこともあります。

とくに海外のタイトルが日本にローンチするとき、近年重要になっているのが、日本人に合う内容かどうかを考えることです。

とくに日本人に合う内容だと、例として「モバイルストライク」が挙げられます。

「モバイルストライク」では、アーノルド・シュワルツェネッガーさんを起用しています。海外から日本の市場へ入ってくるタイトルだと、海外のタレントを使っていることがあります。アーノルド・シュワルツェネッガーは「シュワちゃん」と呼ばれるほど非常に有名な俳優さんなので、「日本人がよく知っている人を使う」は非常にわかりやすく、人の目を集めます。おそらくですが、そのままの世界観だけをずっと使っていくだけでは限界がありますし、タレントとの契約もあります。そのため、タレントなしのパターンや、日本人キャストを使うパターンも行っています。

もう1つ、「クラッシュオブキングス」では、当初、映画のような世界観がメインでしたが、今年に入ってから日本人のタレントを使われていました。しかも「日本的なダジャレを使って人を引き寄せる」「注目を集める」を行っていました。

このように、だんだんと日本人に引き寄せる、日本人に合うようなコミュニケーションの展開をする傾向が増えてきています。それが日本の市場では有効ではないかと思います。

CM内容はキャッチーに、そして日本人に合ったものを

日本市場の特殊性や対策についてです。

欧米はタブレットファーストで大きい画面で(ゲームを)する方が多いですが、日本では、どちらかというとモバイルファーストなところがあります。そういった視点から考えても、欧米版をそのまま日本の市場で、CMで使うだけではなく、ローカライズすることが重要だと思います。

先ほどの滝澤さんのお話の中に、中国の広告の話がありました。欧米でのコミュニケーションの訴求内容と、日本、もしくは中国や台湾とでは、コミュニケーションを変えているところがあります。そのため、やはりローカライズしていくことが非常に重要になってくると思います。

今までの話をまとめさせていただきますと、非常に厳しい状況になってきております。

その中で、新規のダウンロードを獲得することに加えて「ダウンロードした後、いかにアクティブにさせていくのか」が非常に重要です。新規獲得は「間口をできる限り広げていく」、リテンションでは「CMをいかにエンタメにしていくのか」が重要になってくるかと思います。

さらに短期で出稿する場合には、先ほど申し上げた3つの要素の中で、強弱や取捨選択をします。

例えばRPGだと、その世界観を伝えることも重要ですが、パズルゲームであれば、画面を見せればある程度はわかることがあります。そのため、あまりゲームの世界観を伝えなくてもいいかもしれません。そういった強弱や取捨選択をするということですね。

あとはCM内容をかなりキャッチーなもの、日本人に合う内容にしていくことが、日本市場でテレビCMを活用するためにも非常に重要だと思います。

すいません。かなり駆け足でしたが、私からの説明は以上です。ありがとうございました。

(会場拍手)