"シンプル"×"一点突破"
LINE森川社長が語る、スマホ時代のプロダクトづくり

IVSインタビュー #9/15

IVS 2013 Spring
に開催

いまや世界的なサービスへと成長したLINE。海外のユーザーに使ってもらうためにも、とにかくシンプルにすることにこだわり抜いたという森川社長。そのマインドは、製品そのものだけではなく、制作・運営・組織づくりにおいても徹底して貫かれていた。

すべてにおいて"シンプル"を追求する

司会:LINE株式会社 代表取締役社長 森川亮さん、LINE株式会社 執行役員 舛田淳さんにお越し頂きました。ではまず簡単に、もうかなりほとんどの方がご存知だとは思うんですけども、自己紹介と会社事業紹介からお願いします。

森川:では僕からで。LINEの社長の森川です。ちょうど会社が今年4月にNHN Japanから分割しまして、LINEの事業は、LINEそのものとNAVERとlivedoorの事業をやってます。

舛田:同じくLINE株式会社の舛田でございます。役割は、LINEのプログラムを書く事とデザインをする事以外、ほぼ全てを担当しています。主には事業戦略とマーケティングを担当しております。

司会:やはりwebサービスの大成功例、爆発的成功例として、一挙手一投足に注目が集まったり、「次の展開は次の展開は?」って質問も何度もお受けになられてると思うんですね。非常にサービスとしてはシンプルなんですけども、たぶんその裏側にものすごくシンプルであり続けるためのご苦労であるとか、工夫であるとか、色々あると思うんですよね。

だから僕から見てたら、LINEさんの美学ていうのは、引き算でシンプルにあり続けるための努力っていうのがあるかとは思うんですが、具体的にそれは社内の業務でいうと、シンプルであり続けるためにどのような工夫というか、努力をされているのか。要は単純に足し算にどうしてもなりがちだと思うんですよね、開発とかよりも。その辺はいかがですか?

舛田:「ユーザーの事を考える」というのが一番ですよね。やはり世界中の皆さんに使ってもらうためには、シンプルでないと使えないんですよね。ただ、シンプルであれば飽きられてしまうので、そのシンプルの奥にある種の複雑性を持たせるっていうのが、このバランスが非常に難しいと考えていますが。

我々にとっては、このシンプルであるという事自体は誰かに言われてそうなるわけじゃなくて、我々のカルチャー全体が「サービスはシンプルであるべきだ」という考え方ですので、例えばプランナーもそうですし、デザイナーもそうですし、エンジニアも、全てにおいてシンプルでなければならない。アウトプットはシンプルでなければならないっていうのは、これは全員が思っている事ですね。それをすごく何かコストをかけて、コントロールをしているという事ではないですね。

司会:今言われた事と少し重複するかとは思うんですが、そういったその努力の中で、こういったベンチャーカンファレンスの登壇者として、他のベンチャーに対して、共有できる知識や知恵というのはどういった事がありますでしょうか?

森川:そうですね。時代と共に変わると思うんですけど、今、スマートフォンビジネスに関しては、もちろん何か色んな事をやる事で、そこから成功例が生まれる事例も無くは無いと思うんですけど、僕たちの考えはどっちかというと、数よりも質にこだわるというか、10個20個出すよりは、1つに絞ってシンプルな価値を分かりやすく提供するというところが重要なのかなと思うので。世界の中で評価されている事は、ある意味何か一つ絞りこむ事も重要なのかなと思いますね。

司会:色々やらずに、一点突破ですごくフォーカスする。

森川:はい、そこに価値を。色々やるよりは、一つのサービスなりプロダクトにちゃんと価値を入れ込んで、そこに集中するという事ですかね。

舛田:例えば先行している企業がある、サービスがあったり、例えばユーザがこう言ってるっていう事、データがこう言ってるっていう事だけを、プロダクトを開発する側が入れ込み過ぎると、不安になってしまって機能を足したがるんですよね。

やはりそうではなくて、このサービスはどういう価値を持ってるんだ、どういうコアバリューを持ってるんだっていう事を明確にして、怖いかもしれないですけど、それを一番シンプルに表現できる方法でプロダクトはリリースする。これは今後、特にスマートフォンにおいては、非常に重要な事だと考えてます。

"2択"と"一点突破"

司会:そのシンプルというのは、一つのものすごく大きな強みだとして、その他に後付けでも結構なんですけれども、LINEがここまで広がっているその理由、国を超えて広がる理由というのは、どのように定義されてますか?

