2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
セカンドキャリアに幸あれ!! 金澤大将×玉乃淳(全1記事)
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玉乃淳氏(以下、玉乃):あらためて、うかがいます。大将(タイショウ=ニックネーム)くんの今のご職業を教えてください。
金澤大将(以下、金澤):はい。静岡県菊川市にある、菊川南陵高等学校で校長を務めています。
玉乃:もちろんそれを知っていて、あらためてうかがったのですが……校長先生って。
金澤:たしかに、混乱されるのも無理はないですよね(笑)。
玉乃:いきなりなれる職業とも思えません。ですから順を追って質問いたしますね。まず、現役を引退されたのが2011年でしたよね?
金澤:現役時代は、いつか日本代表になりたいと漠然と思いながら、サッカーを続けていましたけれど、年々、現実味がなくなっていくのを自分でも感じていました。それで、現在はJ3に所属しているSC相模原で引退を決意しました。
戦力外通告を受けたという理由もあるのですが、ちょうど子供が生まれた年で、家族を養っていくためにも、このままサッカー選手を続けるよりは次のステップに進んで一からチャレンジしたほうがよいのでは、と考えました。
セカンドキャリアを築いていくうえで、当然、新たな多くの苦労をしていくわけですから、エネルギーがある若いうちに次のステップに進んだ方がよいと思っての引退決意でした。
玉乃:引退時、引退後の明確なビジョンは持っていたのですか?
金澤:それまでサッカーしかやってこなかったので、サッカーに携わる仕事かなとは考えていました。ほかの分野に進む選択肢もありましたが、ここまでサッカーを続けてきた経験は決して無駄ではないはずだし、それを伝えたかったんです。
それで、Jクラブの下部組織の指導者など、いろいろと模索しているときに、ずっとお世話になっている先輩から声をかけていただきました。「菊川南陵高校でサッカー部を立ち上げてほしい」と。
玉乃:なるほど。先輩の紹介でこの学校にめぐりあったのですね。それで、まずはサッカー部の監督に就任されたわけですね?
金澤:私は静岡県出身なので、なんらかの縁は感じていました。サッカー部を立ち上げるというミッションでしたが、部活動以外でも生徒たちと関われたほうがコミュニケーションも取れて信頼関係も築きやすいですから、大学時代に教員免許を取得していたこともあって、保健体育の先生として教壇に立ちながら、サッカー部の監督を引き受けることにしました。
玉乃:いきなり教員ですか!? それはそれでまた驚きですね。「聖職者」とも言われる立場になられて、どんな感じでしたか?
金澤:ほかの学校と比べても生徒数は少ないですが、さまざまな悩みを抱えている子は多くて、正直大変な部分はありました。まずはしっかりコミュニケーションを取らないといけないのですが、うまくいかないケースもありましたね。
そういう子供たちといかに正面から向き合って、どうやって彼ら彼女らの成長や自律の手助けができるかを毎日考え、悩んでいましたね。それこそ常に全力で、もうガムシャラでした(笑)。そうこうしているうちに、学年主任を任されるようになったんです。
玉乃:スピード出世!?
金澤:「出世」という言い方が、はたして適切かどうかはわかりませんが、任されたからには、私も覚悟を決めてこれまで以上に責任感を強くもち取り組みました。たしかにそのポストにつくまでのスピード感はありましたし、そこにいたるまでにもう少し段階や過程を経るべきかな、とは思いましたが、任せていただいたので、それに応えることにしたのです。
玉乃:その後、たしか教頭も務められて、そして教員生活3年目に、ついに校長に抜擢……ってマジですか?(笑)。理事会の承認とかも必要なのですよね?
