2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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藤岡清高氏(以下、藤岡):創業時、どのような壁に突き当たり、どのように乗り越えてきたのでしょうか?
大久保智明氏(以下、大久保):いきなり起業して、大失敗でした。起業される方ってイケてる営業マンがもともとのお客さんを持って、もともとのビジネスモデルを踏襲して独立されることが多いですよね。
しかし、自分はまったくのアウェイでした。お客さんはいない、僕は髪を切ることもできない。何もないのにいきなりやって、簡単に言うとすぐに資金ショートしました。慌てて会計士のバイトに戻りました。
藤岡:でも、そこからどうやって立ち上がったのですか? 途中で諦める方もいると思いますが。
大久保:立ち上がっていないですよ(笑)。ただ、このビジネスは、いったんクライアントになればストックされるので、その期間を耐えました。単に耐え勝ちです。なぜ耐えられたかと言うと、やはり信念です。
金儲けが目的だったら、起業を辞めて、会計士に戻ったほうが収入も良かった。貰っていた給料もなくなり、持ち出しもありましたから。「なんで会計士辞めたの?」とか言われて、人からバカにされたりもしました。起業家の友達からも「よう耐えたな」と言われます。
藤岡:創業初期は訪問美容から始められたのですか? また、美容師はどうやって集められたのでしょうか?
大久保:震災ボランティアでの体験から「美容は大事だ」とわかったのですが、その時点では美容のサービスをやろうとは思っていませんでした。なぜなら、専門家の世界なので、確かに大事だけど、僕が手を出せる領域ではないなと思いました。
ただ、「高齢者の困っている」を集めて、サービスを提供しようと考えていたので、今の社内の言葉で「我々は高齢者のAmazonになる」と言っていますが、Amazonになるためには顧客情報を持たなくてはならない。
企業に対して「我々は高齢者のことをよく知っています」というときに、「では、何人顧客がいるの?」と聞かれて、50人では話にならない。50万人いれば価値がある。
そのために、まずは顧客を集めなくてはと考え、どうしたら高齢者のデータが集められるだろうと考えたとき、それが美容でした。
なぜなら、美容は全員がやります。男性も女性も。所得水準も関係ない。頻度の差はあるかも知れませんが、お洒落な人しかやらないということもない。家族環境にも左右されません。我々の周りでも自分で髪の毛を切っているという人はほとんどいないでしょう?みんながそんなに使うサービスってほかにありません。ほかにあるとすれば、介護くらい。介護は他社との差別化が難しく、囲い込みが難しい。美容は必要なサービスだと思いましたし、囲い込みにいいと考えました。
そして、美容師の供給は、ママ美容師を採ればいいと考えていました。美容師さんは女性が多いですが、過酷な労働環境です。お子さんを産むと土日は働けなくなり、保育園に預けたとしても労働時間が難しい。
結局お店から外れてしまい、10年も経つと戻れなくなります。高齢者向けの美容は平日の昼間の仕事ですし、顧客の70歳80歳の方には若い20歳くらいの子より落ち着いたママさんのほうがいい。これは需給がマッチするなと始めました。
ただ、理論上は存在し、実際にそういうママさん美容師もいるのですが、当時はそんな友達もネットワークも持っていなくて、「どうやって採れるんだ……」と。理屈上は合っていても、実務経験がなかったので苦労しました。
藤岡:事業はどこで好転されたのですか。
大久保:介護保険ができて、3〜4年してから有料老人ホームができ始めた頃ですかね。僕が始めた2000年頃は老人施設といったら特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人保健施設)といった低所得者向けの施設が中心でした。
介護保険が始まるまでは特養・老健の入居に所得制限があったので、所得が高い方は入れませんでした。
低所得者向けの施設に行って「高齢者が最後まで美しく、尊厳を持って生きましょう」と営業に行っても「何を言ってるんだ? 生きるか死ぬかなんだ。お前、実態がわかってないだろう!」という反応でした。
その当時、特養ではボランティアの方が散髪し、女性入居者も丸坊主にするというところもありました。
しかし、特養で知り合った方が有料老人ホームに転職されて、その方から来てくれと言われて有料老人ホームに行った辺りから、ちょっとずつ好転しました。
その後、有料老人ホームが増えて、今のクライアントもほとんどが有料老人ホームです。ようやく我々のやりたいこととニーズが合ってきました。
藤岡:美容だけではなく、物販等の高齢者のニーズに合わせた横展開も始まり、その延長上に今があるのですね。「シニアのAmazon」という話をされていましたが、詳しく教えてください。
大久保:高齢者の問題、僕の理解では3つあると思います。1つは身体の変化があるので医療・介護の問題。
2つ目は経済的な獲得力がないので、年金・財政の問題ですね。この2つは、正しいか正しくないかはともかく、国がやっている。そして、今の高齢者はこれらを手厚く供給されています。
ただ、今の高齢者の方が満足している状態にあるかというと、まったくそうではない。なぜか、お金があっても使う場所がないという3つ目の問題があると考えています。
残念ながら、外に出られなくなった高齢者のニーズは現状誰もリサーチしてくれませんし、できません。また適切な商品供給のルートもありません。つまり、後期高齢者は市場経済からはじき出された存在と言えるでしょう。
そのため、高齢者にとってふさわしいサービス・商品が供給されるようなマーケットを作ることが大事だと思っています。
高齢者はお金があるのに、今は朝起きて、ご飯食べて、テレビ見て、またご飯食べて、テレビ見て……それではあまりにも残念ですよね。今は誰も考えていないだけです。高齢者にニーズがないわけではない。きちんと考えて、それを提供すれば、高齢者に生き甲斐が出てきます。
また、今の高齢者にお金を使っていただかないと経済が回りません。いくら介護や医療を利用しても、それは現役世代の保険料でやっているので、意味がない。現役世代よりも確実にお金を持っている方が多いので、気持ちよくお金を使って頂く仕組みにしていかねばなりません。
藤岡:それらの情報を一次情報で取れる立場におられますが、今後、どうされるお考えですか? 御社はメーカーになるのか? それとも情報のプラットフォームになるのでしょうか?
