企業の魅力を伝えるストーリーテリング

長谷川賢人氏(以下、長谷川):みなさん、こんばんは。木曜日の19時半という、「そろそろビールでも飲みたいね」という時間にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

本日、モデレーターを務めます、編集者・ライターの長谷川賢人と申します。さて、今日のメインはこちらのお二人です。お一人ずつ紹介したいと思います。

まずは、菅原弘暁さんです。

今日のメインテーマであるストーリーテリングを、企業PRやコーポレートブランディング、採用広報などに活用できるプラットフォーム「PR Table」を立ち上げ、掲載されているストーリーの編集長をされている菅原さんです。

もう1人、モリジュンヤさん。(洋服が)しましまのほうです。

モリジュンヤ氏(以下、モリ):しましまのほうです(笑)。

長谷川:モリジュンヤさんは、フリーランスのライター・編集者として活躍され、今回のイベントの主催である「inquire(インクワイア)」という会社のCEOでもあります。

スタートアップ系の記事を多く公開している「THE BRIDGE」、まちづくりやコミュニティデザインの事例を紹介する「マチノコト」、あとは、社会的マイノリティのための「soar」など、複数のメディアを企画・運営しています。そのほかにも企業の中でしか見られない、いわゆるイントラネットだけに載る中の人向けの記事だったり、外に出す広報的なプレスだったり、いろんなところの制作をされています。

今日のお二人のことをざっくり言うと、菅原さんはストーリーを載っける場を作っていらっしゃる方。モリさんは、その記事を実際に作っている方。そんなお二人をお招きしています。

私はなにをしているかというと、もともと3年サラリーマンとして働いてから異業種転職して、「ライフハッカー[日本版]」というWebメディアで働いたあと、今はECサイトの会社で、ライター・編集者をしています。

あとは、時折こういうおしゃべりをやらせていただくポジションにおります。

さっそくなんですけれど、まずは、ストーリーテリングの力とはなにか、どう上手く使えばいいのかといったお話を菅原さんからお聞きして、その話を受けたあとで、菅原さん、モリさんをメインに、私もおじゃまさせていただくかたちで3人で話していければと思っています。

今日は定番の質疑応答の時間も設けています。ただ、「質問お願いします」と言ってから手が挙がるまで時間がかかったりして、もったいないパターンが多いのでTwitterで募集します。

これ(@hasex)は私のTwitterアカウントですので、こちらにリプライかDMで、イベント中でもぜんぜん構いませんから、どんどん質問をお寄せいただければ、そこから選んで読むという方式を採りたいと思います。よろしくお願いします。

「PR Table」編集長・菅原氏の経歴

それではまず、菅原さんからPR Tableの紹介と、ストーリーテリングの概要をお話いただきます。菅原さん、よろしくお願いします。

菅原弘暁氏(以下、菅原):みなさん、こんばんは。本日は、ありがとうございます。PR Tableの菅原と申します。先ほどご紹介いただいたんですが、もうちょっと詳しめに自己紹介させていただきます(笑)。

もともと、オズマピーアールというPR会社におりまして、最後の1年間は親会社の博報堂PR戦略局というところに常駐していました。地方自治体だったり、外資系メーカーのPRもやっていたんですが、ふだんみなさんの馴染みのないところでいうと、企業の謝罪会見といった重めのテーマのリスクマネジメントもやっていました。

そのあと、事業会社の広報を経験したいということで、ブラボ(Blabo)という会社に行きまして、PR・ブランディングをしながらWebサービスを学びまして、去年の秋、PR Tableが今のサービスをリリースしたタイミングでフルコミットでジョインしました。

約9ヶ月で100社以上のPRのコンサルティングと、200本以上のストーリーをPR Tableで作らせていただいております。

もしかしたら、PR Tableをご覧になっていただいている方もいらっしゃるかと思いますけれど、見た感じではWebメディアのような見え方になっていますが、実は、企業・団体のPR活動のためのプラットフォームとしてサービスをやらせていただいております。

企業さんや団体さんが自分で無料で投稿できる企業版のアメブロみたいなものになっていまして、どうしても自分で書けないという方のみ、僕たちでゴーストライティングをさせていただくという仕組みでやらせていただいております。

