リボンのカールに関する研究

オリビア・ゴードン氏:お店で買ったばかりのプレゼントを包装してもらっているところを想像してみてください。お店の人はあなたの目の前でハサミをリボンにすべらせ、まるで魔法のようにくるくるとリボンをカールさせてゆきます。

このハサミをリボンの下部にあてがい、すべらせることによりリボンがカールしていく現象には、「yield(イールド)」という正式な名称が存在します。

イールドとは、「1点の負荷がかかったポイントにより、その物質の形状を永久的に変化させるもの」です。リボンはイールドを通過することによって引き伸ばされ、きれいにカールされるのです。

実は今年の3月にはイギリスの研究チームがこのリボンがカールしてゆく現象を物理的に解明するための研究を行い、研究結果を米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表しています。

そうです。彼らはこのリボンがカールする現象がどのように起こるのかということを解明するためだけに研究を行ったのです。

研究者たちはまず、PVCと呼ばれるプラスチックの一種でできたリボンの片方をシリンダーに巻き付け、もう片方に重りを付けました。

シリンダーと重りに引っ張られていることでリボンはハサミの刃に直角に接することになり、リボンがハサミの刃の上を通過する際に、リボンの外側は延ばされ変形するのです。ですが、リボンの内側は変形することなくそのままの状態で保たれます。

リボンがイールドを通過する際にかけられる負荷が大きいほどリボンの外側は永久的に変形し、くるくるとした華やかなリボンを創りだすのです。

このリボンをカールさせる際に必要な負荷の大きさはリボンの材質によって変わってくるので、すべてのリボンが同じ方法できれいにカールできるわけではありません。

しかしイギリスの研究者たちは、リボンをきれいにカールさせる基本的な3つのポイントを発見しています。

1つ目は、より鋭い刃を使うことによってリボンはより細かくカールされる、ということです。これは鋭い刃は鈍い刃と比べリボンに接する面が多いので、より多くの面を引き伸ばすことができるからです。

2つ目は、リボンを刃の上に滑らせる時の速さがゆっくりであるほど、カールは細かくなるということです。これはリボンの素材が伸び、変形するのに十分な時間を与えているからだそうです。    3つ目は、引っ張られている力が大きければ大きいほど、カールは細かなものになる、ということです。これは引っ張る力がリボンをより一層引き延ばすからです。ですが当然、引っ張りすぎてしまうとリボンは引きちぎれてしまいますね。

しかし、鋭い刃を使うことによって作られるカールはある程度の細かさまでしか再現することができません。それ以上のもっと細かなカールを創ろうとすると、リボンの内側まで変形させてしまい、結果的にリボンのカールは崩れていってしまいます。

ですので、次回あなたがプレゼントを包む機会があったなら、リボンを「鋭い刃を使って」「ゆっくりと」「力強く」カールさせるとよいでしょう。もちろん、引っ張りすぎてはだめですよ。