舛田:今までのSNSっていうのは、例えば情報をシェアする、公開をするっていう事が前提だと思うんですよね。ただ我々はSNSに分類をされてますが、メールと電話なんですよね。メールと電話は、世界中の人たちがもう既に使っていて、それをスマートフォン時代用に切り替えたっていうのがLINEになりますので、これが一番の大きな理由です。そして今、スマートフォンがどの国でも伸びていると。ここに合わせてサービスを提供するというのも、我々の成長を加速させている理由になると思いますね。

司会:クローズドネットワークの、ある種の閉じた、既にある既存のコミュニティーのやり取りを上手に円滑にするためのツールだと言うことですが、逆に言うとある種の閉じた系なので、ビジネスっていう事を考えると、広告であったり、第三者外部的なものとのビジネスにするっていう事の、ある種の難しさもあるかなと思っているんですが、そのあたりはいかがですか?

舛田:おそらくそのオープン性であるとかっていうものの利益、メリット、価値ってのは当然存在するんですが、それはインターネットの一つの可能性だと考えていて、我々もそれは非常に好きなものの一つですね。ただ全てのユーザーがそうであるべきかというと、そうではないですね。やはり時代が変わりつつありますので、オープンであるという事が必要であれば、逆にクローズドでプライベートな事が必要だという風に、ドンドンドンドン時代が変わっていると。この中でサービスが作られているという考え方ですね。

司会:実際その引き算の美学っていうのを会社的に見ますと、森川さんが色んなところで「事業計画というのはありません」とおっしゃっています。時代の流れに合わせて最速で変化し、それに対応していく、それを続けていく、それがその状況に最適化していった努力をしていくという事だと思うんですけれども、それ以外に会社として「他の会社はこういう事をやってるけれども、うちの会社ではそれは省いている」あるいは「そういうやり方はよしとは思わない」というような会社的な何か取組みがあれば教えてください。

森川:そうですね、多分なんだろうな。「会社はこうなきゃいけない」とか「こうなりたい」とか、そういうのにあんまり実は興味がなくて、大事な事は「僕たちがやるべき事が何で、そこに集中する事」だと思うんですよね。

例えばさっきも「インターネットはオープンじゃなきゃいけない」とか「SNSはこうだ」とか「こうなきゃいけない」「今までこうだった」っていう事を壊す事が、僕たちにとって重要なので、あまりなにか前提条件を作ったりとか、ルールを作ったりするよりは、本質的に何が大事なのかそれをちゃんと見せて、それを別に議論して一番いいものを選ぶというやり方をとってますね。これはもう本当に、こうありたいとかっていうよりも、それでずっとやってきたので、ただそれを変える必要はないかなと思うし、そこに何か新しいものが見えるんじゃないかなと思いますね。

司会:実際に森川さん自身は「空気を読まない事も大事なんじゃないか」とか「計画を持たずにそうやって積み重ねていく事も大事なんじゃないか」って言われる一方で、ブログであるとか、手帳であるとか、記録はかなりしっかりされているというような事を書かれたりすると思うんですけれども、やはりチャレンジをして、いわゆるPlan・Do・Seeしてですよね、PDCAのそのやった結果はきっちり記録して振り返るというのは、非常に重視されているという事なんでしょうか。

森川:そうですね。もちろん産み出す時と、産み出たものを育てる時って違うと思うんですよね。今LINEっていうのは、まだまだ産まれたばっかりで色んな可能性があるので、赤ちゃんみたいなもんですよね。そうすると、子供は育っていく過程において「子供はこうあるべき」「この子はこういう教育をしなきゃいけない」って事じゃなくて、ある意味自由にやってるところを見守りながら育てていくと。

一方である程度大人になると、ちゃんと管理しなきゃいけない部分が出てくるという事を考えると、今は会社が4月1日に分割して、改めてLINEという会社自体も赤ちゃんのようなベンチャーで、そういう意味であまりこう「こうなきゃいけない」「こうすべき」って事はないんですよね。自由にやる中で、成功していくという所ですね。

司会:そのあたりいかがですか? 舛田さんも記録とかメモは残して、振り返りを大事にされますか?