少し抽象度の高い話をさせていただくと、企業とか団体がステークホルダーに伝えるための手法はすごくたくさんあると思っています。それこそ、長谷川さん、モリさんみたいな方にインタビューしていただくこともそうですし。

イベントで喋ったり、オウンドメディアで自分で発信したり、ソーシャルメディアを使ったり、たくさんあると思っています。

この9ヶ月やってきて、とくに感じるのが「なにを言ったらいいかわからない」とか「なにを伝えれば伝わるのかわからない」と、想いの言語化の部分がなかなかできてないんじゃないかなということです。

想いを、ただ伝えれば、伝わるのかと言うと、そうではないなと思っていて、やはりストーリーというかたちでそこに乗せて伝えることが必要なのかな、と。その手法をストーリーテリングと呼ぶんですが、今、我々はそれをやらせていただいております。

ストーリーテリングとは?

「ストーリーテリングってなんだ?」というところを簡単に説明させていただきますと、背景描写や、「なんで起業したんだっけ?」「なんでこの商品作ったんだっけ?」とか。「その原体験ってなんなんだっけ?」「その失敗を踏んでどう成長したんだっけ」「この先、どんな未来を描いているんだっけ?」というところをストーリーで伝えるということです。

これがアメリカではけっこう充実していまして、スタンフォード大学で研究されていたり、日本でも去年くらいから(注目されています)。今も残っているよい企業には昔からのストーリーがあって、それが脈々と受け継がれているよね、というような企画に適しています。

最近、ストーリーっていろんなところで聞くと思うんですね。スナチャ(Snapchat)だったり、インスタ(Instagram)も始めたり。

「ストーリーってなんなんだ」といったところがちょっとあると思うんですけど、我々は「プレスリリースで発表するほどではないけど、ちょっといい話」と定義しています。

先ほど言ったみたいな創業のエピソードだったり、作る時の苦労話だったり、社内制度やオフィス移転、その裏側にどんな思いがあったのか。

あとは社員ですね。とくに多いのが、社長は目立っているけれど、それをずっと支えたナンバー2がいるわけじゃないですか。その方がどんな人なのか、とか。

BtoBの会社さんであれば、こういう顧客がいて、こういう困ったことを、こういうふうに解決しましたよ。そういったところも“ちょっといい話”と定義しています。

PRバックボーンらしくプレスリリースと比較すると、プレスリリースというものは事実のお知らせですね。事実をメディアに対して、「いついつ商品をリリースします」とか、「日本初です」とか、タイミングだったりとか、時間軸で言うと、速報なんですね。

ストーリーは、事実の背景にどんな想いがあったかなどを伝えるもので、対象はメディアに限らずすべてのステークホルダーだと思っております。時間軸で言っても、アーカイブされるものだと思っています。

例えば、本田宗一郎さんや松下幸之助さんの昔の話って、年1回くらい「東洋経済オンライン」がやってたりするんですけど、毎回すごく読まれるんですね。なにも新しい話をしていないのに(笑)。というくらい、いい話というのは、ずっといい話だと思っています。

ストーリーテリングというのは、あくまで手法なので、なにを解決するかと言うと、例えば、社員に会社のビジョン・ミッションが伝わっていなくて、モチベーションが下がっているとか。

会社の文化とか雰囲気が採用候補者に正しく伝わっていなくて、採用のミスマッチが発生してしまっているとか。最近、製品・サービスの差別化が難しいと言われているなかで、誰がどんな想いで作ったのかが重要なのにそれがきっちり伝わっていないとか。

あとは、株主ですね。上場するタイミングで、この会社が大きくなると、世の中がどれくらいよくなるのか、それを誰がやっているのかとか。数字的なファクターもすごく重要なんですけれど、こういうことも株主からすると非常に重要です。それがちゃんと伝えられているか不安だったり。

今日は、メディアのお二人がいるのでアレなんですが、メディアって企業の言いたいことを伝える義務って一切ないんですよ。メディアが伝えるべきテーマだったり、それに乗せて伝えるものなので、どうしても企業が伝えたいことと、メディアが伝えたいことには多少のギャップが生まれる可能性がある。

