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メルカリ・エブリー・メドレーのプロダクト担当役員が語る『経営とプロダクト』(全6記事)

ローンチ前の大失敗で数ヵ月がムダに… メルカリ役員が語る創業秘話

アメリカでも成功を収めている株式会社メルカリ、ヘルスケア分野で4つの事業を展開している株式会社メドレー、料理動画メディア「DELISH KITCHEN」などを運営する株式会社エブリー。3社のプロダクト担当役員が登壇し、それぞれのプロダクトを立ち上げた経緯や初期の体制などを振り返りました。

エブリーが料理動画を始めた経緯

小泉文明氏(以下、小泉):今日はプロダクト開発の初期の段階から、成功する過程であるとか、そういうのを順を追って話していければと思っています。

最初の質問として、プロダクトを創業して作る時のまず最初、着想する部分あると思うんですよね。どういう仮説で作っていったのかとか、もしくはどういうアイデアでこれがウケると思って作っていたかとか。あと、最初にどういう体制で作っていったかみたいな、初期の頃を思い出してもらいながら、事例を教えていただきたいんですけれども。じゃあ、大成さんからどうぞ。

吉田大成氏(以下、吉田):ちょうど1年前に立ち上げて、最初は僕を入れて4名でやっていました。決めていたことは、やっぱり動画のビジネスをやりたいなと思って、そのなかでけっこう探しました。

なんでこのタイミングで動画だったかというと、やっぱり1人1台スマートフォンを持ち始めて、通信スピードも上がってきているなかで、動画の視聴者数とかがすごく伸びているというのが1つですね。

たぶんその1~2年ぐらい前に、YouTubeがすごく伸びて、YouTuberが出てきていて、個人のクリエイターとしておもしろいものを届けることはできてきたんですけれども、もっと役に立つものも動画にできるんじゃないかと思い始めました。

若い子、20~30代の方がテレビ離れしていて、そういう方々はスマホで動画を見ているなかで、最適な動画の配信方法やコンテンツ内容があるんじゃないかと思ったのが、一番最初にこの事業やろうと思ったきっかけになっています。

僕の場合はあまり事業計画とかはひいてなかったです。やろうと思ったのは、「このジャンル」というのはまず決めていました。

もう1つ決めていたのが、毎日必ず1本は動画を配信しようということ。それで、YouTubeとかFacebook等いろんなところに配信していくなかで、一番伸びているのがFacebookだったので、そのなかでけっこうチューニングしていたというのがきっかけなので、あまり深く考えずに、という感じではあります。

小泉:これ、なんで「DELISH KITCHEN」からいったの? クックパッドがこうなるのが見えていたみたいな?(笑)。

(会場笑)

吉田:いやいや(笑)。最初の頃、料理とファッションをやったりしてて。1つは、将来的にテレビを見なくなった時に(どうなるか)、テレビCMとか広告で使われている宣伝費のジャンルをけっこう分けたんですよ。

小泉:なるほどね。

吉田:食品・飲料とか美容系とかジャンルを分けていってみると、やっぱり食品・飲料系というのがすごくでかくて。そういった方々の新商品の、テレビCMをやって、商品を知って、お店に買いに行くという流れが、たぶんだんだん変わってくるだろうなと思ったので。どちらかというと、まず最初はビジネスとして成立するかというところが1つですね。

なぜ分散型メディアか?

それで、料理とファッションを同時に始めた。ファッションが(宣伝費の)2つ目のジャンルだったので、やったんですけれども。やっていくなかで特性がけっこうぜんぜん違っていまして。料理はけっこうシェアしやすいんですよね。「これ、いいね」とか。

ファッションは、例えば、おフェロメイクとかでピンクっぽく(メイクを)しましたというのをシェアすると、「この女の子、そういうふうになりたいのね」と思われるじゃないですか? そうなると「特性が違うね」と。そう考えた時に、料理のほうが伸びやすかったというのはあるかなという気がしています。

小泉:最初、なんで分散型メディアだったんですか? だって、ともすると自分のメディアでほしくなるじゃないですか。なんで分散型のメディアなの?