舛田:もう今、話にあった通りで、我々が大事にしてるのは「シンプルにして早く出そう」と。「ここまではプロダクトアウトです」と。ただその先は、もうユーザーの声自体が我々の行動指針ですと。ここからはPDCAを高速回転させると。その小さくていいから高速回転させましょうというのが、我々のある種の公式となっていますので、そこでいくと、やはり振り返る事っていうのは非常に大事ですし、現実を真摯に受け止める。

例えばこの手段をとったら全くダメだった。「ダメだった残念だったねー」ではなくて、その瞬間に何ができるのかっていうのを、1時間毎でもいいですし、5分毎でもいいですし、プロダクトを出した後は全員がそのモードになって、プロダクトに向かっているというのが、LINEという会社ですね。

司会:非常に良くわかりました。ありがとうございます。お時間もせまってまいりましたので、最後にUstreamを見ていただいている方に向けて、若い方、起業を目指している方であるとか、あるいは何か仕事においてヒントが欲しいという方が見られていると思いますので、何かアドバイスであるとか、メッセージをいただければという風に思います。

舛田:まぁベンチャーには色々ありますが、インターネットで考えますと、これほど楽しい時代はないと思ってますし、これほど世界に進出できる、展開できるっていう時代はないと思います。我々社内で迷った時にはやる事があるんですが、必ず2択にするんですね。色んな理由はある、色んな選択肢はあるけれども、最終的にはやるかやらないかのこの2択なので、みなさんも何か迷われたり、決断をされる時には、多くの選択肢を持つのではなくて、最終的には2択しかないんですから、2択にしてリスクを取っていただきたいと思います。

今日この場に来ていらっしゃる経営者の方々っていうのは、まさにリスクを取られて成長されている皆様ですので、Ustreamの向こう側の、今後経営を目指されたり、起業目指されたりする方には、是非リスクを取っていただきたいですね。

司会:ありがとうございます。森川さんいかがでしょう。

森川:そうですね。会社も個人も何か常に「こうありたい」っていう思いとか、また「こうなりたい」っていう場合が多いんですけど、それと実際行動っていうのがともなってない場合が結構多いんじゃないかなと思ってて。これもある本で読んだんですけど、個人なり会社の時間なりお金を何に使ってるかを見ると、実は言ってる事とやってる事結構違う場合が多いと。「こうなりたい」って言ってるんだけど、やってる事は普段と同じ事やってる。

だからそういう意味だと、何か1つに集中するという事で世の中ってまだまだ変わると思うんで、全部見直して、さっき舛田がリスクの話をしましたけど、とにかく一つこれでいこうと思ったら、とにかく時間もお金も、個人の時間もお金も会社も、全て集中する事で世の中って変わるんじゃないかなと思いますね。

司会:森川さんのブログを拝見していますと、本であるとか食事に出かけるという、いわゆる経営者の定番だけでなく、演劇を見に行かれたり絵画を見に行かれたり、超会議に行かれたり、本当にフットワーク軽く色んな方と接してると思うんですけど、そういうのもやはり感性を磨く一つの方法として、重視されてるという事でしょうか。

森川:たぶん自分を壊さない限り成長ってしないと思うんですよね。いつも同じ事して、同じ事考えてたら、たぶんそれでおしまいなので、なるべく今まで自分になかったものをどれだけ自分らしくできるかっていう所を考えますね。

司会:分かりました。本日はお忙しい中、お時間を頂きましてありがとうございました。

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IVS(Infinity Ventures Summit)

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IVSは、主に経営者向けに行なわれる通常のイベントのほか、学生向けに行なわれるワークショップも年に数回開催されています。ログミーでは、公式メディアパートナーとしてその中の人気セッションを全文書き起こし、全部で400記事以上のコンテンツをご覧いただけます。

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