水の音を聞くと尿意をもよおす

マイケル・アランダ氏:この音を聞いてみてください。

(水が流れる音)

流れる水の音を聞いていると気持ちが落ち着きますね。でも、ちょっと個人的な質問をしてもいいですか? 今なんとなくおしっこしたくなりませんでした?

もしそうなら、あなた1人だけじゃありませんよ。

蛇口の水が漏れている音であれ、軽い雨の音であれ、あるいはほとばしる滝の音であれ、流水の音を聞くと最寄りのトイレに駆け込みたくなる人がいるのです。

でも、なぜなんでしょう?

心理学者や泌尿器科医、あるいは尿路の勉強をしている科学者は、それを連想の力のせいだとしています。

基本的に、流水は排尿のような音がするので、ただ音を聞くだけでもおしっこをしたいような気になるのかもしれません。

この種の無意識の関連性は、条件反射と呼ばれ、その背景にある心理学理論は昔から存在しています。

事実、あなたもこの古典的な例のことを聞いたことがあるでしょう。ロシアの生理学者イワン・パブロフと、犬を使った彼の実験のことを。

尿意はパブロフの犬と一緒?

パブロフは犬の前においしそうな肉の粉末を置いておく、すると犬はヨダレを出し始めますよね。これは食べ物に対する普通の犬の反応、あるいは条件反射です。

そしてそれから彼はベルを探し、犬にエサを与えます。

これを数ヵ月くり返した後、パブロフが肉の粉末を出さずにベルを鳴らしても、犬はヨダレを垂らし始めます。

彼の子犬は特定の音=ベルの音を、特定の行動=エサをもらうことと関連付けてヨダレを垂らすようになったのです。それは犬の条件反射です。

これと同じ効果が、私たちの奇妙な放尿本能を説明できるかもしれません。トイレのしつけ以来、私たちは流水の音を、排尿やトイレを流す音や手を洗う音といったそのほかのトイレの音と関連付けるようになったのです。

だからベルの音を聞いて食べ物を思い出してヨダレを垂らす代わりに、私たちは流水の音を聞いてトイレにあるものを全部思い出し、おしっこをしたくなるというわけです。

ただし、この現象は詳細にわたって正式に研究されたわけではないので、科学者たちはこれがすべての原因だと言い切ることに積極的ではないのですが。

でもそれはごく当たり前のことです。

実際医者たちは、前立腺手術患者や「トイレ恐怖症」としても知られるトイレ不安の人たちが膀胱を解放するのを助けるために、流水音を使って成功しているのです。

研究者のなかには、この連想の力は音声の合図に限られたものではないので、ほとばしり流れる滝の写真を見ただけでも、おしっこをしたい衝動に駆られる可能性もあるとさえ考える人もいます。

さて今日のところは尿の話はこれまでにしましょう。誰かトイレ休憩に行かなきゃならないかもしれないから、終わりにします。