男性の“普通の生き方”は1つしかない

田中俊之氏(以下、田中):まずは小島慶子さんと対談した本から、抜いていきたいんですけど。

小島さん、僕らより4つ、5つ上の世代なんですね。95年くらいだと、女性があえて寿退社しないで働き続けると、なにか素敵な理由、もっと輝きたいとか、のし上がっていきたいみたいなことを言わないといけなかった。あと「女子アナウンサーは、寿退社してください」と。

こういう苦労を男性はしないで済むと、摩擦係数は低いなっていうことを小島さんがおっしゃっていたんですね。

確かに僕も男性にインタビューをしていると、男性って定年するまで我が身を振り返る機会がなかなかないと。自分が発見できない人生って怖いんじゃないですか、ということを言っていて。

僕の本のテーマというのは、結局、男の人の生き方って1個しかないという話なんですよ。普通というと、「学校を卒業します、卒業したらすぐ就職して、就職したからには結婚する、結婚したら妻子を養って、定年までは働いていくよ」と。この1個の道しかないということが、やっぱり生きづらいんじゃないかという話を主に展開してきたんですね。

ただ、『ヒゲとノブコ』に出たときも、『ヒキコモリ漂流記』の話をずいぶんしたんですけど。

山田ルイ53世氏(以下、ルイ53世):ありがとうございます。

ヒキコモリ漂流記

田中:1個しか普通のルートがないってことは、ちょっと大変なことなんじゃないかなって、男爵の本を読んで気付いたんですね。それがこの一節なんですけど。「今頃、父や母や弟は、家であったかいご飯を食べているだろうか」と。このとき、男爵、何歳でしたっけ?

ルイ53世:引きこもりはじめたときなんで、14や15や、そのへんじゃないですかね。

田中:そうですよね。そのくらいのときですよね。

ルイ53世:中2とか中3とか高1くらいかな。

田中:「同世代の子達は、楽しく毎日を送っているんだろうな……などと考えると、自然と涙がしみ出してくる。そして、随分『余ってしまった』自分の人生の敗戦処理などを考え始めるともう駄目であった。もう勝ち負けの決まった終わったゲームを続けなければならない理由などないのである」ということを。

ルイ53世:陰気な文章ですねえ(笑)。

(会場笑)

うんこを漏らして引きこもりに

田中:お上手ですよね。

ルイ53世:ありがとうございます(笑)。

田中:やっぱりこの本を読んだときに、そうかとは思ったんですね。僕、今まで、1通りの生き方しかないということが困難だって主張をしてきたんですけど、よく考えてみたら、1個しかないってことは、そこからズレてしまったときに大変な困難を背背負うことになる。こういう「人生余ってしまった」という表現がすごくピンときたんです。男爵の場合はこの卒業というところで「普通」のルートから外れてしまった。

ルイ53世:そうですね。学業、学校の卒業というか。進級していく過程でちょっとドロップアウトしたっていうのが、まずやっぱり最初に外れてしまったところですよね。

田中:そうですよね。『ヒキコモリ漂流記』は、今日まだ読んでない方もいると思うので、ちょっとざっと……。

ルイ53世:そうですね。中2かな。中2の夏休みの前に、僕、うんこ漏らしたんですよ。学校行く途中でね。劇的な漏らし方したもんですから、ちょっとそっからのきっかけで学校に行けなくなりまして。そっから20歳手前までずっと引きこもりましたよという、僕の過去のことが書いてある本なんです。

田中:そういう方っていうのも、なんか、話していたら少なくなくて。自分も大学中退してましたとか。

ルイ53世:でもけっこうね、読んでくれた方の反響でそういうの、「僕もそうです」みたいなん、よくいただきますよ。

田中:そうですよね。そうすると、卒業っていうけど、実はこの段階でうまくいかないという人がけっこういるんじゃないかということに気付いたんですね。

就職っていうのもそうで、みんながみんな就職がうまくいっているのかというとそうではなくて、とくに僕らの世代は氷河期だったので、就職でうまくいってないという人もいるでしょうし、当然、結婚という方も、これは生涯未婚率っていうのがあって。生涯未婚率っていうのは50歳の時点で1回も結婚してない方なんですけど、男性だと20パーセントくらいなんです。

