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メルカリ・エブリー・メドレーのプロダクト担当役員が語る『経営とプロダクト』(全6記事)

「KPIを追いかけるより、ひたすらエゴサーチ」ヒットプロダクトのマーケティング術

アメリカでも成功を収めている株式会社メルカリ、ヘルスケア分野で4つの事業を展開している株式会社メドレー、料理動画メディア「DELISH KITCHEN」などを運営する株式会社エブリー。3社のプロダクト担当役員が登壇し、各プロダクトの作り方について語りました。

各社のプロダクトの作り方

小泉文明氏(以下、小泉):じゃあ、次の質問いきたいんですけど、プロダクトを作っていくなかで、心掛けていること。作り方は各社によって、けっこう特徴あると思うんですけれども、エブリーのなかでプロダクトを作っていくうえでの特徴はありますか?

もしくは組織の作り方とか、なんでもいいんですけれども。「これ、エブリーっぽいな」みたいな作り方というのは、なにかあります?

吉田大成氏(以下、吉田):僕ら動画のコンテンツを作っているチームと、今ちょうどエンジニアを中心にしてアプリを作っているチームがいるんですけれども。

例えばコンテンツを作っているチームでいくと、なにが特徴的かな? 年齢がすごく若い子が多いというのはあるかもしれないですね。インターン生をけっこう中心にしながらやってはいます。

あとは、ネットでの動画に対して、あんまり違和感がないことを大事にしていまして。「(ネットを)よく見ていますね」とか「なにが流行ってます」とか、よく知っている子はすごく多いかなと思います。

もう1つが、例えば料理作っているところでいくと、料理研究家や管理栄養士といった方に入っていただいたりしていますね。

小泉:エンジニアと、例えば料理研究家とのコミュニケーションはどういう感じでやっているんですか? ある意味、プロトコルの違う人同士がもの作りしている感じだと思うんですけれども。

吉田:料理とかを作ると、料理の完成品がそのまま執務エリアにバーンと置かれるので、それを食べながら、「これはなにで作ったのか?」、「どうやっているのか?」みたいな議論は起きますね。そうすると、なぜこの料理を作っているのかということの理解がどんどん進むというのは、エンジニアにしたらたぶんあると思いますね。

小泉:メドレーは、なにかプロダクトの作り方で特徴はあるんですか?

石崎洋輔氏(以下、石崎):4つ事業があってそれぞれ作り方も違いがあるのですが、「介護のほんね」も「ジョブメドレー」も、まずミッションというか、プロダクト理念書、プロダクトプリンシプルみたいなものを作っています。

「なぜこのサービスをやっているのか」、「なにを成し遂げるためにこの事業やっているのか」、「そのためにプロダクトが目指すものはなんなのか」を箇条書きでワーッと書いて。

そういったミッション・理念をベースにしつつ、一方で毎年の事業の予算とか、今年これくらい売上いかなきゃいけないんだという事業予算、その両方を同時に達成していくというのをベースにプロダクト開発をおこなっています。

やはりチームのベクトルが合って初めて加速ができるので、まず根本のすり合わせをするというのは、けっこう大事にしています。

小泉:プロダクトミッションはどれくらい書きかえたりというか、見直したりするの?

石崎:あんまり書きかえないです。更新はしますが、もうこれは原理書みたいなものなので、「ここは変えちゃいけないもの」という作り方をしています。

小泉:なるほど。細かい作り方でいうと、ふつうにチケットみたいな?

石崎:そうです。まず3ヵ月に1回「この四半期はこれにフォーカスする」というのを決めて、終わったら振り返りをしてというサイクルでやっています。

実際の開発は毎週プロダクトの定例で、「この優先度でこういうことやっていこう」と意思決定と、毎朝の朝会やって進捗共有をするというサイクルで開発しています。

小泉:なるほど。メルカリは作り方の特徴はありますか? 進め方というか。

入口は直感的、出口はデータドリブン

伊豫健夫氏(以下、伊豫):たぶん、企画と開発のしかたの両面あると思うんですけど。企画で、僕がメルカリの特徴だなと思っているのは、いわゆるものごとを考えるきっかけというか、「これやろうよ」という時は、極めて直感的な進め方をするということですね。