吉田:データとしてスマホの利用ユーザーの1日の利用時間のうち、アプリを使っている時間というのが90パーセントで、Webを使っている時間が10パーセントなんですよね。

アプリを使っている利用時間のうちのだいたい20パーセントぐらいが、SNSとかになっています。ニュースメディアとか、そういうのは全体の利用時間はたぶん4~5パーセントぐらいしかなくて、最初からそういうメディアで出していっても、やっぱり認知がされないので、あまり意味がないなと。

Web時代みたいにSEO対策とかをやって見てもらうというのも、あまりモバイルでWebを見なくなってきているので、それはたぶん違うなとか思っているなかで、やっぱり利用されているアプリとして配信していこうと思ったのが1つ。

それと同時進行でアプリとかやってもよかったんですけども、まずはやっぱり特化させてやらないと、「やっぱりWebやろう」とか「アプリやろう」と思った時に、そっちにリソース取られちゃうので。

すごく大事だなと思ったのが、自社のコンテンツが他社に比べても優れているかどうか、見られやすいコンテンツかどうか……。

小泉:1日1個、必ず(コンテンツを)作ろうみたいな?

吉田:そうです。そのコンテンツがすごく大事だなと思ったので、とにかく最初はコンテンツを作ることだけに特化している感じでした。

Webで課題解決できていない領域を

小泉:なるほど。同じ質問ですけれども、メドレーは。

石崎洋輔氏(以下、石崎):僕が一番関わっているのは、やっぱり「介護のほんね」になるんですが、これはグリーの新規事業として最初始めたので、「まず3ヵ月ぐらい、高齢者のコミュニティの領域でなにか考えてみてよ」というのがあって。

小泉:お題を振られた?

石崎:そうです。最初にお題があって。もともと僕自身も高齢者向けのなにかサービス作りたかったので、そこに配置してもらったというかたちでした。

やりたかったのはなぜかというと、みなさんご存知でしょうが、日本はすごく高齢化が進んでいて、今後、医療・介護の市場が大きくなっていって必ず伸びる市場だろうと考えていたことと、あまりインターネット業界の人が目をつけてないというか、積極的にはやりたがらない領域なんじゃないかと思っていたのが大きかったですね。

とても大きい課題があるのに、まだインターネットが課題解決できていない領域なので、チャンスがあるし、自分としてはあまのじゃくなところがあって、そういうところのほうがやりたいなと思ったのがきっかけでした。

小泉:初期開発は、グリー社内でリソースを取ってこなきゃいけないじゃないですか? どんな感じでスタートしたんですか?

石崎:その時は4人かな、5人かな。私を入れてディレクターかつ営業っぽい人間が2名と、管理系とエンジニア1名という、スモールなチームで始まりました。一番多い時で7人とか8人ぐらいで作り始めた感じでした。

小泉:なるほど。メドレーさんは今、創業して7年で4事業やっているじゃないですか? 新規事業をけっこう立ち上げていると思うんですけども、なにか立ち上げの時に決めごととかあるんですか? 特徴とか。

石崎:あんまりないですね。それぞれ、きっかけはバラバラです。「ジョブメドレー」は創業とほぼ同時に始まっていますし、「介護のほんね」は買収によってですし。「MEDLEY」は、共同代表の豊田が入社したタイミングでスタートしました。

「CLINICS」と今後についていうと、社内から新規事業の案を作って出すというよりは、そもそも医療業界自体が課題と市場が大きい分野である一方、法律による規制がある領域で、ただ、医療費増大の課題もあり、今後はどんどん規制緩和が進んでいくと考えていまして、その規制緩和が起こるタイミングで一番最初に入れるポジションにいようとは考えています。そのタイミングで、社内にたくさんの医師や弁護士がいるので、そこで一番最初にいいサービスが作れるプレイヤーでいたいなと。

小泉:けっこう長いスパンで考えていますね。

吉田:遠隔医療やる時って、医師の方だけで考えるんですか? Web系の方もいるんですか?

石崎:役員陣と医師と弁護士とエンジニアで一緒にという感じですね。今、「CLINICS」プロダクトはCTOの平山(宗介)が見ているのですが、そのあたりのメンバーで多角的に検証して、「これならいけるんじゃないか」というのを決めています。

メルカリのきっかけとなった大きな課題

小泉:じゃあ、伊豫さん、メルカリ。なんか、「小泉、お前話せよ」みたいな(笑)。

伊豫健夫氏(以下、伊豫):そのとおりです(笑)。

小泉:(笑)。

伊豫:僕はまだ1年前に入ったばっかりで、そんなに詳しくないので、今日せっかく小泉さんがいるので、ぜひその時の話とか聞いてみたいなと、むしろ僕も思っています。

小泉:逆にね(笑)。ここだけ、若干僕で補足します。メルカリはスタートが3年前なんですけれども、代表の山田(進太郎)が、ウノウの売却先のZyngaを辞めた後、半年ぐらい世界一周に行ったんですよね。彼がなにを思ったかというと、2つ大きな変化があると。