ルイ53世:そんなにいらっしゃるんですね。

田中:5人に1人ですから、ぜんぜん少なくない数です。あと、日本だと法律的に同性愛の方は結婚できないですから、そういう人たちにとっても結婚というのは、1つ障害になっていますし。定年といいますけど、定年まで健康で働けない方も、けっこう僕の周りでいるんですよね。

ルイ53世:そうですよね。

節目節目で遅れるとリカバリーがしんどい

田中:50歳くらいになって身体壊しちゃうという方がいらっしゃるということなので。ですから、男爵の本読んで、話していて、すごく気付いたことがありまして。普通ってつらいよねという話もある一方で、そこからそれちゃったときに巻き返しというのが、日本だと少し難しいんだなということを思ったんですね。

ルイ53世:そうですね。例えば、先ほど先生がおっしゃっていた卒業であるとか、結婚、定年、節目節目ですよね。就職とか。その節目で1年2年遅れただけで、けっこうリカバリーしんどいみたいなことはありますもんね。ちょっと異端の存在になってしまうというか。

田中:そうなんですね。学校とかでも、例えば留年したりすると目立つみたいなことも。

ルイ53世:目立ちますね。留年もね。

田中:そうですね。

ルイ53世:僕、実際引きこもりまして、行ってないんですけど、結局、中学は4年かかって出てることになってる。私学やったんで、中学でも留年みたいなものがあったものですから。

そのときに1回2回だけ保健室登校みたいなかたちで学校行ったりしたことあるんですけど、やっぱり自分より1個歳下の人たちと授業1回2回受けてみると。中学時代ですよ。僕の1学年下のやつと。留年してますからね。1回2回授業受けた経験あるんですけれども、やっぱり違和感は絶大なんですね。

田中:お互いということですか?

ルイ53世:お互いでしょうけど、こっちからしてもやっぱり。お互い「なんでここにおんねん?」みたいな感じになってしまう。絶対、自然ではないですよね。

田中:そうすると、余計行きづらくなっちゃいますもんね。

ルイ53世:そうですね。空気としてはちょっと、やっぱり行きづらいですよね。

急に資格を取る芸人も

田中:だからやっぱり、一旦普通から抜けちゃったというときに、すごくつらいんだなと思いましたし。あとは『WEEKEND JUKEBOX』のときは深堀りできなかったんですけど、芸人さんの方でも急に資格を取られる方とかも……。

ルイ53世:うちの相方も、急にソムリエの資格取りましたけど(笑)。

(会場笑)

田中:あとなんか、先輩でもっと本格的なのを取られる方も……。

ルイ53世:僕の先輩で50近い、元どーよのケンキさんって方がいらっしゃるんですけど。みなさん、「どーよ」をそもそもご存じですか?

ああ、ご存じですか。今、コンビは別れてますけど、相方さんがロバート・デ・ニーロのモノマネをされるテルさんっていう方。ほんで、その相方のケンキさんって方がいらっしゃるんですけども、大先輩ですし昔からかわいがってもろうてるわけなんです。芸人としても、身内のあれですけど腕もあるんですよ。おもしろいんですよ。

コントもしっかりしてて昔から番組とか出てたりしてたんですけど、それだけで芸人って売れたり売れなかったりっていうのは、あんまり関係なかったりするもんですから。今は本当に不幸なことに売れてないんですけど、「資格取る」言うて。

うちの相方はワインソムリエを、「まあ貴族やし」とか。

(会場笑)

ルイ53世:フックというかね。

田中:芸人さんの仕事につながるような。

ルイ53世:とっかかり、一応つかめる小石はあるわけじゃないですか。ボルダリング的に言うとね。だけど、そのケンキさんが取った資格が「宅建」だという。

(会場笑)

田中:本格派のやつなんですよね、仕事っていっても。

ルイ53世:番組でも「実は宅建持ってまして」とか、テレビでそんなこと言う人見たことないじゃないですか。「ガチの資格ですやん!」っていうね。

田中:その後、ファイナンシャルプランナーを……。

ルイ53世:そうそう(笑)。

(会場笑)

ルイ53世:「宅建の勉強とファイナンシャルプランナーの勉強って、実は男爵、重なってて……」って(笑)。「だいたいこれ取るんだよ」って話もされてましたけどね。すごいことですけどね、それが取れるというのは。