金澤:もちろん、さまざまな分野の方々から反対の意見があったとは聞いています。私もさすがに話をいただいたとき、驚きを隠せませんでした。
学校という教育の現場は、企業と違って、「若さ」がプラスに働かない場合が多いと考えています。若くてリーダーシップがあり、利益だけを追求していればよいというわけでは決してないですしね。もとより教育の現場における「結果」はとても難しいと思います。
自分の教えが生徒たちの人生に影響を与えて、それが結果として表われるのが5年後かもしれないし10年後かもしれないのです。3年足らずの経験しかない私は当然まだ「結果」を出していませんでした。この世界では、まだ若すぎると思いました。
それでも推薦していただいた学園長先生や理事長先生の期待に応えたい一心で、校長の大役を引き受けました。私にしかできないことをやってやろう、という思いもありました。もちろん経験不足、力量不足は認識しておりますが、いろいろな方々の支えによって、今こうしていられております。支えてくださっている方々には感謝の気持ちしかありません。
玉乃:たしかに「若い」校長先生ってあまりいませんよね。それにしても校長って…大変過ぎないですか?
金澤:たしかに大変ですよね。でも個人的な考え方ですが、もしいくつかの選択肢があったとしたら、あえて一番厳しいものを選ぶようにしているんです。自分自身のプロサッカー人生に対する後悔みたいなものが、原因なのかもしれません。
もっとああしておけば、もっと努力しておけば……平坦な道より険しい道を選んで、そこでどれだけのことができるかを試すことによって自分自身の価値を高めることもできるし、可能性もさらに広がると思うのです。だから大変な校長を引き受けました。一番厳しい道を選ぶのは、もはや私の信念でもありますね。
玉乃:今話している表情を見ても、その信念は揺るぎないものだとわかります。それでも、教育現場ってタフな職場ですよね? 僕みたいに屁理屈ばかり言っている生徒もいるだろうし。
金澤:(笑)。例えば、なにか注意をして、露骨に機嫌が悪くなったりする子はいますよね。それに対して、こっちが感情的になっては、信頼関係も築けないですよね。
玉乃:どう接するのですか?
金澤:「なんだ、どうしたんだよ?」とか「なにか不満でもあるのか?」という感じでしょうか。頭ごなしに怒ってもダメだと思うので、コミュニケーションを取るためになるべく生徒たちの言葉を引き出すように意識しています。
見た目だけで判断されて悩んでいたり、成績が思うように上がらず劣等感を抱えていたり、生徒たちの数だけ、悩みっていろいろあるはずなんですよね。それを聞き出して、問題を共有して、良い方向に持っていけるようにしたいんです。
ときとして、強い言葉で伝えることもありますけれどね。そうやって伝えなければならないときもありますから。
玉乃:少し問題がある子は、家庭にいろんな事情を抱えている場合が多いと聞いたことがありますが……。
金澤:一概にそうとは言い切れませんが、だからといって家庭の事情がまったく無関係だとも思いません。十分な愛情に満たされず、誰かにかまってほしくて悪さをしてしまう場合もありますし、ほとんど怒られた経験がなく、物事の善悪を理解できていない子だっているかもしれない。
でも、そんな子供たちもいずれ社会に出て行くし、たとえ問題児と見られたとしても、絶対に良いものを持っています。それを悪い方向に持っていかないようにしたいです。
乱暴な言い方かもしれませんが、夢や目標を持っている生徒は、放っておいても大丈夫なんですよ。誰が教えても、勉強もできるでしょう。そうじゃない生徒たちに、いかに夢や目標を持たせて取り組ませるかが大切だと思っています。
玉乃:今は全校で300人ぐらいの生徒さんがいると聞いています。スポーツにもかなり力を入れているらしいですね?