小難しいデータをいきなりぶん回すんじゃなくて、ふつうに考えて「これ、絶対いいじゃん」というものをわりと大事にするというのは、たぶん創業以来メルカリが大事にしてきていることなんじゃないかなと思うし、今もそうやっています。

かたや、出したものを検証し次につなげようとする時、これに関しては極めてデータドリブンでやります。なので、分析に関してはもうBIチームの総力を結集してやるし、そこから得られた知見みたいなものを次の施策につなげていくということをやります。

なので、入口は非常に直感的、出口はかなりデータドリブンでというのが、メルカリの企画面での特徴だなと思います。

一方で、開発の進め方というところでいくと、メルカリに関しては極めて実行主義ですね。もちろん、これは案件にもよるというのは当然そうなんですけれども、一般的なプロダクトの改修みたいな話でいけば、やっぱりあれこれあんまり考えすぎずに、とにかくいつリリースできるのかという、そのスピード感をまず大事にしています。

それで、もうさっさとチケットを切って、とにかく手を動かして、できるだけ早いタイミングで出していくというのが、開発の進めかたのメルカリ一番の特徴なんじゃないかなと思いますね。

小泉:けっこうA/Bテスト多いよね。

伊豫:A/Bテスト多いですね。A/Bテストは、多い時だとデイリーで50本回っていたりとか。今はもうちょっと増えているかもしれません、案件が多いと。

小泉:そのA/Bテストをするジャッジ、どっちに決めるかというジャッジの特徴は、なにかあります?

伊豫:まさにさっきの企画の話と似ているんですけれども。ジャッジに関してはわりとデータでドライに切ることが多いですね。「A/Bテストをやってみよう」というのは、かなり直感的に決めたりすることが多いんですけど、出てきたものに関しては、もう「1パーセントでもこっちが多かったら、こっちが勝ちだよね」と決めることが多いです。

小泉:あと、日米間の開発のところで特徴というか、どういうことをメルカリでやっているかみたいなのを。

伊豫:メルカリのUS開発の体制はけっこう特徴的というか、そうせざるを得ないというところがけっこう大きいんですけども。

USのことはUS現地にいるメンバーだけがやっているのではなくて、USに関わる開発をしている人が全メルカリプロダクトチームのなかの90パーセントぐらいいます。その90パーセントのなかで、10パーセントぐらいの人がUSに駐在をしています。残り80パーセントの人が日本で開発をやっています。

なんか……意味わかります? 僕も含めてメルカリUSのことをやっているプロダクトチームというのがありまして、そのなかのとあるセクションはUSに籍を置いてやっているということですね。

じゃあ、なにを置いているかというと、これは現地でやったほうがメリットが出るよねというもの。例えばトランザクション周り。ユーザ間での取引とか配送とか、あのへんです。あるいは、現地のカスタマーサポートの近くで仕事をすべきようなところ。例えば、リスクにどう対処するかとか、そういったチームに関してはわりとローカルにチームを作って、そこで作業しているというかたちです。

逆に、もう少しジェネラルな機能。例えばリスティング、出品であるとか。あと、僕らのような全体的なエンゲージメントを高める、継続率を高めましょうみたいなチームは、ずっとUSにいる必要はないので、日本に籍をおくチームでやっています。

日米間のやり取りはもう、ほぼほぼオンラインです。時差は今、夏時間なので16時間あるんですけど、もうSlackでずっとやり取りをしながらやる。みんな時差はわかっているので、「できるだけ朝8時ぐらいからSlackは見ようね」みたいなちょっとした暗黙の了解もあったり。会議は、テレビ会議でシームレスにやるみたいなやり方ですね。

最初はペイドでユーザーを集める

小泉:ありがとうございます。プロダクトの作り方もけっこう各社違うと思うんですけれども、もう1つ大切なのがプロモーションというか、どう広めるかみたいなところだと思います。

各社さん、創業期から広め方、たぶんいろいろ工夫していると思うんですけれども、プロモーションの特徴というか、マーケティングをこれまでどういう変遷でここまでやってきたかみたいなことを振り返ってみてもらってもいいですかね。

吉田:コンテンツを作っていて、例えばFacebookとか、ああいうところの一番最初のフォロワーはペイドでやっています。もちろんターゲットをちゃんと絞っていって、例えば料理メディアであれば、料理好きの方ですし。ファッションであれば、ファッション感度の高い方に対して、必ず一定のユーザーを最初に集めるところはやりました。なにも考えずに。