田中:資格の難易度が高いなと思うんですよね。男爵と対談させていただいたときも、サラリーマンの方はサラリーマンの方で、40、50になったときに「俺の人生、平凡でいいのか」みたいな悩みもある一方で、芸人さんというみんながチャレンジしようと思ってもなかなかできないことを選んだ方が普通のルートに。ケンキさんの場合はね。

ルイ53世:まあまあ、そうですよね。芸人の道でごはん食べられへんから、ちょっと資格とか取らなあかんってなってるわけですもんね。

違和感なく行ける場所がなくなってしまう怖さ

田中:そうですね。でも、人間って矛盾してるなと思うのは、チャレンジしようと思われて渋谷に住まれたりね。

ルイ53世:よう知ってはりますね(笑)。

田中:『ルネッサンスラジオ』を409回聴いているので。

(会場笑)

ルイ53世:これ別に、『ルネッサンスラジオ』のトークライブやないですけどね。

田中:そうですね(笑)。

ルイ53世:けっこうみなさん、学習意欲高い方が集まってらっしゃるわけでしょ?

田中:だから、そこが今回は難しいなって思っているんですよね。

ルイ53世:一般社会とお笑い芸人界、ぜんぜん違うという感覚あるかもしれないですけど、僕は最近「なんやねんこれ」って思うことがあって。

さっきも先生がお話してくれた『ヒキコモリ漂流記』という本にも書いてますけど、学校行けなくなって、さっきも言いましたけど、1回2回保健室登校的な感じで、留年して自分より1個下の子たちと勉強せなあかんねんけど、でもあかんと。

そのあかんという気持ちも、「たぶんこれ普通じゃないからあかん」という曖昧な理由でがんばるんです。学校行く、まず行きにくい、1個下の子と勉強せなあかん、違和感ある、気まずい、みたいな。

そのなかなか行きづらくなるっていう過程が、まさに一発屋になってからテレビ局に入りづらいというくだりと合致するんですよね。最近ね、なんかよく、警備員にも止められるなっていう。

(会場笑)

ルイ53世:そのとき思い出すんです、あのときと一緒やって。けっこう人生って巡り巡るんやっていう。

田中:なんて言うんでしょうね。だから、違和感なく行ける場所が多いほうが、人間楽だってことなんでしょうね。

ルイ53世:そうなんですよ! お呼びじゃない感があると、しんどいんですよね(笑)。

田中:それって、卒業とか就職とか結婚とか定年って、全部出てくる話かなと思って。それぞれの場所で外れてしまった人は、気軽に行けるところがなくなってしまうというところの怖さなのかなと思いましたね。

ルイ53世:その外れてしまったっていうのが、実は外れてない人間から見たら外れたっていうだけの話ですからね。

田中:本当にそうですね。

シルクハットは子供の手の届かないところに

ルイ53世:だから、素敵にキラキラ生きなあかんみたいなんはね。素敵にキラキラ生きてる人間の平均的な意見ですから。だから、それは、こっちは関係ないですからね、それはね。

田中:その話題は出てくるので、ぜひ後で……。

ルイ53世:後で言いましょうか。後で同じことを言いましょうか(笑)。

(会場笑)

田中:掘り下げていきましょうか。

ルイ53世:掘り下げてね。

田中:せっかく今日、こういった勉強会ですから、男性学というのも知っていただければいいかなと思うんですけれども。

男性学というのは、今話してきたことから言うと、一方で普通って嫌だなって思ったり、そこから外れちゃって嫌だなって両方あると思うんですけど、男性固有の悩みや葛藤を対象にしているんですね。

先には女性学が当然ありまして、その刺激を受けているんですけれども。ですから、女性が女性であるがゆえに抱えている悩みであるとか葛藤を対象にした女性学があって、そこから男性学が発展してきたという流れです。

男爵の場合は娘さんいらっしゃいますけど、「将来こういうこと心配だな」みたいに……今4歳?

ルイ53世:この夏で4歳になりましたね。将来的に……まあ、そんなにね、自分の娘のことなんで言いますけども、4年も見てきたら、そんなに劇的にめちゃめちゃかわいいわけでもないですから。顔面の話ですけどね。

つつがなく生きてくれたらいいなと思うてますよ、僕は。あんまりね、何者かになれみたいなことはね、シルクハットかぶったおっさんがよう言わんでしょ、そんなこと(笑)。

(会場笑)

田中:秘密にされているんですもんね?