金澤:私が赴任した当初は、生徒数は100人ほどでしたが、今年は留学生も増えて、たくさんの生徒たちが通っています。サッカー部も紅白戦ができるまでになりましたが、監督就任1年目は、毎回練習参加する部員は4人しかいませんでしたからね(笑)。
いずれにしても、夢や目標が明確な子供は、いろいろな面で強いですよね。私もサッカーが大好きで、もっとうまくなりたいという一心でサッカーを続けてきた結果、Jリーガーになった身です。
周りの方々のサポートが大きかったけれど、真剣に打ちこめるものがあったので、横道にそれることもなかった。また、サッカーを通じてそれなりの社会性も身についたと思っています。
今、校長としてスポーツに力を入れているのは、そういう実体験があるからですし、自分自身のこれまでの経験を活かせると考えているからです。生徒たちが、情熱を持って取り組める何かに出会えるようにするのも私の仕事だと思っています。
玉乃:ちなみに、校長先生の基本的な業務ってどんなことですか? 朝礼の挨拶とか?(笑)。
金澤:そうですね、職員朝礼や全校集会で話もします。話は下手ですけど(笑)。あとはやはり、学校は地域との連携が不可欠だと思っていまして、そのようなつながりを生む活動も校長の仕事だと思っています。そのほかの具体的な業務は学校経営や運営、安全管理、危機管理、職員の育成など挙げればきりがありませんね(笑)。なかなか生徒たちと直接、関われないのが課題です。
玉乃:そういうものなのですか?
金澤:ある意味、校長の言葉は最終決定でもありますからね。だから、まずはなるべく現場の先生たちに指導をお願いするようにしています。こんな若造ですけれど、それでも校長という立場にある以上、発言には気をつけていますよ。
玉乃:なんだか政治家みたいですね(笑)。現役時代は茶髪の坊主だったのに(笑)。
金澤:昔の写真を見た生徒たちも、驚いていますよ(笑)。
玉乃:髪の毛を染めた生徒に「校長だって茶髪にしていたじゃん!」とか突っ込まれたりしません?
金澤:そういうときは、「あれは20歳を過ぎて、自分でお金を稼げるようになってからしたこと。君たちは未成年なんだから」という感じですかね(笑)。
玉乃:なんか、納得です(笑)。
金澤:もちろん、自分が100パーセント正しいとは思っていません。先ほど、玉乃さんも「聖職者」と言われましたが、「先生」と呼ばれるのは、私たち教員を含め、医者や弁護士、税理士など、限られた職業なので、勘違いしてしまう方もいるようです。
当たり前ですが、教師だって学ばなければいけないことがたくさんあるはずだし、校長であっても「初心者マーク」を外すつもりはありません。
玉乃:大将くんのそうした真摯な姿勢を聞いて、自分が恥ずかしくなってきた(笑)。もうすごすぎる。
金澤:けっこうみなさん「校長先生って、すごいですね。」と言ってくださるのですが、本心は非常に怖くて仕方がない。先ほども言ったように、発言にも大きな責任が伴いますからね。
玉乃:それをちゃんと「怖い」と認識されているのが、大事なんじゃないですかね。「校長イエーイ!」とかじゃないし(笑)。僕だったら、その名刺持って、毎週末東京に遊びに行ってピョンピョン跳ねるかもしれませんね(笑)。
金澤:ははははは。でも、いろんな見方をされて当然だと思っています。「こんな若造に何ができるの?」と思われる先生もいらっしゃるかもしれません。
でも校長としてこういうことをしてきたと胸を張って言えるなにかをやり遂げたいし、生徒たちに、私が校長でよかったと思ってもらえるようにしたいですね。
玉乃:最後に夢のある話をさせてください。無礼を承知でお聞きします。ズバリ、校長職のギャラって、いくらぐらいですか?
金澤:言えるか!!(笑)。
玉乃:お! 初めて同い年らしいリアクションをしていただけました(笑)。一般的には1000万円ぐらいと聞いたことがありますが、でもそれがいくら高額であろうと、その責任の重さと業務の大変さを考えたら、僕には到底できない。
金澤:やりがいはありますし、やるべきことがたくさんあるのは、幸せだと思います。そう考えると、大変さよりも使命感やワクワク感のほうが自然と上回りますね。
【金澤大将(かなざわ ひろまさ)プロフィール】藤枝東高校、東京学芸大学を経て、2006年横浜FC入団。その後、水戸ホーリーホック、SC相模原でプレーし、2011年に現役引退。現役引退後は教員として静岡県菊川市にある菊川南陵高校で教壇に立ち、サッカー部の監督をつとめる。2014年4月、30歳の若さで同校の校長に就任し、生徒減少に悩む私立高校の再建を託される。座右の銘は「迷ったときは厳しい道を選ぶ」。
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