その時に、「取り上げられない」と不平不満を言うのは「ちょっと違うよね」と思っています。

PRの本当の意味

じゃあ、自分で伝えればいいというのが、ストーリーテリングです。これをなぜPR Tableという会社がやっているのかというと、もしかしたらご存知ない方もいらっしゃるかもしれないんですが、もともと、PRって「パブリックリレーション」という概念でして、決してメディアへの情報の売り込みではないんですね。

企業とステークホルダー、直接利害関係がある人たちとの良好な関係を構築するというところでして、それが10年前、20年前までは、メディア、新聞、テレビを通さないと、ここにいる人たちに伝えられなかったんですが、今はインターネットがあるのでコンテンツさえあれば伝えることができる。

この人たちに伝えるためのコンテンツがプレスリリースのはずがないなというところで、ストーリーに着目させていただきました。

ストーリーがあって、なにが生まれるかというと、もちろんメディアの方からの第三者評価、「この会社ってこうだよ」というのも重要な判断材料ですし、『会社四季報』に載っているような情報、スペックですね。

従業員規模とか、この会社の企業の価値はどれくらいとかもすごく重要なんですが、それだけじゃなくて、この企業はなにを考えているのかとか、どういう思想があるかという、ニュートラルなものを伝えるものも重要だろうと思っています。

会社のビジョンとしては、そういった第三の価値観を作ることでミスマッチをなくそうという会社です。そのために、より多くの会社さんのストーリーを生み出して、それがより多くのステークホルダーに伝わる仕組みを作ろうと、今のプラットフォームをやらせていただいております。

今、400社くらいの企業さんにアカウントを作っていただいておりまして、半分くらいがベンチャー・スタートアップ、25パーセントくらいが地方の企業、中小企業の方ですね。15パーセントくらいは上場企業で、医療法人、学校法人というところもやらせていただいています。

応援されるストーリーの作り方

先ほども申し上げたとおり、けっこう僕たちがゴーストライティングをさせていただいているんですが、その時の作成ポリシーとして、このようなことを考えております。

僕たちとしては、お仕事をいただいている企業さんがステークホルダーから愛されなければ意味がないので、「ちゃんと応援されるものを作ろう」と。応援されるため、企業と人って考えるとすごくわかりづらいんですが、人と人と考えていただけると、想いを実直に伝えているかどうか、説明責任を果たしているかどうか。

すごく極端な理由を付けると、不祥事を起こした会社が、最初に謝らないとすごく評判が悪くなるじゃないですか。悪いことをして謝らない人って嫌じゃないですか。

(会場笑)

菅原:本当にそれと一緒で、ちゃんとそういった説明責任を果たす。

長谷川:なんだか最近も燃えてる話を聞きますよね(笑)。

菅原:そういうトラブルシューターもやっておりました(笑)。

最後、これもすごく重要なところなんですが、企業体として、誰も不快にさせないということは、非常に重要になります。

うっかり差別表現が入っちゃうとか、業界団体を刺激するようなことを言っちゃうとか、競合を必要以上にディスるとか。それは、企業体としてすごくお行儀の悪い行為なので、個人のブログで書く分にはいいんですけど、そこは広報・人事としてしっかりしなきゃいけないところなんだろうなというところでございます。

どんなメンバー、どんな体制でやっているかと言いますと、今はだいたい合計45名くらいですね。私は編集長もやらせていただいておりまして、あと編集者の志賀(祥子)と、外部の編集者さんが3名程度、ライターさんは35名とかですね。書き起こしスタッフの方と、オペレーターがいます。

けっこう細かくタスクを細分化しておりまして、要件定義のところは我々でやって、実際に取材だったり執筆はライターさん・編集者で行っています。最後に、ネガティブチェックや口語チェックをうちで行って、お客さんに納品するかたちになっています。

1つの特徴としては、ライターさんには書き起こしを一切やらせていないです。書き起こしもやるライターさんって、どうしてもそれに引っ張られてしまって、原稿のクオリティが高くならなかったりするので、書き起こしは書き起こし。翌日にそれを手配して、そこからライターさんの仕事ですとしております。