ルイ53世:基本的に、家に帰ったら、(かぶっていたシルクハットを取りながら)これはタンスの奥にしまいますからね(笑)。

(会場笑)

ルイ53世:やっぱり電池とか飲み込んだら危なかったりするものとシルクハットは、子供の手の届かないところに。これは基本ですからね、やっぱりね。

(会場笑)

「旦那が髭男爵だということをママ友の間でさばききる自信がない」

田中:この間、バレそうになったことがあったとか。

ルイ53世:そうなんですよ。バレそうになったというか。基本的に、娘と一緒にテレビ見てたりすると、テレビに出てるケンドーコバヤシさんを見て「パパ」と言うというね。

(会場笑)

ルイ53世:そういうネタがあるんですけどね、いや、パパ横にいるよというね。悲しい瞬間が何回も我が家に訪れるんですけれども。みなさんどう思ってらっしゃるかはわかりませんけれども、僕もたまにテレビ出てるんですよ。

田中:見ましたよ、この間の『お笑い演芸館 4時間スペシャル』。トリでしたね。

ルイ53世:そうそう、それBSですけどね。BSまでチェックしてるその動体視力がすごいですよね。髭男爵動体視力。

(会場笑)

ルイ53世:たまに出てるんですよ。たまに出てるときに、たまたま娘が僕が出てるテレビ見ると、「パパだ! パパだ!」みたいなことを言うんですよ。それを受けて僕はいつも、「うん、確かに似てるねえ」って言うんですよ。もうバレたくないんで。

田中:秘密にされているんですもんね。

ルイ53世:そう。この間、幼稚園の父親参観みたいなのがあったんです。あるって聞いてたんです。僕は基本的にバレたくないんで……娘のためを思ってですよ。バレたらいじめられるんちゃうかなとか思って、心配があるんで。「お前の親父、貴族らしいな」とか。

(会場笑)

ルイ53世:そういうのがほんまに嫌やから。自分やったら耐えられませんよ、そんなこと。たぶんね。

田中:その言い方、嫌ですね。

ルイ53世:でも、絶対おるんですよ。バレたくないもんですから、俺は幼稚園には行かへんと。ほかのことは全部、もちろんバックアップはするけど、行って顔出してどうのこうの、ママ友の集まりでワイワイする、そういうの絶対せえへんからみたいなことを言うてたんですけど。

ついこの間の参観のときに、お父さんしか行かないと。普段はお母さんばっかり行ってるから、その日はお父さんが送ってきて、ちょっとお遊戯に参加して、お父さんと一緒に帰ってくださいという日があって。

ほかの家もお父さんけっこう来るからみたいなことを、うちの奥さんにものすごい言われてたんですね。行かへん行かへん言ってたんですけど、前日くらいになって、やっぱりここは行っとかなあかんかなと思ったんです。そして満を持して奥さんに、「明日、父親参観のやつ、自分が行く言うてたけど、やっぱりあれみんな来るから、俺が行くわ」って言うたら、「ごめん。やっぱり、来なくてもいい」っていう、ちょっとよくわからない断り方をされて。

(会場笑)

ルイ53世:「なんでやねん」って聞いたら、「自分の旦那が髭男爵やっていうことを、ママ友の間でさばききる自信がない」と。

(会場笑)

ルイ53世:「それはお前の腕の問題や」言うて(笑)。だから、今のところ、いいか悪いかはわかんないですけど、そんなにバレたくないです。正直ね。

男は戦闘力を金ではかられがち

田中:娘さんのことを聞いたのは、社会学的な観点からお話しをすると、やっぱり結婚するときに、男の子だったらあんまり親の許可って気にしないんですけど、娘さんのほうは、ご両親がけっこう気にされる。つまり、俺たちが許可しない相手とは結婚しちゃだめだぞっていうことがあるみたいですね。

ルイ53世:つまり、自分の子供が結婚するときに、いわゆる「娘さんをください」的なニュアンス。

田中:息子だったら「うちの子と結婚してくれるんですか、ありがとう」で済むんですけど。娘さんだとちょっとハードルになるみたいなことがあるみたいなんです。

ルイ53世:確かにね、女の子のほうから「息子さんをください」なんていうのは、ないですもんね。

田中:そうなんです。そういうので、こういう男だと……みたいなのってありますか?