1つは、旅行に行っている最中にガラケーからスマホに思いっきりシフトチェンジが起きていた。旅行に行く前はみんな赤外線通信で連絡先を交換していたのに、旅行から帰ってきたらいきなりLINEでふるふるしてる。「これ、ぜんぜん変わっちゃったじゃん」みたいな、デバイスの変化ですね。

もう1つはちょっと大きな話なんですけれども、世界中旅している過程で、先進国はどんどんものを捨てていくというか、消費がふくらんでいっていると。当然、新興国も豊かになっていく過程でどんどん消費がかさんでいくんですが、「これ、世界中がこんなに消費したら、世の中パンクするな」みたいな。

そういうなかで、リユースというのはもっと価値があって……。今まで、例えば「ヤフオク!」とかeBayを見ていると、スモールビジネスの人たちが出品して、それを個人が買っているんですが、個人同士がもっと売買しやすくなったら、世の中のリソースというのはもっと最適に配分されるんじゃないかと考えたんですね。

そういう課題認識とスマートフォンの普及もあいまって、3年前にスタートしたというのがあるんですけれども。

当時、言い方は悪いですけど、ヤフーが強かったドメインが、どんどんスマートフォンに特化した会社に流れていった。例えば、ニュースだったらスマニューとかグノシーが出てきていますね。「ヤフオク!」であれば、メルカリが出てきたりとか。ポータルが強かったのをアプリで最適化していくみたいな流れがあって。

そのなかで最初、非常にいいスタートが切れたんじゃないかなというのが、3年前かなと思っています。

メルカリ創業当時の苦労話

最初の開発は、山田と富島(寛)という2人がプロデューサー兼エンジニアみたいな感じなんですが、2人ともエンジニアリング能力がすごく高いわけじゃないので。山田がTwitterで「エンジニア募集」と書いて、それで20人ぐらい釣れたんですよ。

吉田:すごい。めっちゃ釣れますね(笑)。

小泉:進太郎さん、フォロワーがたぶん15万人ぐらいいたんじゃないかな。けっこうヒマだからか、どんどんつぶやいてたから(笑)。そしたら、そのなかで2人、当時ネット大手にいたエンジニアがいて。その2人が、そんなにすぐには辞められないんだけど、ぜひ新規事業に絡みたいという話だったんですよ。

それで思ったことは、この2人に働いてほしいんですけど、平日は仕事している。彼らは夜と土・日なら手伝えるというので、社員の定休日を日・月にして土曜は働くという、結局我々が折れるというか、ベンチャーなので別にいつ休んでもいいじゃないですか。

土・日にむしろ働くということをやって、大企業というかネットベンチャーの人たちをうまくアサインして巻き込んでいって、作っていったというのが創業の頃ですね。

吉田:ローンチするまでは4人だったんですか?

小泉:いや、インターンもいたし、たぶんローンチのタイミングぐらいで7人ぐらいいるのかな。でも、大失敗を1個していて。

当時ネイティブじゃなくてこれからはHTML5みたいな流れがあって、最初ガワアプリにして中身はHTML5で作ってたんですね。ただ実際に触ってみたら、すごくやぼったくてこれは全然ダメだという話になった。2月に会社作って、4月に気づいたんですよ、やべーと。

そこで、ガラッと全部システム捨てたんですよ。フルで書き直して。それで、7月の頭にローンチしたっていうので。実質、創業から5ヵ月かかっちゃったんですけど、なんで5ヵ月もかかったかというと、単純に全部書きかえたという。けっこう最初に技術の選定ミスというのがあったんですけれども。今は結果よかったなという感じなんですが、そんなお茶目な失敗もした創業時という感じですね(笑)。

吉田:なにか事業計画みたいなものはあったんですか? 「勝てるだろう」みたいな感じだったのか……。

小泉:ないよね(笑)。そもそも、最初は「フリル」が先行していたので、まずはフリルをある程度追っていかなきゃいけないというのはあった。もしくは他社の、サイバー(エージェント)さんの「パシャオク」とか、フリマアプリが乱立してたので。

僕、メルカリ入ったのがリリースして半年ぐらいなんですが、入った日に日経新聞でフリマアプリ特集っていうのをやっていたんですよ。そこに4社アプリ(の紹介)が出ていたんですけど、メルカリ入ってないんですよね。

そのぐらい、もう入った瞬間に「やべー、思ったより低い」と思って(笑)。「けっこう、がんばんなきゃ」と思ったのを覚えていますね。後発なので、そういうのはあったかなと思っています。

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