なぜかというと、アプリもそうですし、コンテンツもそうですけれども、最初に目にふれてもらうまでにけっこうすごく大変なので、リリースしてみて良かった、悪かったかが正直わからないんですよね。

一定の規模感まではやっぱりちゃんと母数を作っていかないとダメだなと思ったので、一定規模感というところまではペイドで集めています。

そのなかでコンテンツのチューニングとか、そういうことをずっとやっています。そのなかで「当たったね」となった瞬間には、もちろん最後にプロモーションを組み込むということをやっていますけれども。

細かい話でいくと、基本的にうちはあんまりペイドでユーザーさんを集めてないんですよ。オーガニックが多くて、自然流入というかシェアされて入ってくるパターンが多かったりするので。

どちらかというと、1ユーザーあたりの獲得コストというよりは、トータルでオーガニックのユーザーさんを含めて、どれぐらいの獲得コストでファン数が増えているかというところは見ています。オーガニック比率が高まるようにということを意識しながらプロモーションするということをやっています。

小泉:最初はペイドやってるじゃないですか。最初の初期のペイドの考え方はどういう感じ? 「えいや!」でやるのか。なにか、仮説を持ってやったの?

吉田:例えば、Facebookページであれば、1万人までは出そうと決めました。なんで1万人にしたかというと、コンテンツのシェアとかエンゲージメントがだいたい数パーセントぐらいつくんですね。それがただ100人のフォロワーで1パーセントだと1人なので、なにがよかったのかわからないので、ある程度母数がいるなかでやろうと思った時に、たぶん10万人だと多すぎるので、1万人ぐらいのところでチューニングしようと思って。

小泉:そこはもう目をつむっていこうみたいな?

吉田:そうです。もう「払え!」という(笑)。

小泉:払えと(笑)。

吉田:「払え!」という(笑)。

ひたすらエゴサーチして定性的なコメントをチェック

このあたりは間違われる方がすごく多いと思うのですが、「いいプロダクトを作っていけば自然に広まるんじゃないか」とか、「ちゃんとチューニングすればいいんじゃないか」とか考えるんですけれども。母集団が少ないと正しいデータかどうかやっぱりわからないんですよ。

たぶん、会社作った当初、一番コストがかかるのは人件費だったり、家賃とかのほうで。チューニングをするまでに5ヵ月とか10ヵ月かかるよりは、もうサクッと最初の母集団を集めてしまってチューニングをかけたほうがグロースさせやすいかなと思ったので、そこは本当に前倒してやってしまって、チューニングに時間をかけましたね。

小泉:チューニングしていく過程で、社内で見るKPIって変遷があると思うんですけど、ユーザーを活性化する時に「このKPIやっぱり、一番大事だよね」と今、あらためて思うとなんですか? 今でもいいですし、当時でもいいですけど。

吉田:一番僕らが大事にしているのは、さっきの「DELISH KITCHEN」とかも全部そうなんですけれども、動画を見終わった後に必ずなにかしらアクションを起こしてほしいんですよね。「料理しました」とか。例えば、「KALOS」で「ファッション系のメディア見て、化粧やってみました」みたいなところをすごく大事にしているので。本当のKPIじゃないところでいくと、ひたすらエゴサーチをずっとしていて、それがSlackに自動的に流れるようにしています。

小泉:なるほどね。

吉田:ちゃんと定性的なコメントとして増えているかどうかをすごく大事にしています。

一方で、それだけ見ていても日々のチューニングはできないので、動画のコンテンツでいくと、やっぱり視聴完了率とエンゲージメントがどれだけ高いかというのを見ています。その2つが高ければオーガニックのユーザー数がどんどん増えていきますし、定性的なコメントもたくさんつき始めるので。

やっぱり、数値だけ追い続けると数値遊びになっちゃうんですよね。もっと動画短くしてみようとか、「いいね!押してね」みたいな、すごい派手派手しいナビゲーション作ったりしちゃうので。それはよくないので、どっちかというとひたすらエゴサーチで、自動でどんどんSlackに投げこまれるみたいな。

小泉:好きそうだね(笑)。

吉田:そうですね。そういうのが大好きです(笑)。

小泉:自分、大好きだもんね(笑)。

吉田:まあ、サービス作っている自分が好きですね(笑)。

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