ルイ53世:理想の相手ってことですか?

田中:連れてくるのがこんなんだったらいいなとか、こんなんだったら嫌だなっていうのが。

ルイ53世:親目線ですけど、宇多田ヒカルさんと真逆の意見なりますけど、やっぱり経済力のある相手のほうがいいですね。親としてはね。

田中:そうなんですよ。、娘が連れてくる相手になにを期待しているかというと、やっぱり仕事とか収入というところがちゃんとしていない人は嫌だと親は思われるんですね。

ルイ53世:自分とこって考えたら、やっぱりそうなるんちゃいます? よそやったら関係ないけど。

田中:日本の場合は、正社員でも、男女の賃金格差が大きいんですね。あとは、パートの方とかも多いですから、基本的には親が相手の男性の経済力を気になっちゃうというのは、すごく男性学とか女性学に関わる問題だなと思いますね。

ルイ53世:そもそも、男と女が同じように稼げる世の中であれば、そういう考え自体が生まれないっていうこと。

田中:そうです。別に夫の経済力に期待しなくても、うちの娘は娘で稼げるんだから、相手の経済力とか肩書というのを、娘さんの親御さんもあんまり気にしないんじゃないかということですね。

ルイ53世:とかく戦闘力を金ではかられがちなんですよね。

キングオブコントのチャンピオンでも49連休

田中:そうですね(笑)。だから逆に言うと、僕らの悩みとしては、男の人は、仕事、ストレートに言っちゃうとお金でしか評価されないというところがつらいという部分かなと思うんですよね。ですから働きすぎが男性の場合よく社会問題だと言うんですけど、あんまり実は問題にされてなくて。例えば、やっぱり仕事がないほうが不安になるじゃないですか、自分も家族も。

ルイ53世:やっぱりバリバリ働いてるのがかっこええっていう、若干マッチョな考え方がありますからね。

田中:ありますし、それは別に男性だけが持っているわけではなくて、実際、パートナーの方が、妻のほうがですね。この間409回の聞いたら、夫が49連休の方がサンミュージックの芸人さんにいらっしゃる。

ルイ53世:(笑)。みなさん、「かもめんたる」ってご存じですかね?

(会場笑)

田中:『キングオブコント』という大きな大会で優勝されている。

ルイ53世:優勝、チャンピオンなんですよ。ものすごいネタのクオリティも高いと思うんです。自分の事務所の後輩やから欲目もあるかもしれませんが。

田中:でもまあ、(岩崎)う大さんという方が台本を書かれて、世間的にもすごく評価高いわけですよね。

ルイ53世:すごい評価高いですけど、コンビの一方の槙尾(ユウスケ)というやつが、この間、49連休、仕事がなかったっていう話ですよね。

田中:ちっちゃいお子さんもいるんですよね。

ルイ53世:生まれたばっかりですわ、2歳くらいで。どう思います? 生まれたばっかりのお子さんがいて、お父さん49連休ってなったら、ゾッとするでしょ? それは端的にゾッとするでしょ。

田中:ちょっと静かですもんね、会場がね。

ルイ53世:今みんな自分やったらって思ってくれてるんでしょうね。噛みしめてくれてると思うんですけど。そういう状況はやっぱり、芸人の世界やと生まれますよ。

田中:そうですよね。男爵もすごく忙しかったときがあったと思うんですけど、そのときのほうが家族とか自分自身も、今俺はがんばっているという気がしちゃったり……。

ルイ53世:それはありますね、やっぱり。

田中:ありますよね。

ルイ53世:20何時間テレビみたいなんがあると、苦痛ですよね。

(会場笑)

ルイ53世:24時間とか27時間とかまあ3時間の差ですけど、ああいうテレビがあると「うわあ、俺今日24時間暇やなあ」って思いながら。27時間テレビが始まると、俺27時間暇になるんですよ。呼ばれてないから。そういう考え方が刷り込まれてるっていうのも変ですけど、当たり前みたいな感じがあるから。

田中:そうですよね。27時間って出るの大変じゃないかなと思いますけど、出ているほうが気が楽って。

ルイ53世:出てるほうが気が楽ですよ。家で見てるより、ぜんぜん気が楽なんですよ、そのほうが。