大久保:プラットフォームです。メーカーではない。企業に対して高齢者ニーズのデータを出していきたい、市場ニーズから提案したいというところです。
また、企業からマーケット・リサーチの依頼があれば聞いたりもします。そして、大事なことは売れる場所でありたい。高齢者からすれば、「ディチャーム」であらゆるサービスがワンストップでサービスが受けられるようにしたい。あくまでもマーケット・プレイスを目指したいです。
もう1つ考えていることは、リコメンドが大事だということです。高齢者のニーズには、すでに顕在化したニーズと、潜在的ニーズがあり、顕在化したニーズへの対応はセブン・イレブンには勝てません。「お水が欲しい」とか「お米重いから持ってきて」とか、そんなのはセブン・イレブンのほうが安くて、いいサービスを出すでしょう。
潜在的ニーズというのは、そもそも高齢者にも何が欲しいのかわからないもの。例えば、怪我をして、今日から車椅子に乗ることになった。明らかに不便だけど、何があったら便利なのかは高齢者にもわからない。
実は、車椅子を装飾しているおばあちゃんがけっこういるんですよ。女子高生が携帯電話をデコるのと本質的に同じです。しかし、初めて車椅子に乗る方が「車椅子のデコレーションシールを買って」とは言いません。でも、「こんなのがありますよ」と言われれば、「欲しい」と思う。
身体の変化に伴って新しいニーズが出てくるのですが、「何か不快だな」とは感じても、何が欲しいかはわかりません。
でも、僕らはいろんな人を見ているので、わかります。車椅子に乗ったという情報があれば、僕らは「こんなものはどうですか?」と提案ができます。介護度が上がれば、「次はこんなものはどうですか?」と。
いくら僕らが企業と一緒に高齢者向け商品を10万アイテム開発して、Webや紙で探してくれと言っても絶対に探してくれません。いかにリコメンドできるかが大事です。
とくに身体的変化に伴う新しい需要に関するデータを蓄積していけば、海外の市場にも出られると考えています。日本人であろうが、海外であろうが、身体的変化は一緒ですので。そういうデータをどんどん集めて高齢者産業で世界に打って出たいですね。
藤岡:ディチャームさんが求める人物像を教えてください。また御社での働き甲斐、社風はどんなものですか?
大久保:真面目に、「日本発のメガ・ベンチャーを作りましょう」です。
起業を考えたとき、「世界に打って出る」というのがもう1つのポイントでした。日本の豊かさは企業が作り出しています。
今の日本は先輩たちが作ってくれた自動車や精密機械、電機等の産業が支えてくれていますが、産業の栄枯盛衰は当たり前のことで、次の産業を我々が創らなければなりません。
冒頭でインドの話をしましたが、もはやインドより日本が勝っているという状況ではありません。また、中国に爆買いとかされていますよね。それが悪いとは思いませんが、明らかに日本の国力は劣ってきています。
日本の国力を向上させるには、新しい価値を生まなくてはなりません。ほかにもいろんな可能性があると思いますが、シニア社会は日本が最初に体験できるという強みがあります。また、ニーズをカタチにすることにおいて、日本は成功体験があります。
高齢化の問題は、日本だけでなく世界共通の問題です。先進国はいうに及ばず中国、そして、30~40年後にはインドネシアやフィリピンも高齢社会になります。その中でナンバー1になるチャンスがあると思います。日本の主力産業になる可能性が大いにあります。そうしていかないといけない。それを僕1人では無理なので、一緒にやっていける人が必要です。
必要とするみなさんにどういう点がアピールできるかというと、「チャンスがある」。これだけです。
「土台」は作ってきました。ここから5年くらいで世界に通用する高齢社会のビジネスモデルを組み上げ、国内でのポジションを固め、その後海外に出る。これらがほぼゼロから体験できることが、当社の魅力だと思います。
藤岡:大久保さん、素敵なお話、ありがとうございました。
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