女性のほうが長生きするのは世界的な傾向

マイケル・アランダ氏:世界保健機関(WHO)によると、2015年にアメリカ合衆国で生まれた人間の男性の平均寿命は76.9歳、一方女性の平均寿命は81.6歳です。

世界中の女性は男性より長生きしますよね。そして本当の理由はよくわかっていないんです。XXかXYかいずれかの染色体を持っている生物としての男性と女性の社会的、生物的な差異によるものだとするいくつかの説があります。でも依然としてこの傾向に関しては理解できないことがたくさんありますよね。

この証拠は新しいものではありませんが、たとえばスウェーデンが1800年より前からの人口統計データを集計してみたところ、当時もうすでに男性の平均寿命が31歳だったのに対して女性は33歳でした。その上、それが世界的傾向なのです。

最近では、科学者たちが人間の身体や年をとり方について学ぶにつれ、なぜ女性が男性よりも長生きするのかに関する説を見直すことになってきています。

1970年代またはそれ以前の説には、男性が仕事に関連した負傷やストレスを負いがちで、それが心臓病につながりやすいということを示唆しているものもあります。

あるいは、男性のほうが喫煙や過度の飲酒のような不健康なことをしがちだとする説もあります。でもこういった社会的傾向は文化によって違いますし、すべてを説明するわけではありません。私たちは仕事場における男女平等に向けてますます邁進していますし、女性にだって不健康な習慣はあります。

原因は遺伝子? ホルモン?

だから科学者たちは、より生物的な差異に関連している可能性を考えています。動物モデルでオスとメスの寿命を研究するのはちょっと違うということは明らかですよね。なぜなら、霊長類やネズミのようなほかの哺乳類が人間と同じ傾向をいつも示しているわけではありませんからね。

だからこういった説のほとんどは、管理された調査研究よりもむしろ、人間の人口を観察することから生まれています。

X染色体上の遺伝子が寿命に影響を与えているかもしれないという可能性がありますが、遺伝子はほかにもあまりにもたくさんの影響を与えているので、見分けるのは難しいのです。

性ホルモンは免疫システムに影響することがわかっているので、寿命にも影響しているかもしれない、という説もあります。女性ホルモンが加齢やDNAの損傷を保護するなにかを出している一方で、男性ホルモンは損傷を与えている、なんていう可能性もあるのです。

これは2つの小さな研究に裏付けられています。1つは、16世紀から19世紀の韓国王室裁判での寿命に関する記録をもとにしたもので、もう1つは20世紀のアメリカ合衆国の精神科病院の分析記録をもとにしたものです。

その両方において、男性として生まれた後に睾丸を切除されたために十分なテストステロンを生成しなかった人々が、ほかの男性よりも長く生きたという証拠が見つかっているのです。

でもここで1つ奇妙なのは、成人女性は長く生きるとは言え、年をとるにつれ健康を害する傾向にあって、とくに骨や関節に問題がある場合が多いと言われています。

だから、こういった後半生における健康の問題がさまざまなホルモンと組み合わさって、逆説的に有利に働いている。つまり健康の問題が関節組織を保護するための免疫反応を引き起こし、突き詰めると寿命を延ばすことにつながっている、という可能性もあります。

理由はなんであれ、女性のほうが長生きするという傾向はたしかに存在するようですね。でも科学者たちがこの生物的な謎を完ぺきに解くには、すべての性と年齢の人々に関してまだまだ研究しなければならないようです。